余暇行政論課題レポート

恋愛バラエティのもたらしたもの

−「あいのり」「未来日記」を例に取って−

はじめに

大学に入ってからというもの、「余暇」というカテゴリに含まれる日数はかなり増えた 気がする。土日はもちろん、夏、春にはガツンと長期休暇が設けられ(なんと二ヶ月!)、大学に入った当初は「夢のような所だ!」と感動していたものだが、いざ大学生活を始めてみると、いや、なんともいえず、余暇とは暇なものなのだ。しかし、我こそは貧乏学生なのだ。ぶっちゃげて余暇を満喫するには、金が要るのだ。世の中金である。しかも運悪く、我こそは大変ずぼらな性格であるがゆえに、日常あるような「余暇」、つまりは土日であるが、その日はお洗濯物や、お掃除や、お布団干しでいっぱいいっぱいなのだ。必然的に、私の余暇の過ごし方、ひいては、趣味と言うべきものには、「テレビを見る事」、「音楽を聴く事」といった、はたから見れば、概ね余暇というか、日常の一端にあるもののような事柄になってしまった。「恋愛バラエティ」もまた、私のよく見るテレビ番組の一つであったものなのだが、最近日常会話やテレビ雑誌におけるそれらの出現頻度が非常に高くなっている事に気付き、しかもただの「バラエティ」ではなく、新たな、というよりは「恋愛」という別なジャンルの言葉(「恋愛もの」はあっても「恋愛」テレビ番組はなかった。)が付加され、「恋愛バラエティ」として認知されているのだ。

現在、恋愛バラエティの両横綱と思われるのは、フジ系の「あいのり」とTBS系の「ウンナンのホントコ!」の人気コーナー「未来日記」である。「未来日記」は純粋な恋愛バラエティとは呼べないかもしれない。しかし、このコーナーは番組に欠かせない人気コーナーとなっており、社会、ひいては大衆(主に若者)への認知度もかなり高くなっているため、あえて挙げさせていただく。この二つの番組におけるシステムや、番組の魅力、影響について考察していきたい。

あいのり

「あいのり」の番組における基本システムを紹介しておくと

·         男四人、女三人で、ラヴワゴンという車に乗って世界を旅する。

·         旅の途中、この人という異性が決まったら、日本に帰るチケットを渡して告白。

·         告白されたら、一晩じっくり考えてOKだったらキス!NOだったらチケットを返す。

·         カップル成立の場合は二人で日本帰国。

·         足りなくなった人数は新メンバーが途中参加。

http://www.fujitv.co.jp/jp/index.html

未来日記

対して、未来日記のシステムはこのようになっている。

・オーディションで選出された男女が未来日記(未来のことが書かれている日記)に従って行動を共にする。未来日記の内容は、試練や、アクシデント等が含まれ、主人公に選ばれた男女はそれを乗り越えていくことで、お互いのことを意識していく。お互いのことを好きであると気づいた時、最後の未来日記には、悲しい別れが書かれている。しかし、その後に、「白紙の未来日記」、「白い未来日記」等によって、最後は、自分の意志で未来を選択できるというのが、これまでのセオリーとなっている。

このようなことが各番組のルールとして決められてはいるが、ルールには例外もたくさん含まれる。そして、その掟破りのどんでん返しが、視聴者を引き付ける大きな要因となっていると思われるのだ。それを説明しても良いのだが、それらはあくまでも「例外」の産物であるため、ここでは基本的なルールに従った、この番組のシステムや、番組の魅力に焦点を絞りたい。

これまでの恋愛系番組との違い

まず、今までのお見合い番組や、「ねるとん」に見られた、時間の制約が無い点である。「あいのり」では、複数のメンバー(最高七人)で旅を継続していく。みんなで行く先、行く先のホテルを探し、その土地の産物や、行事に触れていく。メンバーに共通点はほとんど無いが、共通した目的は、「この旅で恋愛をしたい」ということ、それだけなのだ。毎日、朝から晩まで接するわけだから、前述の番組には見られなかった密度がそこにはあるのだ。また、未来日記においては、会う時間は、最短で四日間程度なのだが、日程(未来日記では、第一話、第二話という様に、約一日を一話構成で撮影していく。)の間には、数日の開きがあり、出演者は、お互い住所も電話番号も知らない為、連絡のとりようがない。これは、「あいのり」と相反しているようにも思えるし、ある意味時間の制約を受けることになる。しかし、その期間にお互いのことを考え、思い直すことにより、その次の未来日記への期待が沸いてくる。要するに、この期間、出演者達は相手を深く考えることのできる時間が与えれているのだ。

