市民参加型まちづくり
市民参加型まちづくりに関して、秋田県鷹巣町と北海道岩見沢市、それぞれのホームページからその様子を見てみたいと思う。
このふたつのまちを選択した理由は、日本における「タウンモビリティ」の実施状況を調べていて、国土交通省の「歩いて暮らせるまちづくり」プロジェクトに行き当たり、そのプロジェクトモデル地区として挙げられていたまちのなかで行政や他のまちから高い評価を得ていたからである。
*秋田県鷹巣町
国土交通省、「歩いて暮らせるまちづくり」プロジェクトモデル地区
秋田県 鷹巣町 鷹巣中市街地地区 |
地方小都市の中心市街地の空洞化に対応した取り組みのモデルとなることが期待される。タウンモビリティ導入の社会実験やコンパクトシティの構築に向けたシンポジウムの開催など先進的な取り組みの実績がある。また、福祉分野では誰もが安心して暮らすことができる福祉の街づくりを推進するため、住民参加のワーキンググループによる取り組みの実績があるなど、今後の展開が期待される。 |
(http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/policy/arukura/sentei.htmより抜粋)
住民参加による福祉のまちづくり
鷹巣町の福祉は、先進地である北欧のデンマークをモデルとしている。デンマークには「寝たきり」の高齢者がいない。個人一人ひとりの能力が尊重され、高齢者や身障者が健常者となんら変わりなく豊かに暮らせるまちづくりが行われている。鷹巣町でもそんな理想の福祉の姿をめざしてまちづくりを進めている。
鷹巣町の福祉のまちづくりがスタートしたのは平成4年。これまでソフト、ハード面合わせ各種の成果を実現させてきた。ソフト面では24時間ホームヘルプサービス、老人訪問看護、60人以上にものぼるホームヘルパーの確保など。ハード面では、福祉の拠点である在宅複合型施設「ケアタウンたかのす」を始めとして、その衛星施設であるサテライトステーション(1〜4号)、痴呆性老人のグループホーム「居宅生活支援の家」など。
これらの成果はすべて、住民のボランティア組織であるワーキンググループによって検討・提案がなされ実現したもの。
福祉のまちづくりの主な成果
〈年度〉 主 な 成 果
〈H4〉
・福祉のまちづくり懇話会発足
・ボランティア団体連絡協議会結成
・ボランティア情報にコンピュータを導入
〈H5〉
・機構改革により福祉保健課となる(保健、福祉の一本化)
・役場の窓口カウンターを低くする(車イス対応)
・リフトバス(移送者)稼動
・ホームヘルパー30人(常勤に18人、パート12人)に増員、派遣時間を21:00まで延長し派遣も開始
・介護者の会結成
・老人訪問看護ステーション開設
・ワーキンググループの活動拠点「福祉の家」設置
・ホームヘルパー24時間(深夜)派遣を開始
・役場玄関自動ドア化
・心身障害児通園事業「もろびこども園」開設
〈H6〉
・サテライト施設第1号(竜森コミセン)完成(7小学校区にデイサービス機能をもつ地域センターを建設)
・福祉ガイドブック作成〜全戸に配布
・ホームヘルパー41人(常勤に21人、パート20人)に増員〜毎日派遣、1日3〜4回の巡回ケースが増える
・住宅ケアのシステムづくり(福祉・保健・医療の連携)〜長期入院の解消、総合利用券実施、オンライン化
〈H7〉
・児童公園に身障者用トイレ完成
・ホームヘルパー50人(常勤に23人、パート27人)に増員〜24時間派遣、在宅型から巡回型に
・竜森コミセンのデイサービスの利用拡大(月2→週1)
・サテライト施設第2号(地域福祉センター)完成
・デイサービス(B型)事業開始
・中央公民館スロープ屋根設置
〈H8〉
・視力障害者用信号機の設置
・ホームヘルパー常勤24人、登録27人
・ケアタウン計画着手
・在宅介護支援センター開設
・ウエルフェアテクノハウス(介護機器の家)完成
・デイサービスを土曜日へ拡大
〈H9〉
・保健センター完成
・ホームヘルパー常勤25人、登録28人
・デイサービス(E型)開始
・ケアタウン在宅複合施設建設着工
・ホリデイーサービス
〈H10〉
・サテライト施設第3号(サテライトステーションさかえ)完成
・居宅生活支援の家(痴呆老人グループホーム)設置
・ケアタウンたかのす完成
〈H11〉
・「介護保険事業計画をつくる会」発足
・ケアタウンたかのす開所
・補助機具センター完成
・サテライト施設第4号(サテライトステーションつづれこ)完成
・ ホームヘルパー66人に増員
タウンモビリティ
高齢者や障害者が健康で生きがいのある生活を送るためには、各種の福祉サービスの充実はもちろんのこと、健常者と同じように町に出かけ、市街地の商店で買い物をすることができるような生きがいを持てるまちづくりが望まれる。そのため鷹巣町では、電動スクーターや小型電気自動車などの交通弱者でも利用ができる移動手段を利用し、高齢者や障害者がスムーズに市街地を移動できるシステム「タウンモビリティ」に取組んでいる。これまでに行われた導入実験では利用者の方には概ね好評で、平成12年度からは中心商店街の空き店舗を活用して希望者に無料で貸し出すシステムがスタート。
住民参加のまちづくり
鷹巣町では、住民と行政が共同作業でまちづくりを行う「住民参加のまちづくり」を進めており、その代表的な手法として「ワーキンググループ」があります。ワーキンググループは、「自ら考え、提言し、できるものは自らがボランティアとして実行する」ことを基本とし、在町では、福祉をはじめごみのリサイクル、駅前再開発、町営住宅の立て替えなど8つのワーキンググループが活動しています。
・ごみワーキング
