余暇行政論課題レポート

京劇を味わう

 

        国際学部国際社会学科          

 

980114

草島美香                                   

(写真はhttp://www.chineseopera.com/role/index.htmより引用)

                                

1、はじめに―なぜ京劇をとりあげたか

先日、中国の京劇団が宇都宮に来て、公演を行った。たまたまそれを見に行く機会に恵まれ見てきたのだが、言葉が通じないのに、その話の内容が、身体表現だけで伝わってきた。しかも、その計算し尽くされた体の動きは、とても機敏でありながらも力強く、さらに繊細で、あっという間にその世界に魅了されてしまった。それに加え、見る者に更に強いインパクトを与えるあの華やかな化粧や衣装。これらをもっと深く見てみたいと思い、このテーマでレポートを進めることとした。

 

2、京劇の歴史と特徴

@京劇とは

 今現在、世界にある沢山の民族の多くは演劇と呼ばれているものを持っており、各々祭祀などから発展させ長い時間をかけて現在の姿にまで形成させてきました。もちろんお隣の国である中国にも、古くからそれぞれの地方に特有の戯劇があり、それぞれの歴史の中独自の発展を遂げてきました。ただ、ご存じのように、中国大陸というモノはとてつもなく馬鹿でかいシロモノであり、その地方ごとに言語を初めとした文化、風習等も、まるで別の民族であるかのように異なっています。ご多分に漏れず演劇の分野でも、その地方特有の言語・習慣を取り入れた地方劇が、それぞれの地方で独自に形成されていきました。現在でも昆劇”“晋劇”“越劇”“黄梅戯”“豫劇”“湘劇”“川劇”“秦腔等、多くのものが残っており、その伝統は今に受け継がれています。(これらは私のような初心者が見ても、喋っている「方言」以外の相違点はなかなか分かり難いものでありますが、演目、使用楽器、曲調の違い等多くの相違点があるようです。)これらと比べ、いわゆる京劇と呼ばれるものは、これら土着の文化に根ざして発展してきた地方劇とはその成立過程に一線を画しています。地方戯劇が一般に祭祀演劇から娯楽のための演劇に変化していったのと異なり、京劇はそれらの完成した伝統戯劇を融合・昇華させていったものなのです。その為に、成立時期も他の演劇よりも比較的最近である十八世紀頃で有ろうと言われています。このような事情により京劇が中国の代表的戯劇と言われているのです。

http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Miyuki/3282/jingju.htmlより

あの、洗練された動きや華やかさからしても、京劇が完成した伝統戯劇を融合・昇華させていったものであることが感じられる。しかし、中国には京劇以外にも様々な地方劇があったということは初めて知った。と同時に、それだけ多くの地方劇がありながらも、中国イコール京劇というイメージを世界中にもたせているという事は、それだけ京劇がすばらしいものであるということをあらわしていることに他ならないであろう。

 

A「京劇」という名称について

かつては「京戯」「平劇」「国劇」などとも呼ばれた。台湾(中華民国)は公式には「北京」という呼称を認めていないため、今でも「平劇」「国劇」と呼んでいる。

また清末民初まで、単に「皮黄」「大戯」と言えば、もっぱらこの京劇を指す場合が多かった。

このようなところにも、中国と台湾の微妙な関係が見え隠れしている。やはり、こういう情勢が文化に与える影響は大きいのだ、と実感.

 

B京劇はいつから始まったか

京劇史についてはいまだに混沌とした部分が多い。京劇の起源をいつに置くかについてさえ定説がない状態である。確かなことは、京劇の主な源流は徽戯であり、それに漢劇(の前身)の要素が合流し、さらに崑曲はじめ幾多の地方劇の要素が逐次そそぎ込み、曲折を経て今日見られる京劇の形が出来上がった、という事である。

 

