konno030702  余暇政策論 レポート

東京ディズニーリゾートにおける環境問題  k010120 紺野 美奈子

 

1、             はじめに

 

東京ディズニーランドは1983年の開園以来高い人気を誇っており、売上高も他のテーマパーク施設と比べても圧倒的な数字である。また、休日の混雑ぶりは、すさまじく、一つのアトラクションに乗るために一時間待ちということももはや常識的なことである。それだけ混むにもかかわらず、リピーター率が9割というデータが示す通り、東京ディズニーランドは『また来たい』と思わせる魅力があるのだ。そして、その魅力とは、非日常的な夢の国という空間演出や、園内にはゴミ一つ落ちていないという徹底した清潔感などがあげられる。園内にはカストディアールと呼ばれる清掃係がいて、ゴミがおちていたら即座に拾い集めるのだ。彼らのおかげで園内はいつも清潔に保たれている。しかし、その彼らが拾い集めたゴミはどこへ行ってしまうのだろう。我々の見えないところで処理されていることなので、今まで考えもしなかったが、あれだけの人がいるのだからおそらくゴミの量も膨大であろう。

 

そしてまた、渋滞の問題もあるだろう。たまに行く私たちには関係ないことかもしれないが、そこで暮らす人々は、どう思っているのだろうか。

日本最大のテーマパーク、ディズニーランド。その夢の国を一歩でたらどんな現実が待っているのだろう。ディズニーランドの影の部分をこれから見ていきたいと思う。

 

東京ディズニーランド

開業日

1983415

面積

80.1ha(テーマパークエリア48.3ha・駐車場24.1ha・その他7.7ha)

経営・運営

株式会社オリエンタルランド

                                    

順位

テーマパーク名

所在地

売上高(億円)

1

東京ディズニーランド

千葉県

1,793

2

ハウステンボス

長崎県

396

3

シーガイア

宮崎県

186

4

志摩スペイン村

三重県

160

5

スペースワールド

福岡県

92

6

倉敷チボリ公園

岡山県

89

7

サンリオピューロランド

東京都

74

8

日光江戸村

栃木県

60

9

レオマワールド

香川県

51

10

サファリパーク

和歌山県

40

                   

    

 

 

←帝国データバンク『テーマパーク売上ランキング2000』より

 

 

2、             ゴミ問題

 

ディズニーランドには、ファーストフード店のようなところや、ワゴンと呼ばれる飲食物を売る施設が数多く存在する。そこではたいてい紙容器に包まれて食べ物が出てくる。効率性から考えると使い捨ての容器を使うことは否めないことなのかもしれない。そこで、せめて発泡スチロール製容器の使用を廃止し、紙コップについても効率的な分別収集を検討し再資源化を試みている。また少しずつではあるが、陶器の製品を導入し始めている。

 

ディズニーランドにいるとゴミが多いとは感じないだろう。冒頭でものべたように、カストディアールがこまめに掃除を行っているため、来園者はゴミがあふれている状態をみることはない。よってディズニーランドにはゴミが無いかのような錯覚に陥るが、そんなことはなくゴミは年々増えつづけている。(図1参照)実際、ディズニーランド側も最初は自己処理をしていたのだが、増えつづけるゴミに対処できなくなり平成七年から浦安市の新クリーンセンターにゴミ処理を任せている。しかしこのクリーンセンターはオリエンタルランド社のゴミを受け入れることを前提とした上で、ゴミの受け入れ量を過剰に見込んで大きめのつくられたのではないかとの疑惑も浮上している。(つまり、オリエンタルランド社のために市民の税金が余分に使われたのではないか、ということである)現在ではイクスピアリやディズニーシーから排出されるゴミもこのクリーンセンターに任せている状態だという。負担金としてオリエンタルランド社は15億円を市に支払っている。だが、そもそもゴミ処理というのは企業の自己責任で行われるものではないか。自己処理できる範囲にまでゴミの量を減らす対策が早急に求められる。

【図1】TDLのごみ排出量の推移(年々増加するゴミの量)

 

可燃ごみ

不燃ごみ

粗大ごみ

有害ごみ

ペットボトル

総数

平成8年度

7,019.74トン

40.29 トン

252.51トン

12.87トン

0

7,325.41トン

平成9年度

7,063.67トン

62.52トン

325.02トン

11.76トン

1.77トン

7,467.74トン

平成10年度

7,394.57トン

49.17トン

241.54トン

12トン

37.48トン

7,734.76トン

 

 

3、             交通における問題

ディズニーランドの開園に伴い、車で訪れる人も多くなった。渋滞にはまってうんざりした経験をもっている方もいることだろう。最近ではイクスピアリやディズニーシーの影響でさらに車の数が増えているようだ。オリエンタルランド社は、増えつづける車の量を抑えるためにシャトルバスの運行やディズニーリゾートラインの開業などの措置をとっている。また鉄道利用者へのプレゼントなども行っているようだが、そのことはあまり知られておらず、電車で行きたいと思わせる効果は特にない。

