中村祐司の雑記帳(日々の生活の中で心に留まった言葉や文章をランダムに引用します。)
「83年に通産官僚初の大使としてクウェートに赴任。海外勤務は計5回、13年になる。その間、英語、フランス語、中国語など9カ国語の日常会話に通じるようになった。だが、海外の要人と話す時には、語学力より日本文化や仏教の話を出せば身を乗り出すことを知る。『外で暮らすと日本の伝統や豊かな言語文化を再認識する。日本語の奥深い歴史を知ることこそ大切です』という」(元駐クウェート大使 愛甲次郎氏。サイト「文語の苑」を4年前に開設。2007年4月30日付朝日新聞「ひと 文語文の復活に取り組む元駐クウェート大使」)
「どんな仕事でもそうだと思うが、その世界に飛び込むことより、その世界で続けることの方がはるかに難しい気がする。キャリアを積むほどに要求されるハードルは高くなるし、失敗も許されなくなる。ステージが上がるほど、逃げ出したくなる場面は増える。踏みとどまるには才能がいる。『才能』は、努力の別名だ」(ライター・磯村完氏。2007年4月30日付朝日新聞「TV このセリフ」)
「汚職の一斉摘発に揺れた90年代以降、イタリアでは財界や学界から政治家への転向組が幅をきかせている。『でも、政治で最終的に必要なのは実務知識の蓄積だと言いたいね』」(フランチェスコ・ルテッリ氏。2007年3月20日付朝日新聞「ひと ダ・ヴィンチ展で奔走したイタリア副首相兼文化相」)
「18日正午、快晴のパリを出発した。前途には東京までの1万9300`が横たわる。マラソンを毎日2回近く走ってもゴールは9カ月後だ。『私はエゴイストで、自分の喜び以外に走る理由はありません。ワンクリックで何でも届く時代に、肉体的な努力の味は格別。道が長く険しいほど、到達地は美しい』・・・・・40歳で『より長く』に転じ、北米、豪州、南米、アフリカの4大陸を世界記録で駆け抜けた。今回は5大陸制覇と、休息日なしの最長走破記録(276日で1万9030`)が目標だ」(セルジュ・ジラール氏。2005年12月21日付朝日新聞「ひと ユーラシア大陸走破に出発したフランスの鉄人」)
「90年、学術専門の出版社として創業。1冊1万円以上はざら、3万円近い本もある。本を出したい研究者は多いが、『いくらで出せますか』という相談が後を絶たないのが悩みだ。『印刷会社ではなく出版社。お金を出して買ってもらえる本を作るのが仕事です。そうして初めて、研究の社会的な価値が出る』。95年、自力でウェブサイトを立ち上げたインターネット界の先駆け。掲載する『房主の日誌』は、小さな出版社に冷たい流通制度に苦言を述べ、時評の切れもいい。・・・・・・ネットや携帯メールに没頭する人たちは本を読むのか。『本という知と電子社会は別物と考えても進歩がない。すみ分けではなく、すみ合わせを考えていきたい』」(松本功氏。2005年12月24日付朝日新聞「ひと 広辞苑の編者の名を冠した新村出賞の受賞本を3年連続で出した『ひつじ書房』社長」)
「インターネット調査会社『マクロミル』が三月に行った団塊世代アンケートはそんな見方を否定する。『定年後も働く予定』が85%に達し、その理由の第一位は『経済的理由』(70%)だった。自分の退職金・預貯金の額には『どちらかといえば』を含め65%が不安を感じている。▼団塊世代のリッチな旅行には『将来の安泰は期待できない。ならば多少なりとも余裕のある今のうちに』という“決断”がほの見える。列島が浮かれるGWも一歩裏側に回ってみれば、先行き不安と隣り合わせの日常がある」(2007年4月25日付下野新聞「雷鳴抄」)
「引退後、「『環境を変えたい』と米国に渡った。そこで、選手の精神面を支える様々なカウンセリングがあることを知る。ライバルとの葛藤、指導者とのあつれき、引退の悩み.....。
自分がやりたいのはこれだ。4年間、大学院でスポーツ心理学にのめりこんだ。
『選手にも哲学が必要』。自分の現役時代を反省し、まず、そう思った。『闘志が他人に向いてしまう人はそこまで止まり。自分の中に意識を集中させることが不可欠』。実力を出し切るために、社会のあらゆる場面にあてはまる鉄則に思えた。////
『めざすのはナンバーワンよりオンリーワン』。もがいた末に学んだ極意だ。」(「選手を支えるカウンセラーのなったシンクロ銅メダリスト 田中ウルヴェ京(みやこ)さん」朝日新聞2002.6.12)