そして、考えて欲しいのは、視聴者への影響である。視聴者にとって、これらのシステムは、番組を継続的に観る事を促す結果となる。毎週、完結する、または二時間枠のスペシャル番組として放送されてきた過去の番組とは異なった、三十分程度ながら、密度の濃い内容の映像を、また、来週への期待を提供する事によって、固定された視聴者を両番組とも獲得できたものと私は確信している。また、この、固定視聴者の獲得には、もう一つの要因が絡んでいる。

それは、「感情移入」である。前に述べた通り、作り込まれた訳でもない、旅をしながら恋愛をする若者や、作り込まれた台本にしたがって行動する中でお互いに惹かれて行く男女などに、「感情移入」していく。ドラマや映画の出演者に感情移入するのと同様の原理だと思われるが、そんなものよりも、よりこちらのほうが、出演者に対しての思い入れは深いと思う。ドラマや映画の出演者はあくまでも「役者」であるから、どんなに演技が上手くても、それが演技だと視聴者が理解している以上、感情移入の限界はある。しかし、集団の中で旅を続ける中で複雑になっていく人間関係や、それが、日記(台本)に書いている事とわかっていても、その定められた未来に翻弄される人間の姿は、あくまでも「素人の」、「素の」姿なのだ。リアリティという点では、ドラマ等よりもこちらの方が勝っているため、感情移入のしやすさ、大きさも恋愛バラエティに軍配が上がる結果となるわけだ。

 波及効果−タイアップ曲の大ヒット等々

ここで、話は外れるが、「タイアップ」と言う言葉について説明しておく。音楽業界において、他のメディア(特に映像メディア関連。)とのタイアップが大ヒットへの登竜門となっている。その楽曲を知るに当たっての頻度が格段に増す事と、その番組との相乗効果によるヒットが見込める事、この二つの点がその主な理由だろう。頻度と言う点では一週間に一度であり、番宣(番組のCF)についてもさほど多くはない。番宣の多いドラマ、またはCFそのものの主題歌やイメージソングと比較すると少ない露出だが、第二点、すなわち、番組との相乗効果を加えた結果、両番組とも素晴らしいセールスをあげる名曲の出発点となったのだ。特に未来日記では、「TUNAMI」、「桜坂」という大ヒット曲を生み出した。相乗効果の引き金となった要因は、未来日記の内部と関わってくる。楽曲のテーマや風景が、未来日記の内容にオーバーラップする、それぞれのイメージが影響し合うことによって、お互いの感動を高めているのだ。そして、未来日記第五章「スケッチブック」には主題歌である「福山雅治」の「桜坂」の表題となる桜坂がクライマックスとなる場面のロケ地として登場し、桜坂の上での感動的なラストシーンでは、「桜坂」が流れていた。このように、当初、我々が予想だにしなかった戦略(それが意図されだしたのはおそらく「TUNAMI」以降だろうが)をもって、未来日記は「ウンナンのホントコ」の看板コーナーとなった。加えるならば、「桜坂効果」によって、桜坂は、新たなデートスポットになり、主人公であるヨシの実家であるたこ焼屋は大繁盛するといった結果になり、他の未来日記のロケ地にも同様の効果が予想される。また、「あいのり」においてメンバーが訪れた所にも同様の効果があり、観光客が参考にしながら旅をするようだ。波及効果を大きさで見るならば、経済効果が海外に及ぶ「あいのり」であろうが、国内で比較的簡単に行けるため、経済効果の金額ではやはり「未来日記」という結果になるだろう。

これからの恋愛バラエティ

これから先、恋愛バラエティに求められるものは、より強いリアリティであることは言うまでもない。素人主体である事は勿論、逆に芸能人の素の表情を映し出す鏡のような役割を持つ可能性も高い。恋愛バラエティというカテゴリがドキュメントバラエティ(電波少年、ウッチャンナンチャンのウリナリ!等)の要素を持ち始め、その形態が定着しつつある状況はしばらく変わる事はないだろう。紹介したふたつの恋愛バラエティにおいてもそれは言えるだろう。サイクルの早いテレビ業界において、番組を継続していくことは難しい。しかし、これらの番組は我々の記憶に残るであろう、一つの番組形態を創り出した事は事実なのだ。

参考サイト

「未来日記」 http://www.tbs.co.jp/unnan/

「あいのり」 http://www.fujitv.co.jp/jp/index.html