地方行政論
『首都機能移転に係わる主要論点』
2000年12月11日 k990152 谷澤寿和
このレポート作成に本格的に取り組む前の段階では、国土庁のホームページに首都機能移転に関する事柄はほとんど載っているので、自分で新たにそれについて分析することは難しいように思われた。例えば、ホームページの情報以上の内容を考える自信がなかったことと、ホームページの内容と重なることをお恐れたからだ。
しかし、実際国土庁の情報を読んでみるとその内容に対して自分なりの疑問や反論がいくつも浮かび上がり、このホームページの内容について考察すれば自分の意見がしっかりと書けそうだと思い、国土庁を批判する形でこのレポートを作成することにした。ここでは特に、首都機能移転に係わる主要論点について考えていきたい。
「首都機能移転」という言葉に人はどのようなイメージを持つだろうか。私ははじめ機能が移転するだけで移転後も首都は東京のままだと思っていた。しかしこの考えはどうやら違うらしいということに気づいた。何故、「首都機能移転」という言葉を使って「首都移転」という言葉を使わないのかというと、日本の首都は東京だが、実はこれは常識的な認識であって法律で決まっているわけではないからなのだ。ということはこの場合、法的に「首都」という言葉を使わないだけであるのだから我々はこの移転問題を「首都移転」と認識していいはずだ。
しかも、広辞苑で「首都」と調べたところ、【首府である都会】とあった。言いかえると「中央政府のある都会」だ。ここから、中央政府がなかったら首都とは呼べないことがわかる。もしも移転したら東京はもはや首都ではないのだ。
私はこのようなことに気づいただけで、もう首都機能移転に抵抗をもって
しまった。私と同じように感じてしまう人は少なくないだろう。主要論点に
入る前にこのような認識について考えることは必要なことではないだろうか。
参考:財団法人・社会経済生産性本部HP
さて、ここからが本論であるが私の意見を述べる前に、移転について一貫して柱となっている意義を紹介しておくことにする。
「国政全般の改革」 「東京一極集中の是正」 「災害対応力の強化」
前述したように、私は国土庁の情報にいくつもの疑問や反論をもった。国土庁は首都機能移転に係わる主要論点を「積極論」と「慎重論」とに分けてそれぞれの意見を掲載しているのだが、意見の量を比較すると圧倒的に積極論の意見が多い。しかも実質的な内容は「積極論」と「慎重論」というよりも「賛成論」と「反対論」といったほうが正しい。私に言わせれば賛成論を多く載せていることは閲覧者の心理を誘導しているように思えてならない。ただその意見が具体性や説得力をもっていれば私も納得できるのだが、実際読んでみると説得力に欠ける意見や的外れな意見が多いのだ。反対論のほうがよっぽど筋が通っている。
では具体的に内容を紹介しよう。まずは主要論点としてふさわしくないと思われる意見だ。(要約)
・移転は、「日本は変わる、変えられる」という自信を全国民に与える。
うな恵まれた環境が必要。狭いビルの狭い部屋で
ろと言っても、ストレスで行きづまってしまう。
・移転が日本人の「気持ちの規制緩和」につながる。
私はこれらの意見を主要論点と呼ぶのはあまりにも貧弱に感じる
次に「国政全般の改革」「東京一極集中の是正」「災害対応力の強化」それぞれについて見ていきたい。
これについて私は基本的に、場所が変わっただけ何が変わるのか。国を運営する人が変わらなければ何も変わらないのではないか、と考える。ここでもホームページの内容とそれに対する私の意見を述べていきたい。
紀に持ち越さないで欲しい。
→そこからどうして移転に結びつけるのか。
→移転と分権はほんとうにつながっているのか。
→東京にも同じことを求めることは出来るはず。
識が崩れ全国各地域の自立性が高まる。
→一見もっともに聞こえるが、結局は東京とのアクセスの容易性を求め
ていることから東京を頼っている。(首都機能移転パンフレットの移転
先候補地
16の評価項目から)東京居住者の中にもある
→どのくらいの割合か具体的にだしてくれないと説得力に欠ける。
→移転先は確かに活気づくだろうが、その他の地方に何かが来るわけで
はないだろう。
→変わるのは移転先の立地ポテンシャルだけであろう(国土庁HP首都
機能移転による一極集中への影響の検討 アンケート調査の結果から)
・東京に官公庁があることで地方から大勢の人が陳情と称して訪れるのは、
参勤交代のようなものだ。
→官公庁が東京になければこのようなことが起こらないと言えるのか
→具体性に欠ける
緩和
→この数字を大きく捉えられるかどうか。
東京の活力低下にはつながらない。
→移転人口をわずかであると述べていることで自ら人口の一極集中緩和
を否定してしまっている。
これについての論調はまともであったと思う。参考までに意見を紹介すると
逃れ、リスク分散が図られる。
・ナショナルセキュリティや防災対応力の強化のため。
・東京の防災対応力を抜本的に向上させるには長い時間と費用がかかる。
ここまで述べてきたように国土庁の論調(特に移転賛成意見)は具体性や説得力に欠けるものが多く、私としては首都機能移転問題を根本的に考え直してしまう結果となった。よってこのレポートも首都機能移転に関する根本的な内容、第一段階と言えるような内容となったと思う。実際私も予備知識など何もなかったため、それにふさわしい分析対象であったと思う。
最後に3つの意義について一言触れておくと、「国政全般の改革」は柱としてはふさわしくない。「東京一極集中の是正」もまた全体的に強い説得力があるとは言えない。「災害対応力の強化」だけが唯一筋の通った論調だったと思う。よって首都機能移転の主要論点は「災害対応力の強化」一本にしぼるべきだと考える。とりあえずこのようなことが今回私が分析した結果である。
ここでは「積極論」だけを取り上げ「慎重論」については何も紹介できなかった。何故かというと私が主に意見を持った対象は「積極論」の論調だけであったからだ。簡潔な内容にしたかったため、「慎重論」については取り上げなかったが、見方によっては公平さにかけてしまった。
http://www.nla.go.jp/daishu/
これは国土庁のホームページアドレスであり私はこの中の「基礎データ」を主につかった