「『どこの会社でも、必ず倒すべき敵が出てくるんです』当たり前のことを、当たり前にやっているつもりしかない彼の前に立ちはだかるのは、ものを言いにくい社風やシステム化の遅れ、理不尽な経営陣・・・・・・。知らず知らずのうちに敵と戦ってしまい、振り向くと、その屍が横たわっているという。『こっちも満身創痍。ボロボロですよ』ドラゴンクエストのようなロールプレイングゲームを思い出した。主人公は敵や怪獣と戦いながら苦難を乗り越え、体験を積んで、ポイントを稼ぎ、経験値やレベルを上げていく。Nさんも転職を重ねて、自分を大きく成長させている。向かうところ敵なし?『調子に乗ると、案外弱い敵にうしろからパクッと食われちゃうんですね。ゲームの主人公は』」(田中和彦。ディレクターズマガジン編集長。朝日新聞2002.4.20)
「政治家が国際関係をみずから考える訓練を積み、しかも政党内で指導的な地位につくための能力や資質の選別が激しい欧州主要国と比べると、永田町全体が以前、別世界に思える。/////
//現実は、政治家が選挙地盤の利益代表でありすぎ、外交を担う機能を果たせない。国会日程で閣僚の外国出張をしばる旧態依然の慣例は、世界という場の『臨場感』を軽視する悪弊というべきだろう。」(村松泰雄。ヨーロッパ総局長。朝日新聞2001.1.13)
「情報とは、一度だれかの頭を通過して言葉に置き換えられたものだから、現実との間に必ずズレがあります。事実は多面的で、そのままそっくりは再現できない。インターネットといえども情報の行き来にすぎず、そこから知識を得る作業も単なる情報処理。人間が本当に学ぶのは現場からです。ことの本質は、五感を通じて入ってくるものに直面し、そこからつかみ取るしかないのです」(養老孟司。解剖学者。朝日新聞2002.1.8)
「僕はそもそも、メジャーリーグに、というよりも、アメリカでの生活そのものにあこがれていたんです。
生活の基盤になる仕事は野球しかない。だから、仮にマイナーリーグであっても、迷わずプレーしてたと思う。//////
/////子どものころから、現実的、かつレベルの高い目標を設定して、そのクリアに、ひたすら集中するのが好きなんです。
たとえば最近は、試合直前の1時間、辞書を引きながら、心理学や自己啓発などのテーマをあつかった歯ごたえのある英語の本を、かならず読むようにしてました。その時間が、じつはいちばん集中できるので、ふだんの倍のペースで読めるんです。
映画に関していえば、究極の目標はコメディー作品を完ぺきに理解すること。
コメディーのせりふはタイムリーな英語が話されているので、とても勉強になる。」(長谷川滋利。大リーグ投手。朝日新聞2002.1.6)
「雇用不安というのは、学歴や縁故では採用されないことでもあるわけで、若い人はバイタリティーを試されている。個人の底力を問われる。機会均等の自由な時代とはいえないでしょうか。」(イッセー尾形。俳優。朝日新聞2002.1.6)
「『もっともっと消費をせよ』という人は、日本社会の問題を分かっていない。問題は、より質素な消費文化になっても崩れない経済制度に変えることは可能か、ということだ。」(ダグラス・スミス。政治学者。「ガラクタ経済から脱却を」朝日新聞2002.1.5)
「94年、『新宿鮫 無間人形』の直木賞で一変した生活は、逆に不安にさせた。やってもやっても仕事に終わりがない。何を書きたいのかもわからなくなった。////
でも、あるとき気が付いた。遠い目標を見つめても、うまくいかないときはいかない。だったら、目の前の今日の10枚にベストを尽くそう、と。ベターかもしれないけど」(「今日のベストを書き上げる 作家大沢在昌」朝日新聞2001.10.8)
「世界では今、飢餓線上にある人々が最低8億人、子どもを中心に、毎日4万人以上が餓死している。アジアの食糧庫とも言われる中国も最近、経済発展に伴う産業構造の変化によって、食糧自給率が100%を切り、ついには穀物輸入も始まった。
私は近未来、「食糧」は、今のIT産業など吹き飛んでしまうほど、重要な価値を持つものとなるだろうと、予測している。理由は簡単で、人間はパソコンがなくても死なないけれど、食べ物がなければ生きられないから。」(葉青(Yosei)。サンデー毎日2001.7.15)
「インターネットの世界には今、映像や音楽などを発信する小さなメディアがたくさん生まれています。個人やサークル、学校やNPO(非営利組織)などが主体です。また、ケーブルテレビや衛星放送も、新しいメディア表現の場だと言えるでしょう。
