女性が働きやすい社会の実現に向けて                990127C 佐藤美佐子

 

1.はじめに

15歳未満の子どもの数 20年連続で減少」 今年の55日・こどもの日の新聞にこのような見出しの記事が載っていた。この記事によると、200141日現在、15歳未満の子どもの数は1834万人で、総人口に占める割合は14.4%と、いずれも戦後最低を更新したということだ。

日本では、少子化が着実に進んでいる。少子化が進むことによって、経済、社会面にさまざまな影響が出るということは、あちこちで言われている。その影響の一つとしてあげられているのが、労働力人口の減少だ。労働力が不足すれば、現在の経済活動を維持していくことは難しくなる。そこで求められるのが女性の労働力だが、女性の社会進出によってよけいに出生率が下がるという悪循環が起きている。これは、育児と仕事を両立することができる環境が整っていないことを表しており、この問題を改善させていかなければ少子化に歯止めをかけることもできない。よって、環境の整備が重要な課題となっている。

 

2.少子化の原因

少子化の直接的な原因は、女性の晩婚化に伴う出産年齢の上昇にあるとされている。その背景には、高学歴化と社会進出が進んだことがある。

男女間で給与所得の格差は依然としてあるものの、その差は小さくなってきている。そうなると、出産・育児のために仕事を辞めることは、生活水準の低下につながる。その結果として晩婚化や未婚化が進んでいる。ほかにも、一度仕事を辞めると再度正社員として雇用される可能性が低い、そのため収入の少ないパートという選択肢しかなくなる、育児休業法はできたがあまり運用されていない、など、女性が働く上で不利な就労条件ばかりがそろっている。育児と仕事を両立させようとしても、保育所も不足しているという問題もある。これでは、仕事をしながらも結婚して、子どもを産み、育てていこうとはなかなか思えなくて当然のように思う。

つまり、女性の就労条件・環境が整っていないことが、より少子化を進めることにつながっているのだ。

 

3.少子化による影響

少子化が進むことによって、社会保障制度、経済全般・労働市場に大きな影響が出ることが懸念されている。

まず、社会保障制度は維持できなくなる。現在の日本の医療や年金は、現役世代が納めた分が現在の受給者に配分されるという仕組みになっている。しかし、今後少子化が進み、人口が減少していく中で今のままの制度を続けていった場合、国民の負担が増えることは確実となっている。現在は3.6人で1人の受給者を支えているが、2025年には2.0人で1人の受給者を支えることになる。納税者も減少するため、財政赤字も膨らみ、私たち国民への負担は非常に大きくなる。いくら働いても、収入の大部分を税金として取られてしまったら、将来自分は生活していけるのだろうか?という不安を感じずにはいられなくなる。

次に、経済面への影響だが、労働力人口が減少していくことにより、経済規模・活動が縮小される。現在のまま経済成長を追及していこうとした場合、企業は外国への脱出や外国人労働者の受け入れを迫られることになる。労働力としての私たちは、働くことでも負担を強いられるかもしれない。いずれにしても、労働環境は大きな影響を受けることになる。

 

4.対策

少子化対策として行っていかなければならないのは、育児と仕事の両立ができる環境の整備だ。子どもを産むことは、女性にしかできない。より一層の社会進出が求められていく女性が、仕事をしながらも子どもを産み、育てていくことのできる社会にならなければ、日本は少子化によって起こる深刻な状況を免れることはできない。考えられるのは、働く女性に対する差別をなくすこと、女性が働きやすいような制度を整えること、多様な働き方を認めることなどだ。

景気の影響もあり、学生の(特に女子学生の)就職活動の厳しさは常々いわれているが、どの年代においても仕事に就くことが難しいのに変わりはない。雇用にかかわる男女差別がなくならなければ、女性が能力を生かして働くことはできない。また、就職後も、職種が限定されていたり、給与の格差があったりという、女性に対する労働条件を改善させていかなければならないと思われる。

また、企業内で育児休業をとりやすい雰囲気をつくること、企業が男性の育児休業を促すことも必要だ。女性ばかりが育児をし、そのことで不利な扱いを受ける、または仕事を辞めざるを得ない状況になる、などということがないようにしていくべきだ。

多様な働き方ということでは、最近「ワークシェアリング」というものが注目されている。もともとはひとりひとりの労働時間を減らし雇用を確保する不況時の雇用対策として話題になったものだ。これが最近、短い時間や日数での労働(正社員)や在宅勤務を取り入れ、仕事と家庭のバランスをとる、という面から期待されている。育児にはどうしても時間が必要だが、残業や休日出勤などが珍しくない日本の企業では、その時間を得ることに対して理解がなかなか得られない。それによって、結局仕事を辞めることが多くなっている。そこで、ワークシェアリングを導入し、働き方の選択肢を増やすことが良い対策の一つとなるのではないかと考えられている。

ほかにも、保育所・学童保育の拡充、地域社会での子育てなど、社会全体でのサポート体制をつくっていく必要がある。