2006年度余暇政策論

 

―担当教員によるコメント―

(青字部分がコメント内容)

 

(各タイトルをクリックすると各レポートが提示されます)

 

 

  氏名

テ ー マ

和気徹也

「スローライフと環境問題」

「フード・マイレージ」の概念が興味深い。自然とのふれあいにも相当なエネルギーがいるのではと思わせるものの、例えば、「コンビニへの小旅行」といった表現が魅力的である。気のせいか文章そのものにもゆったり感がある。スローライフ感は、個人的には論文の締切に切羽詰った時の開き直りに役立ちそうだ。

小出貴美

「習慣から余暇へ 〜日本人の“風呂”意識〜」

50年代以降の変遷も含め、銭湯の全体像を法律内容などから丁寧に把握している。豪華なスーパー銭湯が提供するサービスをせかされるように貪欲に享受するという姿勢のみでは、本当に余暇を楽しんだことにはならないかもしれないが、このあたりが対価サービスと「積極性」とのバランスの難しさであろう。

梅津方媛

「日本におけるカラオケの発展、普及について」

カラオケの語源や由来についての説明が無駄なくなされている。微に入り細に入る技術進歩の状況も伝わってくる。また店舗の大型化は何もシネコン系に限ったことではないことも分かる。諸外国のカラオケ情報もインターネットで収集できる時代である。質量ともに最後の知見をもう少し膨らませられなかったか。

舟山直純

「オタク文化の広がりについて」

オタクの国際化現象が生じていることに驚く。産業規模でも無視できない額に達している。途中のコミックマーケットやメイド喫茶に関する記述(暗黙の了解や日本語の飛び交いなど)も興味深い。「本家」日本の先行きに思いをめぐらせつつ、一気に隙間のない感じで読ませる好レポートである。

伊藤優里

「携帯電話の利用方法〜余暇と仕事での比較〜」

仕事利用にも目配りしたことで、携帯の余暇利用の広がりを明確に打ち出すことができた。派遣企業における労使双方の利用は果たして両方を利するのか、それともどちらかの利益に軍配が上がる結果となるのか。「ファッションの一部」としての性格をますます強めながら、余暇における機能面での進化の行き着く先はどうなるのだろうか。

張葉

「老人大学―高齢者の人生を豊かにするには―」

老人大学の説明が最初にない。また一読した印象だが、前半はあたかも日本における生涯学習のテキストの内容をなぞっているようで、オリジナル性が感じられないのが残念。日中間で高齢者のパソコンに対する積極性には違いがあるのかもしれない。「利益還元」以外の視点で高齢者の生活の充実が追求されなければならないであろう。

田中美希

「『本屋大賞』」から見る読書としての余暇」

テーマ設定に成功した好例。NPO法人としての対応や書店の余暇空間化の指摘がなされる。大賞は書店と読者の貴重な連結役となっている。学生に対して活字よりもグラフィカルな側面に惹かれる傾向が年々強まっていると決めつけていただけに、活字の魅力を知り、それを日常の行動に移していることに頼もしさを感じる。

加藤博香

「広がる子ども市場〜少子化に負けない大人消費〜」

政府やメディアの一見無味乾燥とみなされがちな複数の統計データを噛み砕いて丁寧に把握・説明し、例えば乳幼児期にまで踏み込んで考察を行っている。データから読み取れる限界にも言及している好レポート。大人の子どもに対する消費の動機には、横並び意識と競争意識が混在していることが窺われる。タイトルは、「消費性向からみた子どもに対する大人の意識」といったところが適切だったかもしれない。

常川久幸

「政府によるレジャー政策 ―『国定公園整備プログラム』に注目して―」

「国定公園整備プログラム」(とくに緑地保全)に注目した。まさに官製のレクリエーション振興事業で内容の硬さは否めないものの、後半の事例からは官製ならでは魅力も伝わってくる。利用者から見ればコストパフォーマンスの点でも魅かれる要素は多いはずだ。出だしの法令紹介という取っ付き難さを乗り越え敢えて公園政策を真摯に追求した好レポート

10

山口真生

「蔵王温泉スキー場における政策」

「客呼び戻し政策」の中心は外国人観光客の誘致となっている現状を明らかにしている。既存型の努力に限界があるとすれば、かつてスキー客で埋まった隆盛を復活させる秘訣はどこにあるのだろうか。とくに余暇活動のぶれや変化がスピーディーで移り気な若者世代を惹きつけるのは、他分野との競合もあり、なかなか難しいのであろう。

11

大宅宏幸

「日本におけるサイクルスポーツイベントの課題」

確かにサイクルイベントの舞台が「公道」である以上、「封鎖型」「非封鎖型」にかかわらず行政や規制との調整が不可欠となる。欧州における「自転車文化」の浸透は羨ましい限りだが、読み進めると日本でもその芽や可能性(とくに宇都宮のような地方都市)のあることが分かる。実践者ならではの強みを生かしたレポート内容となっている。

12

菅原美沙希

「日本におけるフィットネス市場の現状と今後について」

料金システム一つを取っても経営サイドと利用サイドの思惑は異なり、「フィットネス大国」アメリカで成功しているコンビニ型は、日本でも両者を満足させるサービス形態として定着するかもしれない。しかし、ゆったりとした空間が利用者の快適度と比例する領域だけにハード面でも特有の難しさがあるだろう。フィットネス産業は人々の嗜好に合わせる繊細さが最も必要なビジネス領域の一つかもしれない。

