余暇行政論
温泉の効能について
吉田まゆみ(k960163)
私はかつて、温泉があまり好きではなかった。羞恥心が強かったためである。しかし、父の仕事の都合で引っ越した秋田において、温泉は一大観光地であるという事実を知り、さらに、大学に入って秋田を離れ、その魅力を再確認することとなった。また、温泉好きの友人の話を聞くにつれて、温泉は私にとって気になる存在となったのである。そこで、古くから日本人に親しまれてきたこの温泉について調べていきたいと思う。
昭和23年に制定された温泉法第2条によると、温泉は「地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、別表に掲げる温度、又は物質を有するもの」として定義されており、その温度は25℃以上、また物質は、フッ素イオン、水素イオン、総硫黄など19種のうち1つでも含めばよいとされている。
温泉の泉質にも様々ある。掲示されている泉質は全て化学的な分析データによるもので、単純温泉、二酸化炭素泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉、硫酸塩泉、含鉄泉、含アルミニウム泉、含銅鉄泉、硫黄泉、酸性泉、放射能泉の11種類がある。
(画像はhttp://www.hana.or.jp/tazawako/onsen.htmlより)
温泉の効果(http://www.spa.or.jp/hyakka/hyakka_frame.htm
より)
温泉の効果は、温泉そのものの効果と転地などによる効果の2つに大別され、さらにそれぞれ2つずつの効果があげられる。
まず前者は、
(1)
有成分による効果:温泉中のガスやイオンなどが体内に吸収されて現れる効果。温泉の成分が皮膚から吸収され、血液に入って全身にいきわたり、皮膚、皮下組織、筋肉などの細胞に作用すると同時に、神経系にも作用するものである。
(2)
変調効果:体内に吸収された温泉成分の刺激や、反復して温泉に入浴することによって受ける刺激によって、神経系統の調整や内分泌機能を調節する作用がある。
次に後者は、
(1) 転地や気候による環境効果:日常生活やストレスからの開放や、温泉地の自然環境が身体によい影響を及ぼす作用がある。
(2) 食事や運動による効果:規則正しい食事や栄養のバランス、そして健康状態や年齢に応じた適切な運動などが身体によい影響を及ぼす。
・飲泉について
温泉は入ってあたたまるだけでなく、飲むこともできる。普通に入ることとの違いは、体内に直接取りこむことによってその効果をより早く得ることができる点にある。
飲泉をする際には、次のことに留意したい。
・
飲泉所あるいは飲泉可能と明記してあるところで飲む
・
飲泉の前後には食事や喫茶を避ける
・
飲用量が指定されている場合はそれを守る
・
湯の華などの浮遊物はできるだけ飲まない
・
強酸性泉の場合は薄めるか、直後に口をゆすぐ(特に歯)
・
持ち帰った温泉は変質の可能性があるので飲まない
(http://www.onsen.or.jp/iroha/backnum/ (No.8 飲泉のすすめ)より)
・適応症と禁忌症
温泉に行くからには、当然それなりの効果を期待したい。しかし、なかには、かえって逆効果もたらしてしまう場合もありうる。
適応症とは、温泉療養をおこなってよい病気や症状であり、主として慢性の病気がこれにあたる。一方、禁忌症とは、温泉療養を行ってはいけない病気や症状で、主に急性の炎症性疾患や感染症が挙げられる。また、癌や妊娠の初期と末期もこれにあたる。
・具体的な効能
実際に、どの泉質がどの病気に効き、あるいは禁忌にあたるかを以下にまとめた。(表はhttp://www.spa.or.jp/hyakka/hyakka_frame.htmより)
一般的適応症 |
神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進 |
一般的禁忌症 |
急性疾患、(とくに熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性の疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(とくに初期と末期) |
泉質別禁忌症 |
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泉質 |
浴用 |
飲用 |
塩化物泉
炭酸水素塩泉 |
一般的禁忌症に準ずる |
腎臓病、高血圧症、一般むくみがあるとき、甲状機能亢進症のときヨウ素を含有する温泉は禁忌 |
硫酸塩泉 |
一般的禁忌症に準ずる |
下痢のとき |
二酸化炭素泉 |
一般的禁忌症に準ずる |
下痢のとき |
硫黄泉 酸性泉 |
皮膚、粘膜の過敏な人、とくに光線過敏症の人(硫化水素型) 高齢者の皮膚乾燥症 |
下痢のとき |
泉質から見る適応症 (○は浴用 ☆は飲用) *▲は硫化水素型 |
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適 応 症 泉質 |
高 血 圧 症 |
動 脈 硬 化 症 |
糖 尿 病 |
痛 風 |
肥 満 症 |
胆 石 症 |
慢 性 胆 嚢 炎 |
肝 臓 病 |
慢 性 消 化 器 病 |
慢 性 便 秘 |
貧 血 |
慢 性 婦 人 病 |
月 経 障 害 |
虚 弱 児 童 |
慢 性 皮 膚 病 |
切 り 傷 |
や け ど |
単純温泉 |
一般的適応症に準ずる |
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塩化物泉 |
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☆ |
☆ |
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○ |
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○ |
○ |
○ |
○ |
炭酸水素塩泉 |
