chi010122 各レポート内容をめぐる討議内容 その2  司会 長田元

青字は討議内容メモ

赤字は担当教員(中村祐司)による感想

各々のレポート内容は→こちら

名前 テーマ
16 長田 中核市の業務オンライン化を考察する 行政へのアクセス簡素化へ

比較はよかったが、中核市の視点からみたIT政策とは何か?→オンライン化によりデータの共有が可能/小規模都市の対策も同様/個人情報の保護が課題ではないか→宇都宮でも昨年から自動交付機導入したが、それでも特に年配者から不安の声が挙がる。反ITの姿勢の人も多い/端末機はどこに?→各家庭から送れるようにすればどうか。デジタル署名の整備/財源問題どうするのか?→電話回線からADSLへは相対的に費用は低い。そのための国債を発行すればいいのでは/家庭のパソコンの普及率低い。行政スタッフの充実が必要なのでは?/ITはなぜ日本では遅れたのか?→アメリカの技術の輸入だから。

この講義内容もそうだが、業務のオンライン化は何らかの形で情報に関わっているすべての機関が避けて通れない大切な課題である。このレポートでは中核市の概要をまとめたデータベース(エクセルファイル)にアクセスできるような工夫がなされている。今後の学生レポートの新たな可能性を示している。後半にみられるように行政サービスのIT化を手放しで賛辞していない視点もいい。例えば、「地理的に離れた地方公共団体間において相互に既存ファイルデータを保存する」という対策提案など面白い。欲をいえば、比較の対象となる中核市の対象をもう少し加えてもよかったか。

17 濱崎 龍 志 知事の現状とこれから

「総与党化の構図」をめぐる説明は簡潔かつポイントを押さえたものとなっており、その他の記述でも文献を丁寧にまとめ、各々の要点を的確に把握していることが伺える。しかし、「まとめ」に至るよどみない内容の展開の中にレポート作成者の個性的見解が提示されなかったのは残念。例えば、「知事と市町村長」「知事と企業」といった項目を立てるとすればどのような内容になったのだろうか。

「総与党化の構図」をめぐる説明は簡潔かつポイントを押さえたものとなっており、その他の記述でも文献を丁寧にまとめ、各々の要点を的確に把握していることが伺える。しかし、「まとめ」に至るよどみない内容の展開の中にレポート作成者の個性的見解がもっと提示されてもよかったのでは。例えば、「知事と市町村長」「知事と企業」といった項目を立てるとすればどのような内容になったのだろうか。

18 谷澤 寿和 首都機能移転に係わる主要論点

論点そのものへの疑問を投げかけた/災害対応力を是認する根拠は?/首都機能と分権はつながっているのか?/そもそも首都機能移転を首都移転と認識していいのか?

最初に「首都機能移転」という言葉そのものに対して自分なりにこだわった点や、「国土庁を批判する形でのレポート作成」と明言している点が読み手の関心を引いた。しかし、「賛成論」を「貧弱」と片付ける論拠がはっきりしない。「国政全般の改革」「東京一極集中の是正」をめぐる考察は面白いが、「災害対応力の強化」をめぐってもコストの問題や現状での東京における取り組みを検証する必要があったのではないか。

19 山川 崇 子 外国人に対する情報提供の場

内容を充実させていけば、情報提供は広がっていくのではないか/国際化は言葉だけの問題ではなく、意識等の改革も必要では/果たしてどれだけ使われるか考えると、外国人労働者が容易に接続できる環境を醸成できるであろうか?→宮城県ではパソコン設置の公的施設にアクセスしやすい環境をつくろうとしている/日本人の外国人に対する配慮のなさを感じた/宇都宮では外国人登録の担当者は僅か4人で、すべて日本語のみの対応。英語だけでは対応できず。公平性の観点から難しい。ボランティアの通訳いるが。果たして何カ国語カバーすればいいのか/日本語を覚えてもらう工夫がもっとあっていいのでは/ボランティアをHP上で募集し、登録体制を作ったらいいのでは。

