2003年度前期「余暇政策論」

 

担当教員(中村祐司)によるコメント

 

(各タイトルをクリックすると各レポートが提示されます。)

 

 

 

氏 名

タ イ ト ル

1

山崎直樹

公園について

 

1があまりにも観念的。2以降を読んでも作成者が何を問題としているのかが分からない。敢えて推測すれば、ユートピアとしての公園像を求めているのであろうか。公園の理想像を追求しようとする思いは何とか伝わってきたものの、最初から最後まで公園に対する希薄で浮遊した作成者の問題意識に疑問を感じ続けたまま読了した。

 

2

大久保篤

宇都宮市の市営プール運営について〜スポーツ・福祉・教育・余暇の4つの観点から〜

 

副題のスポーツ、教育、福祉、余暇という包括的な設定が興味深い。公社の役割など情報に丁寧に当たった上でコンパクトにまとめていることが分かる。プール運営に「シルバー人材」を採用している点を指摘したり、市議会の議事録を検討したり、プールの貸し切りが可能であることなど、多面的な情報収集をめぐる作成者の意欲的な姿勢が伝わってくるし、文章構成もしっかりしている。ただし、網羅的な取り扱いが薄く広くという印象を与えてしまった点と、結論の素っ気なさが惜しかった。

 

3

佐藤友樹

道の駅についての洞察〜より利用者にやさしい道の駅〜

 

地図上の表記方法と身障者用のトイレ設置に絞ったことがその後の展開をめりはりのきいたものとした。実際、二カ所を訪れ、各々が「支援型」と「目的地型」のどちらに該当するのか考察し、トイレ設置の状況を観察し問題点を指摘している。読み進みにくいのが難点ではあるものの、現場に足を運んだ強みに支えられたレポートである。確かに「新しい視点を得るきっかけにはなった」のは間違いないであろうから、これを起点に今後とも別な側面からも調べていけば新しい発見があるのではないだろうか。

 

4

佐藤剛司

子育てと余暇〜保育施設現状と今後のあり方を模索する〜

 

切実な事情とテーマとが強く結びついている。早大の事例も興味深い。関心をまず、地元の公立保育施設に絞り、入所基準等を検討した上で、柔軟性を欠く硬直的な入所条件や開所時間・休日を問題視している。料金システムについてもそのしくみを把握しようとする真剣な姿勢が伝わってくる。後半は私立保育園にも目を向け、行事のあり方にまで目を向ける。それだけに止まらず検討はベビーシッターによるサービスにまで及ぶ。こうしたことを踏まえた上での公立と私立の保育施設をめぐる比較論的な考察が提示され、作成者の葛藤を見る思いがする。結論として、行政のバックアップと夜間保育施設を求めているのであるが、当該地域コミュニティにおける相互ボランタリー活動といった選択肢はあり得ないのであろうか。力作であることは間違いないものの、推敲不足が惜しい。

 

5

齋藤慎一

日本のお祭りについて〜市民参加型のお祭りへ〜

 

日本各地の四つの祭りを冗長な説明を避け実に要領よくまとめている。ごみの大量発生など共通の問題点と、盛り上がりの差が出てきていることやその背景をきちんと探っているし、個性的な魅力を創出するための知恵を絞った取り組み例にも引き付けられる。一つ一つの文章と段落の組み立て方が非常に良質で、スムーズに読み進めることができる。結論部分のお祭りをめぐる市民参加促進の提案も、作成者による参加経験が起点となっているせいか説得力がある。典型的な模範レポートといえる。ただし、全般を通じてややソフトな論調に終始している印象も受けた。欲を言えば、まさに祭りの熱気・情熱を反映したような、いわば御輿を突き上げるような主張を目にしたかったという思いもした。

 

6

高橋健太

うつのみや花火大会という窓を通して見る花火大会の運営

 

花火大会の運営には公的、私的、ボランタリーな組織がいろいろな形で携わっていることなど、うつのみや花火大会を事例に丁寧な紹介がなされている。また、資金的にはスポンサーからの協賛金によって成り立っていること、それだけでなく主催者側と協賛者側が具体的にどのようなメリットを享受し合っているのかについても聞き取りによって踏み込んだ記述がなされていて、花火大会の舞台裏における側面を描き出すことに成功している。そして、ここから運営の実質的主役が私的セクター(企業)であるという結論が導き出されるのである。このレポートを読むことで、花火大会を従来とは異なった観点からも味わうことができるようになる好レポートである。ただし、惜しむらくは「率直な感想」についてもう少し書いてほしかった。

