自由貿易について

例えば、A国とB国が貿易を行うとしよう。A国は国全体で牛肉の需要が大きくなりA国国内の供給能力では満たすことができない(A国は牛肉が足りない)。しかし、A国は、小麦の生産に力を入れており小麦の供給能力がA国国内の需要より大きくなっている。(A国で生産された小麦は余っている)。

 

 一方、B国では全く逆のことが起こっている。つまり、B国では牛肉が余っている変わりに小麦が足りないのだ。では、どうすればA,B両国の問題を解決することができるのか?それは、A国がB国に余っている小麦を輸出して売り、B国はA国に余っている牛肉を輸出して売ればよいのである。これによってA,B両国は双方の余っているものを売ることによって失うものなく利益を得ることができる。

 

 自由貿易とはこのようなことを世界全体で行うとする動きである。世界は自由貿易によって巨大な利益を得ることができた。今後も自由貿易の維持し、さらに発展させていくような形になっていってもらいたい。

 

  だが、自由貿易の促進と同時に考えなければならないこともある。レポートでは、WTOの会議を妨害する団体がいることを述べているが、その団体は次のようなことを主張していた。『自由貿易の促進によって途上国の貧富の差は拡大する』。これは半分あたっているかもしれない。確かに、一部のアフリカなどの途上国では自由貿易によって貧富の差は拡大した。これは、チョコレートの原材料であるカカオを例に述べると、今までカカオ畑で働く労働者は自由貿易が行われる前はxだけ生産していたが、自由貿易の促進により今までの生産量xより多くのカカオを生産することを余儀なくされる。そして、ここからがこのような国特有の現象であるのだが、労働時間が増える一方で以前と同じ賃金、あるいはそれ以下で以前より長く、カカオ畑で労働に従事しなければならなくなり、相対的に以前より収入は減る、ということである。労働者の生活水準が伸びない一方で自由貿易によって輸出量は増え、資本家階級は以前より潤う、という構図である。

 

  しかし、もともと、財や資本がなかったところにそれらが入ってくるということは何もない状態からある状態になるのである。マクロ経済的な見方をすれば経済が発展したことになる。貧富の差が拡大するのは自由貿易そのものよりむしろ、その国の政治や富の分配が大きくかかわっているように思える。つまり、一部の政治家が自分たちの政権を少しでも長く維持するために、自分たちの政権に影響力をもつ資本家階級に有利な富の分配や政治を行い、自分たちが生み出した富を独占しようとしているためではないだろうか。そのため貧富の差の拡大については、自由貿易よりむしろ、国内の政治に問題があるのだから、この点からみれば、自由貿易そのものを一方的に悪と決め付けることもできないはずだと思う。

 

 

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