ところがこうした担い手たちは、意外に横の連携がない。私は、そうしたさまざまな領域の人々をつなげ、新しいメディア表現の場というか、コミュニケーションの回路をつくりたいと思っているのです。国家や大企業中心ではなく、市民から生まれるデジタルの小さな物語を展開したいのです。」(水越伸東京大学大学院情報学環助教授「メディア実践」AERA2001.9.10)
「アメリカ的な文化は明るさや健康に価値をおいて、人間の弱さや悲しみのような影の部分をマイナスの価値として切り捨ててきた。本当は弱さも悲しみも大切なものなのに、生産や効率の役に立たないからと切り捨ててきた。その結果、一面的にしか世界をとらえられなくなった。だから相手の屈折や影の部分を想像できない。自分たちの価値観と善意で押し切ろうとする。相手がついてこないとすぐに裏切られたと思う」(中村雄二郎「文明に何が問われているのか」朝日新聞2001.11.9)
「ぜひ日本でインターンをしてみたかったし、私自身、子供はとても好きなのです。それぞれの小さな体の中に独自のドラマがあり、その可能性を伸ばしてあげたいし、自分でものを考えられるようにしたいという、このキャンプの趣旨にも非常に共感しました。」(五嶋みどり。AERA2001.10.22)
「原則を変えないのは非常にいい。でも、政治の世界と企業の世界は比べられない。政治は非合理性の塊で、熱効率は猛烈に悪い。僕は政治家にはなれないな。あれほど達成感のない仕事をよくやってるなあと。」(宮内義彦総合規制改革会議議長。朝日新聞2001.11.22)
「現場へ行く前にも行ってからも、可能な限り記事や資料を集めて読む。一つのルポを書くため、古今東西の専門書や報告書など数百点に必ず目を通す。記事に左右されることは滅多にないが、何が欠けているのかを知るためにも、一分でも多く<準備>をする。」(日垣隆。作家、ジャーナリスト。「メディア 新聞が記事にしないこと」朝日新聞2001.11.24)
「『作家兼製本屋みたいなもの』と主計官は財務省主計局の膨大な作業を表現する。作品は『予算書』。今年度は一般会計など主な4冊だけで計2500ページ、厚さ10a。数字がぎっしり並び『単位を区切るカンマが一つ抜けても許されない』。これを原案通り国会で可決してもらうことが予算編成のゴールだ。///
主計局幹部は『メリハリこそ予算編成のだいご味』と話す。
『関係者の利害が対立し、眠れなくなって胃も痛くなる。でも政府案が決まればぐっすり眠れる。自虐的な面白さですね』」(「予算編成」朝日新聞2001.11.27)
「どうすれば市民は有効に外交をチェックし、少数のエリートたちの取引を、民主的統制のもとにおくことができるか。まず個々の国家において情報公開を進めエリートの説明責任を明確化すること、それに加えて市民が国境を超えて協力することが、事件後の『国際協調』の傾向が指摘されるだけに、今後ますます必要になろう。試されているのはわれわれ市民の力だ。
国家が繰り出すさまざまな施策が、本当に人間の安全を保障し、『自由と民主主義を守る』ものなのか。先進諸国、とりわけ欧州では、独自の批判力と発信力を蓄えた市民社会が存在感を増している。」(高原孝生明治学院大教授。朝日新聞2001.11.30)
「伊多波さんらのような社会問題への鋭い意識は、私にはない。では、何に依ってやって来られたのか。それは現場主義だ。ところが今回は途中参加で、被害者・家族たちも、その暮らしの実態も、18年間の生活史も、本当には知らない。
記録は精読した。集会の場や、訴訟関係の用事で訪ねた一部の家庭では、被害者・家族に会ってもいる。だがそれらは、現場主義からいえば上っ面、上澄みに過ぎない。
これは、自分なりのスタートを切り直すしかない。用事のついでではなく、原告予定者の家を漏れなく訪ね、腰を据えてつぶさに見、直に聞き、沈殿した澱を舐めてみる。何があったのか。その真実性を私自身、納得できるか。答えは現場にしかない。」(中坊公平「金ではなく鉄として52」朝日新聞)
「///大人数を抱える部署の長になった別の友人は『いまもキミは歩きまわって取材しているのか。トシなんだから、そんな面倒なことは若い者にやってもらえば』と、取材を見下した仕事のように語る。
