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橘 なお子「余暇と音楽〜CDの売行不振〜」

 

1.はじめに

私たちの暮らしと音楽は、切っても切れない関係にある。街中を歩いていても、どこかに買い物に行くにしても、そこには何らかの音楽が流れている。また、休日に音楽を聴きながら運動をしたり、移動時間に音楽を聴きながら本を読んだり、自宅で音楽に聞き入ったりと、余暇活動の中でも音楽は大きな役割をしめている。しかし、今日まで楽曲提供の一番の有力候補とも言えたCDが、ここ何年か売れ行きが下降している。日本各地でたくさんの中小CDショップが閉鎖されていっている。不況の影響を受けている部分も大いにあると思われるが、単にそれだけではないようだ。そこでここでは、どうして「不況でも強い」といわれてきた音楽業界がこのような危機に追い込まれているのか、CDの売れ行き不振の原因、現状と対策を考察したい。

 

2.原因

CDの売れ行き不振の原因としてはさまざまなことが挙げられると思うが、中でも特に不況によるCD市場での購買意欲の減少、CDの不正コピー、パソコンや携帯電話などでの音楽配信という制度の充実等が考えられる。

 

3.現状と対策

 先に述べたように、ここ数年日本ではCDの売れ行き不振が続いている。音楽ソフト市場は、97年には21,170億円だったが、9819,625億円、9918,345億円、そして00年には17,082億円と、年々規模が小さくなってきているという。これに歯止めをかけようと、政府が逆輸入CDの販売を一定期間禁止するという著作権法改正案を内定した。しかし消費者団体や公正取引委員会は、価格競争の点などからこの法案に反対する意見がでている。

 

また、CDの売れ行き不振はパソコンやCD-Rへのコピーが原因であるという理由から、CDではなくCCCDによる楽曲販売も見られている。CCCDとは「コピーコントロールCD」のことでパソコンに保存できないようにされたCDのことである。日本では2003年3月から導入され、いくつかの大手レコード会社では邦楽すべての楽曲をCCCDで販売している。CCCDCDに比べて音質が悪く、CDプレイヤーの寿命を短くしてしまう可能性もあるが、それを販売しているレコード会社は再生保障を放棄している。このようなCCCD販売に疑問を抱いたり、反対したりしているアーティストや消費者も多いようだ。

 

CDの売り上げ向上のための新たな対策として、最近ではCDジャケットをLPサイズの「でかジャケ」にして販売する動きも見られているようだ。現在のCDのような大きさではなく、昔のLPのような大きいジャケットである。この「でかジャケ」によりCDジャケットのコレクション性を高め、「ジャケ買い」を再び盛り上がらせようとするのが目的のようだ。

ちなみに、CDの売れ行き不振は日本だけの問題ではないようだ。アメリカ、ドイツ、カナダ、オランダ、台湾、チェコ、マレーシアなど、世界各国でこのようことが事態に陥っている。台湾では、1997年から2002年にかけて、売上数量・金額ともに下降しており、一方で海賊盤CDを作る業者の数が年々増加し、海賊盤CDは正規のCDの数分の1の価格と激安。そのため、12歳から35歳までの50%以上の人々が海賊盤CDを夜の市場や小売で購入しているようだ。また、ところ変わってアメリカのサンフランシスコ発CD販売のヴァージンメガストアでは、「店内の双方向端末『メガプレイ』を使って、MP3ファイルを各種のフラッシュメディア・カードやMP3プレーヤーに無料ダウンロードできるサービス」を始めたという。

 

4.音楽提供の新たな方向

以下のことも、CD売り上げ不振の原因と考えられるが、ここでは音楽提供の新しい方法として紹介したい。それは近年から試みられた音楽配信という制度である。音楽配信とは、好きな曲を視聴することができ、1曲単位で、いつでもどこでも、パソコンや携帯電話からインターネットの音楽配信サイトを使って購入することができるというものである。レコード会社が運営していたり、アーティスト個人が運営していたり、その形態はさまざまである。

 

中でも有名なのはAppleが運営するiTune Music Storeというサイトで、MacWindowsの両方のパソコンからアクセスすることができる。日本では2005年8月4日から始まり、邦楽・洋楽・インディーズを合わせて約100万曲が用意されており、すでに6億曲以上がダウンロードされている。1曲150〜200円で購入できるが、この値段を安いと思うか高いと思うかは個人によってかなり差があるようだ。CDを買ったり借りたりしに店頭まで行く時間がない人々は、インターネットさえ繋がっていればどこへも出向かずに手軽に楽曲が手に入るので、利用している人も多い。iTune Music Storeは、アメリカでは一週目にして10万曲を、日本にいたっては4日で10万曲を超える販売を達成した。

 

一方、携帯電話の音楽配信では、「着うたフル」という1曲丸ごとダウンロードできる制度などが話題であるが、「値段が高い(1曲300円くらい)」という理由から、私の周りでこれを活用している人は少ない。

 

4.終わりに

 このレポートを書くまで、CDの売れ行き不振の原因はCDの不正コピーのせいだとばかり思っていた。しかし実際はそれに対する対応(CCCD等)もすでに行われており、さらにはそれに対するさまざまな意見が飛び交っていることを知った。長距離を移動するときには私にとって音楽は絶対に欠かせないものであるし、普段の生活においても音楽のない暮らしは考えられない。CDに代わるこれからの楽曲提供方法とも言えるだろう音楽配信制度については、ただ1曲をダウンロードするために150円〜200円をかけるのなら、余暇を見つけて、自分の足でCDショップに借りに行き、実際にCDを手にとりながら選ぶ楽しみも味わいたいと個人的には思うが、これからもこの制度はますます発展していくと思われる。そしてこれからも楽曲提供のされ方はどんどん変わっていくだろう。はじめにも記したが、私たちの生活と音楽はきっても切れない関係にあり、これからも私たちの生活から音楽が消えることはないだろう。しかし、レコード、カセットテープ、CDMDCD-Romと今まで音楽の形がさまざまに変わってきたように、これからも音楽の形はどんどん変化していくだろう。しかし、新しいものや周りの考えに囚われず、どれが自分のライフスタイルに合っているのかを考えながら、これからも音楽とともに生活していきたい。

 

《参考ホームページ》2006/06/26現在

・音楽産業は自滅の道を転がる

http://www.dandoweb.com/backno/20021121.htm 

・『ヴァージンメガストア』、店内で無料ダウンロードを提供

http://hotwired.goo.ne.jp/news/print/20031208107.html

・韓国の音楽配信、日本の未来像?

http://blog.goo.ne.jp/thiroi/d/200509192005/09/09

・社団法人 日本レコード協会|各種統計

http://www.riaj.or.jp/data/others/country_sales.html

・逆輸入CDを一定期間禁止! 著作権侵害に対する罰則規定を強化

http://www1.odn.ne.jp/tazjim/mag2/g21_mag2_11.html