Shimizuf010704   余暇政策論レポート 

「スポーツ施設の問題とスポーツの二次的産物」

k990531  清水文香  

 

 

 

はじめに

なぜスポーツを選んだのか。始まりは、「個人的にスポーツが好きだから」という何とも不純な動機である。しかし、レポートの前の段階である「ノート作り」をしていくうちに「スポーツといえども侮れないな」という気持ちになってきた。

総理府広報室「国民生活に関する世論調査」(平成11年12月)によると、今後の生活の力点の推移は昭和59年を境に激しく変化してきている。国民の多くが「余暇」を生活の中の必要かつ重要な一部として捉えるようになってきたのだ。(余暇時間の増大はいろいろな要因が絡み合ってできたわけであるがここでは詳しく述べない)。

余暇時間は、自由に自分の好きなことができるという何とも魅力あふれる「時間」である。これからも余暇時間は増加しつづけるだろう。そこで今度は、多くの人が「余暇時間をどのようにすごすか」という問題がでてくる。単に家でごろごろすごすのも余暇の使い方であるし、外に遊びにいくのもそうである。全て選択はその人に任されているのだ。そこでこのレポートでは「スポーツをして余暇時間を過ごそう」というのをテーマにしていろいろな角度からスポーツをみていく。

 ではなぜスポーツなのか。まずひとつに挙げられるのは、「健康のためにいい」ことだ。余暇時間を楽しみながら、健康増進にも繋がるとはこれこそ「一石二鳥」ではないか。コレストロール、血糖値が下がる、新陳代謝がよくなるなど、今やスポーツが健康に良いというのは周知の事実である。また、スポーツが豊かな精神をつくることも否めない。精神的ストレス解消などスポーツが果たす役割は大きい。しかし、私が「スポーツが果たす役割」で一番期待したいことは「人々の交流を生み出すこと。そして地域社会の構築」である。皆さんも運動会、体育際をやり遂げたあの充実感、クラスメートとの一体感を味わったことがあるだろう。このスポーツの秘めた可能性をこのレポートで探ると共に、周りで起きている問題点をみていきたいと思う。

 

 

 

1.スポーツ施設をめぐる問題と行政がやるべきこと

まずはじめに、スポーツの可能性を探る前に留意すべきことは、まずスポーツをする機会、場所が少ないということだ。この点は以前から私自身疑問に感じていたことである。各自治体には最低1個は体育館、テニスコートなどがある。しかし、それは数的な問題のみでなく質的にも問題がある。取って付けたかのように体育館の端に少し筋肉トレーニングマシーンがあるというぐらいである。レポートを進めていくうちに「スポーツをやる場所」さえ限られている事実に気づいた。

スポーツ都市宣言調査(平成6.7年文部省科調査)によると「スポーツ・健康都市」を宣言している都市は全国で351市町村であり、これは全国の市区町村の約1割を占めているが、この「スポーツ・健康都市宣言」のもとに行政は市民にもっとスポーツをやる場所を提供しなければいけないと感じる。しかし、地方行政も財政難に直面していることから、スポーツ施設増大に取り組む余裕はないと考えられる。そこで、今注目されているPFI促進法をスポーツ施設に導入してはどうか。PFI促進法とは1999年に設立されたもので、従来公的機関が行ってきた公共施設整備の分野に民間の資金やノウハウを導入することを促進する法案である。PFI促進法は実際、ごみ処理場や廃棄物処理場などに採用されていて無駄な公共事業をなくすという点から大きな期待がよせられている。すでにこれをスポーツ施設にも採用しようとする動きも少なからずでてきているようだ。市場原理の下、民間資金、民間の事業遂行能力を活かすことによって、行政の画一化した施設にはない個性あふれる施設が期待できるのではないか。