大げさに聞こえるかもしれないが、私はノンフィクションの書き手を志したとき、取材して書くことを、死ぬまでつづける覚悟をしたつもりである。そうしなければ、生活も維持できない。仕事にたいして『まだまだ未熟、もっと励め』と、自分に言い聞かせる日がずっとつづくことも承知している。そのせいかサラリーマンの『晩年』意識には、いつも首をかしげる。」(加藤仁。ノンフィクション作家。「夕暮れはまだ遠い」朝日新聞2001.10.17)
「大学側は、産側の視野からこぼれがちな理工系の基礎研究や文系などの大学・学部の底上げを図り、産側の要求に左右されない配慮をすべきだと思う。会社に役立つ人材育成に大学全体が傾斜するのは避けたい。こうした均衡をとる上でも、外部との交流を常に意識し、細部にわたる大学側の情報公開は不可欠だ。」(山上浩二郎。社会部。朝日新聞2001.12.26)
「僕がニューヨークで思索を続けているのは、ここが世界資本主義の中心だからですよ。マ
ルクスだって、あの頃世界の中心だったロンドンで『資本論』を書いたんだから。このグロ
ーバリズムの時代に日本国内だけで流通する言語でああだこうだといくら言っても虚しい。
自分の思想が本物かどうか、“世界の中心”で勝負しなきゃ」
(柄谷行人(からたにこうじん)氏「現代の肖像」アエラ2001.7.2)
「人道支援は今日、政治的に利用される危険性が高まっています。
とりわけ紛争地域では、そのリスクを覚悟しなくてはなりません。そんな時、判断の尺度は、
支援活動が本当に被害者の人々の利益になっているのかということでしょうし、そうでないと
わかった時にそれを告発していく勇気が必要です。また、被害者の人々から信頼を得るためにも、
NGOは政治的、精神的、そして経済的に、政府や公的機関などから独立性を保つことが大切だ
と思います。」
(「国境なき医師団フランス」元会長 ロニー・ブローマン(Rony Brauman)氏「人道支援」アエ
ラ2001.7.2)
「例外的な事実に基づいて、ある国を断定するのは危険だ。ミクロの要素を正確に理解しつつ、『象』
と言うマクロの全体像に統合してこそ、正しい理解が生まれ、現実に即したものになるだろう。」
(日本ケイデンス・デザイン・システムズ社社長 グレン・フクシマ氏「『断片情報』で全体像を見失
う」朝日新聞01/07/01)
「『利益を配分しない、という定義を除けば、NPOという主語を中小企業と置き換えても構
わないぐらいですよ』。あるNPOのリーダーは、いらだちを隠さない。『非営利』『ボランテ
ィア』と聞くと、カネ勘定とは無縁の世界のように錯覚しがちだが、現実には資金がなければ
活動は成り立たない。なのにNPOの資金基盤を支える社会的な仕組みの整備は遅れている。」
(朝日新聞01/06/03)
「会話とは本来、相手の顔を見てするものだ。顔の表情やしぐさから言葉では伝えられない
メッセージが読みとれるし、その場の風景やにおいなどが会話に色や味をつける。
///////
ケイタイによって身近にいる人を全く黙殺しながら話す能力は、これまでの人間にはなかっ
たものだ。目の前にいる相手より、声でつながっている相手を優先し、声でつながっている間
は周囲を一切無視できる人々。同じ場所にいながら、それぞれの心は別の世界とつながってい
る暮らし。/////
ケイタイ生活は、身近にいる人の気配や心を読む能力を減退させる。」
(山極寿一京大助教授「周囲黙殺するケイタイ」下野新聞01/05/29)
「政府の情報活動は、税によって賄われているのだから、その成果のすべては、インター
ネットに無料で公開すべきだ。情報公開は、政府の内部資料を公表させることだけではな
い。従来は印刷物で公開していたデータを、無料の電子情報として公開させることが、IT
時代においては、大変重要なのである。////
/////つまり、ITの重要性が喧伝されるにもかかわらず、インターネットで利用できる政
府情報は貧弱なのだ。そして、政策がハードウェア整備や助成策に偏っている。政府情報の
ネット上公開こそ、最も重要な(そして多分唯一の)IT政策なのである。」
(野口悠紀雄青山学院大学教授「電子情報の加工はビジネスの種」朝日新聞01/05/20)
「///食事は胃に食物をつめこむことではなく、今夜はあれを食べよう、明日の朝食はあれ
でなければならないと、ふっと思い定めて待つ、“前向きの感覚”こそ生きることの実質
