「栃木科学・技術シンポジウム2001」

---

第2部   インターネット・ミーティング

―ITがつなぐ文化―

---

講演者/金淑子・祥明大学校日本語教育科長(教授)

(韓国祥明大学校からのIT中継)

演 題/韓国における日本語教育の現状と展望レジメはこちら(pdfファイル)

 

講演者/「徳姫・祥明大学校日本語教育科教授

(同じく韓国祥明大学校からのIT中継)

演 題/韓国の高等学校における日本語教育の現況と展望レジメはこちら(pdfファイル)

 

コメンテーター/佐々木史郎・宇都宮大学国際学部教授

司会/藤田和子・宇都宮大学国際学部長

---

 

藤田:祥明大学校と宇都宮大学の間では学生と教員の緊密な連携が続いている。金教授は言語学が専門。韓国における日本学の第一人者である。続いて報告される教授も韓国における日本語教育学を文字通り支えている存在である。

 

:このような機会をいただき大変うれしく思う。韓国での大学の外国語教育は1950年代以降本格化した。1958年に日本語教育が開始した。日本語と日本文学、日本の歴史、日本事情の専門家を養成することを目標としている。歴史的には1970年代に日本語学科が設置された。

 

日本研究、日本語教育の教育水準の向上には目覚しいものがある。例えば、モデルカリキュラムとして日本学、日本語教育、日本文学などがある。韓国日本学会が存在し、ここでの発表の質は高い。学生の間で日本語学と日本文学理論が人気科目となっている。韓国では現在23校において日本社会や日本文化の講座(セミナー)がある。内容は多様で、その特徴は総論よりは各論を重視しており、インターネットを資料として駆使している。

 

1980年代以降、大学の教養日本語などの名称で教科書が開発されたが、まだ試行錯誤の段階であった。しかし、以後、日本人著者による教科書が登場するようになった。出版界は不況であるが、日本語、日本社会関係の書籍は好調である。当学部では8つの学科があるが、いずれの学科でも日本に対する関心は高い。21世紀の韓国の教育の変化として、インターネットを通じた情報検索能力と通信能力を高める政府戦略が実施されつつある。

 

祥明大学ではサイバー講義がなされている。休学生が増えている原因として短期留学のため日本へ行く学生が多いことも一因である。現在、大学生は就職難の中で有利な条件を得るために日本に来て語学の力を付け、これを武器にしようとする傾向にある。日本語能力試験を受ける高校生も増えている。

 

:韓国における高校の日本語教育について話したい。歴史的にみると、日本語教育が韓国の国語教育とされた時代もあった。戦後、日本語教育が再開され現在に至っている。1973年から日本語教育が韓国の高校で始まり、以後、年々盛んになっている。

 

高校の日本語教育には、第1次教育課程から第7次教育課程まである。意思疎通を中心にした文化理解向上を柱としている。言語表現にも力を入れている。日本語でのインターネット検索能力向上も目指している。日本語教師の数は少しずつ増えている。2000年には日本語教師が1、600人を越えた。第二外国語として日本語を教えているところが増えている。日本語教育需要も増大している。日本語教師の資格の現状について、大学で日本語の教育を受けなくても日本語教師になることができる。高校日本語教師の海外研修も盛んになりつつある。いままで約360人が日本での研修を経験している。

 

教科書について、実務日本語など広範囲に及ぶ傾向にある。高校で日本語を学習する高校生が増えつつある。日本語教育の目的として、コミュニケーション能力の向上、国際理解や異文化理解が挙げられる。国際的な通用語として日本語を学ぶ傾向にある。生徒は大学就学能力試験と日本語能力試験を目指している。いずれにせよ日本語が圧倒的に人気がある。

 

今後の展望として、中学校で日本語教育がなされると今後もっと学習者は増えるだろう。その他、文化センター、インターネット教育などを通じて広く日本語が学ばれるものと思われる。韓国と日本の交流を通じて、日本の韓国語教育の発展も強く願っている。

 

---

 

佐々木:2、3お尋ねしたい。金先生、大学での日本語教育が教養的な部分と専門的な部分に2つに分かれているというお話があった。この教養と専門について貴大学ではどのような編成をとっているのか。

:多様な科目を用意しており、教養と専門が連結するような構成になっている。

 

佐々木:東アジア日本語教育学会が貴大学で開催されたと聞いたが、その内容について知りたい。

:年少者の日本語教育が始まったことなどが報告された。文化と教育に関する発表が多くなされた。

 

佐々木:裴先生、大学に入ってくる学生の日本語の力に変化はみられるのか。

:過渡期であり、今後は既に高校で日本語の力を付けた学生が入ってくるのではないかと思われる。

 

佐々木:宇都宮大学では来年度から入試センターの選択外国語として韓国語を採用することになっている。今後ともこのようなネットミーティングを大いに活用していきたい。

 

---

 

栃木・科学技術シンポジウム2001TOPへ

 

(文責 中戸祐夫、中村祐司)