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郡司 寿次「北朝鮮問題の歴史的・政治的背景」

 

現在の北朝鮮には、複数の解決すべき問題が存在する。それらは北朝鮮の歴史的・政治的背景、そして他国との関係を捉えずには解決し得ない問題ばかりだ。このレポートでは、それらを考慮に踏まえ、現在ニュース等で報道される代表的な北朝鮮問題を複数挙げて、一つ一つ考えていきたい。

 

1.北朝鮮の概要

     国名…朝鮮民主主義人民共和国(首都:平壌)

     国歌…愛国歌

     言語…朝鮮語

     面積…120,540km²

     人口…22,697,553

     思想…主体思想

     通貨…ウォン

(フリー百科事典「Wikipedia」より抜粋

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE

 

 北朝鮮に宗教は事実上存在しない。それに取って代わるのが主体思想である。

〔主体思想とは〕

  勤労する人々を基本とし、自主的要求と創造的な活動によって結合された社会集団が大衆民族だ。

    (日経ビジネス 「ビジネスキーワード」より抜粋)

 

 主体思想は、金正日自身によって研究され体系化させようとしているものである。そしてこの思想・宗教以外に北朝鮮の革命と建設を正しく導くことはできないと定義している。つまり、主体思想以外の思想・宗教を信仰することは金 正日の政治に反対しているとみなされ、公開処刑や収容所行きになるという様な処罰をされる。強制的に主体思想を信仰させ、それ以外の思想・宗教は排除してしまう。国民に信仰の自由など無い。国民を主体思想で洗脳してしまうのである。

 

2.北朝鮮による独裁政治体制

  北朝鮮、朝鮮半島は他国からの侵略を幾度と無く受け、いくつのも国が興廃し、戦いが起こった地域である。朝鮮半島内でも弱肉強食的な地域の侵略、略奪が頻繁におこった。その度の元首は国民のことを考えない、戦を主に考える(つまりは自分の領土を広げる)元首ばかりであった。それは現在の北朝鮮に見られる、極端に排他的な独裁政治体制を生み出した。

国名から民主主義国家とは謳われているが、実際は金 正日による個人独裁政治体制である。北朝鮮の政治は、建国当初から旧ソ連のスターリンによる政治,ナチスのヒトラーによる政治を模して行われている。特にヒトラーからの影響は強く、金正日は『我が闘争』を熟読してお手本にしているとも言われている。

北朝鮮はその独裁体制を維持するためには、最高指導者は自らの息子(つまりは金 日成の子孫)を選ぶべきだという考え方があり、決定の際には現在の元首が存命中に次の後継者を選定しなければならないとしている。事実、権力者が金 日成から金 正日へ変わる時も金一族以外にも元首候補がいたが、金 正日により彼らは暗殺または収容所行きになるなど彼の行使したあらゆる手段で他の候補は蹴落とされた。このことから北朝鮮が民主主義国家ではないことがはっきりとわかる。

 

3.北朝鮮による拉致問題

  そもそも、どうして北朝鮮は拉致をするようになったのか。当初、北朝鮮は韓国人のみを拉致していた。その理由は、北朝鮮と韓国は南北に分断されて以降、同じであるとはいえ言語や文化に若干の違いが見られるようになり、韓国人を拉致し教育係として使うことによってその差を埋めようとしたからである。

  しかし、韓国政府によりそうした工作員活動の圧迫を受けたため、拉致の穂先が日本に向くようになり、今度は北朝鮮人に日本語と日本文化を教える教育係として日本人を拉致するようになった。また、日本人を拉致する理由として、他にも韓国より外国との関係が広い日本人を拉致したほうが諸外国の情報を得ることができる、日本の高度な工業技術を北朝鮮に移転するため、過去に日本が朝鮮半島を侵略したので、その仕返しという言い訳もできるからだ。

  だが、近年の北朝鮮による拉致はその本来の目的を逸脱しているように思われる。ただむやみに拉致をしているとしか思えない。なぜならば、拉致した日本人を教育係や技術移転士などの職務に就かせず、北朝鮮国民と同様に貧しい生活を遅らせる事例があるからだ。

(フリー百科事典「Wikipedia」を参考にし加筆した。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE

 

4.北朝鮮による核開発・ミサイル問題

どうして北朝鮮は核・ミサイルを持ち、開発を進めるのか。その理由はいたって簡単

である。北朝鮮を存続させるためである。核・ミサイルがなければ北朝鮮はただの貧しい国であり、崩壊するのは時間の問題である。核を盾にし、それを支援する韓国・中国・ロシアによって生き残ってきた被援助国である。

 現在、国連で行われている6カ国協議において韓国・中国・ロシア以外の国は北朝鮮に核を放棄させるために包囲網をかけている。最近では北朝鮮が核を開発し、ミサイルを発射したため、韓国・中国・ロシアも包囲網をかけざるを得ない状況にある。しかしここで問題なのは、日本以外の国は核の保有国であり、北朝鮮に核放棄を要求してもすぐには受け入れないのは自明の理であるということだ。全く説得力がない。これではいつまで経っても解決する訳が無い。

 また、もし韓国・中国・ロシアが北朝鮮を敵に回しても、結局のところ北朝鮮は核を持ち続けることになるだろう。というのは、北朝鮮を支援する国は韓国・中国・ロシアだけではないからだ。イラク・キューバの支援がある。その2国は北朝鮮と同じく核・ミサイル開発を推し進める国であり、世界からの非難を浴びているが友好関係が保たれている。北朝鮮の非核化への道筋にはその二国が鍵を握っているのではないだろうか。

 

5.北朝鮮の国民・食糧問題

北朝鮮は現在、慢性的な食糧不足である。それによる餓死者は増加する一方である。また、生きている大半の北朝鮮国民は、十分な食事ができないために痩せ細った体でほぼ栄養失調状態である。かつて行われていた、国民を救うための配給制は完全に崩壊し、国民は自給自足を強いられている。各国からの食糧援助も核開発に歯止めをかけるために停止になってしまった。

他国からの食糧援助がなくなることは北朝鮮にとっては大きな打撃となる。なぜならば、北朝鮮は寒冷で亜寒帯の気候であるため、もともと農耕には不向きの土地であるからだ。このため、国民が自給自足していくには限界がある。また、配給制の崩壊は金 正日政権の不振を招き、脱北者をさらに増加させた。さらに、現在ではそのことが彼の側近官僚にまで及んでいて、金 正日政権は半ば機能していない。官僚まで脱北し北朝鮮の実情を国際社会に伝え“北朝鮮バッシング”をする人も出てきた。

  北朝鮮は自らが起こした拉致や各問題で自らの首を絞める結果となってしまった。

 

 

 最後に、北朝鮮問題は短期間ではなく、時間をかけてじっくりと北朝鮮の動向を踏まえながら長期間にかけて解決する問題であり、私たちはそうしなければならないと考える。なぜならば、北朝鮮問題には深い歴史が関わっているのが基本であり、その歴史が短期間では解決できないようにしていると思うからだ。歴史が関わっている以上、私たちはそれを奥深い部分まで追及して、それに伴う国内事情・政治的背景及び諸外国との関係を踏まえなければ解決することは無いだろうし、解決する資格すら無いのではないだろうか。

 

北朝鮮・・・・次に大きな転機を迎えるのは金正日政権が終わった日である。