なのだ、と。私たちは未来を食べて生きている。そのような前向きの意志と感覚がなくな
るときが死期の始まりなのだろう。
退院するごとに私が次々と長篇小説を書き、連載を書き継いできたのも、自分の主観的
な想念が活字になって客観化される形をみたい、と思う前向きの感覚の結果であった。従
って時間的に前向きの感覚とは、空間的に自分の作品を読んで味わってくれる編集者や読
者、批評家たちとの横のつながりの実感と表裏である。それらの人たちがいかに底なしの
穴に落ちこみ、虚空に消えそうになる私の孤独と不安を支えてくれたことだろう。///
////他にもいつどこでガンは再発ないし、原発するかもわからないが、常に時間的に“前向き”
の、空間的に“広がり”の実感を作り保ち続けねばならないことは、すべての人の“生きる掟”
であろう。“後ろ向き”と自閉は死に至る道であろう、個人的、肉体的生命だけでなく、共同
体も文化も文明も。」
(作家の日野啓三氏「未来を食べて生きる」朝日新聞01/05/23)
「『世界』でも3月から、ボランティアの方々が幾つかの論文を選んで、英文でインターネット
に載せている。すごいアクセスがある。海外からみて、日本が何を考えているのかわからないか
らだと思う。やはり金融にしても、食糧、環境にしても問題が完全にグローバルになっている。
議論には、空間の広さが必要だ。」
(「世界」編集長の岡本厚氏。朝日新聞01/05/06)」
「働くことなど、むろん私もきらいだ。じゃなぜ働いているかといえば、『ほかにすることがな
いから』だ。というか、職場であればかろうじて自分の業務があり、ごくたまにではあるが自分
の必要性を実感する場面もある。しかし、仕事以外の場でそれを感じることはまずない。」
(精神科医の香山リカ氏「ベストセラー快読」
(朝日新聞01/05/06)
「『髪の毛一本首が飛ぶ、虫一匹命取り』。
まずこの標語が目に飛び込んでくる。室内には約10台の射出成型機が並び、次々に製品が生み
出されていく。化粧品容器という性格から異物の混入は絶対に許されない。製品をチェックする
女子従業員らの表情は真剣そのものだ。」
(朝日新聞栃木版)
「従来、学者や教師など専門家の権威を形作ってきたのは、<情報の独占>と<情報のタイムラグ>
であったと言える。情報をより早く所有し、それを自分たちだけで囲い込むことで専門家の権威は発
生してきた。////
/////今後ますます強力になるインターネット情報は、それとは正反対の<開放性>と<同時性>とい
う特質を持っている。/////
/////情報の支配的メディアが書物からインターネットへ変わるのであれば、書物文化と深くリンクし
ていた大学制度が大きく変容・崩壊することは大いにありうる。/////」
(東京女子大学教授の黒崎政男氏「大学制度 揺さぶるネット」
(朝日新聞01/05/02)
「インターネットを介した文化的経験の機会が急速に増大している。映像、音楽、放送などが世界を網
目で結ぶメディアに乗って、地球の隅々まで瞬時に贈り込まれるようになった。米国主導のネット文化は、
ドット・コムのコムコマーシャルの略称であるように、商業主義を伴いながら世界を<アメリカ>化しつ
つあるように見える。侵攻される側はどう抗すればよいのか。////////
『危ないのはマクドナルドでもコカコーラでもない。インターネットは生活様式や流行を世界に運ぶ。見
たり聞いたりがもたらす影響は、食べたり飲んだりとは比較にならぬほど大きい。幻想を与えるのが危険だ。』
(ポール・ヴィリリオ氏)」
(朝日新聞01/05/02)
「『家で仕事をすることがSOHOと考えたら間違い。自分で自分の値付けをし、自分の裁量で働ける
のがSOHOなんです』////
『ITは何かをしてくれるわけではない。自分がそれを使いこなす方法をいくつ持っているこそが大事』」
(朝日新聞01/05/04)
「自分のために『何かしたい』という。人生の中で一番付き合いが長いのは自分自身です。約半世紀を生
きて人生の執着点が視野に入ってきたとき『組織の自分』より『素の自分』を大事にしたい。
組織を飛び出すというのではなく、会社の仕事はきっちりやりつつ、それ以外の自分の時間を充実させたい。
これまで省略されがちだった『余暇』が主の時間になり、『会社の仕事』がこれまでの『余暇』になる。」
(三菱商事部長の田村栄作氏。AERA2001.4.23)