 

また、渋滞緩和をはかるために、高速湾岸線と結ぶ道路として舞浜ランプが建設された。しかしこれは市民の意見を聞くことなく、浦安市とオリエンタルランド社との一方的な決定で建設された。この道路のおかげで交通の便はよくなったかもしれない。だがその後の調査によると、大気質(二酸化窒素、浮遊粒子状物質、ベンゼン)、騒音、振動、交通量は環境基準を超える結果であったことが判明している。特にベンゼンは発ガン性物質が大きいといわれており、市民の健康を脅かしている。

 

オリエンタルランド社はこの実態を重く受け止め、来園者だけのことばかりではなくそこに暮らす人々にも配慮していくべきだ。いっそのこと自家用車での入園が出来なくなるような、それくらい思いきった政策が必要なのではないだろうか。

 

4、             浦安市とオリエンタルランド社

 

ゴミ問題、車問題と見ていくうちに、浦安市はオリエンタルランド社に頭があがらないようにみえる。両者は一体どんな関係なのだろう。

 

今のディズニーリゾートがある場所は、もともと公害の海と呼ばれる場所であった。工場廃水が流れ込んでしまいそこでの漁業も不振であったころ、オリエンタルランド社はそこを買い取り、埋め立てて、ディズニーランドをつくっていったのである。それができるまで浦安市は首都圏のベッドタウンというくらいのイメージしかなかったのだが、一気に東京ベイエリアのアーバンリゾート地へと生まれ変わったのだ。ディズニーランドがある浦安市として地名度も一気に上がっただろう。浦安市にとってオリエンタルランド社は、もてあましていた土地を買い取ってくれ、開発をし、どこにも負けないようなリゾート地へと変えてくれた、いわば救世主的な存在なのであろう。そのうえ、オリエンタルランド社は、舞浜駅周辺の都市開発にも一役かっている。ディズニーランドのイメージを保つためという理由のためでろうが、駅舎と駅前ロータリーの整備費として約二十億円を、パークのゲートウェイ建設費及び来客用バスターミナルの改修整備費に約二十六億円を投資した。また街路樹としてやしの木を七百本植え、街灯七十個も取り替えた。そして舗道の張替えを行い、信号や歩道橋の色の塗り替えも同社が負担して行った。このようにオリエンタルランド社は、市に貢献しており、もはやなくてはならない存在なのだろう。こうした負い目があるから市はオリエンタルランド社の顔色をうかがうようなことになるのだろう。だが、やはり市は市民のことを一番に考えるべきである。特に環境問題は今後の重要課題である。市はもっと強い態度にでるべきだし、いつまでもオリエンタルランド社のいいなりになるべきではない。

 

やはり一番大切なのはそこで暮らす市民なのだ。もっと市民の事を考えた政策を期待したい。

 

5、             終わりに

 

東京ディズニーリゾートはこの不況下でも元気のある数少ない成功企業だといえる。だが、周りの目もその経済効果や経済戦略ばかりに行っているようにみえる。利益、集客率や効率性を重視しすぎて環境にたいしての配慮がおろそかになっているように思う。また他の大企業は環境への取り組みを大々的にアピールしているのだが、ここではそういったこともみられない。確かに環境対策というのは、費用がかかる割には、利益はでないので企業としてはやっかいなことかもしれない。だが21世紀を生きるものとして環境問題は避けて通れないことなのだ。様々な問題にたいして真摯に受け止めていってほしい。

 

最後に個人的な感想として、やはりディズニーランドだってゴミ問題はあるんだな、魔法でゴミを消したりなんてできないのだよなと、そんなあたりまえのことを実感した。ゲストとしていく我々にとっては、そんな現実的なことはあそこではないのでは・・・といった錯覚に陥ってしまう。というより現実のことをあまり考えない場所である。だから改めて現実と向き合うといろいろなことが再発見できておもしろかった。市とも密接にかかわりあっているということも予想外のことだったので少し驚いた。夢の国の舞台裏では結構、現実的にならざるを得ないのだなあと思った。ディズニーの魔法はあくまでも園内だけのものであり、まさに「大人だまし」の場所なのである。

 

 

<参考文献>

ディズニーリゾートの経済学   粟田房穂  東洋経済新報社

 

<参照サイト>

http://www.city.urayasu.chiba.jp/toshimasu/html/

 

http://www.h4.dion.ne.jp/~urakyou/zisseki4.htm

 

http://www.tokyodisneyresort.co.jp/

 

http://www.bea.hi-ho.ne.jp/simin-net/gikai/gikai11.htm

 

http://homepage1.nifty.com/sweeper/index2.htm