<授業の目標>
日本における不況の長期化や企業業績の悪化に伴うリストラの激化、さらには地方税収入の減
少や負債の増大に伴う公共サービスの低下といった国民負担の増大は、人々の生活基盤そのもの
を直撃しつつある。しかし、その一方で、「東京ディズニーリゾート」の成功に代表されるよう
に、人々は特定のレジャー領域においては支出を惜しまない傾向も続いている。
余暇政策とは、近年、政府が主張し始めた「観光立国」政策といったように、人々の仕事以外
の領域を活性化させるような政策を指しており、地方レベルでも国レベルでもその範囲は広範に
及んでいる。この講義ではレジャー、観光、スポーツ、文化、消費といった様々な余暇領域にお
いて、国や地方がどのような政策を立案し、実施に移しているかを具体的なデータを提供しつつ
論じる。後半には受講生による「参加型授業」を徹底し、各自が関心のあるテーマを設定し、レ
ポートを作成することで、国内外の今後の余暇政策の動向も含めた検討を行っていきたい。
<授業内容>
余暇とは「仕事をはなれて、自分の勝手に使える時間。ひま」(岩波国語辞典)と定義されて
いるが、「ひま」が行政とどのように結びつくのか疑問に思われるかもしれない。しかし、実際
にはこの「ひま」こそが現代の人々の生活を特徴づけるキーワードとなっている。さらにこれ
が、レジャー産業やスポーツ・文化産業といった余暇産業に関わる私的なアクター(民間産業)
によって形成される市場(マーケット)を支える主要素となっている。
極論すれば、現代の先進諸国では人々は「パン」の氾濫よりも「バラ」の充実を求める傾向に
あるし、それ以外の国々においては「パン」の不足に対する人々の不満が「バラ」によって癒さ
れるか、あるいは陰徴されている。
講義では余暇をめぐる政府政策、市場メカニズム、消費者選好と、それら相互の作用・依存関
係について教科書を読み進めながら論じていきたい。そして、受講生がレポート作成作業を通じ
て、余暇政策領域の深みとメカニズムを把握できるようにしたい。
<前提とする知識・経験>
余暇政策領域に関する何らかの関心を持っていること。余暇活動を人々の生きがいの側面から
考察すること対する関心があること。実際に夢中になれる何らかの余暇活動を持っていること。
<成績評価方法>
出席(30%)、中間に実施する試験と期末に提出するレポート内容(40%)、講義やレポー
トをめぐるディスカッションの際の積極的発言と発言内容(30%)という3つの側面から成績評
価を行う。
<教員からのメッセージ>
ある意味で余暇活動の世界は人間社会の縮図を体現している。「たかが余暇。されど余暇」の
「されど...」に共感する学生の受講を望む。この講義の成果であるレポートを積極的にインタ
ーネット上に公開していきたい。なお、履修を検討するにあたって受講生には「宇都宮大学国際
学部行政学(中村祐司)研究室」のホームページ
http://gyosei.mine.utsunomiya-u.ac.jp/
を参照願いたい(Yahoo Japan!等の画面で「中村祐司」で検索するとアクセス可)。 |