「日本の高等教育が危ない。少子化傾向によって入学志願者が減ることで、定員を割り込む大学が増加し、
近い将来、大学の数が大幅に減ると予測されている。学生の集まらない学部や学科の統廃合や、常勤教員
数の削減など、各大学は生き残るための対応に大わらわだ。///
アメリカの大学には、企業同様にCIOやCTOと呼ばれる、ITの教育利用に関する総合的な戦略を
練り、経営判断を行う最高責任者がいる。また、各キャンパスには、ITや各種メディアを利用した授業
設計をサポートする部門が設置されており、個々の教員がインターネットやマルチメディアを自分の講義
に効果的に導入したり、既存の講義をオンラインに適するようにデザインし直したりする際の支援を行っ
ている。////ITを利用して大学教員の『教える力量』が高められ、オンライン上で高等教育の『知的ネッ
トワーク』が、鍛え抜かれながら構築されている。」
(カーネギー上級財団の飯吉透氏「大学IT革命」AERA2001.4.16)
「農民は基本的に変化を望まない。なぜかといえば、コメだって田植えから収穫まで半年
かかる。ミカンやリンゴは10年、山に植林すれば50年だ。常に未来のために汗を流す仕
事だから、未来がぐるぐる変わったのではやってられないのである。だから、良くも悪くも
安定を求めて寄らば大樹の陰になるわけで、これが農村・農民が自民党から離れられなかっ
た理由だ。」(山下惣一氏「農村危機が転換を求めた」朝日新聞01/04/28)
「彼に徴兵令がきたのは1969年、23歳の年だった。///
すぐベトナムに送り込まれた。2カ月後、サイゴン近郊クチのジャングルで、地雷に腰から
下を吹き飛ばされ、身長も体重も半分になった。/////
彼は話す。『ぼくは障害者だとは思っていない。やろうと思ったことは何でもやれるよ。やろ
う思うかどうかなんだ』
本当だった。彼はロスから首都ワシントンまで、約5000`の『走破』を決意する。そして、
熱砂と厳寒の中を3年8カ月と6日かけて、やり遂げた。////
1日やっと、5マイル(約8`)進む。終わった場所に目印をつける。翌朝、ライトバンで新た
に2,3マイル進む。降りて、車いすを使い、目印まで戻る。車いすを隠し、両こぶしでバンまで行
く。バンに乗って車いすを取りに戻る。そしてまたバンで2,3マイル先に進む・・・・、/////
ボブさんはこう言ったことがある。『足があれば?それには答えはないよ』
そうだ、あれこれ、人と比較して生きてはだめだ。ボブさんは昔の自分とさえ、比べない。/////
『ゆっくり、そして、比べないで』。////」(遠藤正武氏「腕で歩く 5000`の道程」朝日新聞日
曜版01/04/22)
「////保育園で体重測定があった時、新任の若い先生から『あなたはチビデブちゃんね』と言われた
とのこと。それからは、おやつは食べなくなり、ご飯もほんの少量しか食べなくなったそうです。/////
言葉とは、人を奮い立たせる勇気の源泉となったり、傷つける暴力ともなる両刃の剣です。///」
(朝日新聞声欄01/04/20)
「長大なヒトノゲム塩基配列のどこに遺伝子があって、病気に関連する遺伝子はどれか。遺
伝的個人差である一塩基多型(SNP)はどこか・・・。
これらを世界中からインターネットで調べられる、いわば遺伝子の百科事典だ。運用には、
約350個の中央演算処理装置(CPU)をもつ高性能コンピューターを使う。・・・
徹底した情報公開も特徴。ソフトウエアの細かい指示書(ソースコード)を公開。外部の人
も開発や改良に参加できる。
『OS(基本ソフト)分野でソースコードを公開し、リナックスが成功したように、公開は
高品質につながる。実際に、生命情報科学の分野でよく使われるソフトには大学や公的研究機
関から公開されているものが多い』。」(朝日新聞01/04/19)
「インターネットは、これまで人々がテレビや新聞などに使ってきた『時間』を食い始めた。
全米1億6000万人がネットにつながり、うち7500万人が週3時間をパソコンの前で使う
までになった。」(メディア開発センター所長の大前研一氏。朝日新聞01/04/18)
『「互いの個性を認め合い、受け入れるとアイデアがわいてくる」。』『人生の分岐点で楽をして身
を引くのか、自ら乗り出すのか、十年たてばその差は大きくなる。選択肢はいつも私たちの手の中
