映画の変化 −シネマコンプレックスについてー 010126M 菅原 径子
はじめに 人々はどのように余暇を過ごすのだろうかと考えたとき、自分の大好きな「映画」が頭に浮かんだ。映画は感動や笑いを与え、日常の世界から数時間ひきはなしてくれ、人々にとっては余暇を過ごすための一つの要素だ。より快適に映画鑑賞を楽しむために、近年は「映画」そのものだけではなく「映画を提供する場」も人々は重要視するようになってきている。その「映画を提供する場」として一般的なのは映画館であるが、その中でも最近急増している複合型の映画館、「シネマコンプレックス」について調べてみた。
シネマコンプレックス
1、
シネマコンプレックスとは
シネマコンプレックス(以下文章中ではシネコン)とはショッピングセンターなどに併設された、複数のスクリーンを持つ映画館のことである。シネコンは1960年代後半のアメリカで、ある映画館が大きな劇場をカーテンで仕切り、複数の映画を上映したことが始まりだといわれている。その後イギリスなどにも普及し映画産業を復活させ、日本にもショッピングセンターの出店に伴い1993年にワーナー・マイカル(アメリカタイムワーナーとマイカルの共同出資)が神奈川県海老名市と東岸和田市にシネコンをオープンさせた。その成功によりいろいろな会社が参入し始めた。
2、シネマコンプレックスの現状 1で述べたようにいろいろな会社の参入により、全国のシネコン数は増えている。
都道府県別シネマコンプレックス・スクリーン数 (2002年12月末現在、日本映画製作者連盟調べ )によると全国のシネコン数は174でその合計スクリーン数は1396である。シネコンがない都道府県はほとんどないし、またシネコンのスクリーン数は全国のスクリーン数(2635)の約半数を占めている。それだけシネコンは「映画を提供する場」として重要な役割を果たしており、日本で隆盛をふるっているのである。
3、シネマコンプレックスのメリット
シネコンは1で述べたほかにも特徴として入場券売り場や売店入り口および映写室を共有し、配給作品の選択が自由でしかも館内のどのスクリーンでも上映可能であるという点がある。それにより経営者、そしてし消費者にとって様々なメリットが生まれる。
➀経営者側から見たメリット
複数のスクリーンを持つことにより、映画の評判により回数を変えたり複数の作品が同時上映したり、席数の違うスクリーンを観客に応じて割り振ったりできるので、1作品の評判による収益の変動を小さくすることができる。また単スクリーン館に比べて人件費、投資額を抑制できるのだ。それに加えてショッピングセンターが併設されている場合は映画
のついでに買い物とかその逆もあるという相乗効果がある。
➁消費者のメリット
シネコンは単スクリーン館に比べて設備が整っており様々な消費者にとって様々なりよい点がある。その例としてお台場にあるシネマメディア−ジュをとりあげてみた。
シネマメディア−ジュ
この映画館は、ショッピングセンターやレストランのあるアクアシティお台場にあり買い物と映画両方楽しめる。都心最大級の13スクリーンをもっているのでいろんな映画が上映されているので、選択肢の幅が広い。そしどのスクリーンもどの視界からみても最良の視界で楽しめるスタジアム形式スタジアム式スクリーンである。
映像システムはソニーの、近い将来衛星で映画やスポーツ中継可能であるという「エレクトリックシネマ」システムの導入を導入している。また 音響システムはコンサートホールの基準を超えたレベルを実現しており ソニーの最新式SDDS・SRDEX・DTS によるリアルでダイナミックな臨場感をだし、遮音性機能も優れている。
座席も足を伸ばしてゆったりできるような座席幅の大きい席で、全席飲み物ようのカップホルダー付で、また日本発のカップルにおすすめの二人がけベンチシートのスーパープレミアムシート(24)やゆったりとしたシートプレミアムシート(64)や車椅子スペース(28)もある。(座席数総数3034)
チケットについては定員入れ替え制で席の数しか販売しなく、全席指定制のため席のために並ぶこともないし、立ち見もない。またチケット購入方法は、スーパープレミアム。プレミアム席の予約は電話やインターネットによる予約。チケットピア、提携コンビニによる予約ができる。
その他サービス制度
