余暇政策論レポート                             03/07/02

                  

国際学部国際社会学科3年 010130H 高橋健太

 

うつのみや花火大会という窓を通して見る花火大会の運営

 

 夏の真っ暗な夜を明るく、盛大に、しかし刹那的に彩る日本の打上花火。これが大好きで私は毎年欠かさず花火大会に行く。しかし近年になって、お金もとらないでどうしてあんなに豪華に花火を打ち上げられるのかという疑問に端を発し、花火大会の運営全般について興味がわいてきた。私が現在住む宇都宮では毎年、うつのみや花火大会が開催されている。そのうつのみや花火大会の主催者に話を聞くことができたので、以下、うつのみや花火大会の運営を、時には他の花火大会と比較しながら書く。

 まず最初に、うつのみや花火大会とはどのような花火大会なのかを説明する。花火が打ち上げられる会場は、柳田大橋が鬼怒川に架かる辺りで、JR宇都宮駅から自動車で20~30分の場所である。打ち上げ総数は約15,000発で、来場観衆は約250,000人。ちなみに、規模の大きい県内の花火大会には以下のようなものがある。

花火大会名

打ち上げ総数

来場観衆

うつのみや花火大会

15,000発

250,000人

真岡市夏祭り花火大会

20,000発

200,000人

小山サマーフェスティバル

20,000発

320,000人

渡良瀬遊水地花火大会

20,000発

430,000人

足利花火大会

20,000発

320,000人

                       (2002)   

目玉となる2尺玉(具体的な大きさの規模については後述)の打ち上げは、県内でうつのみや花火大会だけである。一般的に花火大会の目的は、地元の人のため、もしくは地元以外の人にその地域にきてもらい、その地域のことを知ってもらうため、というように大きく二つに分けられるだろう。うつのみや花火大会は、もちろん宇都宮以外の人に来てもらえればいいとは思っているが、宇都宮市民にお祭りのようなものを提供するのが一番の目的である。私の印象としては、100年の歴史を持つ足利花火大会のように、花火大会として広く知れ渡っているものではないが、宇都宮市民の間には十分浸透していて、かつ欠かせないものになっている。宇都宮は栃木県の県庁所在地なので、人もけっこう集まって、規模もまあまあ大きいものだ、というものがあげられる。

 うつのみや花火大会の運営についてまずは主催者について説明する。パンフレットには、主催は下野新聞社とうつのみや花火大会実行委員会とある。このうつのみや花火大会実行委員会は、うつのみや花火大会を後援している宇都宮市や宇都宮観光コンベンション協会、宇都宮商工会議所などのトップが名を連ねる組織であり、正確には下野新聞社も実行委員会に属している。しかし、実際に運営を行っているのは下野新聞(事業部)であるということと、企業である下野新聞のいいPRになるという理由から主催の欄にわざわざ下野新聞社というように独立して載せている。

 それでは、うつのみや花火大会の運営について以下述べていく。ここでは、運営にはどのような組織がかかわっているか、運営にかかるお金の流れという観点から述べる。

 まず、運営にかかわる組織について述べる。協賛金を出すスポンサー(ほとんどが企業、花火を扱う花火業者(花火師)は欠かすことができない。その他には、現場を作る建築会社、テントやトイレをレンタルするイベント会社、会場で配ったり、新聞の中に折り込むプログラムをつくる業者、立ち入り禁止の場所を見張る警備員を派遣する警備会社などがある。公的な組織としては、防犯や交通整理をする警察、火の消防や救急などの突発的な事態への対応に備える消防がある。

 次に、うつのみや花火大会の運営にかかるお金の流れについて述べる。運営にかかるお金の収入はスポンサーからの協賛金であり、支出は花火にかかる費用と、現場を作るなどのその他の費用である。収入は協賛金のみなので、この協賛金によってその年の花火の規模が決まる。スポンサーがどれだけ協賛金を出すかは、主催者が作成した協賛企画書の中から選ぶかたちで決まる。協賛企画書には、7号連発25万円、二尺球100万円というように花火の規模とその価格が載せてあり、企業はその中から選ぶことになる。この花火の価格のうち6~7割が花火自体にかかる費用であって、残りの3~4割はその他の費用として使われる。最終的に、得られた協賛金の合計のうち半分が花火自体に使われて、あとの半分でその他の準備が行われる。毎年このその他の準備の費用が足りなくなるので、不足分は下野新聞が出している。

