行政学演習
女性の労働 990127C 佐藤美佐子
1.厚生労働省による調査から
(1)働く女性の現状
平成12年の女性の雇用者数は、2140万人で前年より24万人増えた(1.1%増)。雇用者総数に占める女性の割合は、初めて40.0%となった。
女性の労働力率(15歳以上の労働力人口に対する就業者の割合)は、相変わらずM字型カーブを描いているが、カーブの底である30〜34歳の労働力率は57.1%と、90年に比べると5.4ポイント上昇した。しかし、30〜34歳層、35〜39歳層の労働力率は未婚者層では上昇しているが、既婚者層では低下している。
*図は、総務省統計局「労働力調査」調査結果を参考に作成
また、大卒女性の就職率は57.1%で前年より2.7ポイント下がったが、女性の新規学卒就業者総数に占める大卒者の割合は36.1%と、過去最大となった。
(2)男女の待遇の違い
「新規大卒者の就職活動等実態調査」から
就職活動中に出会った男女別取扱いについてみると、4年制大卒女性では、「面接の時、『結婚や出産をしても働き続けますか』ということを女性にだけ質問していた」をあげる者が32.9%で最も多く、「女性には会社案内を送付しない企業があった」(28.6%)、「男女で募集人数が異なっていた」(28.3%)が続いており、「『男性のみ』あるいは『女性のみ』を募集していた」をあげる者も2割を超えている。
4年制大卒男性では、「男女で募集人数が異なっていた」をあげる者が21.6%で最も多く、次いで「『男性のみ』あるいは『女性のみ』を募集していた」(15.9%)、「女性には会社案内を送付しない企業があった」(12.9%)となっている。
短大卒女性では、「『男性のみ』あるいは『女性のみ』を募集していた」が22.5%で最も多く、「男女で募集人数が異なっていた」(21.6%)、「面接の時、『結婚や出産をしても働き続けますか』ということを女性にだけ質問していた」(21.1%)が続いている。
勤務先で出会った男女別取扱いについてみると、4年制大卒女性では、「女性の管理職、役職者がほとんどいない」をあげる者が34.2%で最も多く、次いで「女性のみに制服が支給されている」(30.9%)、が続いているが、「妊娠、出産後も働き続けている女性がいない」、「女性は結婚・出産を機に退職する慣行がある」をあげる者も2割程度となっている。
4年制大卒男性も「女性の管理職、役職者がほとんどいない」をあげる者が25.9%で最も多く、「女性のみに制服が支給されている」(19.4%)が続いているが、その次が「女性のみあるいは男性のみが配置されている部署がある」(17.8%)となっている。
短大卒女性では、「女性の管理職、役職者がほとんどいない」と「女性のみに制服が支給されている」をあげる者がそれぞれ37.2%で最も多く、次いで「昇進・昇格基準が女性と男性とでは異なっている」(18.3%)となっている。
2.女性が働きやすい環境の整備の必要性
女性の労働状況については、厚生労働省をはじめとして様々な調査・研究がされている。それらを見ると、女性の社会進出・職場進出は進んでいるものの、男女間の差別・格差が現実として存在していることがわかる。少子高齢化が進み、人材確保のためにも女性の存在は軽視できないはずなのに、女性が社会に出て、能力を生かして働きたくても、または、長く働いていたくても、なかなかそうはできない状況にあるというのが現実のようだ。
社会に根ざす固定的な男女の役割分担意識に基づく慣行や通年をなくす、または変えていく必要がある。長年かけて培われてきたものであるから、そう簡単には変えられないかもしれない。しかし、この根底をどうにかしないことには、どんな法律を制定したところで女性が働きやすい環境を作ることはできない。
企業内でも女性が活躍できるよう、雇用の場における格差を解消するための積極的な取り組みが必要だ。男女雇用機会均等法20条では、女性の能力発揮の促進について、企業が積極的かつ自主的に取り組むこと(ポジティブ・アクション)ができるように国が援助できると規定されている。
また企業は、仕事と家庭の両立ができるような制度を設けるべきだ。育児休業や介護休業をとりやすくするなど、現在多くの女性が担っている育児や介護への理解が必要だ。
*「ファミリー・フレンドリー企業」・・・仕事と育児・介護とが両立できる様々な制度をもち、多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取り組みを行う企業。平成12年度に、ファミリー・フレンドリー企業として表彰された企業の中に、「東武宇都宮百貨店」がある(労働大臣努力賞)