「日本のお祭りについて」

          

〜市民参加型のお祭りへ〜

 

 

         国際社会 3年 010121k  齋藤 慎一

 

余暇について考えたとき頭に浮かんだのは「日本のお祭り」ということだったので、私は「日本のお祭り」について考えてみる。具体的には宮城県仙台市の「仙台七夕祭り」、青森県青森市の「青森ねぶた祭り」、埼玉県熊谷市の「うちわ祭り」、栃木県宇都宮市の「宮祭り」を例として取り上げ、お祭りの現状や問題点から今後のお祭りのあり方を探る。

 

○「仙台七夕祭り」「青森ねぶた祭り」「うちわ祭り」「宮祭り」について

 「仙台七夕祭り」は毎年8月6日から8日にかけて開催される。数百年の伝統を誇る東北夏の三大祭のひとつである。目抜き通り(市街で最も人通りの多い道路、繁華街)の竹飾りは色鮮やかな和紙の吹流しでいっぱいになり、街は優雅そのもの。人々は浴衣を着て、うちわを片手に見物する。夕方から始まる「動く七夕パレード」は、年々華やかさを増す市民参加のお祭りである。また、5日の前夜祭は広瀬川河畔の花火大会もあり、西公園一帯は人垣でいっぱいになる。

 「青森ねぶた祭り」は青森県を代表する祭りで、例年たくさんの観光客が訪れる。平成14年の東北新幹線八戸−盛岡間開業に伴い、より多くの人に青森県へ来てもらえるよう検討している。また青森市では、関係団体の連携の元、「青森ねぶた祭り」の魅力の充実を図る一方で、ねぶた祭りの正しい伝承のための条例を制定し、意識啓発などを促進して健全化を図るとともに、子供ねぶたや地域ねぶたの活性化を図っている。また青森市の観光PR及び文化・国際交流の推進のため、大英博物館への展示等ねぶたの魅力を国内外へ発信している。

 上記2つのお祭りは私自身参加したことのないお祭りだが、これから紹介する2つのお祭りは実際に参加したことのあるお祭りである。

 「うちわ祭り」は毎年7月20日から3日間かけて行われる。3日間で延べ70万人の人たちが訪れる。流行病の退散・農作物の豊作と商売繁盛を神様にお願いする祭りである、京都の祇園祭を源としている。12台の山車・屋台(祭礼のときに種々の飾り物などをして引き出す車)が熊谷囃子とともに市街地を巡行する様子は、その豪華さから関東一の祇園祭と称されている。3日目の夜がクライマックスで、街のあちこちで引き合わせ叩き合いが繰り広げられながら、山車と屋台がお祭り広場に集結する。山車と屋台がライトアップされると、夜空に響き渡るお囃子とともに、数万人の人波から歓声が上がる。この山車と屋台には各町内ごとにいわれのある人形が乗せられたり、垂れ幕が提げられている。お囃子のたたき方も町内ごとに異なり、お囃子の音色だけでどこの町内かが分かる人も多いという。またうちわ祭りでは参加した人にうちわが配られている。かつてはうちわではなく赤飯が配られていたらしい。

 「宮祭り」は今年で28回を数える。宇都宮市の青年会議所の方々が中心となって行っており、行政や神社が主催するお祭りではないという面で珍しく、しかも年々規模が大きくなっている、まさに宇都宮市民が作り上げてきたお祭りである。そのせいか、形や形式をきれいに見せるというよりは、参加している人たちみんなが楽しんでいるという様子が伝わってくるお祭りとなっている。また栃木テレビによる生中継もある。

 

○お祭り開催にあたっての問題点

 ここで取り上げたお祭りも含め、各地のお祭り(お祭りに限らず、各種イベント会場においても言える)では似たような問題点が指摘されている。その一つは、毎年多くの観光客が訪れるにもかかわらず、仮設トイレや駐車場が不足していること。また大量に発生するごみの処理の問題も深刻で、実際に私が参加した「うちわ祭り」でも、朝になると大量のごみが道路脇のいたるところに散乱していた。すりや恐喝などの犯罪も見逃せない問題である。さらに、うちわ祭りと宮祭りでは年を追うごとに観光客・参加者数が上昇傾向にあるのに対して、「仙台七夕祭り」と「青森ねぶた祭り」に関しては、いづれも東北を代表するお祭りであるにもかかわらず、近年は中心部の地元商店街の数が減り、祭り自体も今ひとつ盛り上がりにかけてきてしまっており、同時に観光客の数も減少しているという現実がある。仙台中心部でとったアンケートによれば、10〜20代の多くは仙台の七夕に不満が多く、マンネリ化で仙台市民でさえ毎年足を運ぶことは少なくなったという。そこには「他の七夕との類似点」「マンネリ化」「伝統の廃れ」といった問題が存在する。神奈川県平塚市の七夕祭りなどは、元々は仙台の七夕を模範としたにもかかわらず、今では観客動員数で仙台の七夕を上回っている。

