2003/7/2
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佐藤剛司
余暇政策論レポート
子育てと余暇
〜保育施設現状と今後のあり方を模索する〜
構成
イントロダクション
公立保育施設
私立保育施設
その他の保育サービス
現状の保育施設の問題点
今後の保育施設のありかた
イントロダクション
1.1私の場合
私は学生でありながら、家庭を持っている。社会人になって間もないため。所得も高くはない。そのため、自分の所得だけで生活と、学費の両方をまかなうことは難しい。
また、雑誌でからの情報だが、子供を持つことのデメリットとして、子供を持つデメリットの最多数の割合をしめるのは、「夫婦の時間が少なくなる」ということだ。実際、私の場合も、夫婦二人の時間というのはほとんどもてないのが現実である。
夫婦の共有する時間を生み出す施設として、保育施設にスポットを当ててみた。また、経済的な負担という視点からも保育施設をも見ていきたいと思う。
1.2早稲田大学地域開放型保育所「ももちゃんナーサリー早稲田ルーム」のオープン
ところで、2003年4月7日、早稲田大学に早稲田大学地域開放型保育所「ももちゃんナーサリー早稲田ルーム」が開設された。これは、早稲田大学が、早稲田大学の学生からのニーズにこたえて設立したものである。早稲田大学から近く、学生に利用しやすい、また 、地域との接点が持てるようにと早稲田大学地域開放型保育所としたそうだ。早稲田大学ではこの保育所の設立について次のように述べている。「本格的少子高齢化の時代を向かえ、社会人入試などが当たり前の制度となり、各大学院・エクステンションセンター・各学部への学士入学などで、大学に戻ってくる卒業生も増えてきました。近い将来、夫婦学生や子連れ学生が特に珍しい存在ではなくなっていくでしょう。
一方で、妊娠や育児で学業をあきらめる理由のほとんどは、良質で保育時間に融通の聞く保育施設の少なさが、原因となっています。
育児を担う男性も増え、現在の学生は想像以上に多様化し、かつ多様性は早稲田の命です。保育所は、本学がその先進性を実証する場ともいえます。
このような状況は、本学は、早稲田大学が生涯学習機関として発展していくために、2003年4月7日から地域開放型の保育所をオープンします。
まず、現在の硬直化した公立保育所とは違い、早朝や夜間などの保育時間の融通が利き、ゼロ歳児から預かること、また、駅からも大学からも近く、かつ大学関係者でなくても利用できる「地域に開かれた良質な保育所」であることを基本とし、将来は区や戸の補助金が得られる「東京都承認保育所」の承認を目指していきます。」(早稲田大学ホームページより、2003/6/4現在)
私は、これを特ダネ(フジテレビ 月〜金 8:00〜放映中)の特集で見た。自分と重ね、とても興味を持ちこのテーマでレポートを書きたくなったきっかけでもある。早稲田大学地域開放型保育所ももちゃんナーサリーの本文より、@)公立の保育施設が硬直化しており、ニーズにこたえたサービスが提供できていると言い切れない現状があること。A)子供のいる学生など、学生の多様化が進んでいる。ことが読み取れる。この、レポートでは、特に@の問題を取り上げていく。
公立保育施設
私の住む町では、公立の保育施設は、2箇所の保育所があり、私立の幼稚園はない。そのためここでは、公立の保育施設を、私の町の保育所を例にとって話を進めていく。
2.1公立保育所の入所基準と定員
公立保育所では入所基準により、入園できるものを制限している。
入所基準は次のように定められている。(国分寺町ホームページより 2003/06/04現在)
保育園へ入園できる場合は、児童の保護者のいずれもが次のいずれかの自由に該当する場合であって、かつ、同居の親族その他の者が保育をすることができないと認められた場合。
・昼間に居宅外で労働することを常態としていること
・昼間に居宅害で当該自動と離れて家事以外の労働を常態としていること
・妊娠中であるか、または産後間もないもの
・疾病にかかり、もしくは負傷し、または精神もしくは身体に障害を有していること
・長期にわたり病気の状態または精神もしくは障害を有する状態にある同居の親族を常時介護していること
・震災、風水害、火災その他の復旧にあたっていること
