kikuchif030702 「余暇政策論」レポート

テーマパーク生き残り戦略〜立地条件と集客効果〜      k010117 菊地史子

 

 現代において、「余暇」を考えてみたとき、さまざまなものがある。家族で楽しむ「余暇」もあれば、恋人と楽しむ「余暇」もある。また、一人で楽しめる「余暇」もあり、今の世の中には、余暇を過ごすものや場所があふれているように思える。私はその中でも、さまざまな人が集まる場所、テーマパークに注目し、その昔と今を追い、現代においてテーマパークとはどのような存在で、今後どうなっていくのかを考えてみた。

 

そもそも、テーマパークとはどのような目的で作られたのか。テーマパークの意義は「あるテーマに沿って、レジャー施設のレイアウト、建築様式、造園、娯楽の内容、従業員のサービス、販売する商品などごみ箱に至るまで、それぞれの要素のバランスが保たれ、調和の取れた世界を構成する」ものである。かつて、日本が高度成長をしていた時代、テーマパークが乱立した時期があった。1988年から1990年前半にかけてのことである。バブル経済時期と同じくし、テーマパークラッシュと呼ばれている。この間、80園ものテーマパークが建てられた。なぜ、これほどまでに建てられたのかというと、日本の経済発展に伴い、人々の生活に潤いが生まれ、観光産業が脚光を浴びるようになってきたことが要因として挙げられる。また、各市町村が経済の活性化を目指して観光産業に着目、その一方で企業も日本経済のソフト化により経営の改革を迫られてきたこともあって、経営の多角化と再構築を図るために、観光産業に参入してきたといえる。この自治体と企業の思惑が一致したのが、観光産業であり、テーマパークであった。(http://www5.ocn.ne.jp/~kjc/tp1.htmから要約)しかし、現在、そのような背景で作られたテーマパークはどんどん姿を消しつつある。黙っていても、客が集まってきた時代とは違う。また、不景気のあおりを受け、高度成長期のバブルの時期と違って、人々が外で資本を使うのに慎重になり、自分で価値を見出したものにしか資本を費やさなくなってきた。

 

このような厳しい状況の中、誰もみすみすテーマパークをつぶしたいわけではない。しかし、どうしてもつぶれるところとそうではないところというのは出てきてしまうのである。その成功しているところというのは本当にごくわずかである。その成功しているテーマパークに共通しているのが、第一に「ブランド」がしっかり保持されているということである。そこにしかない世界観に対する魅力、そこでしか味わえない雰囲気、そこでしか見られないもの、など、限定されることにより、その場所に行きたいという消費者の気持ちを高め、何度でも足を運びたいと思わせるような場所でなければならない。また、消費者の飽きのこないような間隔で、新しいイベントや世界を広げるということも大切である。開業三年目がそのタイミングだといわれている。その後のマイナーリニューアルですら、リピーターにとってはうれしいことかもしれない。そしてそのリピーターが新たな集客効果をもたらすのである。

 

第二に、立地条件がある。これはテーマパークを建てるときの基本的な条件である。まず、観光地に隣接しているところというのは自然と人が集まってくる。必死に宣伝しなくても客を引っ張りこめるということである。また、交通アクセスがしやすいところも好条件である。東京近郊にある、北関東自動車道等の高速道路ネットワークの範囲内にある場所などが好い場所である。しかし、多少立地条件が悪くても、そのパーク自らが発する魅力によって、立地条件の悪さをカバーしている場合もある。

 

そして、ターゲットを絞るということも大切な要因である。ターゲットを絞ることによってイベントの内容などもある程度絞れてくるし、イメージや雰囲気なども作りやすい。宣伝効果も作りやすい。逆に言ってみれば、ターゲットを絞らず、誰がきてもいいようにということを売りにしても結局は中途半端に終わってしまい、そのこと自体がパークの魅力につながるということはないのである。

 

これらのことを踏まえた上で今後、テーマパークはどのような進路をたどればよいのだろうか。まずテーマパークというものの現代人の受け止め方を考えてみたい。新しい施設を作り、新しいメッセージを発信すれば客が集まるという時代は終わった。テーマパークに対する意識が成熟化し、自分にあったものだけを求めるとしたら、現存するテーマパークの大半は似通ったものとして認識されてしまうし、わざわざ足を運んでいくようなところではないと位置付けされてしまうだろう。そこで大切になってくるのが「ブランド化」を図るということである。ほかの場所とは違う価値があり、専門性がありながらも身近に感じるようなユニークなものであればあるほど、他の場所との差別化が図れるだろう。ブランドの重要性はリピーターが作れるかどうかである。リピーターは新たに客を運んでくる。

 