 協賛金をだすスポンサーに対する見返りとしては、当日に現場に設置される巨大スクリーンに映像プロジェクターでスポンサーロゴが投影される、下野新聞紙上・プログラムにスポンサー名が掲載される、会場でPR放送がされる戸いう三つの特典がある。三つのうち後の二つは、協賛金を出す花火が豪華(高価)であればあるほど、プログラム枠幅サイズが大きくなり、PR放送の時間も長くなる。その他には、スポンサーの人には当日特別席が用意されていて、ドリンクやちょっとしたおみやげが出される。これがあるから協賛金をだす、という企業も実際にあるそうだ。

 花火大会運営をする際、主催者側が注意しなければいけないものとして、保安距離がある。保安距離とは、花火の危険が観衆に及ばないように、花火の打上現場と観衆の間に取られる距離。バリケード、ロープ、警備員の配置などによって立ち入り禁止にされる。保安距離内に建物はあってもいいが、人が住んでいない場所を選んでいる。最大で7号玉が打ち上げられるメイン会場では、保安距離は150メートルとられる。ただし、小さい花火は観衆にもっと近い位置で打ち上げられる。うつのみや花火大会の目玉である2尺玉(20号玉)が打ち上げられるのは、別の場所なのだが、こちらの保安距離は350メートルとられている。現在打ち上げている場所では、2尺玉以上は無理。つまり規模は限界なので、演出を変えるしかない。

 宇都宮市民に楽しんでもらうことを目的としているうつのみや花火大会では、花火当日数百人程度の席が用意されていて、地元自治会を通して地元の人にその席の券が配られる。その他に、ボックスに仕切られた、有料観覧席もある(1テーブル6人で8000円、200席くらい)。これは違う価値観をもって花火を鑑賞したい(お金を払ってもいい場所で見たい)と思っている人に対応するためにつくった。協賛企業の人のための特別席も含めたこれらの用意された席は、総勢で3000人分くらいあり、一番花火がよく見える場所であるといえる。

 冒頭で私は花火大会の観賞にはお金がかからないというようなことを述べたが、このような有料観覧席や、レースサーキット場で入場料をとって観賞する「ツインリンクもてぎ“花火の祭典”」などがあるということについてここでふれておく。

 以上うつのみや花火大会について述べてきたが、ここからはうつのみや花火大会の運営上の特徴について二点述べる。まず一点は、うつのみや花火大会は祭りの一環として行われるものではない、ということ。花火大会は大体、祭りの一環として行われることが多い。例えば、足利花火大会はわたらせサマーフェスタの一環として行われるし、小山の花火はおやまサマーフェスティバルの一環として行われる。宇都宮にもふるさと宮まつりがある(8/1.2)が、これは直接関係のあるものではない。第二点は、協賛企画書で提示されている花火の価格が、他の花火大会で提示されている花火の価格よりも高いであろうといえること。この理由は第一点とも関係していて、お祭りのように地元商工会議所などが主催しているわけではないので、自治体から大々的な(多額の)援助がうけられるわけではないので協賛金を高く設定する必要があることにある。このことについて主催者は、新聞社であるメリットを生かし、折込のプログラムのほかに新聞の一面分をとって花火大会について載せ、企業の名前を載せるので、そのことまで考慮すれば納得できる価格ではないかという考えを持っている。

 最後に、今回花火大会について調べて感じた私の率直な感想を述べる。まず、お金をとらない花火大会の主催者が企業であることに驚いた。それと、「花火大会は無事に終わって普通だと思われる」という主催者の言葉が印象に残った。

 

     花火玉の大きさの単位

花火玉の大きさの単位には号、尺などがある。二尺玉は二十号玉と同じ。

例 七号玉の玉の直径は21cmで、玉の重さは3kg。到達高度は250mで、開花時半径は120m。二尺玉の玉の直径は60cmで、玉の重さは70s。到達高度は500mで、開花時半径は240m

参考文献

     花火百華 小野里公成 丸善ライブリー

     とちぎ生活情報マガジン すたんぴーど 2002.8 Number57

・うつのみや花火大会についての情報 下野新聞事業部、うつのみや花火大会担当者へ私がおこなったインタビューより