sekiyae010704  余暇政策論レポート 「WORLD GAMES 2001 AKITA」

k990132  関谷恵梨子

 

2001年8月16日から26日の11日間にわたり秋田で開催される第6回ワールドゲームズ(通称、秋田ワールドゲームズ2001)。秋田県内では、数年前から今年の開催に向けてPR活動が行われてきた。しかし、県内の人でも、「どんな大会なの?そんなに大きな大会なの?」といった声が多く聞かれた。私は秋田県出身だが、高校生のころからその名前だけは聞いていたが、どんなものなのかさっぱり知らなかった。ましてや、県外の人たちにとっては「ワールドゲームズ」という大会そのものを聞いたこともないという人が多いのではないだろうか。そこで、ワールドゲームズとはどんな大会なのか、なぜ秋田で開催されることになったのか等をみていきたい。

まず始めに、「ワールドゲームズ」という大会について、その主催者や特徴、競技種目等を、日本ワールドゲームズ協会のホームページ(http://www.ssf.or.jp/jwga/)と、第6回ワールドゲームズホームページ(http://www.wg2001.or.jp/)を参考に説明する。ワールドゲームズとは“もうひとつのオリンピック”とも言われ、国際スポーツ団体連合(GAISF)加盟競技のうちで、オリンピックの競技以外のスポーツ約30競技について4年に1度開催される大会である。国際ワールドゲームズ協会(IWGA)の主催、国際オリンピック委員会(IOC)の後援で開催される。参加選手はオリンピックのように国、または地域の代表ではなく、各競技の国際団体によって選ばれた選手である。競技とは別に、「sports for all」の普及を目的とした市民参加型イベントのほか、コンサートや展示会などの文化的イベントも実施される総合的文化イベントでもある。

 ここで、ワールドゲームズの主催である国際ワールドゲームズ協会について触れておきたい。国際ワールドゲームズ協会(IWGA)は、国際オリンピック委員会(IOC)の公認団体、国際スポーツ団体総連合(GAISF)の関連団体のひとつであり、4年に一度ワールドゲームズ大会を開催するほか、IWGA会員スポーツ種目の普及、発展のため各種活動を行う。会員は、GAISF会員で、オリンピック競技に含まれていないスポーツの国際統括団体であることを条件に、年次総会で加盟が承認され、1997年次総会終了時で33団体が会員となっている。日本においては、1985年に国内の競技連盟などによって、日本ワールドゲームズ委員会が発足し、IWGAとの連絡やワールドゲームズの普及に努めてきた。 1991年12月、日本ワールドゲームズ委員会は、日本ワールドゲームズ協会(JWGA)に改組し、以後、IWGAの事業に参画し、ワールドゲームズの日本誘致や、国内大会の開催等を目指して活動している。

