2003年度前期 初期セミナー「インターネットと政府情報」
担当教員(中村祐司)によるコメント
(各タイトルをクリックすると各レポートが提示されます。)
|
氏 名 |
タ
イ ト ル |
1 |
呂 娜 |
両国のインターネット環境に身を置いた経験をもとに、インターネットが抱える影の部分を明らかにしようとしている。読んでいると、インターネットというのは、利用者が好むコンテンツや利用者の欲求に対応しているものなのか、利用者を特定の方向に導くことをそもそも目的としているのか分からなくなってしまう。異国語でこれだけの記述をした労を多としたい。ただし、もう少し質量ともに多様な情報源に当たることはできなかったであろうか。「私的」としたことで確かに課題の絞り込みがなされたとはいえるものの、インターネット情報の何を問題とするのか、具体的事項をテーマに盛り込んだ方がよかったかもしれない。 |
2 |
山領 佐津紀 |
情報公開を手放しでは支持していない。とくに公開の中身について日本政府による3段階の診断基準に批判の目を向ける。中国の「電信条例」の存在も分かる。「インターネットの普及は、今まで政府や党が独占してきた情報を一般人に拡散させることになる」といった見方や、SARSが中国にとって「良い置き土産」となったという指摘は傾聴に値する。最初から最後まで歯切れのいい文章が続き、テーマに関する作成者の視点はぶれていない。インターネットを国家が統制のツールとして用いることは難しいとの考えであるが、インターネット情報そのものが、予期するとしないにかかわらず、人々の思考や評価付けを特定の方向にスピーディーに誘導してしまう危険性は否定できないように思われる。 |
3 |
高橋 伸嘉 |
これだけ大きなテーマ・難問を、何とか自分の言葉で理解し解釈しようと終始する姿勢を維持している。まさにグローバル化においては、「巨大な資本によって暴力的な『開発』」が行われているのである。作成者はこうした「負の側面」に対する反グローバル化の動きに注目する。しかし、アフリカにそれを押し付けるのではなく、アフリカ自身が「反グローバル化の重要性を認識」すべきだと強調する。その具体例として期待を込めてNEPADが挙げられる。敢えてアフリカを丸ごと捉えて、これを世界の先進諸国との関係構図の中で把握しようとした先鋭な問題意識は評価できる。しかし、大陸を構成するアフリカ諸国間関係が抱える課題の整理・提示がないために、読む者にはイメージレベルの「アフリカ」像しか伝わってこない。アフリカ諸国の間での「勝ち組み」と「負け組み」の見取り図やその歴史的背景や原因を探ることから始める必要があったのではないだろうか。 |
4 |
金井 隆文 |
「食事と健康」 「自分が偏った食事を続けていても、体調を大きく壊したり、病気になったりするまで、ほとんどの方は気がつかない」傾向にあることは確かであろう。このように随所になるほどと思わせる記述が示されてはいるのだが、いかんせん栄養ならぬ全体構成の「アンバランズ」が気になる。栄養バランスのある「食材」をどう確保して調理していくかは、下宿生活を送る学生にとって切実な問題であろう。その意味でも興味深い「題材」をせっかく取り上げたのだから、これをあくまでも自分が主導する形で「加工・調理・咀嚼」してほしかった。 |
5 |
舘野 梢 |
「スポーツが地域のシンボルになる」具体例として、カシマスタジアムの新築か改築かをめぐる議論の過程を取り上げる。各ポイントを整理するだけに終わらず、改築派に組する作成者の見解がそのつど提示される。果たして、スタジアムは「ワールドカップの負の遺産」から脱却できるのであろうか。作成者は、韓国の事例検討を経て、日本における都市公園法の改正により、スタジアムが民間経営・収益事業を可能とするようにすべきだと提案する。そして、高速道路I.C.やスタジアム隣接の大規模商業施設こそが「新しい地域振興の道具」になると締め括るのである。起承転結の構成がしっかりとなされ、文章表現も一文一文が的確である。惜しむらくは、例えば、都市公園法において収益事業が認められない理由や、この法律を改正した場合のデメリットの部分にも言及してほしかった。 |
6 |
中村 祐司 (担当教員) |