・その他町長が上記の自由に類すると認める状態にあること
ここから見て分かるように、公立の保育所に入所するには、何らかの理由により、両親、または、同居者が保育をできない状態にあるということが前提になっている。一方で、保育所に入所できる、児童の入所定員数にも限りがある。そのため、両親が共働きでも、入所できない場合もある。また、年度の途中から、共働きの状態になる夫婦などには、入所定員に達しているため、保育所に入所できないなどということもある。ここに、公立保育所の1つの問題点がある。
2.2公立保育所の料金
公立の保育所では料金が、児童の年齢、世帯の所得によって異なった料金が定められている。
まず、世帯の所得による区分について触れる。公立保育所の料金は世帯の所得によって5つに区別されている。
生活保護による被保護世帯(探求世帯を含む)
市町村民税非課税世帯
市町村民税課税世帯
所得税40,000円未満の世帯
所得税40,000〜140,000円の世帯
所得税140,000〜370,000円の世帯
所得税370,000円以上の世帯
次に、これらの区分による公立の保育所の料金を見てみる。
区分が1の場合 0円
区分が2の場合 5,000円〜
区分が3の場合 12,000円〜
区分が4の場合 20000円〜
区分が5の場合 24,000円〜
区分が6の場合 26,000円〜
区分が7の場合 26,000円〜
となっている。また、0歳児が、各年齢の中で最も保育料が高く、5歳までは次第に料金が低くなる。5歳以降は卒園まで料金は変わらない。これを見て分かることは、公立の保育施設は、世帯の所得に応じて料金が設定されているため比較的所得の低い世帯でも入所を検討しやすいということである。
公立の保育施設をどう世帯から複数人で利用する場合、「減免特例制度」が適用される。これには経済的負担を和らげる働きがある。また、この減免特例制度は、兄弟が異なった公立の保育施設に入所している場合でも、同じ市町村内であれば適用される、という大きなメリットがある。減免特例制度は国分寺町では次のように定められている。同一世帯から入園が二人の場合、2〜4階層であれば年齢の低い方、5〜7階層であれば高い育児の保育料が半額になります。同一世帯から入園が三人の場合、2〜4階層であれば最も年齢の低い児童の保育量が10分の1、第二子が半額、5〜7階層であれば最も年齢の高い児童の保育量が10分の1、第二子が半額になります(国分寺町ホームページより 2003/06/04現在)
2,3公立保育施設の開所時間と休日
公立の保育施設では、開所時間、休日などが厳密に定められている。開所時間については、7:00〜18:00となっている。延長保育は月極3,000円で可能だが、延長保育の時間は18:00〜19:00までと短く、それ以上の延長はできない。また、休日についても、土・日・祝祭日、その他、正月、盆、彼岸など一般企業が休みとしている日は休みとなっている。そのため、公立の保育施設の利用者は、夜夫婦の時間を持つために子供を預けることはできない。加ええて、両親共にサービス業に従事している場合などは、保育施設が休みでも仕事に行かなくてはならないが、公立の保育施設に子供を預けて出勤するということも難しい。ここにも硬直的な公立の保育施設の現状が見える。
2.4公立保育施設の教育と行事
公立の保育施設では、基本的な生活習慣を身に付けること。遊ぶことを基本的な教育方針にしている。行事も春の遠足、保育参観、七夕祭り、涼み会、ぶどう狩り、運動会、親子卒園旅行、クリスマス会、餅つき会、マラソン大会、人形劇鑑賞会などその季節にあったことを行っている。大体つきに1回程度の行事を催しているようだ。
3私立保育施設
3.1私立保育施設の入所基準と定員
私立保育施設の場合、入所基準はその保育施設によって様々である。たとえば、進学幼稚園など、私立小学校への入試を受けることを前提とした保育施設などでは、幼稚園入試を課すところもある。抽選や、定員達し次第締め切りというところもあるようだ。定員についてもその保育施設の規模により決められているようで、施設によってばらつきがある。
3.2私立保育施設の料金
多くの場合、幼稚園(3歳以上で入所可能なところが多い)では3万円前後。保育所では、その利用時間や、年齢によって変わっているが、0歳児を預ける場合、3〜5万円というのが平均的な料金となっている。