最初の「都道府県の外国語ホームページ」に代表されるように、各項目において一見、短めにさりげなく書かれているが、読んでみると綿密・丁寧な検討を行った上での提示だということが分かる。内向けの情報提供がいかに脆弱であるかということも浮かび上がってくる。静岡、東京、鳥取の取り組みもよくまとめられている。インターネット情報へのアクセスが地球規模で拡大していくこととも合わせて考えると、多様な言語表示は大きな課題だ。

20 赤井 里美 首都機能移転について 

首都機能移転イコール小さな政府といえるか?/オンライン化を進めた上での地方分権化を図れば移転の必要ないのでは。

賛成派の意見は福島県のホームページを、反対派の意見は東京都のそれを参考にまとめたということだけあって、両論の内容がよく整理されている。しかし、レポート作成者の考察がそれまでの整理を受けた形となっていないのが残念。「最後に」の内容を読む限り、国会、東京一極集中、災害という分け方そのものに懐疑の念を向けるような構成にしてもよかったのでは。一人一人がこの問題を真剣に考えるような環境を醸成するための秘訣はどこにあるのだろうか。

21 伊勢谷 樹里

函館市の町おこし―――自治体の取り組みと市民主導の草の根運動―――』

町おこしのために大学を作って失敗した例ある/ユニークな大学(複雑系数学、情報アーキテクチャー)で注目を集めている/中小企業に期待。

若者にとっての魅力ある街という起点は面白いし、広域連合により設置された大学、従来型観光業からの脱却、「活力ユニット」など、せっかくどれも興味深いテーマを取り上げたにもかかわらず、いずれも食い足りない感じが残った。自分の問題意識を前面に出しながらの展開は大変いいと思ったものの、もう少し掘り下げた個々の内容紹介やそれに対する考えを提示してもよかったのでは。

22 清水 文香 インターネットが果たす町づくり

インターネットの地域住民への普及にはまだ課題あり/町おこしにはNPOが存在することが多い/電子メールの双方向性にも課題。

テーマ設定の着眼点はよかったが、残念ながらレジメ風の細切れの展開になってしまった。「町づくり」に関連するホームページの対象をもう少し広く捉えれば違った展開になったかもしれない。とはいうものの、地方自治体の担当者に実際にメールで質問をした意欲は大変いい(何の面識もなかったにもかかわらず、回答率20%を確保できたのは成功だと思う)し、それをそのまま紹介したのもよかった。

23 赤羽 戸籍を通して考える広域行政 〜戸籍・住民票等の広域交付〜

住民票が全国オンライン化になると、住民票の移動がなされなくなり特に地方選挙の投票にも影響を及ぼすのではないか/行政のアピール不足があるのでは/広域交付サービスは広がっていくのか?→自治体間の横並び意識で視察が多い。一つの自治体で始まると他自治体からの要望もあり広がっていく傾向にある/地方分権といっても実態はなかなか変わっていない。

戸籍の広域交付サービスは数が少ない理由にまで言及しているのがいい。日常生活における戸籍に対する意識はどうしても希薄になりがちである。しかし、指摘のように戸籍は「人生の記録」「個人情報の固まり」であることを考えると、オンライン処理との兼ね合いをどう図っていくかが今後の課題であろう。戸籍事務の取り扱いは、電子化情報を通じた住民・行政関係の変革過程で克服しなければいけない中心課題の一つであるかもしれない。

24 マレツァ モニール 栃木県・宇都宮市のごみ事情

RDF化の評価は分かれるのではないか?

