地方行政論レポート

長田 元 宇都宮大学国際学部 990143k

『中核市の業務オンライン化を考察する 行政へのアクセス簡素化へ』

0章 問題意識とこのレポートの目的

 インターネットの普及と共に私達がパソコンに触れる機会が多くなってきた。Web上で様々なことができるようになっている。便利な時代である。同時に地方自治を推進する動きもできてきた。この便利な時代で自治体はどのような取り組みを行っているのだろうか。私は自治体が地方自治を行う上で最も重要な政策は業務のオンライン化であると思う。疑問に感じた私は今回のレポートで自治体の一つの形である中核市がどのような政策を行っているのか、そしてインターネット事業が行政サービスと地方自治に与える利点を調査し、私なりに自治体が今後そのような政策を立案すればよいのかを考察した。

1章 なぜ 中核市か?

 まず、自治体の具体的な取り組みを考察する前に何故私がITと中核市に注目したかを述べさせていただきたい。私がこれらに着目した理由は次のとおりである。

0 まず、ITは地方自治を行う上で全ての領域に絶対的なメリットをもたらすから(オンライン化、高速化、効率化、情報共有のため)。

1 その地方自治を行うには中核市が最も適しているから(↓2,3のため)。

2 中核市という概念は地方分権のために生み出された概念であり財政、サービス、都市計画、保険衛生などの地方自治における先進的機能を持っているから(平成6年の地方自治法改正により大きな決定権が地方に与えられた)。

3 先進的機能を持った中核市は人口規模、財政、権限の面において行政サービスを理論的に速やかに実行できるから。

4 先進的機能を持った中核市が率先して地方自治を推進させるIT政策を行うことで地方自治を促進することができるから。

5 つまり、地方自治の先導=中核市→行政サービスの向上=IT化→地方行政の促進であるから。

以上が、私が中核市に注目する理由である。なお紙面の都合で全国の中核市のデータベースを掲載することができないため、私のホームページからダウンロードできるようにした。ご覧になりたい方はここをクリックしてダウンロード

2章 中核市はどんな計画を立てたか 調査と考察・批判

(1)調査  具体的に自治体がどのような政策を立案したかを示す。中核市である栃木県宇都宮市と石川県金沢市の計画を調査した。この二つの市を選んだ理由は人口約45万人、市の規模がほぼ同じだからである。 

宇都宮市 
宇都宮市の公式ホームページにアクセスして宇都宮市の政策を調査したが有益な情報はほとんどなかった。まだ、市として構想を公表する具体的な政策の域まで達してないと考えられる。市の行政改革についてのページに掲載されていた方針を資料として抜粋した。 

金沢市 
金沢市のほうは具体的な例を掲載しており市の行政改革も具体的な政策を打ち出しおりこちらのほうが見ごたえ、政策の質、量、分かり安さ、ともに充実していた。 

高度情報時代  宇都宮市の政策

情報通信技術の飛躍的な発展や光ファイバー網の整備により,行政や家庭等を結ぶマルチメディア・ネットワークが形成されます。これにより,時間的,距離的制約が克服され,多種多様な情報の入手や利用が容易になるとともに,在宅医療・遠隔教育など市民生活における各種サービスの質・量・手段が飛躍的に向上します。 このため,産業,文化,市民生活など各分野における情報システムの構築や情報通信基盤の整備を図り,価値ある情報を誰でも手軽に利用でき,自ら発信し,世界と交流できる地域の情報化を進めることが求められます。 
宇都宮市ホームページより抜粋  http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/index.htm 

 

