大学生によるまちづくり提案に参加して―感想―

 

---

 

国際学部国際社会学科3年 吉田正絵

 

 私は初めて参加させて頂いた町づくり提案がとても悔しい結果となった。提案というものは、実際に実行される可能性があり、また提案を提出する者はテーマと出題者の意図を汲み取って、提案を考えるべきである。と、私たちのグループでは解釈をし、自分たちの出来る宇都宮を若者が住みやすい場所にするための提案を発表した。若者が住みやすいということは、若者が集まることの出来る場所をもっと増やすことが必要と考えた。そしてそれだけでなく、宇都宮という単語に注目して、宇都宮の中心市街地であるオリオン通りに目をつけたのである。

 しかし、発表当日に私たちの提案に対し、沢山の市の職員の方や一般の方からの意見を頂き、調査不足や提案の新しさが足りないということが分かった。結果も奨励賞というもので終わってしまった。ジョイント合宿での失敗を活かそうと、努力を重ね完成させた提案であったために私たちはひどく落ち込んだが、後になって冷静に考えてみれば多くの点で足りないことがあったということに気づかされたのである。

 私たちは提出ギリギリまで具体的に話を進めるに至らず、その分調査の資料が薄くなってしまった。そこはより具体的に提案を練ることによってカバーしたつもりであったが、例として出したKANMASの過去の事例の調査不足を指摘され、提案であるコミュニティカフェが数年まえにもあったという新鮮味のなさを指摘された。これまでのコミュニティカフェとは一味違うものを作ったつもりではあったが、聴衆からすれば同じようなものに聞こえたのかもしれない。調査不足については、ジョイント合宿もあったためでもあるが、ここが個人的に一番悔しい部分でもあった。もっと宇都宮市のことを知って、現状を知って、沢山の新鮮な発想と知識があればよりよい提案になっていたと感じた。ここで自分の勉強不足とチームとしての連携がまだまだ足りなかったと感じた。

 この提案は私個人だけでなく、チームとしても悔しいものになった。しかし、まだチームとしてもう一度挑戦する機会が残っているので、この悔しさをばねに、次につなげていきたい。確実にチームも個人も成長できていると感じた、今回の提案であったと思う。

 

国際学部国際文化学科3年 佐川琴美

 

宇都宮市で行っているまちづくり提案は今回、若者が住みやすいまちということが共通のテーマであったので、それに合わせてオリオン通りにコミュニティカフェを作るということを提案した。内容としてはオリオン通り商店街を賑やかな商店街にするというのが最終目標で、その為に商店街・行政機関・若者が直接対面できる場を作るというものである。この提案をより実現可能なものとするため、実際に商店街関係者、市役所関係者、若者のまちづくり関係者にインタビューを行い、各所の証言を基にカフェに様々な仕掛けを盛り込んだ。

当日の発表ではパワーポイントが非常に好評で嬉しかった。しかし、私が大切なところで原稿を読むことに戸惑ってしまい、迷惑をかけてしまった。しっかりと話すことを頭に入れていたつもりであったが、それも飛んでしまい時間をかけてしまったことが悔やまれる。だがポスターセッションでは必要な部分をアピールすることが出来たように思う。また、実際に政策を行っている人や以前のまちづくりに関わったことがある人から、自分たちの提案への批評が聞けたことは非常に有意義な経験であり、入賞という形にはできなかったが、参加したことに大きな意義を感じた。

不満を述べるとすれば、入賞したチームが一つの提案として異なる方向性の3つの事業を盛り込んでいたことと、最後の講評で「自作の歌を歌ったのが入賞の要因かもしれない」などの講評が有ったことである。この二つにはこのようなアピールの方法があるのかと驚いたと同時に悔しさを覚えた。もし今後のような発表の場が有れば、私は歌を歌い、踊り、演劇をすることになるかもしれない…。

 

 

---

 

国際学部国際社会学科4年 秋山勇貴

 

今回のまちづくり提案は発表者ではないということで、じっくりといくつかの団体の発表を聞くことができました。中には建築物などのコンペにでも参加しているような発表があり、それはモデルを作成してスライドに盛り込んでいたものでした。ただ語り口が淡々としていたのでよく画面を見ていたり、もともと興味のある人にだけ有効な発表であると感じました。また別のグループではじっくりと研究がされていても提案になる部分で、結局どういうことをしたいのか、そしてそれがどのように市の役に立つのかがわかりにくい発表など、それぞれ一長一短あるような印象を受けました。中村ゼミ以外の団体の多くは同じ研究をさらに発展させていくというのが恒例のようですので、今後が楽しみとも感じました。

 