「ブランド化」するのに一番手っ取り早いのが施設における差別化である。しかし、施設というものは作ったその日から老朽化が始まる。どんなにメンテナンスしても施設自体が持つ鮮度は低下すること、すぐに新しい競合がより強いインパクトで登場する事を前提にビジネス戦略を考えるべきである。そのためには施設への投資だけでなく、人々の意識に対する働きかけも重要なことである。常にリピーターへの鮮度の高い価値を提供できる構造を工夫し、それがユニークであればあるほど競合との差別化を図ることができる。(http://members.aol.com/yasuharaoffice/brand/sub2.htmから要約)

 

さて、現在のブランド化のポイントは温泉のようである。今の世の中に注目されていることといえば「癒し」である。身近に感じられる「癒し」の効果としての温泉が効果が高い。それを実現に導いたのが、温泉採掘技術の向上である。可能にしたのは、地中2,000m近くまで掘削可能な大型機械の導入。米国での石油掘削現場の深度が2,000m級から3,000m級になったため、そこで使われなくなった掘削機械が中古市場に格安で出回り、温泉掘削業者の手に移ったことが背景にあるらしい。温泉掘削が "宝探し”から "百発百中" の時代へと変化した。(http://www.dokodemo-bessou.com/what_onsen_6.htmから引用)

そのことから、今やその温泉ブームに便乗して、テーマパークにどんどん温泉が隣接されている。

 

私の身近にあるテーマパークでの遊園地を例にあげてみる。かつてはあの「おや〜まゆ〜えんち〜」のCMで有名で繁盛していた小山遊園地はいまやその面影はなく経営は傾き、閉園の危機を迎えていた。そのため、温泉施設を敷地内に作ることにより、集客効果を高めようとしている。今はその効果を受け、客は増加の方向にあるらしい。しかし、肝心の遊園地のほうは、アトラクションなどの施設の老朽化が激しく、また、古臭い感が否めないため、そこまでの客の増加は認められないのが現状である。また、温泉ができたことにより、逆にターゲットの幅が広がってしまったのではないだろうか。温泉には地元の家族連れや老人、それこそさまざまな層の人間が訪れるだろう。遊園地のほうはどこにターゲットを絞るのか選択を迫られているのではないか。一刻も早い処置が必要のように思える。

 

私には、遊園地に温泉を隣接させるのは、話題性としては有効かもしれないが、長期的な目で見るとそれほど有効ではないように思える。温泉の客は遊園地の直接的な客層にはつながらないからである。そこまで経営が破綻してしまっているなら、いっそのこと温泉だけに絞って、地元客を地盤としてテーマパーク的なスパリゾートにするほうがよっぽど有効なように思える。実際、都心のほうではそのようなスパリゾートが最近多く建てられている。会社帰りの人々のための都心の癒しの空間ということがコンセプトであるらしい。しかし、これも価格の面からすると、とてもじゃないが会社帰りに一風呂浴びるというような金額ではないらしい。そのようなことを考えると、やはり話題性だけに頼った一過性のものになってしまう恐れがある。やはり、メインターゲットが利用しやすいということを一番に考えなければ、どこに何を作ったとしても長期的な営業は望めないように思う。

 

最終的な結論として、私が言えることは、一番重要視されるのは第一にそのテーマパーク自体の目的とメインターゲットの存在であると思う。メインターゲットを絞ることによって、そのテーマパークの世界観というものが絞れてくる。そのことによって、宣伝効果もしやすくなり、イベントの構成も立てやすくなる。第二に、前にも述べたとおり、そのテーマパーク独自のブランドを作るということだ。身近で親しみやすい、それでいてどこにもないようなもの、実際に考えるととても難しいことだが、それさえあれば向かうところ敵なしというような感覚さえある。そして、最後に消費者側に立ったものの見方である。メインターゲットは絞れた、だが、その人たちの生活に入り込んでの見方ができなければ、価格などに意識の差異が生じ、結局ターゲットすらこなくなってしまう。事業者と消費者の隙間を埋める作業は簡単なようで一番大変なことだと思う。最終的にこれが成功、つまり生き残り戦略の最後の鍵になるのではないかと私は思う。

 

<参照サイト>

http://www5.ocn.ne.jp/~kjc/tp1.htm 「特集〜どうなる!?ユニバーサルスタジオジャパン」→テーマパークの歴史などを追い、今後のテーマパークがどうなるか言っていて、大変参考になった。

http://members.aol.com/yasuharaoffice/brand/sub2.htm 「論文 レジャー産業のブランド化とは?」→今のレジャー産業には何が足りなくて、今後何が必要なのかを「ブランド化」という言葉を使ってうまく表現していて大変参考になった。