余暇政策論レポート

京都の街並みを守る〜色彩の観点から〜    010104k 石原 佳菜子

1.きっかけ

 今日、観光地として日本のみでなく世界中で有名な京都市。その京都市は古都の街並みを今に残し、過去と現在が調和した美しい街として、観光客の目を楽しませてくれる。しかし、京都市は日本の中でもかなりの人口を抱える大都市である。東京や大阪などの大都市は、高層ビルが立ち並び、近代的ではあるが、古都の風景はほとんど見ることができない。そう考えると、京都市の街並みを保つためには、たくさんの努力があるのだと思い、今回のレポートのテーマとした。

2.京都市(=行政)からの働きかけ

 京都市の、風景を守るために作られた条例がある。それは、平成7年に作られた、京都市自然風景保全条例だ。その中の第一章の総論で、{この条例は,本市の市街地からその背景として眺望される緑豊かな山並みが,長い歴史を通じて我が国の文化をはぐくんできた京都の町及びこれを流れる川と一体となって山紫水明と形容される特有の優れた都市の風景を形成しており,その山並みの風景(以下「自然風景」という。)が,市民にとって日常生活の中で親しく見慣れてきた風景としてかけがえのないものであるとともに,すべての国民にとって貴重な文化的資産であることにかんがみ,自然風景の保全に関し必要な事項を定めることにより,快適な生活環境の保全に資するとともに,自然風景を将来の世代に継承することを目的とする。}とある。この目的にも記されているとおり、京都市の風景(または、外観)保全は、条例によって詳細に定められている。また、この他に、昭和51年に作られた、京都市伝統的建造物群保存地区条例というものもある。これは、京都市の中で、歴史的建造物が密集している地域で、歴史的建造物のある町並みを守るための条例だ。歴史的建造物の保存に関しては、京都市美観風致審議会と市長および教育委員会が保存計画を立て、それに基づいて、京都市に新しく作られる建造物・元からある歴史的建造物に関して、規制するものである。

また、京都市の景観を守るために、定められた、京都市市街地景観整備条例がある。私は主にこの条約について調べたいと思う。内容は以下に挙げたように、京都市固有の趣のある市街地の景観が市民にとって貴重な文化的資産であることにかんがみ,建築物その他の工作物の位置,規模,形態及び意匠の制限に関する事項その他市街地景観の整備に関し必要な事項を定めることにより,良好な都市環境の形成及び保全に資するとともに,当該景観を将来の世代に継承することを目的とする。

 

3.        市民からの働きかけ

   上にあげた様に、行政は京都市の景観を守るために、条例を作ったり整備している。それ以外にも、市民をはじめとする一般の人々が、景観を守るために活動をしている。

   その一つの例として京都市の景観保護の中心的な役割を果たしているのが、「街の色研究会・京都」だ。この団体はボランティアの人々が中心となって、歴史文化都市京都はまた、21世紀の今、世界に向けて飛躍、発展する現代都市でもあるので、都市景観を形成する基本的要素としての色彩のあり方について調査、研究、議論し、これからの京都の景観色彩のガイドライン形成への契機にしている。この研究会では京都市の色彩に関するシンポジウムを積極的に開いている。それには、市民はもとより、大学生、研究職の人々、行政担当者、環境整備の関連会社の人や、その他芸術文化にわたる専門家の人々の参加があり、注目されている。

    その中で、1999年にシンポジウムの話題として出されたものに、京都市内を走る市バスの広告について、というものがあります。京都市交通局で企画、試験運行されている車体を全面広告としたしバスに関して、京都市では屋外広告物に関して厳しい規制があるのに対し、バス車体の広告は許可されるというのは、京都の街にそぐわないのでは、と提言した。その後、2001年2月から京都市は、市の財政建て直しのために、市バスの前面ラッピング広告を認可し、15台のラッピングバスが運行されていたが、市民や観光客のクレームが殺到し、議会で議論も行われた結果、ラッピングバスの禁止が決定された。現在も京都市内にはラッピングバスの姿はない。

 

4. 課題

   ここまで私が調べてきた中で、一番感じたのは、行政の景観保護政策が、条例を作ることにばかり集中していないか、ということだった。

 京都駅を出ると、目の前には京都タワーのほかに、高層ビルが立ち並び、バスやタクシーなど、自動車が道を埋め尽くしている。駅前は東京や大阪とほとんど変わらない大都市の風景だ。駅から20分も歩いけば、二条城など、歴史的建造物がある。しかし、その二条城は大通り沿いにあるため、中に入っても車の音が絶えることがない。また、そこまで歩いた道のりはずっとビルが立ち並ぶオフィス街だった。

  このように、京都市では、街の景観を守るために高層ビルは立てられない。とする条例を作っても、施行される地域を限定している。そのため、駅前など交通アクセスのいい場所は、条例の範囲外となり、その範囲外に立てられている歴史的建造物の周囲の景観は決していいとは言えない。

  また、ラッピングバスのように、市は財政のためにやむを得ず、景観を損ないかねないラッピングバスを導入した。これは、市民の反発で中止されたが、景観を守る条例を作っている行政が、財政のためとはいえ、景観を壊しかねないことを実行に移すというのは矛盾していると思う。しかし、今後、このような問題が起きないとも限らない。

 

5. 対策

上にあげた2つの課題に対する対策として、私が考えるのは、交通のアクセスが良い場所で条例の範囲外になっている地域に、景観を守るための対策を呼びかけることだと思う。例えば、オフィス街に通勤している人が、みな自家用車で通勤していたら、道の騒音はなくならないだろう。そこで、積極的に市バスを利用するようにするなど、働いている人の意識を高める必要があると思う。

 また、行政に対しても、景観を守る条例を作る時点で、建前だけではなく、実際に実行できるのかを考えるべきだと思う。例えば、京都市は大都市なので、京都市に住みたいという人が多ければ、高層マンションを作る必要性が出てくるだろう。その時に、なぜ、京都市に住みたいのかといえば、通勤の利便性であったり、住むときの利便性だと思う。そこで、京都府の中の、京都市以外の都市と、京都市の交通アクセスをよくしたりすれば、解決できるのではないだろうか。

 

6.まとめ

観光地として名高い京都市の景観を調べてみると、様々なセクターが関係し、調整していることが分かった。しかし、市民と行政との対立などもあり、今後の動きも気になるところだ。

 

(参考)

街の色研究会HP http://www.kyoto-art.ac.jp/~nara/machiiro/mokuji.html

    http://www.toyota-ttc.co.jp/radio/scoop/scoop_20020428.html

京都市市役所HP http://www.city.kyoto.jp/koho/index.html