13

佐藤絵美

「ワールドカップ・ドイツ大会における環境対策について」

一人当たりのごみ排出量が日本の「約4分の1」であるドイツが取り組んだ「グリーンゴール」を紹介。せっかく「地域社会に根ざす」という新たな視点を提示しているであるから、南アフリカとインドにおける事業内容をもっと詳しく知りたかった。W杯終了後にグリーンゴールに関する報告書が世界に向けてどのように提示され生かされるのだろうか。

14

松田絢子

「マーケティングからみたアジアサッカー」

アジア市場の特徴は果たしてどこにあるのだろうか。とくに人気の程度ではなく、人気の質の面でいえば欧州との決定的な違いはどこにあるのだろうか。さらには市場の規模や性質をめぐる他のスポーツとの差異など、追求すべき課題は多い。

15

中村祐司

(担当教員)

「テレビ局の軍門に降った日本サッカー協会?―ドイツW杯における試合開始時間をめぐって―」

16

橘なお子

「余暇と音楽〜CDの売行不振〜」

コピー防止やCDのLPジャケット化に活路を見出すそうとしても、「100万曲」というパソコンを介した音楽配信の威力の前に屈しそうな雰囲気であることが良く分かる。1曲150200円というのは経営・消費者の両方にとって微妙な価格設定に違いない。有線放送などはどうなるのだろうか。消費者の好みにサービス提供者側が翻弄されるのか、それともその逆なのであろうか。

17

石山恵莉子

「高齢化社会に対応する旅行業界」

シニアに限らず「平凡化」を嫌い、個性化・多様化を好む旅行者を満足させる企画ツアーは、消費者と旅行会社との知恵比べの側面があるのだろう。シニアにヘルパーが同行する企画など、この分野での新しい市場の開拓も容易ではない。一方で旅行者側も受身の姿勢での満足度の獲得には限界がありそうだ。

18

千田美沙子

「花火大会から見える余暇」

一見相反するようでありながら、余暇と安全とは切っても切れない関係にある。さらに花火と環境汚染との関連やイベントに伴う大量のゴミの発生など、余暇を楽しむ環境醸成のためにクリアしなければならない課題は多い。一瞬の華である花火の打ち上げは、サービス提供者側から見ればそこに至るまでの様々な努力の結晶なのである。余暇の持つもう一つの断面を終始一貫して自分の言葉と論理で追求した好レポート

19

三浦奈津美

「ねぶた祭からみる青森県の観光産業」

既にブランド化された伝統の祭であっても、後継者問題などその存続は並大抵ではないことが分かる。2つの条例は各々性格は異なるものの、自治体としては苦肉の政策対応なのであろう。祭そのものに対する県民の愛着を土台に、付加価値をつけることでリピーターを増加できるという独自の提案にまで踏み込んだ好レポート

20

河野恵利

「大きく変わる空港の役割」

国際空港は今や国家の「顔」としての側面を有している。空港利用以外の魅力の面でもその鮮度を落とさずに、「新鮮」な状態を保ち続けるための秘訣は果たしてどこにあるのだろうか。余暇に関わる「業界は進歩し続け」なければ、その享受者からすぐにそっぽを向かれてしまう時代となのであろう。

21

楊敏

「中国のオープンキャンパスの現状について」

オープンキャンパスの意味合いが日本とは異なることが分かる。社会の現実として学校開放が両刃の剣であるのは世界共通なのであろう。管理も含めて公的私的な地域力の発揮が解決の糸口であるように思われ、そうしたいくつかの芽を見出すことができる。

22

片桐梓

「新潟県の復興活動にみる余暇活動」

余暇と復興との結びつきに注目している。復興花火はもちろん、多様なパートナーシップ事業ともいえる催しに全国的な関心が集まることで、当該地域に前向きな活力が注入される。余暇の持つパワーを侮ることは決してできないと感じると同時に、災害後の向き合い方についても大切な示唆を人々に提供していることが分かる。

23              

高渕圭子

「大型ショッピングセンターの増加における生活の変化」

好レポート「大型店」と「中小小売店」の棲み分けの難しさ、前者が後者を圧倒する状況、さらには高齢者などの交通弱者が被るマイナス面が描かれている。しかも露骨な市場の論理で動く大型店は消費者にとって意外と当てにならない。英仏伊と歩調を合わせたかのような日本の「まちづくり3法」が両者の「関係性」に劇的な変化をもたらすのか。切り札は当該地域の現場発の知恵にしかないのかもしれない。

24

齊藤香織

「日本の映画産業の発展について」

例えば、洋画と比較して日本映画とシネコンとの特有な結びつきはあるのだろうか。文化庁による「文化遺産」としての映画の位置づけは、実際どの程度浸透しているのだろうか。アニメとそれ以外の邦画とでは海外展開の活路の見出し方も異なるかもしれない。

25            

上田紗織

「旅行へのニーズの変化と旅行会社」

「FIT型旅行者」は、パソコンでいえばオン・ディマンド型ないしは自作といった類のものだろうか。割高分を差し引いて十分余りあるのが個人旅行の持つ価値なのであろう。自炊にレトルト食品を活用するのと同じで、折衷案的な両者の組合せの傾向にあるのが分かる。

 

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