にある。』『農業にはすべてがある。植物学、気象学、語学、体験を通しての教育・・。この世界に
入って心から良かったと思う』。」(「農業婦人のネットワーク作りや講演活動に積極的にかかわり」、
全国女性農業経営者会議監事の横田喜子氏。朝日新聞01/01/14)
「若いころに、財務諸表を見たり、やりたくない仕事をさせられたりして、知らず知らずに経
営感覚が身に着くものなのです。男性は、このような遠回りに見える螺旋的なむだを受け入れる。
だが、女性の場合、早期にやめる可能性があるので、会社もいろんな経験をさせないし、女性自
身も会社・職業上のキャリアを直線的に考えてしまうのです」(キャリアネットワーク社長の河野
真理子氏。朝日新聞01/04/08)
「・・メールマナーは、@件名は内容がわかるものにA書き出しに「○○様」と呼びかけB次
に「××です」と名乗る、というもの。メールはだれから来たか意外とわかりにくいし、多数
に配れるので誤解も多い。・・・
・ ・・実はもっとも大事なのは古典的な『思いやり』というのが、多くの人に共通していた。
・ ・・メール界(?)の金言に『送る側は厳密に、受け取る側は寛容に』というものがある、
という。技術的にデータ交換を確実にするための原則だったが、それが中身にも及び、相手を
思いやるのが基本ということになったのだそうだ。『わかってあげる努力だけでなく、わからせ
る努力も重要』という。相手のマナーに難癖をつけるより、優しくアドバイス、なのだ。」
(田代温氏「電子メールは手紙か会話か」朝日新聞01/04/07)
「『ドットコム企業の失敗と技術の恩恵とを混同しないことが重要だ』と、ワシントンのシン
クタンク、ブルッキングズ研究所のロバート・ライタン経済研究部長は語る。・・・
『初期の技術革命を思い浮かべると、自動車でも、電気でも、鉄道でも、多くの企業が現れ、
厳しい競争のなかで多くが倒れ、少数しか生き残れなかった。しかし、技術は社会全体に大き
な影響を与えてきた。
インターネットも同じだ。ゼネラル・エレクトリック社が典型だが、顧客の注文を受けるこ
とから部品の発注まで、あらゆる過程をネットに乗せ、企業の構造を変えている。ネットの技
術が米国全体の生産性を改善させているのは確かだ』」(高成田享氏「IT革命『失敗は成功の
母』」。朝日新聞01/04/08)
「米国の名門大学、マサチューセッツ工科大(MIT)は4日、今後、10年間で、同大学
で行われるほぼすべての講義をインターネットを通じて無料公開するという計画を発表した。
・ ・・まず、500以上の課程について、それぞれの講義ノートや講義概要、読書リスト、
・ 研究課題などを掲載する。
10年後には、建築や都市計画、工学、人文科学、芸術、社会科学、経営学などMITの全
カリキュラムの約2千以上の講義をカバーするという。・・・
・ ・・個人の自己啓発だけでなく、途上国の高等教育向上や世界中の大学との交流に役立
つと期待している。」(01/04/06=共同)
「人は生まれ落ちた瞬間から、『やむなき旅人』になる。旅に出たくなくても、生まれた以
上は個人という旅を続けなければならない。長い人生、何が起きるかわからない。人は偶発
的な災難や事故に危機感を持ち、目配りしながら生きる者たちであったはずだ。いずれ来る
死への茫漠たる不安を抱え、それでもなお仕事を片付け、家族を愛し、恙ない一日を送るこ
とのできた感謝を持ちながら。・・・・・気が付けば、すべて確率一辺倒の社会である。こう
いう勉強をすれば、こういう学校に入れて、そこを卒業すれば、こういう仕事に就ける、そう
するとこれほどの収入があって、こんな人生が送れる。今や、あらゆる試験はゲーム感覚の裏
ワザ情報だらけである。確率が高まれば限りなく必然に近くなり、偶然を小馬鹿にするように
なる。」(桐野夏生氏。朝日新聞01/04/04)
「開幕といっても特別な気持ちはない。どこも自信まんまんで戦いを始めるところなどないと
思う。うちは順位を考えるより、まずやるべきことがたくさんある。一つ一つ課題をクリアし
ていくうちに、結果が付いてくるものだと考えている。」(森祇晶横浜ベイスターズ監督。朝
日新聞2001年3月30日付)
「どうぞお母さん方、お父さん方、家でハラハラしていないで、学校へ出ていって、学校を見、
知り、参加してください。そして学校に意見をいってください。そういう方々が十人、二十人