C「地方劇」の王者として中国に君臨しつづけた京劇

京劇は大清帝国の首都・北京の繁栄をバックに、二十世紀後半に至るまで、一貫して順調な発展を続けていく。

 途中、わずかな障害がなかったわけではないが、名優が輩出し(多くは安徽・湖北の出身者)、発展に次ぐ発展を重ね、わずかに光緒の一時期、河北[木邦]子に王座を脅やかされた以外は、常に不動の地位を保ってきた。また、京劇の観客層は、北京市民から皇族・満洲貴族まで多岐にわたったが、旧中国でこれだけ広い社会階層の観衆をもっていた事も他の中国地方劇には例を見ない。京劇は1960年代に入っても、依然として中国文化の主導的立場にある文化の一つであった。例えば、「文化大革命」の発端は『海瑞罷官』(かいずいひかん)という新編京劇に対する批判書であり、また「文化大革命」中上演を許された八つの芝居は、すべて京劇であった。

 京劇の衰落は「文化大革命」期、伝統演目(つまり京劇のほとんど)が全面上演禁止となり、多数の名優が迫害死したことを境に決定的になった。

1980年代はじめ、中国の開放政策が進み、西洋の音楽・映画などが大量に入ってくると、京劇を含めた地方劇全体は完全に圧倒されてしまった。

Beijing Opera Historyより抜粋

自国の文化活動に関わっていたことが、結局は、自らの命を絶たせてしまう原因となってしまったなんて、おかしな歴史だと思う。文化大革命とは、本当に残虐な政策であったと改めて痛感。

 (上の写真はhttp://marina.fortunecity.com/foreshore/167/index.htmlより引用)

 

3、京劇の楽器について

私が観劇したとき、劇自体の迫力もさることながら、それを盛り上げるバックの楽器の生演奏も劇とぴったり合い、素晴らしかった。いかにも中国、といった感じの音色が印象的だった。京劇を盛り上げるには欠くことのできないこの音楽について、ここでは見ていきたいと思う。

まず、京劇の楽器類は大きく分けると

1、弦楽器 2、管楽器 3、打楽器 4、その他

に分類される

1.  弦楽器類

京胡(ジンフー)     月琴(ユエチン)     三弦(サンシェン)    中弦(チョンルアン)


バイオリンに似た高音

で、キイキイ咽び泣く     マンドリンに似た

ように弾く          高く澄んだタラララ                   ギターのようなよく澄ん

               という音          三味線に似た、ボンボン   だ低音

                             と温かみのある音

他にも

京二胡(ジンアルフー)京胡より一オクターブ低い、バイオリンのような音色

大弦(ダールアン):中阮を更に大型化した、より低音の撥弦楽器

秦琴(チンチン):バンジョーに似た、ポチョンポチョンという音

などがある

 

  1. 管楽器

笛子(ディーズ):竹製の中国式フルート。フュルルルと独特の音を出す

スオナー:ずばり「チャルメラ」のこと。プァーララララ、と猛烈な勢いで勇ましい旋律を吹きまくる

海笛子(ハイディーズ):小型のラッパ。プープーと音を吹く

シェン:ファーファーン、とハーモニカを束ねて吹いたような音を出します

 

  1. 打楽器

檀板(タンバン)

単皮鼓(ダンピーグー)

の二つで、併せて「鼓板」と呼ぶ。これらは、西洋音楽の指揮者にあたる「司鼓」(「鼓師」とも)が一人で演奏する。司鼓は左手で檀板を、右手で単皮鼓を叩きます。
次に重要なのは金属製の打楽器群で、

大鑼(ダールオ): 大きなドラ

[金發](ナオボー) にょうばち

小鑼(シャオルオ) 小さなドラ

http://home.hiroshima-u.ac.jp/cato/KYY.html参考

実に様々な楽器が使われている。特に、司鼓の一人二役はすごいと思った。演奏者たちは、日々どのような練習を重ねているのだろうか.

4、終わりに

 ふとしたきっかけで興味を持ち、今回のレポートで調べてみた京劇であるが、その全貌をここに書き上げることはとうてい無理な話だったので、特に、歴史と楽器についてのみに注目してみた。できれば、あの、奇抜な化粧について調べてみたかったが、残念ながら資料がなかった。このレポートを読み返し、最も印象に残っているのは、文化大革命時に京劇俳優が多数、迫害を受けた、という点である。一国の政策、というのは時に罪無き人々をいともあっさりと殺してしまう物なのだ.。恐ろしいものだ。しかし、そんな中をも生き抜いてきた京劇なのだから、これからもずっと人々に愛され続けていくことはまちがいないだろう。そしてさらに、このような素晴らしい芸術が世界中に知られるようになればいいと思う。