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伊藤優里「携帯電話の利用方法〜余暇と仕事での比較〜」
現在、携帯電話の普及率は上昇を続け、2003年の15〜59歳の男女を対象とした調査では、個人利用率が84.4パーセントであった[1]。また、最近では携帯電話各社の売り上げ競争の激化によって、新機種・新機能などの発展の勢いは目覚しく、特に通話以外の機能の強化が進んでいる。携帯電話のデザインなどもさまざまであり、「携帯電話は余暇領域で使うもの」というイメージが強くなってきている。しかし、仕事領域での携帯電話の利用方法もさまざまである。そこで、余暇・仕事の両面から携帯電話の利用方法を調べて、利用者が携帯電話を仕事と余暇のどちらでより利用するものと考えているのかを比較していきたいと思う。
まず、余暇領域での携帯電話の利用方法を見ていきたい。さまざまな新機能が開発されている中で今各社が最も力を入れているものの一つとして、音楽機能が挙げられる。KDDI(au)はソニーと提携し、2006年6月下旬に携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」ブランドの携帯電話を発売した。このウォークマンケータイの特徴として、従来のKDDI機の約4倍となる約30時間の音楽再生が可能となることや、約630曲の楽曲を保存できること、インターネットの複数の楽曲配信サイトから取り込んだ曲を、携帯電話で再生できることなどが挙げられる。「ウォークマン」というと少し古い言葉のように聞こえるが、これは中高年世代にも親しみを持ってもらいたいという戦略のためである。
また、各社が行っているサービスで、「着うたフル」というものがある。着うたフルは、従来の着うたを一曲全体で音楽配信するサービスであり、音質を維持したまま曲全体をダウンロードできるようになっている。配信会社によっては着うたフルにCDのジャケット写真や、歌詞カードが含まれている場合もあるようである。1曲ダウンロードするのに約210円から420円という高価格のもかかわらず人気があるのは、「好きなときにその場で聴きたい曲を聴ける」という便利さと手軽さからではないだろうか。それに加えて、料金をその場で払わず、後に請求されるという点で、料金を支払っている自覚があまりないという理由もあると考えられる。
もちろん、音楽機能に限らず、携帯電話で地上デジタルテレビ放送が受信できる「ワンセグ」のようなテレビ電話機能や、携帯電話用ゲームなど、余暇としての機能はたくさんある。
次に、仕事領域での携帯電話の利用方法について見ていきたい。まず、アルバイトの中でも、特に派遣型のアルバイトの仕事の連絡方法に携帯電話が使用されることが多い。派遣会社から登録しているスタッフに仕事の内容、日時などがメールで送信される。そして、スタッフは自分の都合のいい日を派遣会社に返信し、決定した仕事と日時が後日スタッフにメールで伝えられるというシステムである。固定電話と違い、携帯電話のメールは送信する時間をあまり気にしなくてよく、送られた側も都合のいい時にどこでも読むことができるので、とても便利な方法である。
次に、派遣型のアルバイトに登録する際、登録の段階から携帯電話でできる「モバイト・ドット・コム」というものがある。これは登録制のアルバイト情報サイトで、まずホームページから登録説明会の予約を行う。説明会に参加し書類手続きを行った上で、スタッフとしてアルバイトすることができる。パソコンまたは携帯電話で仕事を予約し、日時、場所、内容、給与などの条件を確認することができる。
アルバイトの連絡方法に限らず、企業での仕事でも携帯電話は利用されている。ある調査会社の2001年の調査によると、従業員1000人以上の企業団体としての携帯電話の利用率は72.4パーセントに達したという。この原因について同社は、「個人向け携帯電話の普及率が40%を超えた時点で社員が自分の携帯電話を業務に活用するケースが増え,この利便性を認知した企業が業務用ツールとしての導入を進めた」としている[2]。携帯電話は通話機能よりも個々の情報管理のツールとなり、企業における保有率・保有台数が増加しているようである。
このように、携帯電話の機能は仕事領域、余暇領域の両方で多様に利用されている。しかし、私は利用者が携帯電話に求めるものは仕事領域よりも、やはり余暇領域にあるのではないかと感じる。次に挙げるのは、2004年に行われた携帯電話の機種選択に関するアンケートである[3]。携帯電話のよく使っている機能として、1位がメールで92パーセント、2位がカメラ(静止画)機能で43パーセント、その次に着メロのダウンロードの43パーセント、サイト・コンテンツ閲覧の32パーセントと続く。このアンケート結果から見ると、メールは仕事と余暇の両方で多く使用されるが、カメラ機能や着メロのダウンロードなどは余暇の楽しみとして使用されるものであり、それらの使用率が高いということは、利用者は携帯電話に求めるものとして余暇領域のものに重点を置いていると言えるのではないだろうか。
これまで述べてきたように、携帯電話は仕事と余暇の両方で私たちにとってなくてはならない存在となっている。しかし、仕事の領域では携帯電話の機能は通話やメール、またはアルバイトに登録する際のサイトの閲覧などにしか利用されておらず、携帯電話の機能やサービスは余暇領域において利用されるものが大多数を占めているように感じる。また、同じ機種でも形や色などの種類が豊富であることや、ストラップやアンテナなどのアクセサリーもたくさん販売されている点から見ても、利用者が携帯電話をファッションの一部のように捉えているように思える。したがって、私は利用者の多くは携帯電話を余暇領域において利用するものとして捉え、これからの携帯電話各社の売り上げ競争も、音楽・テレビ・ゲーム機能などに代表される余暇関連の機能やサービスの強化によって行われていくのではないかと考える。
[1] http://japan.cnet.com/news/com/story/0,2000056021,20054061,00.htm?tag=nl
(CENT Japan「情報通信機器の利用実態、自宅PCのブロードバンド利用が半数に」)
[2]http://techon.nikkeibp.co.jp/members/01db/200106/1002324/?ST=observer_PRINT
(産業動向オブサーバ Tech−On!「大企業でのケータイ利用率は74.2%,ECRの調査から」)
[3]https://www.myvoice.co.jp/biz/surveys/7508/
(マイボイスコム株式会社「マイボイスコム定期アンケート (携帯電話の機種選択)」)