<資料3−1>
「新アジェンダ連合」国連総会決議(53/77/Y) 1998年12月4日
核兵器のない世界へ:新アジェンダの必要性
総会は、
(前文)
1.
核兵器の存在によって課された人類の存続そのものへの脅威に警告され、
2.
核兵器が無期限に保有されるという展望を憂慮し、
3.
核兵器能力をもちながら核不拡散条約NPTに加盟していない3カ国が、核兵器の選択肢を引き続き保持していることを憂慮し、
4.
核兵器を保有しつつ、偶発的にも決定によってもそれを使用しないことが可能であるという議論は、信頼性を欠くものであり、唯一の完全な防御は、核兵器を廃棄し、核兵器が再び製造されないと保証することであると信じ、
5.
核兵器国が自国の核兵器を廃棄するという誓約を、迅速かつ完全に履行してこなかったことを憂慮し、
6.
核兵器能力をもとながらNPTに加盟していない3カ国が、核兵器の選択肢を放棄していないこともまた憂慮し、
7.
大多数の国が、核兵器及びその他の核爆発装置を、受領あるいは製造せず、その他の方法で入手しないということについて法的拘束力のある約束をおこなったこと、そして、このような試みは、それに対応するような、核軍縮を追求するという、核兵器国の法的拘束力のある約束を背景として、なされたものであることに留意し、
8.
1996年の勧告的意見における、国際司法裁判所ICJの全員一致の結論、すなわち、厳格かつ効果的な国際管理の下において、すべての側面での核軍縮に導く交渉を誠実に追求し、かつ完結させる義務が存在することを想起し、
9.
限りない将来にわたって核兵器の保有が正当であるとみなされるような見通しを持って、国際社会は三千年期に突入してはならないことを強調し、現在の岐路が、核兵器を永久に禁止し廃絶することに着手するまたとない機会を提供していると確信し、
10.
核兵器の完全な廃棄のためには、もっともたくさんの核兵器を保有する核兵器国が最初に措置をとることが必要であると認識し、また、より少ない核兵器を保有する核兵器国が、近い将来において切れ目のない形でこれらの国々につながってゆかなければならないことを強調し、
11.
STARTのこんにちまでの成果および将来の約束を歓迎し、またそれが、核兵器の廃棄をめざして企画された、核兵器の実際の解体および破壊という目的をもった、すべての核兵器国を含む多国間の機構として発展する可能性を示していることを歓迎し、
12.
保有核兵器を現実に廃棄し、そのために必要な検証体制を開発する前に、核兵器国が即座にとることができ、またとるべきである多数の実践的措置があると信じ、これに関連して、最近の一方的な措置およびその他の措置に注目し、
13.
ジュネーブ軍縮会議CDにおいて、「核軍拡競争の停止と核軍縮」というそのアジェンダ(議事次第)の第一項の下で、専門コーディネーターの報告書CD/1299とそこに含まれている委任権限に基づいて、差別的でなく、多国間の、国際的かつ効果的に検証可能な、核兵器およびその他の核爆発装置用の核分裂物質の生産禁止条約を交渉するための特別委員会の設置に関する合意が最近得られたことを歓迎し、また、このような条約は、核兵器の完全な廃棄に至る過程をさらに下支えするものでなければならないと考え、
14.
核兵器の完全な廃棄が達成されるためには、核兵器の拡散を防止する、実効的な国際協力が不可欠であり、とりわけ、核兵器あるいはその他の核爆発装置用のすべての核分裂物質に対する国際的管理の拡大を通じて、そのような協力は増進されねばならないことを強調し、
15.
現在ある非核地帯諸条約の重要性、およびそれら諸条約の関連議定書の署名と批准の重要性を強調し、
16.
1998年6月9日の共同外相宣言に注目し、またそれが、二国間、数国間、多国間のレベルにおいて、相互に補強し合う一連の措置を並行して追求することを通じて、核兵器のない世界を達成るため新しい国際的アジェンダを要求していることに注目し、
(主文)
1.
核兵器国に対して、それぞれ自国の核兵器を迅速かつ完全に廃棄するという明確な誓約を示し、また、遅滞なく、核兵器の廃絶に通じる交渉を誠実に追求し締結に至らしめ、それによって、NPT第6条の下での義務を履行することを要求し、
2.
合衆国とロシア連邦に対して、これ以上の遅滞なくSTARTUを発効せしめ、即座に続いて、STARTVについて、早期締結の見通しを持って交渉を続けることを要求し、
3.
核兵器国に対して、核兵器の完全な廃棄に通ずる過程に、五つの核兵器国全てが切れ目なく統合されてゆくために必要な措置をとることを要求し、
4.
核兵器国に対して、非戦略核兵器への依存度を弱めること、および、包括的な核軍縮の取り組みの中の重要な一部分として、非戦略核兵器の廃棄の交渉を行うことを、強く追求することを要求し、
5.
核兵器国に対して、暫定的措置として、自国の核兵器の警戒体制を解除し、また、運搬手段から核弾頭をとり外すことに着手することを要求し、
6.
核兵器国に対して、戦略的安定性を高めるための措置など、さらなる暫定的措置について調査し、それに従って、戦略ドクトリンを再検討することを要請し、
7.
核兵器能力国をもちながらNPTにいまだ加盟していない3カ国に対して、明確にかつ緊急に、すべての核兵器の開発や配備の追求を転換し、地域および国際の平和と安全や、核軍縮と核兵器の拡散防止に向かう国際社会の努力を害するような、いかなる行動も慎むことを要求し、
8.
いまだそうしていないすべての国に対して、NPTに無条件にかつ遅滞なく加盟し、また、条約加盟に伴って必要とされる全ての措置をとることを要求し、
9.
