Matsumoto030702  「余暇政策論」レポート          k010149 松本千穂

「競馬はレジャーと成り得るのか」

 

1.調査動機

 競馬といえば、「親父くさい、汚い、ギャンブル」といったイメージが先行しやすい。だが、最近競馬場には若い女性ファンや、親子連れの姿が多くみられる。

また、近年のJRA(日本中央競馬会)のキャンペーンでも有名芸能人を起用するなど、競馬のイメージを変えようといった動きが見られ、更にJRA会長は「競馬を日本のレジャーにしたい」といったコメントも発している。

国が公認したギャンブルである競馬が、レジャーとして浸透していけるのかに興味を持ち、このテーマを設定した。

 

2.女性ファンの増減から見る、競馬の大衆浸透度

 @女性ファンが重要な理由

JRAのホームページでは、女性ファンの入場者数を表にして表すなど、女性ファンの数に敏感になっているようである。では、なぜ女性ファンの数が重要であるのだろうか。そこには、競馬のイメージといったものが関係してくると思われる。前述したように、元来の競馬のイメージといえば「赤ペンを耳にはさんだおじさん」「汚い」「ギャンブル」といったイメージが先行しているようである。実際、ネット上で不特定多数の方に「競馬のイメージとは?」という質問をしてみた。そうすると、

興奮・感動、おじさん、ファンファーレ、一攫千金、ギャンブル、江川さんと清さん(スポーツうるぐす・競馬研究所)、のめりこんだお父さん、オグリキャップ、馬券、赤ペン

といったイメージだという回答を得ることが出来た。やはり、ギャンブルといったイメージが強いようである。つまり、女性ファンの増加とは「おじさんのギャンブル」といったイメージを払拭する大きな材料となるとJRAは考えたのであろう。

 私もこの考え方には賛成である。競馬場に多くの男性ファンのみがいる情景と、多くの女性ファンがいる情景を考えた時、後者の方が競馬場に行きやすいということは明白ではないだろうか。

 

A有名タレントと女性ファン

99年、JRAはキャンペーンキャラクターとして、当時人気絶頂だったSMAPの木村拓哉を起用した。98年度の女性ファン来場数は1,340,973名 (全体の入場者数3,801,217,640,600名中11%)であるのに対して、98年の女性ファン来場数は1,302,526名 (全体の入場者数3,657,242,066,800名中11.5%)と割合的に増加した。97年の女性ファンの割合が11.7パーセントであったことを考えても、下がった人気を木村拓哉の人気で取り戻したとも言う事ができるだろう。また、99年のJRAのポスター等を見ると、競馬を知らない人が見れば、競馬のポスターだとは気づかないようなものになっている。

 

下図参照

図1

図2

 

 このポスターは貼り出されて、わずか数日のうちにそのほとんどが姿を消した。全て、盗難であったという。それほどまでに、人気のあるタレントを起用したということは、JRAの女性ファン獲得のための作戦であったことが伺える。

     木村拓哉のCMは「競馬〜、競馬〜、美しい〜♪」という歌がヒットしたように、おもしろおかしく作ってあり、かなりのインパクトを視聴者に与えた。そのため、翌年00年の松嶋奈々子、緒方拳のアットホームな雰囲気のCMがあまりうけなかったということも起こっている。それ以降は、見て楽しいCMが作られるようになったようだ。

 

3.キャンペーン展開による、ファン獲得

レジャーとして捉える以上、広告・宣伝に力を入れなければ集客数は見込めない。

どのような、キャンペーンを展開してきたのかをここに示す。

01年度キャラクター ナインティナイン

「Go!JRAJockey!」 

ファンを対象として、自分だけの応援ジョッキーを登録する。そのジョッキーが勝つと、優勝馬の写真や、サインなど関連グッズのプレゼントがある。

この年の、女性ファン数は1,078,167名 年度代表馬ジャングルポケット

 02年度キャラクター 永瀬正敏、小林薫、妻夫木聡

  「Good Luck!」

キャンペーン内容

1)来場特典
3月9日(土)〜12月22日(日)の期間中、会員証を持って競馬場(またはウィンズ)に行くとポイント(土曜×30、日曜×20)が付き、それをコツコツ貯めていくと、いろんな賞品がもらえる。
◇チャンス1
300〜1800ポイント獲得で10〜100度数のオッズカードがもれなくもらえる。10ヵ月間、毎週土日(月4回)通ったとして40×(30+20)=2000ポイントで100度数が1枚。
◇チャンス2
300ポイント以上獲得の方の中から、抽選で豪華賞品プレゼント。こちらはパソコン、デジカメ、DVDプレイヤーなどが当る。300ポイントで1口分になるので、上記試算の2000ポイントで6口分となる。
2)インターネット・イベント “NET HORSE GRAND PRIX”
ネット上の参加型ゲームである。お好みの「NEHO」(NET HORSE=今年応援したい馬)を選び、その獲得ポイントで競う。

03年度 

「サプライズ!」

「さんまのマイホースグランプリ」明石家さんま

自分の応援馬を登録し、その応援馬が勝つとポイントをプレゼントする。

来場特典は、昨年度の「GoodLuck!」キャンペーンとほぼ同じ。

 

インターネット・イベント「さんまのマイホースグランプリ」

内容は、“NET HORSE GRAND PRIX”とほぼ同じ。

 

どのキャンペーンにも、共通して言える事は、どれもファンが参加し、何らかの特典が得られるということである。特に、自分のお気に入りのジョッキーや馬たちが勝利した時の喜びを味わうといった、ファンにはたまらない内容となっている。自分の応援馬が出るレースだから、馬券を

買ったり、競馬場に行くといったファンの獲得を目的としているようだ。

 

3.家族ファンの獲得

 競馬場は多くの自然がある。ターフの周りは森林で囲まれ、東京競馬場などの各施設には、公園や遊具などの子供が遊ぶための施設が多数ある。また、ポニーへの乗馬体験など、普段あまり体験できないような事が体験できる。入場料も200円と安く、都心からも近いため、家族で遊ぶにはうってつけの場所である。悪影響が心配されるかもしれないが、遊び場は馬券売り場からはかなり遠く、親が目を離す事がないかぎり、子供たちが馬券売り場に行ってしまうといった心配はほとんどないだろう。今後は、こういった家族でのファン獲得が重要になってくると考えられる。休みの日は、競馬場でお弁当を芝生の上で食べるといった光景が、次第に増えていきそうである。

 

まとめ

今まで、述べてきたように、JRAでは、様々なファン獲得のための営業を行っている。ファンの獲得は競馬の浸透、ひいてはレジャーとしての競馬実現のための第一歩になると考えられる。今後も、多くのファンを獲得していくためには、年々減少傾向にある来場者数を増加へと変えていくしかない。そのためには、現在のファン参加型キャンペーンを継続していくこと、場内の安全をまもり、女性・家族連れのファンが安心して競馬を楽しめるような環境を作ることが必要になってくると思われる。また、競馬のイメージというものを「親父のギャンブル」といったイメージから「みんなのレジャー」といったものに変えていくという必要性もある。これらの必要事項が達成できた時、競馬がレジャーとして国民の間に広まるということが初めて期待できるのだと考える。

 

参考サイト

JRA

http://www.jra.go.jp/

さんまのマイホースグランプリ概要

http://www.surprise-jra.com/mainpc/jra01000.html

00年キャンペーン

http://village.infoweb.ne.jp/~keiba/b03menu4.htm

02年キャンペーン

http://www.jra-good-luck.com/