 今回、秋田で開催される大会は第6回大会であり、これまでの5回の大会は、サンタクララ(アメリカ)、ロンドン(イギリス)、カールスーエ(旧西ドイツ)、ハーグ(オランダ)、ラハティ(フィンランド)で開催された。今大会はアジアでの初の大会となる。ワールドゲームズの受け入れは、オリンピックと同様に会場提供都市単位で行われる。会場提供都市はホストシティと呼ばれ、当該大会の5年前に開かれるIWGA年次総会で決定される。 ホストシティでは、大会の受け入れにあたり組織委員会の組織、競技場、宿舎、プレスセンターなどの施設の手配や、観客動員のための広報、競技のテレビ放映などメディアとの協力体制の確立、スポンサーの獲得等にあたる。また、ワールドゲームズのひとつの大きな特徴として、既存の施設を使用して開催することを原則としているため、ワールドゲームズの正式競技の全てを実施できなくてもホストシティとして立候補することができる。 さらに、公開競技の決定には、ホストシティの意向が考慮されるようになっている。大会参加条件を満たしている競技でも、競技会場が開催条件に適合しない場合には実施されない。今秋田大会で開催される競技は、公式競技は26競技(ビリヤード・ボディビルディング・ブールスポーツ・ボウリング・キャスティング・ダンススポーツ・ファウストボール・フィールドアーチェリー・フィンスイミング・フライングディスク・新体操[種目別]・スポーツアクロ体操・エアロビック・トランポリン・タンブリング・柔術・空手道・コーフボール・ライフセービング・オリエンテーリング・パラシューティング・パワーリフティング・ローラースケーティング・ラグビー[7人制]・綱引き・水上スキー)、公開競技は5競技(合気道・ビーチハンドボール・ゲートボール・相撲・女子綱引き)で、全167種目である。今大会では、前回のラハティで行われたスカッシュは実施されないし、また、サーフィンのように国際ワールドゲームズ協会に加盟していながら、一度も実施されたことのない競技もある。加盟しているのに実施されない競技の連盟からの抗議はないのだろうか、大規模な施設建設などあったほうが大会PRには効果的なのではないだろうかという疑問をもった。これについて、第6回ワールドゲームズホームページのQ&Aコーナーで“・・・この規定は大会の価値を損なうものではなくむしろ新しいスポーツ大会の方向性を示すものです。それは、莫大な建設経費をかけなくても、世界規模の総合競技大会を開催することができ、新たな建築物を必要としないため環境に対する影響を最低限におさえることができるということを意味しているからです” http://www.wg2001.or.jp/jp/faq.htmlより引用)といっている。確かにオリンピックなどでの新しい大会用施設の建設には財政面や環境問題等から反対意見もあがり、論争となる。長野オリンピックにおいても、招致の段階では既存の施設を活用するということになっていたらしいが、結局はスキージャンプ台等の大規模な施設建設となり、環境破壊、財政問題等が挙げられた。

 また、参加選手の選考の仕方もワールドゲームズの大きな特徴のひとつである。各国の代表選手によって競技が行われるのではなく、選手は世界最高レベルという基準により、各競技の国際スポーツ連盟(IF)が検討し、国の競技団体に派遣を要請する。国別の参加ではなく、個人の自主参加という形なので、選手は自分で手続きをし、自分で航空券を買って大会会場へやってくる。開会式・閉会式の入退場、宿舎等は国別ではなく、競技種目別にまとめられ、同じスポーツを通じて国際交流を促進する。また、表彰式には金・銀・銅のメダルは授与されるが、当初、国旗の掲揚や国歌の演奏は行われていなかった。これは、あくまでも参加する選手により、世界トップクラスの競技を競い合い、行き過ぎた国威発揚や勝利至上主義を排除するという趣旨のもとに原則となっていた。しかし、第5回ラハティ大会から、国際色を出すために国旗の掲揚と国歌の演奏を行っている。秋田魁新聞2000年8月17日付の記事によれば、81年にサンタクララ(アメリカ)で初めて開催されたワールドゲームズは、その前年に開催されたモスクワ五輪の影響を色濃く受けているということである。というのも、80年の同五輪は、旧ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議する形で西側諸国がこぞって参加を取りやめる等、五輪に政治が積極的な形で介入した最初の大会となったからである。これを受けて、IWGAは、スポーツへの政治介入を拒むため、開会式の入場行進を国別ではなく競技別で行うなど、国家色を薄めるための独自のスタイルを築き上げたという。しかし、回を重ねてもワールドゲームズの知名度は低いままであり、IWGAはメディアの関心を得るためには、国旗掲揚・国歌演奏を排したワールドゲームズの基本理念は逆効果だと判断した。今秋田大会においても、IWGA側の要請を受けて、表彰式では国旗掲揚・国歌演奏の導入を決めているが、ワールドゲームズ発足当時の理念に賛意を示して大会を誘致した秋田県側は、戸惑いを隠せなかったとのことである。(http://www.sakigake.co.jp/Sports/wg/ato/ato.htmlを参考に筆者要約)あくまでもワールドゲームズはスポーツの祭典であり、スポーツを通して普段は交流をあまり持つことのできない、違う国の人々が親交を深めるということを第一の目的とするという点は非常に評価できる特徴のひとつではないかと思う。国旗掲揚・国歌演奏ということが必ずしも国威発揚に直接的につながるとは考えられない。しかし、やはり、当初掲げた理念のまま貫き通してほしかったと思うところもある。表彰式での国旗掲揚といった形式的なことにとらわれず、同じスポーツを志すものがともに競い合い、高めあい、楽しむという気持ちを参加選手も観客も忘れないということが最も重要ではないだろうか。 