いまだそうしていないすべての国に対して、国際原子力機関IAEAと全面的保障措置協定を締結し、また、1997年5月15日のIAEA理事会で承認された模範議定書に基づいて、それら保障措置協定の追加議定書を締結することを要求し、
10.
いまだそうしていないすべての国に対して、包括的核実験禁止条約CTBTに無条件にかつ遅滞なく署名および批准し、また、条約が発効するまでの間、核実験の一時停止を行うことを要求し、
11.
いまだそうしていないすべての国に対して、核物質防護条約に加盟し、また、それらをさらに強化すべく努めることを要求し、
12.
CDに対して、「核軍拡競争の停止と核軍縮」というそのアジェンダの第一項の下で、専門コーディネーターの報告書CD/1299とそこに含まれている委任権限に基づいて世知された特別委員会において、核不拡散および核軍縮という二つの目的を考慮しつつ、差別的でなく、多国間の、国際的かつ効果的に検証可能な、核兵器及びその他の核爆発装置用の核分裂物質の生産禁止条約の交渉を追求し、遅滞なく交渉を締結させることを要求し、また、その条約が発効するまでの間、(すべての)国に対して、核兵器およびその他の核爆発装置用の核分裂物質の生産の一時停止を行うことを要請し、
13.
CDに対して、核軍縮を取り扱う適切な補助的組織を設立すること、また、そのために、適切な手段及び取り組み方についての集中的協議を、遅滞なく決定に達するという見通しをもって、優先的事項として追求することを要求し、
14.
核軍縮および核不拡散に関する国際会議は、他の場でとりくまれている努力を効果的に保管することになり、核兵器のない世界のための新しいアジェンダの整備を促進しうると考え、
15.
1995年のNPT再検討・延長会議で採択された諸決定と決議の重要性を想起し、「条約の再検討過程の強化」を完全に履行することの重要性を強調し、
16.
核兵器のない世界を維持するためには、検証体制の開発が必要となることを確認し、IAEAに対して、関連の他の国際機関や国際組織と共に、そのような制度の構成要素について探求することを求め、
17.
核兵器の使用および使用の脅威が行われないということを、NPTの締約国である非核兵器国に実効的に保証するような、国際的に法的拘束力のある条約の締結を要求し、
18.
非核地帯を、とりわけ中東や南アジアなどの緊張状態にある地域において、自由に取り結ばれた協定に基づき、追求し、拡大し、設立することは、核兵器のない世界という目的に向けて大きく貢献することを強調し、
19.
核兵器のない世界が、究極的には、普遍的で多国間で交渉された条約や、相互に補強し合う一連の条約体系による下支えが必要であることを確認し、
20.
事務総長に対して、現にある手段の範囲で、この決議の履行についての報告書を作成することを求め、
21.
第54回総会の暫定的アジェンダに「核兵器のない世界へ:新しいアジェンダの必要性」と題する項目を入れ、この決議の履行について検討することを決定する。
<共同提案国>
ベニン、ボツワナ、ブラジル、カメルーン、チリ、コロンビア、コンゴ、コスタリカ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、フィジー、グアテマラ、アイルランド、レソト、リベリア、マレーシア、マリ、メキシコ、ニュージーランド、ナイジェリア、パナマ、ペルー、サモア、ソロモン諸島、南アフリカ、スワジランド、スウェーデン、タイ、トーゴ、ウルグアイ、ベネズエラ、ザンビア
■核兵器国に対する懸念
多くの国がNPTに参加したのは、核兵器国が核軍縮を追及する(第6条)という法的拘束力ある約束との関連であり、核兵器国がそうしないことに深い懸念をもつ。
■キャンベラ委員会および国連における、核軍縮に向けての一連の声明に同意し、支持する。
■3核兵器能力国に対して
核兵器能力国(インド・パキスタン・イスラエル)は核兵器の開発・配備の追求を留保し、NPTへの加入と、速やか且つ無条件でのCTBT署名・批准を要請する。
■多国間協議の誓約 Commitment to Multilateral Negotiations
核兵器国及び核兵器能力国が保有する核兵器及び核兵器能力を完全に廃絶することを明確に誓約し、その達成に必要な具体的措置および交渉の即時開始に合意すること。その措置は最大の核兵器保有国から開始され、途切れのないプロセスとしてその他の核兵器国を含むべきである。
核兵器のない世界を維持するために、普遍的かつ多国間で交渉された条約や相互に補強し合う一連の条約体系が必要である。
中間的措置
■警戒態勢解除(De-Alerting)
核兵器を瞬時に発射できる状態にある警戒態勢を解くこと。それを解くことで、誤発射防止や相手に安心感を与え、一触即発の事態をなくすことができる。
■非戦略核兵器(Non-Strategic Nuclear Weapons)の配備中止
非戦略核兵器を配備地域から撤去すべきである。
■先制使用(第一使用)の禁止(No-Fist-Use)
核兵器国間での先制不使用(第一使用禁止)の公約を表明するべきである。
■非核兵器地帯内の国々に対して
現在ある非核兵器国に対して核兵器の使用や威嚇を行わないこと。
■強化措置
消極的安全保障(非核兵器国に対して核兵器を使用しないという核兵器国の約束)のための法的拘束力のある合意に達すること。
■カットオフ条約(兵器用核分裂性物質生産禁止条約)の締結
核兵器およびその他の核爆発装置のための核分裂物質の製造を、国際的に禁止すること。
■非核兵器地帯の拡大
中東、南アジアのような地域を含む非核兵器地帯の設置は、非核世界の目標に貢献する。
■核物質の管理の拡大により拡散防止の国際協力を実施すべきである。