一般的に近年は娯楽が多様化していて、それまで娯楽とされていたお祭りが興味の対象から外れ、また同じようなお祭りが各地に点在することから、わざわざそこに足を運ばなくても、もっと近い場所で似たようなお祭りが体感できるということもあるようだ。

 

○問題点に対する各地の取り組み・提案

 仙台では地元大学生が「五感(味覚・聴覚・触覚・嗅覚・視覚)に訴える祭りを作れ」ということをテーマにした提案を行っている。味覚という観点からは、他の七夕との差別化を図るために、宮城県の豊かな食材を活かした食のアピールということで、具体的には県主催の食材王国みやぎと七夕を合致させたり、若手料理甲子園の開催も提案している。聴覚という観点からは、仙台に多く存在するアマチュアミュージシャンを参加させることで、音のない七夕に音を取り入れるとともに、見る人への楽しさを提供し、市民参加型の祭りへの脱皮を図ることを提案している。触覚という観点からは、手足を使って楽しめる企画ということで、全市小学校対抗七夕飾りコンテスト、観光客が持ち帰れるように七夕教室を開催する、常時開設の「七夕博物館」、市民が七夕祭りを意識できるように七夕サークルを発足してファンを増やすことを提案している。嗅覚という観点からは、先祖崇拝の象徴だった「七夕線香」の復活を提案している。防災上の理由で戦後途絶えてしまったが、時間帯や専用区域を用いることで対応しようということである。視覚という観点からは、お祭りを美術・デザインを学ぶ若者の発表の場とすることや、市民の浴衣パレード、小学校・幼稚園児童による七夕飾りコンテストの開催により、子供やその親も参加できるようにすることを提案している。

 青森ねぶた祭りでは、祭りの最終日の花火大会に仮設ステージを作り、三味線の演奏や小型ねぶたを飾ろうという提案が出ている。先ほどの問題やこういった提案に対しては、ねぶた祭りの主催者である青森市、青森商工会議所、青森観光協会で検討されている。青森市には豊かな自然資源・観光資源があるので、ねぶた祭りを中心として、青森市の観光業を活性化させたいという思惑がある。

 青森市と同じように行政がかかわることでお祭りの発展・活性化、牽いてはその地域の発展・活性化を目指しているのが、熊谷市である。熊谷市にも歴史遺産・観光スポットが数多く存在する。こうした観光資源をネットワークして魅力作りを進める上でうちわ祭りを中心に据えて、祭り自体を充実させかつ魅力ある観光拠点とネットワークを形成することができるような施策が進められている。

 

○これからのお祭りのあり方

お祭りのようなイベントを開催するにあたって、行政が重要な役割を果たしていることは否定できない事実である。例えば警察官が交通整理をしたりお祭りが行われている地域を巡回することによって、交通事故を防ぐことができたり、喧嘩や恐喝などの事件が起きた場合にも対処することができる。もし彼らがいなければ、お祭り会場は秩序も何もないものになっているだろう。青森市や熊谷市のように、行政が積極的に働きかけることによってその地域に発展や活性化をもたらそうとするということもある。しかし、行政が全てにおいて主導するということになってしまうと、かえって画一的で面白みのないお祭りになってしまうことも考えられるため、そこにはやはり市民のアイディアというものが必要となってくる。実際に参加して肌でお祭りを感じる市民のほうがお祭りに足りないもの、逆に必要のないものといったことがよく分かると思うからだ。そういう意味で宮祭りは各地域のお祭りにとって、何かヒントになるものを持っているお祭りだと思う。先に述べたように、宮祭りの中心は青年会議所の人たちであり、市民が作り上げたお祭りであるからこそ、年々規模が拡大し、形や形式にこだわらず、参加する人たち自身が楽しめるお祭りになっているのだ。私たちサッカー部も神輿を担ぐボランティアという形で毎年参加させてもらっているため、その熱気を肌で感じている。仙台七夕祭りでも、大学生がお祭りに対して提案するということが行われるようになっているし、その中にも市民参加型へとお祭りを変えていくような提案が見られる。青森ねぶた祭りやうちわ祭りでも、行政と行政以外の市民団体とが協議を重ねることで、お祭りの円滑な運営を目指すようになっている。行政による秩序という枠組みは当然必要だが、結局楽しくなければお祭りではないのだから、行政と市民の協同の中で市民がどんどん意見を述べる機会作りや場所作り、実際に参加して楽しめる祭り作りが必要である。

 

《参考》

http://www.city.kumagaya.saitama.jp/

http://www.d9.dion.ne.jp/~akidon/sub44.htm

青森市ホームページ