私の住んでいる国分寺町では、行政による幼稚園就園奨励制度というのがある。公立の保育所に入園希望を集中させない。公立保育施設と比べ、割高な、保育料金の経済的な負担を暖和する等の意図も読み取れる。しかし、実際には私立幼稚園教育の活性化を目的としていると、文章で公表されている。この制度では、2段階の補助が受けられる。まずは、幼稚園に入園するときに受けられる補助だ。これは「国分寺町地域改善対策幼稚園入園支度金等交付」というものだ。これは幼稚園教育の向上を図るために幼稚園に入園し、または幼稚園の新学期を迎える際に必要とする経費の一部を補助し、その就園を援助するための補助金であり、経済的に幼稚園に就園することが困難なものを援助する。幼稚園入園支度金の額は4,500円とする(国分寺町ホームページより 2003/06/04現在)次に、「国分寺町私立幼稚園就園奨励補助印交付」というものだ。これは、2.2で扱ったのと同じような区分があり、世帯の所得に応じて5つの階層が区分され、その区分と第なん子かに応じて補助金額が決まっている。金額については、7,000〜220,000までとなっており、第一子より第三子の方が補助金の金額が大きくなっている。また、「国分寺町幼稚園第二子など保育料減免事業補助金」が設定されており,第二子以降の保育料金の補助をしている。目的として、国分寺町では次のように述べている。
3.3私立保育施設の開所時間
幼稚園では、8:00〜14:00というのが私立、公立共に一般的である。また、午前中で終わる日もあり、そのような日は12:00までとなっている。私立幼稚園に同時に二人以上在園する場合の第二子以降の保育料の一部を軽減して、保護者負担の暖和を図ることを目的とする。金額については、生活階層区分と私立保育施設の保育料金に応じて定められており、4,400〜117,500に設定されている。
3.3私立保育施設の開所時間
ところで、保育所では公立保育所とは異なり、24時間対応、24時間開いているというところもある。しかし、多くの保育所では基本的には8:00〜18:00、19:00と定められている。24時間対応というところでも、前もって予約が必要であったり、いつも24時間見てくれるというわけではなく、不便を感じる人は多いのではないだろうか。
3.4私立保育施設の教育と行事
私立保育施設では、公立保育施設で行っている行事はもちろん行われている。それに加え、私立保育施設では独自のカリキュラムや行事を行っているところが多い。たとえば、ピーターパンという保育施設では、次のようなことを行っている。戸外遊び・遠足・苺摘みなど充実した園外保育、月極のお子様には一人一人のアルバム作成、月極保育のお子様は月1回の遠足、ネイティブ講師による英語の教室(English class)、専任講師による造詣教室、幼稚園・保育園・塾などへの送迎。こうしてみると公立保育施設に比べとても幅広い利用が可能ということは一目両全である。
4.その他の保育サービス
施設に子供を預けるという保育方法のほかに、家にシッターを呼んで保育をしてもらうという形態がある。ここでは、ベビーシッター会社も保育施設のひとつとして扱っていこうと思う。
4.1ベビーシッター資格認定制度
ベビーシッターには資格認定試験というものがある。この目的は「ABA財団法人ベビーシッター協会」によって次のように定められている。「多様な保育サービスが求められる中、在宅保育サービスがより社会的に認知され、高い評価を得るために、一定の要件を満たすベビーシッターに「認定ベビーシッター」資格を付与するベビーシッター資格認定制度を確立することにより、ベビーシッターに対する信頼性をいっそう高め、ベビーシッター及びベビーシッター事業の質的向上並びにベビーシッターの社会的確立を図ることを目的とします。」この資格は国家試験とはなっていないが、ベビーシッターの国家試験事態が存在しないため、ベビーシッターを利用する場合に大きな安心感につながることはまちがいないだろう。
3.1利用料金
公立のシッター会社が存在しないため、ベビーシッター会社によって様々であるが、平均的には一時間1500円前後となっている。夜間利用や、兄弟との利用によって割引や割増などがあり料金は異なる。但し、多くのベビーシッター会社が、2時間・3時間以上の利用を規定しているため、一度の利用に3,000円〜4,500円程度の負担がかかるということになる。
