地方自治団体地方行政論
国際学部国際社会学科
990153b
山川 崇子「外国人に対する情報提供の場」
(1)都道府県の外国語ホームページ
49都道府県のホームページの中で英語でのホームページが開設されていないところはなかった(北海道、熊本県はホームページが開けなかったので未確認)。そのうち、複数の外国語でのホームページ開設があったのが、群馬県(英語、スペイン語、ポルトガル語)、静岡県(英語、ポルトガル語、スペイン語、韓国語、中国語)、富山県(英語、中国語、韓国語、ロシア語)、鳥取県(英語、中国語、韓国語、ロシア語)、岡山県(英語、中国語、韓国語)、福岡県(韓国語、中国語、英語)、大分県(英語、中国語、韓国語)、宮崎県(英語、韓国語、中国語、ロシア語、フランス語、イタリア語、ドイツ語)の8県であった。
言語 |
英語 |
中国語 |
韓国語 |
スペイン語 |
ポルトガル語 |
ロシア語 |
フランス語 |
イタリア語 |
ドイツ語 |
都道府県数 |
47 |
7 |
7 |
2 |
2 |
2 |
1 |
1 |
1 |
パーセンテージ |
100% |
15% |
15% |
4% |
4% |
4% |
2% |
2% |
2% |
(北海道、熊本を除く)
(2)言語選択の背景
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宮崎県>言語数が一番多かった宮崎県の場合、「国際化の推進」が背景にあるようだ。右のグラフを見ていただくと分かるように、ロシア語、イタリア語、ドイツ語を使う人は住んでいない、またはその他に含まれているのにかかわらず、ホームページが開設されている。一方、生活に必要だと思われるタイ語、ポルトガル語、スペイン語といった言語では開設されていない。宮崎県では、宮崎県国際化推進基本指針に400万円の予算を計上し、航空機の国際線チャーター便の誘致、国際物流拠点としての港の整備を現在行っている。こういった点で少しでも多くの言語でホームページを開設し、国際化を図って行きたいのではないかと思われる。つまり、自県の利益優先の国際化といえるであろう。「国際化」を目指すならば、外にある物だけに目をむけるのではなく、今、内に秘めている課題も解決していかなければならないのではないだろうか。 http://www.pref.miyazaki.jp/
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静岡県>次に多かった静岡県の場合も同様に、「国際化の推進」が背景にあるようである。しかしながら、宮崎県と違う点は「静岡県を取り巻く環境の変化に対応した国際化」を進めている所である。英語、ポルトガル語、スペイン語、韓国語、中国語の5つの言語で、外国人登録をしている人の約84%の母国語をホームページでカバーしていることになり、英語を理解できる人を含めると、かなりの外国人に対してホームページで情報を提供している。しかし、まだ、完全だとは言えない。母国語のホームページがない国、つまり、残り約16%の多くは、各国一桁台の登録者数であるが、インドネシア、フィリピンの登録者は、1479人、6209人と桁違いである。また百桁台ではあるものの、タイ、マレーシアといったアジアの国々の登録者も多い。「環境の変化に対応した国際化の推進」を行っていくにはこういった言語でのホームページの開設も必要なのではないだろうか。 http://www.pref.shizuoka.jp/
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東京都>では、複数言語でのホームページ開設がない所では「国際化の推進」についてどのように考えられているのだろうか。東京都(観光情報のみ韓国語、中国語の情報提供あり)の場合、「国際化に対応できる都政づくり」と題して外国人住民の都政への参画を推進している。日本に一定期間居住し、納税の義務を負っている外国人に日本人と同様、可能な限り参画してもらい、外国人にも住みやすい都市にするとともに、国際的視野から東京都を魅力的な都市にしようとする計画である。14ページにもわたり、現状と課題や、地方参政権の問題、外国語ラジオ放送(英語、中国語、ハングル、フランス語、スペイン語)での都政情報の案内など、事細かに「国際化の推進」について書かれている。その情報は日本人にとっても有意義なものであるとともに、外国人にも都政に参画できるだけでなく、生活を助ける情報も盛りだくさんである。外国語ラジオ放送も実施している東京都にも関わらず、英語以外の言語で、ホームページの開設がないのは納得が出来ない。そして、中国語、韓国語での観光情報はあるのに生活情報はないというのは、観光は受け入れるけれど、定住は受け入れないと受け取れなくもない。至急、英語以外の言語でホームページを開設するべきである。
