060628katoh
加藤博香 「広がる子ども市場〜少子化に負けない大人消費〜」
1.このテーマを選んだ理由
現在日本は、先進国の中でもとても速いスピードで少子高齢化になっている。この影響はいろいろな分野に及ぶだろうが、ここであえて、ある一部で増加する経済について調べていきたい。私が注目する子ども市場である。子供市場といっても大きいので、私は「大人が子供にかける消費」注目した。ここ最近は、お受験という言葉をよく聞く。私立学校へ通う子供たちは増えているのか。また、私立を受験するということについて親はどんな考えを持っているのだろうか。そして、小さいころから勉強している(あるいはさせられている)子供たちは、余暇を勉強に費やすことのよって、どのように感じているのか。余暇は十分にあるのだろうか。このような疑問について調べていこうと思っている。
2.子育て支出の推移
総務庁の「家計調査」によると、親が子ども一人に支払う年間子育て支出は、81年=16万4400円→99年=37万7800円と、20年弱で2,3倍に増加した。しかし、子育て支出の家計圧迫度合いは、それほど高まってはいない。81年〜99年にかけて、1世帯あたりの子育て支出の伸びは38%にとどまった。理由としては、子ども関連支出の増加が小さかったことと、世帯あたりの子ども数が81年=0.89人→99年=0.54人と大幅に減少したことが考えられる。子ども一人当たりにつぎ込む金額は増えているが、少子化の影響で全体の金額は下がってしまうので、一見成長が小幅だと感じてしまう。しかし、教育関連支出が81年=12万9008円→99年=32万7311円と推移しているように、大きな伸びを示している分野もある。このことは親の高学歴化によって、子どもがもっと高い学歴を望まれているということも大きな要因ではないかと考えられる。このことについては、あとで、考えていきたい。
ここで、親の消費が中心となる乳幼児の消費について考えるとともに、親の消費に対する考え方についても考えて生きたい。
3.乳幼児期に習いごと・お稽古ごとに通っている(いた)子供について
国立教育政策研究所「早期教育研究会」で発表された、平成12年2〜3月に調査された乳幼児の習いごとについてのアンケートをもとに考えていきたい。この調査では、東京、愛知、名古屋の1歳半か3歳の子供を持つ親が返答している。最初に、「現在あるいは過去において、子供に習いごと・お稽古ごとに通わせたことがある」という質問の結果についてだ。1歳半では平均で11、7%だったのに対して、3歳では平均が27、6%だった。やはり、年令を重ねることによって、親の習いごとに対する意識が高まっていると推測できる。
次に、子供に習いごとに通わせている(いた)と答えた親が、どんな内容を習わせているのか見てみる。1歳半の子が習っている(いた)内容は、3つの地域を平均して通信教材、スイミング、英語、幼児教室、リトミックの順だった。3歳では、平均してスイミング、幼児教室、通信教材、リトミック、英語の順である。1歳半と比べると全体の割合もふえ、スイミングが1位に変わった。1歳半では通信教育で、親が教えるという形態が多かったのに対し、3歳になると自分参加型の習いごとが増えているのだと思う。
では、どんな理由で習い事に通わせている(いた)のか見ていきたい。一番多かった理由は、1歳半、3歳とも「子供の友好関係を広げるため」だった。特に、3歳の保護者は51,6%がその理由だった。近隣で友人を見つけにくいことや兄弟が少ない(あるいはいない)ことなど、子ども自身の友人を増やす目的は当然だろうが、夫婦と子供だけの核家族が増え、祖父母が近くに住んでいないなど、教育環境の変化も理由として考えられている。母親自身が子育て状況を共有できる人を探す目的もあるだろう。次に多かった理由は「能力の向上」だった。では小さいころから幼児教室に通い、目的が「受験準備」と答えた保護者はどうなのだろうか。
「幼児教室」通っている(いた)割合は、3歳児では28,3%だった。その中で「受験準備」のために通っている(いた)子供は、20.1%と意外に少なかった。「友好関係」や「なんとなく」といった理由が多かった結果から、一般的に「お受験戦争」などと言われているが、今回集めた資料では、そこまで加熱していないことが分かった。今後、また新しい調査結果が出れば、これからも考察していこうと思った。
4.小中学生の余暇の変化
では、もっと学年を進めて見ていきたい。NHKが行った「国民生活時間調査」を元に、昭和45年と平成2年の子供の生活時間の比較をしていきたい。生活時間の中で減少したのは
「すいみん(小学生:平日9.23→9.03休日10.12→9,48。中学生:平日8,03→7,52休日9,21→9,08)」
「お手伝い(小学生:平日0.21→0,16休日1,21→1,02。中学生:平日0,42→0,15休日2,00→0,58)」
「テレビ(小学生:平日2.11→2,01休日3,44→2,42。中学生:平日2.07→1.57休日3.47→3.02)」
だった。(※単位はすべて時間)逆に増えたのは、
「勝負ごと(小学生:平日0,01→0,13休日0,03→0,39。中学生:平日0,00→0,09休日0,02→0.22)」
「学業(小学生:平日7.03→7.19休日1.58→1.33。中学生:平日8.49→9.08休日2.50→4.04)」