そして中村ゼミの3年生の発表は1番目にありましたが、苦労している様子を間近で見ていたので、発表が終わるとこちらまでほっとした気分になり、心からお疲れさまと感じました。発表の内容も直前までかなり変更を重ねたようでしたが、自分たちの学年の発表の仕方の一部が盛り込まれているように感じて、おおそう来たかといった感じでした。またポスターセッションのお手伝いとして行ったつもりでしたが、終始突っ立っているだけでお邪魔してしまったことを謝りたいです。しかし、発表だけでは伝えられないものがあるとも言っていたので結果オーライだったのでしょうか。

 

表彰まではいられなかったので全体としてどうなったのかはわかりませんでしたが、自分は発表者ではない立場で参加できてよかったと思いますし、3年生も多くの得るものがあったことかと思います。本当にお疲れさまでした。

 

 

 

 

国際学部国際社会学科 4年 山内翔太郎

 

 今年はサポートする立場としてのまちづくり提案への参加だった。昨年よりも参加グループが少なかったため、一つ一つの団体への視線が行きやすく、良くも悪くも評価してもらえやすい環境に思えた。

 自分たち自身が発表していた昨年は気づかなかったが、10分で発表をし、少ない時間でポスターセッションを簡潔に説明するというのは非常に難しいことなのだと感じた。私は事前に3年生から直接説明を受け、非常の場合には自分が代打で説明できるようになるまでの理解をしようと努めた。しかし、発表とポスターセッションの様子を見ていると、説明したいところの肝心な部分まで届かない感覚があった。前期からの学びを受けた、大変完成度の高いものだったと感じていたので、どういう基準で評価していただいていたのか、一つ一つに対してフィードバックが欲しいと思った。

 少ない人数にもかかわらず、ジョイント合宿からのまちづくり提案、タイトなスケジュールでの作業お疲れ様でした。

 

---

 

博士後期課程 星野千恵子

 

大学生による「まちづくり提案」では、行政、経営、経済、建築、教育など、様々な学問領域の視点から多様な提案がなされた。どの提案も若者ならではの視点で発案され、斬新で興味深いものだった。この発表を拝聴してこれからの「まちづくり」においては固定概念や伝統的な価値観にとらわれない、若者の柔らかな発想力が必要となると実感できた。

さらに今後、この研究発表がコンペに留まらず、参加した他大学のゼミ、他領域のゼミの研究を融合させた提案を新たに生み出す、といった取り組みに発展したら面白いのではないかと思った。

そう考えると人文科学と自然科学といった一見、学問領域の異なる研究が、遠く見えて実は近いこともあるかもしれない。この発表会を通してこれを実感できたことが私にとって貴重であった。

提案発表の準備に勤しんだ学生の皆さんに感謝したい。

 

---

 

宇都宮大学国際学部行政学研究室 中村祐司

 

まちづくり提案は研究室にとって大変ありがたい機会である。それは宇都宮市の市政研究センターの職員・スタッフが事前の説明・手続や助言、さらには会場の提供・設営などを提供してくれるからである。ジョイントが自助と共助の事業だとすれば、まちづくり提案はこれに公助が加わるといったイメージがある。

 

注意しなければいけないのは、いくら教員側がインセンティブを与えようとしても、参加者が心の底からやる気を起こさなければ、絵に描いた餅というか換骨奪胎というか、要するに中身が伴わないものとなってしまう点である。参加大学の研究室の学生すべてにいえるのだろうが、初回からまちづくり提案に参加し続けて実感するのは、学生に非常に恵まれているということである。

 

確かに毎年出だしは決して順調とはいえない。教員からすれば本番までの一連の流れを体感しているので、どうしても始動の遅さなど焦燥感は避けられない。ところが本気になってからの若者の伸びしろには驚くべきものがある。体力もあり、知性も吸収力に富んでいる。それを目の当たりにすること自体、教員冥利に尽きる。

 

 提案発表に向けて、4年生の先輩による助言の効果も大きい。ジョイントもそうだが、この時ほど研究室が一体となることはないであろう。そして、仲間内ではない他の社会的空間を経験することで、学生はちょっとやそっとのプレッシャーには負けない強靱さが身に付くのだ。本番に向けてやりきったかどうかが大切なのである。そのことは参加者本人が最もよくわかるはずだし、結局は自らの学びをめぐる自らの財産となって跳ね返ってくるはずだ。

 

 まちづくり提案は、キャンパス内だけではない、そしてキャンパス関係者間だけでもない、いわばに社会に向けた真摯な提案を学生が学生だからこそ行うことのできる価値ある機会なのである。

 

---

 

研究室トップへ