と集まれば、それがコミュニティーとなって学校を支えるし、学校をどう変えるかの決定権を持
つんです。もし、日本中がそんなすばらしいコミュニティーで満たされたら、文部科学省なんて
いらないよ、ということになるかもしれませんね。」(文部科学省大臣官房審議官の寺脇研氏。朝
日新聞2001年4月1日付)。
「こちらは記者という職業柄、はじめて会う人は、ついしげしげと見る。そしてその印象と、
前もって聞いている話を考え合わせ、それまでに会った人でいえばどのタイプか、頭の中にあ
る引き出しのどこに入るのか、さらにはバツかマルか、とっさに決める癖がある。そのために、
一度に多くのものを見ようとすることが、習慣になっている。」(川村二郎氏。AERA2001年
3月5日号)。
「他人には取りえが見えてこない人間を『かけがえがない』と想う人もあり、胸に描く幸せの
形も、余人にはうかがい知れぬことがある。・・・・人の情は時に『客観』では見えず、『理』
では割れない。」(中坊公平氏「金ではなく鉄として27」朝日新聞2001年3月19日付)。
「たとえば日本では、敵のチームの若い選手に、自分の得意球の投げ方を教えたりなんて考え
られないじゃないですか。でもアメリカ人は、自分が努力してつかんだ技術を後輩に教える。
自分の能力を分け与えていくんです。
メジャーに行ってから、そういう人たちに出会いました。すごく親身になってくれる。さま
ざまなことを教えてくれる。自分だけよければいいという考えではないんです。結局、尊敬とい
う気持ちはそういうことで育つのだと思う。上司が苦労してつかんだ仕事のノウハウを下の者に
教えたら、いつか自分の仕事を奪うかもしれない。でもその後輩の背中を押してやるんですね。
今の日本の仕事場ではそういう思いが少ないと思う。
アメリカは実力主義の社会だしスポーツはその最たるものだけれど、それを認めて支え合う温
かさがあるんですね。」(野茂英雄投手。朝日ジョブウイークリーNo.335.)
「『ラグビーをしてきて思ったのは、人を期待したらアカンということです。期待するとしん
どい』
期待するばかりでは、相手への不満もつのるし、チームワークにもひびが入り、結果自分も
落ち込む。まず自分がベストを尽くすこと。皆がそうすることで、結果として期待以上のもの
が生まれるというのがその真意だ。」(神戸製鋼ラグビー部アドバイザーの大八木淳史氏。朝日
新聞2001年3月17日付)。
「情報科学の専門家や、情報技術の応用開拓者は、先頭になって誤解を広めている。情報伝
達の手段は発達すればするほど、有効さや便利さを増加させる。しかしその本質は「意味量」
の増加を第一義とし「価値量」の増加は、それに付帯するに過ぎない。「価値量」を第一義に
増加させるためには、ディスコミュニケーション、引きこもり、気も狂わんばかりの忍耐力が
どうしても、必要になる。これは科学者から染め物職人まで一向に変わらない。女性の憧れの
職業である女優や女子アナや演歌の歌手といえども、舞台に出ているときより暮夜ひそかに演
技や話術や発生の修練のために引きこもっている時間が多くなければ持続的な職業とはなしえ
ないに違いない。」(吉本隆明「『引き出し』症候群にこそ注目を」朝日新聞2001年3月14日付)。
「男性が大半の今の政界は人びとの日常を理解できていないと思う。観念的な討論ばかりに明
け暮れて、生活の現場をバカにしていたようなところがある。たとえばメトロ(地下鉄)の運
賃やパンの値段さえ知らない。女性の進出で市民の悩みをもっと話し合えるようになるのでは
ないか。今は、狂牛病のように日常に直結する重大問題も次々出てきている。
連れ合いは、私が議員になると、自分より社会的な地位が上になるようで嫌みたいです。で
も、二歳半になる娘の未来のためにも政治に取り組みたい。」(フランスの地方選挙に緑の党か
ら立候補したオーレリア・フィリペティさん。朝日新聞2001年3月8日付)。
「(丸山眞男は)安保闘争の年に行われてた政治学講義では、独自の政治言論の構築を試みられ、
さらにリアルな政治的思考の必要を訴えられています。
しかし、講義という場における精神の格闘は一回的なものとしてそのつど解消され、まして後
年は講義自体が数年度にわたって展開された結果、丸山思想史学の全体像は、まったく知られな
いまま経緯しました。」(東京大学出版会の『丸山眞男講義禄』の紹介パンフレット)。