宇都宮大学国際学部「出前講義」

 

「国際社会を見る目を養おう―国際情報の読み取り方―」

 

中村祐司

 

 於)開智高等学校(和歌山市)「開智オープンセミナー」(2003719日)

 

開智高校の皆さん、ありがとうございました!

 

和歌山城から市街一望

 

---

 

―講義内容の概略―

イラク戦争をめぐるアメリカのテレビ局の報道タイトルが以下のように変ってきたという。すなわち、最初は”After the War(戦争後)”といわれていたのが、”Still in the War(いまだ戦闘が続いている)”、さらに最近では”Guerrilla War(ゲリラ戦争)” という表現が使われている、とのことである。このような一面を見てもイラク戦争が果たして終結したといえるのかどうかについてはいろいろな見方がある。

 

今回の講義では日本の近隣の国で極めて深刻な状況にあるといわれる北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を取り上げたい。なかでもKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)という組織に焦点を絞り、ここから何が見えてくるのかをみんなで理解していきたい。

(*この後、1980年代および90年代の北朝鮮の状況変化について、とくに食糧危機の側面から把握した後、KEDOが誕生した背景を1992年のIAEAによる査察以降、今日に至るまで具体的に説明した。IAEA(国際原子力機関)、NPT(核不拡散条約)、国連安保理、軽水炉、ウラン濃縮計画、重油提供、米朝間の「合意された枠組み」(9410)0210月の米政府発表、「日朝平壌宣言」(02917日)といった用語についても噛み砕いて解説した。そして、KEDOが国際関係の協調をめぐる歴史において、エネルギー供給を軸に理想平和を追求した極めてユニークかつ「壮大な実験」であったことを指摘した。)

イラク戦争に突入した最大の理由の一つにイラクの大量破壊兵器保有が挙げられていたが、現在、その信憑性をめぐって、情報操作が行われたのではないかという疑問が噴出している。あくまでも私見だが、北朝鮮が訪朝した米国務次官補に核開発を認めたという、0210月の米政府発表をめぐっても情報操作が全くなかったとは言い切れないのではないか。そうだとするならば、私たちは国際情報を読み取る際にどのような点に注意しなければならないのか。

結論としていえるのは、国際社会を見る上で絶対的な解答は分からないということである。その解答は歴史が証明するものになるかもしれない。この点、もどかしい面があることは否定できないが、だからこそ、国際社会の出来事を勉強する醍醐味があるともいえる。そして、情報源と意識して距離を置く姿勢も必要であるし、何よりも、答えを自分の力で見いだそうとする学問的情熱が大切ではないだろうか。

また、今回のようなテーマを追求していく際に、これを掘り下げて行けば行くほど、英語力はもちろん、化学的な知識が問われることになる。その意味で受験勉強は大学で学ぶための基礎トレーニングの性格を有しているように思われる。高校時代に学んだことは大学入学後、決して無駄にならない。ぜひ、今の時期、得手不得手に関係なく、いろいろな科目を貪欲に学んでほしい。

 

(*なお、今回の講義内容のもととなったものが、以下の最初の小論で、その他の小論についても講義の際の土台とした。)

http://gyosei.mine.utsunomiya-u.ac.jp/since2001koki/gen02/nakamuraygensei030114.htm

「北朝鮮問題における関係国の交渉戦略と政治的背景の特質」(20031)

http://gyosei.mine.utsunomiya-u.ac.jp/since2001koki/yoka03/kanseireport/nakamuray030702.htm

「北朝鮮をめぐる政治情報と観光情報のギャップをめぐる考察」(20037)

http://gyosei.mine.utsunomiya-u.ac.jp/since2001koki/shoki03/shokikanseireport/030709nakamuray.htm

「大学の講義・レポート作成におけるインターネット情報利用の功罪」(20037)

http://gyosei.mine.utsunomiya-u.ac.jp/sogoenshu/030522enshu02.pdf

「『地球民主主義の展望:軍民関係を主な視点として』についてのコメント」(200211月。PDF19KB)

 

 

研究室トップへ