お台場アクアシティには0歳から学童の一時保育施設アクアシティポピンズ・キッズルーム(定員30名)がある。またシネマメディア−ジュの客も利用でき、その上、シネマの客には通常は5000円以上のレシート提示でビジター料金が会員料金になるところを5000円以下でもチケットの半券を持参すれば会員料金になるし、一時間1000円で利用できるという得点がある。このサービス制度により小さい子供がいる人たちでも気軽に映画を楽しむことができる。 http://www.cinema-mediage.com
の部分はシネコンの売りであり、客が得られるメリットである。すべてのシネマコンプレックスがこのシネマメディア−ジュと同じではないが、この中のいくつかには当てはまったものが多いだろう。そうした魅力に客は惹かれるのだ。
3、シネマコンプレックスの与える影響
➀従来型の映画館に与える影響
3で述べたように、シネコンにはメリットがあり、客と経営者にとって魅力的なものである。そのような魅力的な施設であるシネコンの増加によりそちらに客足が流れ、昔からある複合型ではない映画館が経営難に陥り、廃業に追い込まれるというケースが増えている。
「 映画館の灯火一つ秋田シネマ旭が閉館 郊外シネコンの影響で」 東京朝刊2003.01.14
2001年12月、秋田市御所野の大型ショッピングセンター内に「シネマコンプレックス」が誕生して以来、客足が三割減少し経営が傾き始めた。支配人は「大きな駐車場があり。買い物もできるシネコンができたためお客さんの流れが変わってしまった」と指摘する。
13日3スクリーンを運営していた秋田シネマ旭が閉館した。
「前橋オリオン 今日閉館 複合型シネコンに押され、おしまれつつ」・・・東京朝刊 2003.05.30
前橋市の中心商店街で映画ファンに親しまれてきた映画館「前橋オリオン」が今日30日閉館。同館を経営する野中興業は最盛期に早く20の映画館を経営していたが最近では複合型シネマコンプレックスに押され、高崎、桐生のオリオンを相次いで閉館したばかり。最後に残っていた前橋オリオンの閉館に伴い同社は映画事業から撤退する。
(読売新聞データベースより)http://dbgwa.yomiuri.co.jp
このような現象は全国各地で起こっており、昔ながらの映画館は現象していっている。そのような映画館には地域密着型で地元の人にとってはなじみ深かったものが多く、失われていき悲しみを覚える人も多い。
➁都市空洞化へ与える影響
私はシネコンの増加により都市空洞化が進む場合もあるのではないかと思った。なぜならシネコンが併設している大きなショッピングセンターは郊外にあることが多いからだ。
現に宇都宮も大きなショッピングセンターは郊外にあり、町の中心部は店がつぶれたり活気がない。車を所持している人や公共交通機関が発達していればたとえ郊外でも、映画とショッピングが一気に楽しめるという利便性にひきつけられて人々は集まるだろう。また元から郊外に住んでいる人はわざわざ町の中心部に行くということをしなくなるだろう。もちろん都市部にあるシネコンもあるし、郊外にあったとしても都市部も魅力的で空洞化などないところもあるだろう。しかしシネコンが都市空洞化を引き起こす可能性もあるだろう。
今後のシネマコンプレックス
今後シネコンはどうなっていくだろうか。前のように増加することはないだろうが、徐々に増えていくとは思う。新しく建設されるわけではなく、今まで単スクリーリン館だったものが、建物の老朽化に伴い改築しシネコン化するかもしれない。
また映画館のシネコン化が進むにつれて、シネコンの数も頭打ちになり客を確保するために設備をかえたり、新たな競争が始まる可能性もある。これからシネマコンプレックス同士の戦い、そしてVIDEOやDVDや映画のネット配信などの映画産業との競争が激しくなると思われる。
3、終わりに
私は、近くにシネコンがなかったこともあり今まで行ったことがない。しかし今回調べてみて改めてシネコンの魅力を知りいってみたいと思った。映画そのものの内容だけではなく、施設も整っていればより快適に映画を楽しむことができると思った。
そのようにシネコンは魅力的だが、一方で地域密着型でシネコンにはない暖かさをもっている旧来の映画館がなくなるのは寂しいことだとも思う。シネコンとうまく共存できればいいのだが、それは難しいことなのであろう。
今回シネコンについて調べたことで少しであるが、日本の映画産業界がどのように変わってきたかみることができた。シネコン以外にもネット配信など時代につれて映画産業は変化していっている。今後もしまた機会があれば時代の変化に伴いどのように映画産業の変化・進化していったか、いくかをいろいろな側面から調べてみたいと思う。
余暇政策論
「映画産業」〜シネマコンプレックスについて〜
国際学部 国際社会学科 3年 010126M 菅原 径子