http://www.metro.tokyo.jp/index.htm
(3)情報提供の内容
一番言語数が多かった宮崎県の場合、その内容もやはり、自県の「国際化の推進」のみが考えられた内容のように思われる。観光案内がそのほとんどをしめ、そこに住む外国人またはこれから住む予定の外国人には全くといっていいほど役にたつ情報はない。「国際化の推進」をうたうならば、そのような外国人にインターネットでもっと情報を提供していかなければならないのではないだろうか。
静岡県の場合、「環境の変化に対応した国際化の推進」をうたっているだけあり、そこに住んでいる外国人にも、観光で訪れる外国人にも有意義な情報提供の場となっている。例えば、「Useful Telephone Number」では子供の就学問題を相談できる所の電話番号や、観光案内の電話番号、110番から119番まで載っていて、その案内までが英語やその他の言語で行われているかは定かではないが、日本語になれない外国人にはありがたい情報ではないだろうか。また、観光目的の外国人には富士山の高さが分かったり、リアルタイムの富士山の画像が楽しめたりと充実した情報が満載である。
言語数からは乏しい東京都ではあるが、その提供されている情報の量は最高ではないだろうか。まず、観光では、ホテルの紹介やレストランの紹介、地下鉄、JRの地図等必要だと思われる情報はこの東京都のホームページだけでそろうくらいである。定住外国人に対しては、災害の時、どこに行ったら水がもらえるか、どのように警察に電話した時英語で住所を伝えたらよいのか、交通事故時の対処法、地震が起きたら何をすればよいかなど、東京都に住んでいなくても役に立つ情報満載である。地方自治体のホームページにホテルやレストランの紹介まで載せるのは疑問があるが、これだけ外国語で充実したホームページは他にはない。
鳥取県唯一の取り組みとして、上げておきたいものがある。それは、「母国語表示」である。例えば、韓国語ならハングル文字で「韓国語」と書かれていたり、ロシア語ならロシア語の文字で「ロシア語」とかかれている。他の県ではカタカナ、もしくは漢字、あるいは、英語で書かれている。知らない言語を見るといったいその言語は何語なのか分からないが、逆に言えば、日本語、英語を知らない外国人は、自分の母語かさえ、理解できないのである。そう考えると、この鳥取県唯一の取り組みを「優れている」と考えるのではなく、そのように取り組んでいない他の自治体が配慮に欠けているというべきではないであろうか。
(4)考察
予想外の結果が出た。英語でホームページが開設されていない都道府県が一つはあるだろうと考えていたが、一つもなく、逆に複数の言語で開設されているところは予想以上に少なかった。そして、それぞれの地方自治体によって、「国際化」の推進の方法に大きな違いがあることに驚かされた。外国人に対する情報提供の場のホームページには次のような共通する特徴が挙げられる。
この三つのうちでどれを主に情報を提供していくかによって、その地方自治体の「国際化」又は外国人に対する考え方が見えてくる。ホームページの印象がその地方自治体の住み易さや、環境そのものではないが、それぞれの情報がどのくらい提供されているかによってイメージは出来上がってしまうのではないか。私が調べた中では三つの情報にかなりの偏りがある県や、情報提供はされていてももう少し詳しくてもよいのではないかというものも、数多くあった。まだまだ地方自治体のホームページは改善が必要ではないだろうか。
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