や、「スポーツ」「趣味・稽古事」などが並んだ。減少傾向にある「すいみん」と「お手伝い」は、現代の子供に見られる大きな特徴であると思われる。睡眠を削ってまで、何かしたいことがある、また親と一緒に起きているなど理由はいろいろ考えられるが、親も子供の睡眠を重視する傾向が薄れてきているからではないかと思う。しかし、学業の時間が全体的に、こんなにのびていることに驚いた。中学校の休日に関しては、1時間30分以上も伸びている。やはり、この影響は塾などの学校+αの事が増えているからなのだろうか。
次に、子供の生活時間の中でもっとも時間を占めている「学校」について、保護者が何を求めているかという調査結果をもとに考えていきたい。親が何を期待するか「選好度調査」を実施したところ、第1子が中学生以下の親は「子供の特性を伸ばす教育」が57,8%でもっとも高く、続いて「基礎的な知識を習得する事」が54,1%、「円滑な人間関係をつくっていくこと」が40,0%だった。これは、第1子が高校生の場合と類似していて、それぞれ48,2%、63,9%、36,9%となっている。高校生ともなると、先の大学の事も視野に入っているのか「基礎的な知識を習得する事」が一番多かった。やはり、進学や就職という未来を考えていくとこうなるのは当たり前だし、社会に出て最低限の知識、マナーはできて欲しいという親の願望もあると思われる。一方「受験指導中心の教育」は、第1子が中学生の保護者は2,4%、第1子が高校生の親は2,9%と意外と少なかった。受験中心というと、人間性の成長が欠けてしまうという理由をもつ親が多い事が、理由に入るのではないか。
次に、学習塾について子供を学習塾に通わせるべきかを保護者に聞いた「親の意識に関する世論調査」をみていきたい。塾通いをしている子供の保護者たちの考えでは「塾通いはやむを得ない」あるいは「通わせるべきだ」の合計が37.6%だった。また「通わせるべきではない」「なるべく通わせるべきではない」の合計が30.0%を上回り、半々に分かれたような結果になった。また、選好度調査の結果によると、小学生が塾へ通うのが増えた原因として一番多かった理由は「有名校へ入るため」が60.0%だった。そして次からは「親の教育熱が高くなった」が32.8%、「みんなが行っているから」が27.9%と高くなっているのが分かった。この結果と前の結果を組み合わせると、だいだいの保護者は、学校には基礎的な知識および特性を伸ばす教育を、塾には受験のための教育を期待していると考えられる。これは、現在の学校に対する要求が増加したとともに、私立学校が増え、各学校も差別化を図っているからだと思う。
最後に、小・中学生の塾通いの割合について調べたい。とても古い資料だが、昭和57年と63年の小学6年生と中学3年生を比較してみたい。全体的見て、小学6年、中学3年ともに塾通いは増えている。特に中学3年では、63年で53.4%と半分以上が塾に通っていた。保護者たちは、子供が勉強やほかの余暇のために、忙しく余裕が少ないということを分かっていても、子供に塾通いをさせる割合が増加してきているという状況にある。一般的に教育熱が高まっていく状況の中で,子供が小さいうちに多少無理をさせても周囲の流れに乗り遅れないようにすべきなのではないかという不安と期待を持って,塾通いをさせている保護者たちの理想が感じられる。
5.まとめ
今回は、子供の自発的な消費に焦点を当てる事が出来なくて残念だった。しかし、少子化になるけれど、子供の将来や友好関係を考えた親の消費の高まりが考察できて、あらたな発見が多かった。子供の余暇を考えたときに、子供が進んで勉学に励むということは、あまり多くないのかもしれない。親の期待や自由の制限が、親にとってはいい方向として作用して欲しいのに対して、子供にはどれだけ伝わっているのだろうか。この余暇を、家族と一緒に過ごすコミュニケーションの場として、活用しているかということも疑問に思ったが、そこまでは調べられなかった。しかし、ゆとり教育という言葉が盛んになったが、それが失敗だったという声も、最近では目立っているように感じる。余暇という時間をどのように活用するかは、自分次第だが、親が子供の将来とともに子供の気持ちになって、いろんな分野に消費を拡大していけば、これから大きな市場となるとともに、自分から進んだ余暇活用が出来るのではないかと思った。
<参照サイト>
l
http://www.jpressone.com/php/news.php?cmd=detail&tabcode=0004&dcd=20040202140703 「子供の進学についての親の意識」調査報告
l
http://wp.cao.go.jp/zenbun/seikatsu/wp-pl92/wp-pl92-01401.html 平成4年 国民生活白書 少子社会の到来,その影響と対応 平成4年11月13日 経済企画庁
l
http://www.sumitomotrust.co.jp/RES/research/07_03_120.html 拡大するお子様マーケット
l
http://www.jfecr.or.jp/h13_kiyou31/t1-11.html 乳幼児期の習いごとと親の意識 ― 鬼頭 尚子 国立教育政策研究所生徒指導研究センター研究員