 

7

石原佳菜子

京都の街並みを守る〜色彩の観点から〜

 

前半は条例の内容やボランタリー団体の活動を紹介する。ここから導き出されたのが、条例の制定と景観をめぐる街の実際とは乖離があるのではないかという疑問である。ラッピングバスも含め、このテーマをめぐる行政サービスそのものの矛盾点を鋭く指摘している。景観派の立場をとる作成者は、都市の利便性と両立させる形での街並みを維持する方策についても言及している。ひとくちに街並み保存とはいってもそこには様々な価値観や利害関係の相違があることが分かる。誰もが納得する対応策を見出すことは難しいかもしれない。市民(景観派)と市民(都市利便派)の間の考えの違いとその背景などにも触れることができれば、考察の幅が広がったかもしれない。

 

8

大宮裕樹

グリーンツーリズムの現状と課題〜(財)農山漁村都市交流活性化機構の事例から〜

 

いわゆるGTについての包括的な検討を行っている。これを国レベルの行政サービスとの関連を軸に把握しようとする意欲的な姿勢が終始一貫している。確かに官製版の全体概要を知ることはできた意味はある。しかし、残念ながら5における一部の記述を除いて作成者のオリジナリティを見出すことができなかった。グリーツーリズムの何を対象とするのか、さらに問題設定を絞った方がよかったのではないか。例えば、多種多様な実践活動の一つを取り上げ、インターネット情報から作成者なりの切り口で迫れば、別の展開となったように思われる。

 

9

菊地史子

テーマパーク生き残り戦略〜立地条件と集客効果〜

 

前半では「テーマパーク概論」が述べられ、とくに「ブランド化」に注目した上で、後半は温泉に焦点を絞る。全体を通じた作成者の問題意識と受け売りでない文章表現は伝わってくる。情報源も丁寧にまとめてはいるのだが、どうしても食い足りない感じが残ってしまう。原則論に終始し、具体的な課題を掘り下げて追求していないからであろうか。

 

10

紺野美奈子

東京ディズニーリゾートにおける環境問題

 

問題点の絞り込みが「TDLのゴミ排出量」といった貴重な資料提示をもたらした。あたかもTDLの対応を通して、園内における利用者のゴミに対する希薄な意識が透けてみえてくるようでもある。さらに、「公害の海」から転換した背景や、浦安市とオリエンタルランド社とのギブ・アンド・テイクの双益的な結びつきを明らかにしている。作成者が最後に「大人だまし」と指摘していることから類推すれば、東京ディズニーリゾートは、社会における種種雑多な矛盾が凝縮されている場所なのかもしれない。ただし、おそらく参考文献の中でなされているであろう見解と作成者のそれとの棲み分けをはっきりさせてほしかった、という思いがした。

 

11

白岩千代

東京ディズニーランドにおけるホスピタリティ

 

TDLによるバリアフリーとホスピタリティに対する徹底した取り組みと、それでも生じる課題を明らかにしている。「ゲストアシスタントカード」が、サービスの裏をかく悪用者のために廃止に追い込まれた過程や、ホスピタリティを植え付けるための厳しい研修や教育をめぐる記述は大変興味深い。そして、作成者はソフト面を担う「人」の大切さを強調し、程度の差こそあれ、それが一般の社会にも適用できるのではないかと提案している。TDLを支える一側面に焦点を当て、そこから独自の考察を行った好レポートである。不謹慎かもしれないが、今後は、大学のサービスに従事する者もTDLの「ヒューマンコントロール」のやり方を吸収しなければならなくなるのでは、と思わされた。

 

12

菅原径子

映画の変化〜シネマコンプレックスについて〜

 

シネコンの説明を丁寧に行ってはいる。読み進めると、その成立の経緯や背景、機能や魅力の概要に知ることができる。しかし、例えば、シネコンが既存の映画館に及ぼす影響について、従来の映画館が果たしてきた役割や、現段階での生き残りないしは撤退戦略について、具体的に掘り下げてほしかった。また、最後に少し言及されている日本の映画産業の推移についての記述があってもよかったのではないか。

 

13

松本千穂

競馬はレジャーと成り得るのか

 