高度情報通信体系  金沢市の政策

マルチメディアなど最先端の情報通信技術を活用して、 世界に発進する高度情報通信ネットワークの整備を図ります。

1 高度情報通信ネットワークの整備 
・光ファイバのネットワーク整備   
・衛星通信システムの導入

3 高度情報通信サービスの提供 
・医療システム、電子図書館、都市型CATV等利便性の高いサービスを実施
・企業情報・ハイテク情報等を企業に提供

2 テレコムセンターの建設 
・国際ビジネスセンターと市民情報文化センターの機能整備 

4 人材の育成 
・中小企業に対する高度情報化技術導入を支援 

金沢市のホームページより抜粋 http://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/

(2)考察・批判 調査の結果を考察し、今後の政策はどうあるべきかを示す。 

金沢市がより具体的な計画を立てていたが両市とも、ITには関心があるようで現在計画中という状況だった。ここからは両市の取り組みを踏まえて私なりに今後どのような政策を立てていけばよいのかを考察する。まず、計画を見た私の率直な見解はこうである。計画の側面から見ると、金沢市は具体的な計画を立案できており実現すれば行政サービスは確実に向上し、住民にとってますます便利な都市になっていくだろう。一方、宇都宮市はまだ具体的な計画立案には至っておらずこのままでは、この高度情報通信時代に乗り遅れてしまう可能性がある。早急に立案をまとめ計画の実行に移すべきである。 なぜなら、これからの情報通信体系はケーブルや有線などの地上波から衛星通信体系に移るからである。郵政省のBS放送計画がその例である。つまり、日本の放送・通信体系は地上波から一気に衛星放送によるデータ放送に切り替わるのである。データ通信のメインは地上波から光ファーバーへ、そして衛生インターネットに切り替わる。金沢市は光ファーバーだけにとどまらず衛星通信体系の構築も念頭においている。これらを使って、大学や図書館をネットワークで結ぶ計画を立案している。両市とも10年後、20年後の未来を考えた計画を立てるべきであると思う。

3章 私の考え IT政策の真の意味

これまでは計画を中心にネットワーク時代の通信体系の構築について述べてきた。しかしIT政策の意味は地方が光ファイバーのケーブルを引っ張る事業をすることでも中継局を作ることでもない。IT政策の目的は公共事業によって需要(雇用)を作ることではない。中核市におけるIT政策の真の意義はオンライン化による行政サービスの質、スピードの向上である。行政サービスのオンライン化はそれまで時間のかかっていた業務を短時間で提供できる。それは、情報の高速転送、効率の向上、そして、情報の共有である。ネットワークを活用した行政の簡素・効率化及び住民の利便性の向上
住民がオンラインで行政手続を行うことのできる環境を作っていかなければならない。住民と中核市との間で行われる各種の申請、届出等の事務について、現在の書面による手続に加え、インターネット等を利用して自宅や職場から簡単にできるようにしていかなければならない。これからその例を示す。

1行政情報へのアクセス改善、2行政手続にかかわる住民の負担軽減、利便性の向上、3行政運営の質的向上、4事務・事業の簡素化・効率化、5、行政運営の高度化、6、行政情報の電子的手段・媒体による提供の迅速化、拡充7、申請・届出等手続の電子化の推進、8、ネットワークを活用した事務処理の簡素化、効率化、9、文書の管理・流通のシステム化10、情報共有の推進、組織的・人的基盤の強化など様々で、例を挙げればきりがない。だが、これだけでも仕事の能率は向上し円滑に業務を行うことができる。

さらに、具体的に、

高度、多様化する住民ニーズに対応した質の高い行政サービスの提供
 インターネットの普及によって、インターネット・携帯電話を利用したオンライン申請や、ホームページを通じた行政情報の入手、情報検索システムの活用等が可能になるなど、住民と行政との関係は大きく変化しつつある。また、教育、消防防災活動、上・下水道、病院など、様々な行政分野において、情報通信技術を活かした高度な行政サービスの提供が可能となってきている。このため、中核市において今後IT化を進めるためには、事務処理の効率化だけを考えるのではなく、住民にとって便利な行政サービスの提供を考える必要がある。

書類(紙)というものを電子媒体に変えることによって仕事量は格段に向上する。また、外部に公表できる資料、公表すべき資料、案内、受付をオンラインでできれば役所に来なくても簡単な業務はオンライン上で解決できるようになる。住民票の取り寄せを電子メールで請求できるようにする。商業登記をオンラインでできるようにする。婚姻届用紙の申し込み、各種資料の配布などをオンラインで行うというのはどうだろうか。役所への各種、届出をオンラインで行えるようにするというものだ。市民のサービス向上はそれだけにはとどまらない。電子図書館ができるかもしれない。より充実した通信教育ができるかもしれない。早く充実したサービスを受けられるという点で住民にとってもよいことだ。また人事の面で言えば、業務を円滑に行うことができ、しかも市が行政改革で打ち出している人員削減にも絶大な効果を発揮するのではないだろうか。