「ごみ減量化・リサイクル」をめぐる課題にも言及してほしかった(例えば、RDF一つをとっても推進派・反対派の主張がぶつかっていることなど)。「マレーシアのごみ事情」では日本と比べた場合の焼却率の極端な低さ(日本における焼却率の極端な高さと言った方が正しいか)など有用な情報を提示してくれた。英語に限定しても、インターネット情報をもとに世界各国のごみ事情をめぐるある程度の比較はできるかもしれない。

25 磯 加奈子 警察の暴走族対応

暴走族にも種類があり、ローリング族などあり。暴走できない道路作りが求められるが、一般者にも迷惑/暴走族の根本的解決につなげるためには/暴力団を壊滅することが必要なのでは?/なぜ暴走行為は起きるのか。暴力団なくして解決がつくわけではない。

テーマ設定の絞り込みはいい。交番を取り上げたことも決してテーマからはずれていない。しかし、「私案」の内容こそが読み手の知りたいことではないのか。「警察と市民の協力」を構築していくための鍵は果たしてどこにあるのだろうか。

26 モハマド・リザ・ズフリ PUTRA―クアラ.ルムプルの最新公共輸送

乗客数はタクシーやミニバスと比べてどうなのか/渋滞解消につながっている/バス運転手の雇用は厳しくなったが、職場転換などで対応。

PUTRAという、おそらく読み手のほとんどが初めて知るであろうプロジェクトを取り上げたユニークさはいい。動画挿入の工夫もある。情報の密度の問題はあるにせよ、「全世界にある情報とか全部をインターネットで知ること」ができつつあることを実践したようなレポート。しかし、異国語で書く大変さを差し引いたとしても、制度紹介で終わってしまったことが残念。

27

瀬戸谷 佳恵 

地域の国際化と情報化  

具体例少ない。自治体でも模索中/住民に国際化に対する知識を増やすような対策必要/情報化が進むと職員のスリム化につながるのでは。

「インターネットを利用した姉妹都市交流、国際的共同研究機関の設立」の具体例は何か。地方自治体が提供するこのテーマをめぐる決まり文句を総花的に羅列するのではなく、レポート作成者自身の見解を少しでも提示してほしい。

28 松島 一志 豊島問題から見る行政側と住民側の関係

具体的な有害除去の方法の中身について知りたい/事業者に対する具体的な罰則について/行政側の責任問われると思うが、行政は悪いところを認めようとしない姿勢/なぜ兵庫県が告発したのか/お役所仕事がよくあらわれた例。宇都宮では市長メールを設置したせいで、直接市長に苦情がいく。職員の側でも住民の感情的対応には苦慮する面も。

資料に振り回されたり依存したりせずに、終始一貫、自力で問題点を抽出・提示している。あえて項目を立てずに一気に書き下ろす形を取ったことで、かえって説得力も増した。今後、インターネット情報が飛躍的に拡大すればするほど、見栄えとは関係なくこのような自分の頭で考え表現するレポート作成が心掛けられなければなるまい。内容について敢えて欲をいえば、例えば豊島以外の香川県民のこの問題に対する態度変容についての言及があってもよかったのでは。

29

齊藤 雅美 

都営交通と沿線地域効果−都営地下鉄大江戸線を例として

身近な問題に関心/メリット・デメリットどっちが大きいか/都心部と下町とを結ぶ線は他にもあるのか/他線と比べて使われるのではないか。観光に便利/公営と私鉄との経営の違いをこれからの問題として考えたい。

自分の身近で明確な問題関心から出発し、一見素通りしそうなテーマを掘り下げると同時に、沿線地域に及ぼす居住や商業影響などにも考察は及んで大変興味深い内容となっている。建設に至る経緯を丁寧に追うことで「考察」のインパクトも増した。ただし、例えば、営団地下鉄が抱える課題や対応策についても具体的に提示してくれれば、読み手には両者の差異がより明確になったかもしれない。個人的には「ゆめもぐら」の方がユーモアを含んだ素晴らしい名称のように思われるが。

30 中村祐司(担当教員)            2002年サッカーワールドカップキャンプ候補地自治体の課題と展望  


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