2006年度「現代政治の理論と実際」
レポート一に対する担当教員(中村祐司)のコメント
(各タイトルをクリックすると各レポートが提示されます)
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氏 名 |
テ ー マ |
1 |
郡司 寿次 |
北朝鮮問題をめぐり、若い世代がメディア、政府、専門家の見解など電子媒体等を使って情報を収集し、自分の頭で考え抜くことが今こそ求められているのであろう。そうした上で多様な個々の考え方が表出することが大切なのであり、避けなければいけないのは真剣な考察を放棄して、特定の勢力の見解を鵜呑みにすることなのであろう。 |
2 |
峰村明日香 |
日本の集団的自衛権をめぐる論議が1949年を契機に始まったこと、その後の政府解釈の変遷、憲法と条約との整合性、行使不可の権利などいずれも重要な諸事項に真正面から取り組んでいる。しかし、PKO法等と絡めた考察や、解釈論だけでなく実態についての言及もあった方がいい。 |
3 |
高荒あかり |
利上げをめぐって最近でも日銀の独立性と政府介入が話題となった。公共放送についても同様である。NHKの運営コストと政府予算との関係について基本的なデータの提示があればよかった。「国営放送」「公共放送」「民放」という括り事態も交錯・融解の方向に向かっているのだろう。国際ニュースなどBBCの恩恵を受けている者にとって、NHKとの比較考察には興味深いものがある。放送価値の大前提として公共放送を比較優位としている点が引っかかるものの、関連情報に意欲的にアプローチした好レポートである。両者の具体的な番組を一つ取り上げて対比できれば考察の深みが増したのではないか。受信料をめぐる取り扱いの違いは、納税者主権のあり方をも連想させる。 |
4 |
山口喜子 |
「アメリカの厳罰化を背景にした日本の少年法改正の効用の有無」 厳罰化と抑止効果との関連については、議論が割れているのが実際ではないだろうか。厳罰化推進論者(あるいは容認派)が出す実証データも抽出してほしかった。論点は諸対応や諸要因を多岐にわたって把握しようとするのが否定派で、個人責任に近い形でシンプル化しているのが賛成派といったところか。結論は重くかつ的を射ているものの、従来から言われ続けてきたことで、あともう一歩オリジナルな考えを加えてほしかった。 |
5 |
南條緑 |
「共同」「クリーン開発」「排出権」の基本的枠組みが理解できる。同時に「偽りの削減量」など問題の複雑さも垣間見える。実施面での厳密性どころか単なるスローガンで終わる懸念もある。そうだとしてもこれが原動力となって様々な環境政策の実施へと波及していく可能性も否定し切れない。公共アクターと市場アクター、そして人々の理解と支援を得てようやく問題解決の入口に立てるのであろう。(個人的な印象レベルだが)とくに環境問題はやればやるほど分からなくなる。それだからこそ追及しがいのある人間の生存に直結する重要なテーマなのであろう。 |
6 |
本田眞季 |
「管理監督者不適合型」などの基本類型や、ワークシェアリング、オランダの制度への言及など、基本的事項の理解に役立つ内容にはなっている。労使間の歩み寄りも難題であろう。使用者側の視点も紹介できなかったか。一般論レベルの話の展開ではなく、読み手は処方箋としての具体的な「日本独自のワークシェアリング」の提示を知りたいはずである。 |
7 |
吉田あかね |
概要を理解した上で用語やキャッチフレーズのあいまいさを突いてはいる。しかし、イメージに対してイメージを対置させる論の進め方ではなく、定点的でもよいから何か具体事例を掘り出して、それに対する考察を行ってほしかった。最後にあるように、明日はわが身というのが人々の大方の実感であろう。仕事の確保や継続をめぐる責務・責任の分担は、個人、政府・社会、企業、その他の雇用組織などの間で微妙なバランスを必要とするのであろう。 |
8 |
遠藤久子 |
失業率・就業率の低い県に考察の対象を絞ろうとしたのはよかったし、地域間格差の要因についてもコンパクトにまとめてはいる。しかし、製造業、観光業、介護サービスにおける雇用を拡大する重要性を表面的に指摘するにとどまってしまった。課題に深く入り込んでいくには、「本質は細部に宿る」の精神で、一点突破主義的な意気込みが求められる。理念にもとづく実践の積み重ねが地域間格差解消の鍵になるように思われる。 |
9 |
和栗佳代 |
「結婚適齢期」という言葉は実は一昔前における人々の社会的知恵であったのだろう。現代は従来のいろいろな価値観が変わってきているというより崩れてきているのかもしれない。特例交付金交付後の成果事例を一つでも紹介してほしかった。保育園の充実だけで少子化の解消にはつながらないという指摘はその通りだろう。しかし、現状の育児支援政策の限界がどこにあって、それを克服するにはどうすればいいのかについては、「政府・企業・国民」といったレベルよりも地域社会レベルの実践に目を向けた方が、より多くのヒントが得られるのではないだろうか。 |
10 |
中村祐司(担当教員) |