つぎに、なぜこのように世界的な、大規模な大会が秋田で開催されることとなったのか、ワールドゲームズホームページのQ&Aコーナーを参考に説明したい。

 秋田県はなぜワールドゲームズ開催地として立候補したのだろうか。その主な理由は、6つ挙げられている。第1に、多様なスポーツの関心を高めることである。先進性を考え、若者に人気のあるスポーツ(サーフィン、ライフセービング等)、時代即応性と高齢化社会の生きがい対策に生涯スポーツとして注目されているもの(スポーツブール、フライングディスク等)、将来性と日本のメッカとなりうることを求め日本でマイナーでも世界的に愛好者の多いもの(ファウストボール、コーフボール等)を通じ、よりスポーツの関心を高めることを期待している。第2に、秋田を世界に向けて情報発信できるということである。今大会は、2001年に予定されている唯一の総合スポーツ世界大会なのである。第3に、地方から直接の国際交流推進の起爆剤になりえるこということである。第4に、県民の自信と経験につながるということ。大規模な国際イベントをやり遂げることによるソフトの蓄積(ボランティア精神やホスピタリティの醸成、ノウハウの継承)や、郷土に対する 誇りの喚起が期待される。 また、民間の主体的かつ積極的な取り組みを行政がサポートする事業手法の確立にもつながる。 さらには、秋田の良さの再認識もできる。 第5に、大会と秋田県のイメージアップ効果が期待できることである。 先にも書いたとおり、ワールドゲームズの特徴である、既存の施設を使用して開催するという開発型・巨大投資型ではないことが、新時代のスポーツ大会の提示となる。また、エネルギッシュで明るいイメージの売り込みができる。第6に、大規模国際大会の受け入れに関するインフラ整備が促進されるということである。既存の制度の利活用、民間への投資の動機づけ等によるハード及びソフトの整備、宿泊施設、交通機関、金融機関、病院等のホスピタリティに関する基礎水準の向上が期待される。(http://www.wg2001.or.jp/jp/faq.htmlを参考に筆者要約)

第4の理由として挙げられている、県民の自信と経験につながるということを達成するには、ボランティアの活動が大変有効であると考える。秋田では、ボランティアを運営要員とした国際イベントはワールドゲームズが初めてであり、ボランティア(組織)の育成が大会開催に向けた重要課題の一つと考えられている。ボランティアの活動内容としては、大会中は観客・関係者の案内・接待、会場の整理、会場等のゴミの回収、清掃、会場の改札、大会関係車両の運転、応急医療、通訳、情報紙作成、配布 、大会準備期間中は大会計画づくりの手伝い、ボランティアのサポート、ボランティアへの連絡、独自研修の企画準備、ボランティア企画業務準備などが挙げられている。秋田魁新聞2000年8月19日付けの記事によれば1999年7月に4000人の目標を立ててボランティアの募集は始まった。1年後の2000年8月14日で応募数は663人と8団体となり、各団体からの参加人数を数えても、計1015人と目標値には遠く及ばなかった。原因の一つには、やはり、県内でさえワールドゲームズの認知度がなかなか上がらなかったということであろう。ボランティア登録の申し込み時の業務希望調査から、最低5日間とされている参加日数も足かせになっていると考え、より柔軟にとにかく登録の間口を広げることとした。企業の協力や、大会本番は夏休み期間ということから学生ボランティアの参加に期待しているということであった。(http://www.sakigake.co.jp/Sports/wg/ato/ato.htmlを参考に筆者要約)このような国際大会におけるボランティアで特に重要な存在であると思われるものは、通訳である。約80の国と地域から、約2500人の参加者。大会のスムーズな運営に最も重要なのは文化の違いを認識すること、特に言葉の壁であろう。英会話クラスからは集まったボランティア有志によりスポーツボランティアのグループが設立されたりと、知識・ノウハウを学ぶことに積極的な動きも見られる。