平成12年4月から実施された「容器リサイクル法」実施に合わせ、ごみ分別の徹底とリサイクルを進めている。現在3地区で組織されており、全町へ波及させるためのモデル的役割を果たしている。
・高野尻団地改築ワーキング
老朽化した町営住宅を改築する上で、入居者によるワーキングが組織された。計画段階からワーキングの意見が設計に反映され、バリアフリー化などが図られるなど、公共住宅のイメージを変えている。
・商業地開発ワーキング
町の顔である駅前・銀座通り商店街を守るために組織されている。空き店舗の活用や駐車場の整備などについて意見が交わされる地域商業を取り巻く問題に立ち向かっている。
・ふれあい通院バスワーキング
路線バスのない地域で高齢者が通院するための代替タクシーを走らせることを目的とし、沿線集落の住民で組織された。現在週1便ではあるがジャンボタ
クシーによる運行をしている。
・文化遺産ワーキング
複数のストーンサークルを持つ縄文遺跡「伊勢堂岱遺跡」の保存と活用に取組んでいる。メンバーは高校生から高齢者までと幅広く、遺跡のガイドなどもボランティアで行われている。
・町営スキー場ヒュッテ建設ワーキング
町営薬師山スキー場の地元自治会、スキークラブなどでワーキングが結成され、住民が利用し易いヒュッテが計画・建設されるとともに、スキー場の活用、
振興策について検討されている。
(参考:鷹巣町役場ホームページ http://www.kumagera.ne.jp/takanosu/)
*
北海道岩見沢市
国土交通省、「歩いて暮らせるまちづくり」プロジェクトモデル地区
北海道 岩見沢市 岩見沢駅周辺地区 |
冬期でも歩いて暮らせる街づくりを目指す取り組みは、積雪寒冷地の街づくりのモデルとなることが期待される。水と緑と文化のプロムナードを基本的な考え方として、駅前通りを軸に公共空間のバリアフリー化や情報基盤整備等の施策がまとめられている。これまでに住民参加の街づくりについて多くの表彰歴があり、住民主体の街づくりの取り組みが期待される。 |
(http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/policy/arukura/sentei.htmより抜粋)
ふるさとづくり4つの柱
・ 安全・安心で快適なふるさとづくり
・ 健康・福祉を高めるふるさとづくり
・ 教育・文化をはぐくむ心豊かなふるさとづくり
・ 活力のあるふるさとづくり
計画の推進には、(1)市民の参加と協働:地方分権進展に伴い、市民と行政が,それぞれまちづくりの協働の担い手としての責任を自覚し,自らの役割を主体的に果たすことが大切。(2)広域的な連携の推進:近隣市町村との有機的な連携と協力を図り、地域の情報化、地域間交流の促進、進行プロジェクトの展開に努める。(3)市政の役割:行財政改革、構造改革、効率的な行政運営と健全な財政運営を進め、市民サービスのいっそうの向上を図る。
(参考:岩見沢市役所ホームページ http://www.city.iwamizawa.hokkaido.jp/index.html)
ひとことで「まちづくり」といっても、その内容は多岐にわたるものである。土地利用、環境、福祉、産業や商業の活性などが挙げられる。「市民参加型まちづくり」を推進していく際、重要なことは、なんといっても、いかにして市民の自主的な協力を得るかということであると考える。そして、その協力を得るために、いかにして市民の興味を「まちづくり」ということに向けさせるかということは重大な問題であろう。
「まちづくり」の第一歩は自分の生活しているその周囲に目を向けるということではないだろうか。どんな環境の中に暮らしているのか、どんな人が同じ環境に暮らしているのか、ということに目を向けたとき、自分の住む「まち」に小さくても興味を持つことができるかもしれない。「市民参加型まちづくり」をはじめようとしたとき、身近な小さなことからはじめるのがよいだろう。ごく小さな町内会での、花壇の整備やごみ拾いなど、小さなことではあるが
“住みよいまち”への一歩に違いない。上記の鷹巣町のようにボランティアのよるワーキンググループの自主的な活動も評価されうるものであると思う。
ほかにも、多くの地域住民の興味を引き、協力を得るには、町内のこども会という存在も大きな役割を担うことができるのではないだろうか。こども会が主体となってごみ拾いや廃品回収等を実施する(もちろん実施要綱等は大人の手によるものということになるが)。こどもたちもはじめはいやいやかもしれないが、町内をまわりながら廃品(古雑誌や空き瓶など)がどんどん集まり、自分たちのやったことが社会の役に立つことが目に見えて実感できる。自分たちも町内の一員なのだという自覚、地域の人たちとのつながりが強く感じられるようになる。(実際にこども会で定期的に廃品回収を行っている前橋市荒牧町子供会育成会のホームページ:http://www6.wind.ne.jp/aramaki/)
「市民参加型まちづくり」においてその動力となるのは市民ボランティアということになるが、“ボランティア”ということに抵抗を感じる人は多いのかもしれない。日本ではボランティアといえば“無償・奉仕”というイメージが強く、「ボランティアなんて、偉いわあ」などの意見も多いのではないかと思われる。
(実際,私の父が役場でまちの環境保全に関しての仕事にかかわったとき、ボランティアの協力を求めるということになったとき、“ボランティア”という言葉はしっくりこない、他にいい言葉はないのかと話していたのを思い出す。やはり、無償奉仕の自己犠牲的なイメージというものがあったからなのかと思う。) “ボランティア”という言葉を敬遠するのではなく、社会の活動に自主的に参加し、自分の住んでいるまちをよく知るよい機会ととらえられるようになればよいと思う。