5.現状の保育施設の問題点
5.1公立保育施設の問題点
料金は比較的安く、利用しやすいが時間的に大きな制約がある。そのため、サービス業に従事している者や、夜夫婦の時間を作りたいといった場合には利用できない。前者の場合は時間の都合上私立の保育施設に依存するしかないが、後者の場合、公立保育所を利用すると、夜出かけるときなどはベビーシッターを利用したり、普段利用している施設とは別の夜間も開所している託児所を利用するなどといったことが必要になる。もちろんその場合も普段の保育料金とは別に経済的負担を追わなくてはならないことも念頭に置かなくてはならない。
また、数や定員に限りがあり希望しても入所できないこともある。そのため、公立保育施設に入所できなかった、低所得層では、保育料金が生活を脅かす可能性もないと言い切れない。
5.2私立保育施設の問題点
料金が公立保育施設と比べ比較的割高に設定されている。また、世帯の所得に関係なく一定の保育料金を定めているところが多いため、低所得世帯では、私立保育施設を利用することが困難な場合もある。
5.3シッター会社の問題点
ベビーシッター自体がまだ認識が低いものであり、利用方法も分からない場合がある。また、都市から離れたところでは利用することが難しいこともある。ベビーシッター会社がどこにあるのかが分からないため、利用しにくい。料金設定が分かりにくかったり、1度の利用でも比較的大きな金額が必要になる。利用時間に、最低何時間以上という規定があるため、ちょっと病院へ行きたいなどというときには利用しにくい。
今後の保育施設のありかた
私が最も希望したいのは公立保育施設の増設だ。しかし、少子化が進む現在では難しいことだろう。なぜなら、公立保育施設の増加により、私立保育施設が閉園に追い込まれるということも考えられるからだ。そこで提案したいのが、より強力な行政によるバックアップだ。特に低所得世帯の補助をもっと強力にして欲しいと思う。たとえば、公立保育施設の料金のように、世帯の所得と、利用している保育施設の料金によって、申請のある、全ての人が保護を受けられる環境が欲しい。そして、私立の保育施設に入所しながら、公立保育施設と同じような低料金で利用できれば、もっと私立保育施設が利用しやすくなるだろう。
また、どんなに田舎へ行っても、夜仕事をするという人は、少数でもいるだろう。また、一般的な、17:00に仕事が終わる企業に勤めている者にとっても、夫婦の時間が持てるのは夜になるだろう。そのため、もっと夜間利用可能な保育施設が必要とされていると思う。その場合も、普段利用している保育施設であれば安心して子供を預けることができるであろうし、そのために払わなくてはならない料金も他の保育施設を利用するよりも、利用しやすい料金になるだろうし、ならなくてはならないだろう。
シッターはまず何よりもその認識を強めなくてはならない。ベビーシッターというと外国の話のように感じる人も少なくないと思う。また、ちょっとだけという利用に対応することも必要だと思う。また、こういったシッターは普段育児をしている者が病気にかかったり、事故などで一時的に体が不自由であったりという場合にとても利用しやすいシステムである。しかし、そういった場合、長時間での利用になるため経済的な負担が大きくなりすぎてしまう。そのため、長時間利用の場合の割引サービスなども大切になるのではないだろうか。
私は、今回のレポートのために様々なことを調べていく過程で、まず公立保育施設の硬直化したサービスを、現在の多様なここのライフスタイルに合わせたサービスを提供できる施設にすること。また、行政による私立保育施設利用者、特に低所得世帯へのより強力なバックアップが必要であることを肌で感じ取ることができた。しかし、これらが克服されれば、万人がより利用しやすい保育サービスが生まれてくると思う。
参照ホームページ
国分寺町HP
http://www.town.kokubunji.tochigi.jp
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株式会社 キッズコーポレイション
ABA財団法人ベビーシッター協会