民間出身の校長

 

 都立高島高等学校の校長に、民間企業日立の管理職だった内田睦夫さんが就任した。

 

 選考理由

民間企業で培った社員教育経験や経営能力を遺憾なく発揮し、実践でのノウハウを活かし、魅力的で個性的な高校のモデルを作り上げることができるだろう、ということから。

学校の組織、考え方は企業より遅れていて、教員上がりのでは学校経営の建て直しが思うようにいかない。

 

内田校長の意見


 都教育委員会は二十日、(株)日立テクニカルサービス取締役兼山手製造部長だった内田睦夫氏(55)を、来年四月の校長定期異動の際に都立高島高校の校長に配属することを決めた。同氏は、平成三年から六年まで管理職として一万三千人の社員教育を担当した経験があり、都市対抗野球でも選手や監督として活躍したキャリアを持つ。都では、十月一日付で都立高校経営調査担当校長として任用していた。配属校が決まり、内田氏に抱負と決意等を聞いた。高島高校は全日制普通科高校で、二十一学級あり、生徒数は八百六十四人。
                
 
★校長になろうと思った理由
 日立製作所に三十二年余り在職。一万三千人の工場でMI、要するに経営改善のセクションがあり、これは工場長の方針をいかに浸透させるかという仕事だ。ここで教育を含めて研修、組織、委員会などを作る仕事をやったことがある。運動では、野球の監督になった時、人に教えることの魅力を感じた。そういう中で教育に関心を持った。最近の若者に対し自分が持っていることを還元できればいいな、という気持ちでいた
 
★都立高校に必要なことは?
 学校運営では、人事考課制度が動き出したが、校長方針に具体性がない。各教員が自己申告するにしても、風呂敷を広げたような方針なので、具体的なものが出てこないのではないか。かみ砕いて長期的な方針や短期的な方針を立てるべきだ。
 組織的には、鍋蓋(なべぶた)方式だ。生徒が約八百人、それを教える先生は事務を入れて八十人程度、その中に管理職は校長と教頭の二人だ。こうした中で一つのことを学校全体に浸透させるには、主任者を充実していく必要がある。
 企業と違っているのは報連相、つまり報告・連絡・相談のシステムがなっていないことだ。体質的には、先生方が新しい取り組みに拒否反応を起こすとか、教員同士の仲間意識が変に強いとか、プライドが高い人が多いなどだ
 
★学校現場で技師の経験をどう生かすか
 民間人から都立学校に校長を招へいするのは、組織の活性化に対して問題があるため、と聞いている。組織を動かすには、運営方針をいかに全員に周知徹底するかにある。私は、エンジニアとしては二十年ぐらいで、後は管理職だった。そこで心得たのは、自分の頭をいかにビジュアルにするかだ。高島高校の校長は何を考え、何をしたいのか私が一いったら、二わかるような運営をしたい。そういうのは、企業のノウハウが生きると思う
 
★最近の十七歳の事件をどう見ているか
 我々の時代も同じようなことがあり、基本的には変わらないと思っている。ただ、今の子どもは、これだけ複雑・高度化した社会に対し、自分が何をすべきか目標がつかめていない。自分のターゲットが設定されないままに、不安のままに行動しているのが原因ではないか。十七歳の一番揺れ動く時期に、自分自身を見つめるような時間を多く持つことで、悩みを解決してやりたい
 ★学校改革では「教師の教育」も必要では
 すでに教育庁では、学校の先生に一年間、長期社会研修で異文化に接しさせることを行っている。これは大賛成だ。私自身も日立製作所にいる時から学校の先生方と話をしていて、社会に目が向いていないと感じていた。主役である生徒が社会に対して、いろいろな見方を知りたいのに、先生方が知らないというところがある。ぜひ異文化を経験してもらいたい。生徒のよき相談相手になるような先生方を育成することが、大事だと思っている
 
★学校外からの任用ということで、職員会議などは大変では
 今の位置づけは企画調整会議で決めて、職員会議は連絡事項だ。異論が出ると思うが、運営方針や校長が考えているポリシーを明確に打ち出すことで、企画調整会議、職員会議を円滑に進めたい
 
★学校に求められる経営能力とは、何か
 人の采配。生徒が主役だから、生徒のために何ができるか、そのために先生方がいかに活動しやすくするか、これが校長としての仕事だと思う

 

 民間出身校長のメリット・デメリット

 メリット

    企業で培われた合理性がさまざまな面で生かされるということ

    教育現場が閉ざされたものでなく視野を広げることがことができる

デメリット

    教員経験から得られるものが備わっていない

・一般の教員免許をもつ職員との関係

 

私は民間出身の校長には今のところ反対の意見である。メリットはそれなりにあるかもしれない。しかしそれを超えるデメリットが多いのでは、と思うのである。企業での新人育成と学校での最高責任者では異なる部分が多い。まず、企業は教育を受ける側も大人であるが、学校の生徒はほとんどが未成年であり、心身ともに発達過程にある半分大人、半分子供の微妙なとしごろなのではないだろうか。生徒が扱いにくい、というわけではないが、私自身中学高校のころなどは思春期だったせいか自分でもどうにもできないような不安を抱えたり、些細なことで悩んだりと、複雑な心境だった記憶がある。恥ずかしい話、親身になって心配してくれる担任の先生のことさえ疎ましく思ったりしたものである。

私のような例はそんなに珍しいものではなく多くの人が経験してきたことではないだろうか。このようなことに現場の教師は悩みながらも、教師自身も経験を重ねて生徒の気持ちなどを徐々に理解していくことができるのではないだろうか。

校長というのは生徒と直接かかわることは少ないかもしれないが、教員をまとめる校長が担任経験もないのでは私は自分がもし先生になったらその校長とうまくやっていけるのかと不安に思うところも正直ある。