しかし、これだけの大改革を行うには当然、法律、個人情報の保護、手数料の徴収方法、代理人による手続きなど、課題も多い。

まず、文章の改ざん。二者間で受発信される電子文書については、その情報が本当にその人によって作成されたものかどうか、送信途上で内容が改ざんされていないかどうかをお互いに確認できるような仕組みにしておくことが必要である。その対策として、デジタル署名の制度が考えられる。 オンラインによる申請・届出等手続においては手数料の納付が必要な場合、従来の印紙、現金による納付を続けるのではオンライン化の意義はなくなる。手続のオンライン化に対応した手数料の納付方法については、個別具体的な手続に即した方法が採られるべき。経済取引における普及度、納付の確実性等を勘案すれば、一方法として、インターネットによる口座振込の仕組みが考えられる。その場合、印紙の郵送による方法も選択できるようにしておくことも考えられる。 最後に、電子文書の原本性の確保である。電子文書については、原本性確保上の問題点である。何の対策もしなければ、紙文書に比べ、改ざんが容易でその痕跡も残りにくいという欠点もある。しかしながら、電子文書であっても、「完全性」、「機密性」及び「見読性」の要件が確保されていれば、原本として保存されている紙文書と同様の状態にあるものとみてよいと考えられる。 

人材の育成も必要である。
 今後、様々な行政においてITを活かした行政を進めていくためには、研修などを行い、人材の育成を図る必要がある。
 情報化を進めるためには、特に住民に身近な市町村における積極的な取組が重要と考えられる。また、地域の実情に応じて、民間人材の活用や都道府県における情報政策等の専門家の市町村への派遣等の取組についても、有効な方法の一つではないだろうか。

ハッカー・クラッカーからデータ・住民の個人情報を保護することも当然重要な課題である。具体的には、システムに障害が発生した場合に、既存ファイルデータを維持するため、データベースの二重化などのバックアップ機能の確保、システムの部分的な障害が全体に影響が及ばないようにする通信ネットワークの多ルート化、あるいは、不測の事態が生じたときは速やかに復旧できる体制をが必要である。また、地震等の災害による既存ファイルデータの消失を防止する観点から、地理的に離れた地方公共団体間において相互に既存ファイルデータを保存するなどの地方公共団体間のバックアップ体制についても、検討する必要がある。
 人為的な不正アクセス等に対しては、ファイアウォールの構築、通信データの暗号化、専用回線の利用などが有効である。

行政を目指し、住民の利益の保護するという行政手続が適用されることは言うまでもない。また、個別な事案処理の間で不合理な不統一が生じないようにすることも必要である。さらに、できるだけ分かりやすく、使いやすくするための対策も行わなければならない。

 私は中核市に限らず自治体が地方自治を行うために業務のオンライン化は不可欠であると考えている。一刻も早い業務のオンライン化が必要である。それによって業務を速やかに遂行できしかも仕事量は減り、私達は多くのサービスを早く受けることができる。オンライン化によって失うものや不利益をこうむるものは何もない、公務員も住民も全ての人がそれぞれの立場からメリットを得ることができる。もちろん全てのサービスをオンライン化することはできないだろう。しかし、できるものはどんどんやっていく、それを早くって行かないとサービスを提供できなくなる。まず、未来を見据えた計画をしっかりと立てる、上記に示したような問題点を解決する、そしてそれをできるだけ速やかに実行する。その過程をいかに上手にできるかに地方自治の運命がかかっているのではないだろうか。

考文献・リンク先 

宇都宮市のホームページhttp://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/index.htm

宇都宮市のホームページです。宇都宮の行事の案内、各種案内、行政改革について細かく記述されていました。便利なページです。

金沢市のホームページhttp://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/

金沢市のホームページです。市の行政改革について、観光案内、金沢の歴史などが記述されていました。ページの量が膨大で全て読むことは大変ですが、ホームページの中に記事を検索するページがあり、自分が見たい分野のページを検索して表示してくれるようになっています。こちらも便利なページです。

私のホームページhttp://bt_nagata.tripod.co.jp/

私のホームページです。このレポートを噛み砕いた記事もこのレポート完成と同時に載せました。これ以外にも自治体に関する記事も載せてあります。