 また「第3セクター」によるスポーツ施設建設も方法の一つとして考えられる。その際、管理、維持、運営は民間が行うので私たちの意見、要望など聞き取る体制は行政に比べるとはるかに期待できる。宮崎県延岡市にある「ヘルストピア延岡」は清掃工場の余熱を利用して平成3年から建設を開始し、同6年に完成した。この施設は1年中泳げる各種温水プールと各種風呂を中心に、プラネタリウムなどカルチャー施設およびスポーツルームや健康ルームなどがあり、子供から高齢者まで1日中楽しく憩える場所となっている。そのサービス内容は行政にはできない個性豊かなものとなっている。スポーツは一人でできるものではない。相手がいて成り立つものである。よってただスポーツ施設を建てるという無機物な作業だけでは市民は満足しない。第3セクターにもPFI促進法と同じように民間の自由な発想、市民ニーズにあったサービスが期待できるだろう。そこで「はじめに」でも述べたように、これからのスポーツ施設は地域コミュニティーづくり、地域社会の構築も求められるのではないか。第2章ではこれからのスポーツ、スポーツ施設に求められるものについて述べていく。

 

 

 

2.スポーツの秘められた可能性

 実際、船橋市では「人もまちも健康でありたい」とスポーツ健康都市宣言を昭和58年に行った。全国初の屋根つきゲートボール場の建設、地域コミュニティーリーダーを育成するスポーツ健康大学の開校、民間遊休地を利用した「まちかどスポーツ広場」の開設など数多くの施策を実施してきた。また、市立船橋高校の駅伝、サッカー、野球等の活躍により全国的にも「スポーツ健康都市」として船橋が知られるようになってきた。この船橋市のスポーツ普及活動を通して注目したいことは、スポーツを通して地域のコミュニティーづくり、まちづくりに大きく寄与したことである。スポーツ普及の際、市民と協力してアイデアを出し合い、事業実施についてもなるべく市民を主体にして共同で行うことにより一体感がうまれたそうだ。これは全国地方公共団体から見ると「特異」な例として移るだろう。しかし、他の市町村も船橋市の例を参考にして、真の意味で「スポーツ健康都市」として働かなければいけないだろう。

 船橋市以外にもスポーツを通した地域づくりをはかっているまちもある。自らの地域の地形、風などの自然条件を巧みに利用して特定のスポーツ種目を「わがまちのスポーツ」としているまちもあれば、「町民オリンピック」と題して幼児からお年寄りまでみんなが参加する町内4地区対抗の大運動会を催しているまちもある(愛媛県城川町)。これらのまちをあげてのスポーツ参加は住民の健康づくりのみでなく、チームワークによる連帯意識の醸成、自主的参加の意識づくりに大いに効果があるだろう。

 

 

 

さいごに

突然だが、「地域」と「クラス」には共通点が多いとつくづく感じる。どちらも一人では何もできないという点である。そのなかでお互いが協力しあって生活していき、何か一つのことを成し遂げ、そこから一体感が生まれる。つまり言いたいことは、「スポーツを通じて地域の輪を広げていこう」ということだ。スポーツをすること自体それだけでも大きな楽しみ、満足感が得られる。そこで人と出会い、新しい刺激を受けまた成長していく。スポーツは「人と人とのつながり」まさしくこれはスポーツの二次的産物と言える。これを創造するのも、これからのPFI促進法、行政への取り組みにかかっているのではないか。彼らに期待してレポートを終える。

 

 

 

〈参考サイト〉

     (http://www.academyhills.com/gijiroku/fudosan/hyoka/shiten.html)

PFI促進法の可能性、問題点を分かりやすく説明している。

     (http://www.motnet.go.jp/hakusho/shouwa61/indooo802/001.html)

総理府広報室「国民生活に関する世論調査」がグラフで紹介されている。国民生活の変化が明確にグラフにでているのでおもしろい。

     (http://www.city.nobeoka.miyazaki.jp/fukus/kenko/health-t/kannai.html)

ヘルストピア延岡のホームページ。施設案内が掲載されている。

(http://www.chiiki-dukuri-hyakka.or.jp/book/monthly/0009/html/egura1.htm)

いろいろな市町村のスポーツによる地域づくりが載っている。地域のそれぞれの取り組みが載っていて,なかなかおもしろい