地方行政論

 国際学部国際社会学科2年

990133X 瀬戸谷佳恵

 

地域の国際化と情報化

 

近年のコンピューターの高性能化、低廉化に伴って、自治体でも情報化への取り組みが盛んである。自治体によるホームページ開設など、情報発信の方法としての活用も増えている。このような動きは、地域の国際化にどのような効果、影響を与えるのだろうか。

 

1.情報化

地方自治体でも、従来、事務の合理化・高度化のため、情報処理技術や通信技術への需要は高かったといえる。情報化は地域社会への浸透も早く、その影響は社会全体に及ぶものとなった。コンピューターは住民の間に普及し、その活用の可能性は拡大している。

具体的には、従来困難と考えられていた遠隔医療や遠隔教育を可能にし、役所に限らず多くの場所で窓口業務を受けられるようにする電子市役所やカード一枚で福祉・医療サービスを受けられるようにするICカードの活用など、情報通信技術の進展により、福祉行政、文部行政および情報公開など、様々な行政分野において行政サービスの向上が可能となりつつある。また、情報産業分野においても、新産業、新雇用の創出、地場産業の情報化、電子商取引の拡大などの効果が考えられている。

このように、情報化は地域社会に大きな影響を与えるものと考えられている。そのため、地方自治体では、住民や企業がインターネットを利用しやすいように、光ファイバー網を敷設したり、アクセスポイントを設置するなどの施策をとっている。地域社会にインターネットが普及することで、身近な情報交換の手段、行政サービスの情報化、民間の通信ビジネスの拡大、情報通信産業の振興、地方にビジネスチャンスをもたらすことなどを目指している。1

 

2.地方自治体による地域の国際化

地方自治体による地域レベルの国際化の推進については、姉妹都市交流事業をはじめとして、地域の特性を生かした様々な施策が展開されている。特に、近年では、国際協力といった観点から、国と国との交流・協力ではなく、草の根レベルで独自の協力体制を築いている自治体もみられる。このように、量的な増加とともに質的にも多様化してきている。

 

3.地域の国際化施策と情報化

国際化施策は、地方自治体のみならず、住民はもちろん企業、民間国際交流組織など、地域社会全体の参加の形体をとっている。この施策には様々な情報が必要とされ、そのネットワークも確立される必要がある。世界への情報発信だけではなく、地域社会のなかでも、国際化に向けての国際教育の需要や文化交流による相互理解の必要性に伴い、地域社会内での情報発信も重要になっている。現段階では、地方自治体の情報化、国際化はともにまだ試験段階であり、模索中であるという印象のものが多いが、積極的な取り組みにより成功事例も増えている。

インターネットを利用した姉妹都市交流2、国際的共同研究機関3の設立、自治体の特産物を生かした国際協力、留学生との交流会など、国際化施策は規模、内容ともに多様化してきている。これらの情報をインターネット上にも公開し、多くの人に認知し、理解してもらえるような機会を増やしている。

 

4.地域の国際化と情報化への課題

 地域の国際化には様々な問題があげられる。文化的相違による相互理解の困難さや国際協力事業への住民の理解など、国際化への課題は多い。その課題への対策のひとつとして情報通信技術の活用は必要不可欠である。しかし、情報化についても、国内、国際レベルでの情報格差の問題が生じてきている。そのような点をふまえた上で、施策を検討していく必要がある。

 



参考資料

 

「自治体 国際化フォーラム」 1996年12月15日発行、財団法人自治体国際化協会。

 

1 岡山県の事例を参照した。

2 高崎市による姉妹・友好都市とのホームページ共同開設などを参照した。

3 高知県の高知工科大学開学とマサチューセッツ工科大学やアジア・太平洋地域の大学との連携による学術面での国際交流などを参照した。