<資料2−3>
 
21世紀の平和と正義を求めるハーグ・アジェンダ‐会議版 より抜粋
The Hague Agenda for Peace and Justice for the 21st Century-Conference Edition
 
前 文
  現存する世界は、史上最も血にまみれ、最も戦争に苦しめられた世紀から、いま蘇ろうとしております。新しい世紀を目前にしているこの時期は、「戦争の惨害から将来の世代を救済する」という国連の主要な目的を実現する条件を創造するのに最も相応しい時だと考えます。このことこそまさしく、「ハ−グ平和アピ−ル」の目標であります。懐疑論者は、そんなことは出来やしないと言うでしょう。だが、ハ−グ平和アピ−ルはこのようような決め込みににあえて挑戦するものです。今世紀は想像を絶する様々な変革を目の当りにしてきました。現在,社会は病気を癒し、貧困を減らし、飢餓を無くす手段を備えております。更に20世紀は、もしそれが実行されるならば、戦争を不必要かつ不可能にするのに大いに貢献するであろう、一連の普遍的規範の創造を目撃してきました。非武装人民の運動によって独立と市民権を勝ち取る闘争において、積極的な非暴力主義を掲げて成功を収め、我々を勇気づけてくれた様々な実例を目撃してきました。権威主義的統治形態が、民主政体に取って代わられ、また人道問題において市民社会の役割が益々大きくなってきている事実も目の当たりにしてきました。最近、カンボジャ、ボスニア、ルワンダ及びコソボにおける集団虐殺の勃発、民間人に対する残虐な攻撃、そして地球上の多くの、否全ての生命を奪う可能性を秘める恐ろしい大量破壊兵器の拡散が目撃されています。先住民族たちは、自分たちの自決権を拒否され続けております。極めて多数の事例が示しているように、世界諸国の政府は、紛争を防止し、民間人を保護し、戦争を終結し、植民地主義を根絶し、人権を保障し、かつ恒久平和のための条件の創造するという自らの責務を果たす点で,明らかに失敗してきました。したがって、この歴史的な使命と責任を諸国政府だけに任せておくことはできないのであります。「ハ−グ平和アピ−ル」は、市民の「21世紀の平和と正義を求めるアジェンダ」を提案します。このアジェンダにとっては、市民運動家たち、進歩的諸政府及び国際諸機関が、共通の目標を実現するために協力するという最近の「新外交方式」(New Diplomacy)に基づく、基本的に新しいアプロ−チが必要となります。われわれは、道徳的な創造力と勇気を受け入れるように迫られることになるが、それは21世紀の平和の文化を創造し、最終的には世界の平和と正義の保護者となる宿命を負う国家制度及び超国家的な制度を発展させるために必要なものであります。選択すべき課題は既に十分に存在しています。市民社会は、冷戦終結後その勢いを増し、地雷の根絶、小火器取引の削減、第三世界の債務の緩和、女性に対する暴力行為の禁止、核兵器の廃絶、子どもの権利の保護、少年兵の従軍阻止,及び独立した国際刑事裁判所の設立を求める運動を展開してきました。このような草の根運動は、重大な衝撃を及ぼしつつあります。これらの運動が成功を収めている理由は、一般市民を動かし、様々な分野(人権、環境、人道的援助、軍縮、持続可能な開発等)を統合し、かつ女性、若者、先住民族、少数民族、身体障害者及びその他の被害者団体の全面的な参加を求めているからであります。

このような運動は、統一と団結を新たに生みだしたばかりか、説得されるのでなく自ら声を挙げるとき、一般市民が何を為し得るかと言うことを明らかにしています。「ハ−グ平和アピ−ル」は、意見を聴き、学び、そしてそこから運動を構築することを目指しております。このプロセスから、「21世紀の平和と正義を求めるアジェンダ」が誕生することになります。このアジェンダは、決定的に重要であり、しかも実現可能な目標であります。全体的なハ−グ・プロセスにおいて、ほとんど全ての参加諸団体が、自ら選んだ課題に取り組むことに集中してきたことは周知の事実であります。参加諸団体は、署名及びその他の自発的な手続による場合を除き、共通の基本方針又は他団体の提案を支持するよう求められることはありません。

 

 

平和と正義を求めるハーグ・アジェンダの4つの柱

[軍縮及び人間の安全保障に関するアジェンダ]

 

   44. 核兵器の廃絶を求める国際条約の交渉及びその批准を図ること
 

核兵器が引き続き存在すること、並びにその脅威及び事故、計算ミス、意図的な使用が、地球上の全ての人間と生命体の存続を脅かしています。「核拡散防止条約」(the Non-Proliferation Treaty)の第Y条及び国際司法裁判所の命令に基づく法的義務に従うために、全ての国家は、五年以内に、核兵器の生産、使用及び使用による威嚇を禁止し、また核兵器廃棄の査察及び執行を規定する「核兵器禁止条約」(a Nuclear Weapons Convention)を交渉しかつ締結すべきです。第53回国連総会により採択された「ニュ−・アジェンダ連合」(the New Agenda Coalition)の決議は、核戦争の危険性を回避し、また全面的な核軍縮に向けての交渉を開始するための実際的な措置を即刻講ずるよう核保有国に求めています。核軍縮に向けての過渡的措置には、次の事項が含まれています:「包括的核実験禁止条約」(the Comprehensive Test Ban Treaty)の批准; 弾道ミサイル禁止条約(the Anti-Ballistic Missile Treaty)の遵守; 非常警戒態勢の解除; 非先制使用; 地域安全保障協定の非核化; 非核地帯の拡張; 核兵器及び施設の透明性; 核分裂性物質及び未臨界実験の禁止。

 

注)早稲田大学大学院法学研究科 浦田賢治ゼミ公式HPから引用した。これは、伊藤勧・浦田賢治による仮訳である。<http://classes.web.waseda.ac.jp/z-urata01/Japanese/hap.html>