競馬に対する並々ならぬ愛着は伝わってくる。しかし、例えば、人気タレントのキャンペーンキャラクターへの起用が本当に女性ファン来場者数を増加させル結果となったのであろうか。また、「ファンが参加し、何らかの特典が得られる」というのは競馬をめぐるキャンペーンに限られたことではないだろう。紹介されているようなJRAのファン獲得戦略のねらいは何か、さらに、そもそもレジャーとギャンブルの関係性を作成者はどう捉えているのだろうか。

 

14

川平菜菜子

石垣島トライアスロンに見る大型地域イベント

 

石垣島トライアスロンの全貌を知ることができる。関連のインターネット情報にもよくあたっている。読了すると、大会開催をめぐる島民、参加者の協力や行政、スポンサー企業等の果たす役割が包括的に理解できる。しかし、情報をもっと圧縮して提示してほしかった。提示情報の合間に書かれている作成者の見解をもっと前面に出してほしかった。この大会のどの側面に焦点を当てたのかが見えてこない。いずれにせよ、その契機も含め、トライアスロン以外の他の種目にも適用可能なスポーツイベントのモデルケースといえるかもしれない。

 

15

松岡真希

1の展望〜たばこ問題という視点から〜

 

F1全体を取り扱うのではなく、たばこ問題を取り上げた着眼点がいい。問題設定の成功で、その後の展開が大変興味深いものとなった。まさにFCTCの成立が「たばこ業界をパトロンとしてきた」F1の運営を直撃したことがよく分かる。表にしても英文のインターネット情報をもとに作成した意欲を評価したい。読み進めると、EUとFIAの対立構造、「禁煙補助剤のメーカー」と「BMWウィリアムズ」との契約、グランプリ開催国をめぐる駆け引き、さらにはFOA絡みの運営の見直しなど、興味は尽きない(上海が開催地に名乗りをあげているという事実からも中国の底力がうかがえる)。作成者が指摘する、「スポーツマンシップというスポーツたる魅力の維持と、資金面での調整」がまさに問われているのであろう。テーマ設定、情報の取得と整理、解釈と独自の見解の提示がよくなされている好レポートである。

 

16

小田桐藍子

発泡酒増税に伴うマーケティング戦略〜消費者はビール業界に何を求めるか?〜

 

まず、日本における歴史と麦酒を照合させた表の作成、酒税法の成り立ちとその内容、10種類11品目に及ぶ酒類の把握と発泡酒の位置づけ、発泡酒の原料の多様性を押さえた上で、「発泡酒戦争」に至る経緯や背景に踏み込んでいく。例えば、スーパードライが相対的に発泡酒に一番近いビールという貴重な情報提供もある。また、大手4社の凄まじい競争ぶりも伝わってくる。発泡酒を多面的に把握したいという作成者の意欲が溢れる好レポートである。しかし、残念ながら全体を通して読んだ場合に、1と2の内容の重さに比して、本論となるべき3や「おわりに」が物足りなくなってしまった感は免れない。作成者が考えるところの発泡酒の今後を大胆に予測してもよかったのではないか(なお、個人的には「黒発泡酒」でもというのだろうか、最近のキリンの「生黒」に惹かれている。黒ビールのような発泡酒は今後、消費者に受け入れられるのであろうか)。

 

17

富樫かおり

亜麻色の髪の乙女は世代間のギャップを埋めるか〜昨今のカバーブームに見る余暇としての音楽〜

 

魅力的なタイトルではある。終始、作成者の問題意識が散りばめられている良さもある。しかし、どうも論旨一貫という感じがしない。例えば、作成者のいう「高齢者」世代はどのあたりの年齢層をいっているのか(56歳以上?)はっきりしない。また、パソコン利用率を見る限りは、「インターネットを利用した商品の提供」が将来的にはともかく、現段階で高齢者の「市場開拓」につながるとあっさりいえるのであろうか。このテーマをめぐり、若者、中年、高齢といった各層がどのような受け止め方をしているのか、言及はあるものの、記述そのものが混在した書き方となってしまっている。敢えて推測すれば、20代と中・高年層という二つの層に分けているようである。しかし、10代さらにはこの世代の中・高・大学生の受け止め方の違いなどどう捉えればいいのだろうか。カバーブームを担っているのはどの世代なのであろうか。

 

18

中村祐司

(担当教員)

北朝鮮をめぐる政治情報と観光情報のギャップをめぐる考察

 

 

 

 

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