一般公募のボランティアによって作り上げられた、国内最初で最大のスポーツイベント、それは、長野五輪だった。ボランティアスタッフ約3万2千人、組織委員会990人だったということは、ボランティアスタッフの力はかなり大きなものだったろうと思う。募集当時(1994年)はスポーツイベントでのボランティアについての認識や意識があまりなく、また、世間一般のボランティアそのものへの関心も薄かった。日本においてボランティアの存在が注目され、関心が高まったのは1995年の阪神淡路大震災以降であろう。その状況下でボランティアの登録と仮配置からはじめ、語学要員の確保、ボランティアリーダーの研修等を行い、グループ毎の活動を行っていくこととなった。そして、そのグループの中から、私設のスポーツボランティア団体も誕生した。(スポーツボランティア団体「BIND−AID」ホームページhttp://www.asahi-net.or.jp/~iw8t-ysd/bindaid/を参考に筆者要約ボランティアたちがみずから結束し、積極的に自分たちの能力、知識習得に取り組み、自分たちの手でこの大会を良いものにしたい、という強い思いがボランティア活動の成功、そして大会の成功へとつながったのだと思う。秋田ワールドゲームズにおいても、ボランティアスタッフのやる気はもちろんのこと、スタッフとして大会に直接かかわる事はないという人も道で困っている人がいたら声を掛けるなど、大会期間中は秋田県民すべての人が、参加者や観光客を気持ちよく受け入れられるという姿勢を持つことができたならば、さらに大会を盛り上げることにつながるのではないだろうか。

ワールドゲームズという大会の主な特徴をいくつかみてきたが、私は、ワールドゲームズは新しいスポーツ大会の形を示す大会として高い評価ができると考える。既存施設を利用し、すべての競技を実施できなくてもホストシティに立候補できるということは、オリンピックなどよりも、さらに多くの都市が立候補できる可能性があるということである。このことはより多くの、さまざまなスポーツを楽しむ人同士が、よりさまざまな地域の人々と交流できることにつながる。現在は、日本国内でも、世界的にもまだまだ知名度の低いワールドゲームズである。しかし、回を重ねるごとに同じスポーツを志す人たちの輪は広がり、多くの人が参加するようになるに違いない。そのことが、自然にワールドゲームズを「もうひとつのオリンピック」として世界的に認められる大会としていくのではないだろうか。純粋に、スポーツの祭典として、最高レベルの技を競い合うというワールドゲームズの基本理念のもと、同じスポーツを楽しむもの同士が「国」という枠組みを超えて交流を広げることができる。これは、決して大げさではなく国際協調ということにつながるのではないだろうか。オリンピックにおいても、ワールドゲームズにおいても、他のどの国際大会においても、参加選手たちにとって、また、その姿を見て感動する私たちにとって、その瞬間は国威や権力とは無関係なものでありたいと感じた。

 

(参照サイト)

     第6回ワールドゲームズホームページ http://www.wg2001.or.jp/

→秋田ワールドゲームズ2001のオフィシャルサイト。開催会場、競技などワールドゲームズに関することから、秋田県の観光情報なども掲載されている。開催競技については、その競技のルール、歴史、観戦ポイントなども紹介されており、充実している。  

     日本ワールドゲームズ協会ホームページ http://www.ssf.or.jp/jwga/ 

     秋田魁新報社ホームページ http://www.sakigake.co.jp/

     スポーツボランティア団体「BIND−AID」ホームページhttp://www.asahi-net.or.jp/~iw8t-ysd/bindaid/