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☆ |
☆ |
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☆ |
☆ |
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○ |
○ |
○ |
硫酸塩泉 |
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○ |
☆ |
☆ |
☆ |
☆ |
☆ |
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☆ |
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○ |
○ |
○ |
二酸化炭素泉 |
○ |
○ |
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☆ |
☆ |
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含鉄泉 |
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☆ |
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○ |
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含銅・鉄泉 |
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☆ |
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○ |
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酸性泉 |
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☆ |
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○ |
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硫黄泉 |
○▲ |
○▲ |
○☆ |
☆ |
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☆ |
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○ |
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○ |
○ |
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放射能泉 |
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○ |
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○☆ |
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○☆ |
○☆ |
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☆ |
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○ |
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○ |
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温泉の魅力
上に挙げた、実証されている効能だけが、温泉のよさではない。それ以外にも温泉には多くの魅力がある。それらについて、少し述べてみたい。
まず温泉地には、景勝がつきものである。ほとんどの場合において、温泉は自然に囲まれた山の中にあり、特に露天風呂に入るときなど、それらの景色を眺められることでよりいっそうリラックスすることができるであろう。
また、知らない人とのふれあいというのもまた魅力であるかもしれない。観光地としての温泉もそうだが、特に地元の住民が利用する共同湯においては、その土地ならではの雰囲気が楽しめる。また共同湯は、源泉でかつその土地で最も泉質がよい場合がほとんどであるので、そういった点からも、共同湯に入ってみるのが好ましい。
温泉に入る上でのマナー
ここまで温泉について述べたが、最後に、温泉に入るときのマナーをいくつか挙げておく。
まず、入る前には必ず体を洗ってから入ること。また、タオルを持って入るのはいいが、湯船に入れないこと。いくらきれいなタオルでも、他の人にとっては不愉快な思いをするものとなる。そして、酒を飲んでの入浴は事故につながるので避ける。特に泥酔状態で入るのは体にとって危険である。
最後に
冒頭に述べたように、温泉は古くから日本人に親しまれている。それは、全国各地に多く存在し、いつでも利用することができるという点、また、療養目的で利用することもできるなど、さまざまな利点があるからである。
守るべきこと−マナーや禁忌−をしっかり踏まえた上で、気持ちよく利用していきたいものである。
リンク集
http://www.ne.jp/asahi/onsen/banzai/
温泉や宿の評価、一人旅に有用な情報など。温泉についての雑学やマナーについての情報もある。
http://plaza15.mbn.or.jp/~onsenkyo/
温泉関連の文献情報が充実。温泉法も掲載。
http://www.onsen.or.jp/iroha/index.html
温泉に関する基礎知識、筆者の意見など。独自の観点による分析がおもしろい。
http://www.tokupura.co.jp/start.html
温泉の基礎知識が豊富。掘削方法まで書いてある。「温泉の正しい入り方」が簡潔にまとめられている。