余暇行政論レポート 国際学部国際社会学科2年

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川村 カナエ

サマータイム導入と余暇の関係

1.はじめに

サマータイム制とは、夏の日照時間の長い間ほぼ半年間、通常より時間を一時間だけまえにずらして生活しようという制度である。これの導入が日本人の生活とどう関係するのかをみていきたい。特に日本人のライフスタイル、余暇利用にどう変化が生じるのかをみていこうと思う。

 

2.夏時間化の実際 <ライフスタイルへの影響

国民会議報告のサマータイム効果のもう一つの柱がライフスタイルへの影響なので、『夕方の明るい時間の増加』がどの程度か、釧路、東京、那覇での日照時間との関係を予測してみた。サマータイム期間全般で、仕事が終わってから明るい時間帯が一時間程度以上あるのは那覇だけ。釧路では67月の2カ月だけ、東京では全期間で終業後の“ゆとり”は期待できない。九州以南では、暗いうちに仕事に出かけ、夜は遅くまで明るくなっていて、寝不足とか体調維持が大変で、“ゆとり”どころではないだろう。

結論を言えば、日本では、緯度の高い国々と比べ、日照時間そのものが短く、北海道から沖縄まで、どこをとってもライフスタイル面での効用はほとんど期待できない。

釧路

夏時間化でメリットがでるのは6月と7月だけ。仕事が終わってから一時間ほどの日照のある月が二ヶ月あるということ。

東京

夏時間化で“ゆとり”がでる月は一月もない「サマータイムは東京の論理」と言われていますが、実際には、仕事時間が終わって一時間の日照がある月は皆無。日の出とともに活動開始しなければならない月が4910の三カ月もある。

那覇

夏時間化でメリットがでるのは4月から8月の五ヶ月あるが、4月から10月までの全ての活動開始時間が真っ暗。さすがに東南の那覇は日没時間が遅くなるので、9月と10月を除き仕事が終わってから日照のある月が多い。しかし、朝がしんどいだろう。

 

3. 余暇利用との関係

夕方の日照が後まで伸びるので、余暇を野外で過ごす時間が増えるから良いという議論がかなり多くみられる。これは一見本当の様にみえるがこれも考えてみればおかしい。「野外で過ごす時間」ではなく、「野外で過ごせる時間」なはずである。しかし本当に夕方野外で過ごすのを日課としている人はどの位いるだろうか。この事は日本人の食習慣と多いに関係している。ほとんどの日本人には夕食が朝食や昼食よりも重要な意味をもっているはずである。「夕餉」とい言葉がある様に、夕食の食卓を一家で囲んで過ごす事をモットーとしている家庭も多いはずだし、仕事から戻れない父親や熟通いの子供のためにそれができない不満を持つ主婦も多いはずである。また夕食に取る晩酌を楽しみ以上の人生の生きがいとまで言い切る男性も多くいる。ところが欧米人にとって夕食とは3食の中の一つなだけで、夕食を摂らないとなんとなく一日が終わらないなどという感覚は全くない。お腹がすくから何かを食べるだけである。だから暖かい食事を用意しない家庭のなんと多い事か。個人がそれぞれ食べたい物を食べる。チーズとパンを食べれば良い方で、りんごだけの人も多い。こんな食習慣だからこそ、仕事から戻った後の明るい数時間を戸外で過ごす事が十分可能なのである。日本人にそれができるだろうか。議論の中に「ライフスタイルを変える」という議論が頻繁に出てくるが、まずこの食習慣を変えることから始めなければ、彼らが言う余暇利用の実は決して上がらないだろう。

そもそも余暇利用に太陽の光がどうしても必要だという人はどの位いるのだろうか。余暇の利用なぞはそれこそ個人の問題で、どう使おうが、「私の勝手でしょ」というのが現代日本人だと思うのだが。

また、「朝の気温の低い時に通勤ができ、午前中の涼しい時間に仕事ができるので効率が上がる」という呑気な事を真面目に発言している委員がいるがわずか0.5℃程度の差しかない。

この様に、サマータイムとは全く関係のない事をメリットとして取り上げようという傾向が強く見られる。これは、前にも述べたように、サマータイム制そのものを誤解しているのだろうか。

逆の立場の人も同じ間違いをしている。それは「労働強化につながる恐れがある」のだそうである。もし日照時間に影響される仕事であれば、その可能性がないとは言えない。しかし冬の間に仕事を減らせば良い。農家の人達は長年そうやって生活をしている。農閑期があれば農繁期があり、それらは確かに日照時間と大きな関係がある。

それではサマータイムを導入することでどう生活が変わるかという事になるが、一言で言って、「何も変わりません」というのが、長年経験した結論である。サマータイム制の意味を考えてみても、時間軸がずれるだけであるから、その生活への影響はそれほどない。

 

http://www.gene.ne.jp/~lagoon/st/time.html

 

4.まとめ

私自身、サマータイムに対して少々の誤解を持っていたことに気が付いた。はじめサマータイムの導入と聞いて、「余暇時間が増える」、「帰宅後の自己啓発時間が増える」、「省エネに貢献できる」などと思い、この導入に賛成であった。しかし実際は時間を一時間進めただけで我々の生活に何らゆとりがでてくるわけではない。先に挙げたようにサマータイム期間で、仕事が終わってから明るい時間帯が一時間以上あるのは沖縄くらいだ。緯度が高く、冬の間太陽に恵まれない欧州で、サマータイムは効果的な日光活用法であるが、日本ではあまり効果的とは言えないようだ。

また、個人の意識改革により余暇の利用方法は変わるのだから、サマータイムにしたから実現できるというものではないだろう。サマータイムが個人生活のゆとりをもたらすというのは、我々の誤解である。そして実際の導入により、体内時計が狂うなどの問題も生じるであろうからこの導入に関してはもっと議論をする必要があるだろう。