<資料22

アボリッション2000 設立声明  “Abolition 2000 Statement”

1995425

 

私たちの子どもや孫たち、また全ての将来の世代の人々にとって安全で住みやすい世界にするために、私たちは、核兵器のない世界を実現し、50年にわたる核兵器の実験と製造によって生じた環境問題と人的被害を是正し補償しなければならない。

さらに、核技術の平和利用と戦争利用が複雑に絡み合っていること、ならびに半永久的にその効果を持続する放射性物質の製造と使用がもたらす脅威を認識しなければならない。大量破壊兵器の様に供給されることもなく、何十万年にもわたって環境を汚染することもない、きれいで安全かつ再利用可能な形態のエネルギーを生産する方向に進まなければならない。真に譲り渡すことのできない権利とは、核エネルギーに対してでなく、生命、自由そして核兵器のない世界に住む個人の安全に対するものでなくてはならない。

核兵器のない世界を達成するためには、注意深く着実な方法をとる必要がある。核兵器のない世界を実現することは、技術的には可能である。政治的な意思の欠如、とりわけ、核保有国の意思の欠如が、唯一の真の障害となっている。化学兵器や生物兵器が禁止されたように、核兵器も禁止されなければならない。

私たちは、全ての国々、特に核保有国−それが核兵器の保有を公表している国であろうがそうでない国であれ−に対し、核兵器の廃絶を実現するために、以下に揚げる措置をとることを求めるものである。私たちは、これらの措置を実施するために、核保有公表国が拘束力ある約束をすることを、核不拡散条約加盟国が求めるよう強く希望するものである。

 

1)制限付きで効果的な査察と強制力に関する条項を備えた、全ての核兵器の段階的廃絶を求める核兵器廃絶条約の交渉を直ちに開始し、2000年までに締結すること。*

2)核兵器を使用しないこと。また核兵器による威嚇をしないことを、直ちに無条件で宣誓すること。

3)全ての国々による核兵器の開発を防止する明確な目的をもって、真に包括的な核実験禁止条約を早急に締結すること。

4)新たな核兵器の製造・配備を停止し、配備された核兵器を撤去し、使用不可能にすること。

5)兵器として使用可能な全ての放射性物質の軍事的、商業的な生産や再処理を禁止すること。

6)全ての国にある兵器として使用可能な全ての放射性物質と核施設を、国際的にリスト化し、監視し、保護下に置き、兵器として使用不可能な放射性物質の国際的な公的登録制度を確立する。

7)核兵器の研究、設計、開発、実験を、非核流体力学爆発やコンピュータシミュレーションをはじめとする研究所内での実験を含めて禁止すること。全ての核兵器研究所を国際監視下に置き、全ての核兵器実験場を閉鎖すること。

8)トラテロルコ条約やラロトンガ条約で設定されたような非核地帯をさらに各地に設けること。

9)核兵器による威嚇や使用が違法であることを、公的にそして世界法廷で、承認し宣言すること。

10)持続可能で環境を破壊しない安全なエネルギー源の開発を促進し支援する国際的なエネルギー機関を設立すること。

11)核兵器廃絶の過程を計画し監視するにあたり、市民やNGOが参加できるような仕組みをつくること。核兵器のない世界は、人類の誰もが願うことである。核保有国が核兵器を持つことが許される核不拡散条約体制のもとでは、この目標は達成することはできない。共通の安全保障のためには、核兵器の安全な廃絶が必要である。私たちの目標は、確実で無条件の核兵器の廃絶である。

     この条約は、以下に述べる例をはじめとする断固とした軍縮の措置を定めるものとする。配備された全ての核兵器システムを使用不可能にし、撤収すること。弾頭を使用不可能にし、解体すること。弾頭や兵器として使用可能な放射性物質を国際的な管理下のもとに置くこと。弾道ミサイルとその他の運搬手段を廃棄すること。この条約は、それぞれ独立して速やかに実施されるべき上に示された措置を具体化することもできる。それらの措置が十分に実施されたとき、この条約は、核不拡散条約 NPTに替わるものとなる。

ムルロア宣言  Moorea Declaration

−アボリション2000設立声明への追加文書−

 

アボリション2000会議

ムルロア  テ・アオ・アオヒ

1997125

 

確実で無条件な核兵器の廃絶のために行動し、52年にわたる核兵器の使用・実験・製造によって生じた環境問題と人的被害を是正し補償するために、広島と長崎への原爆投下50周年となる1995年に発せられた、アボリション2000設立声明に示された誓約とビジョンを、本会議は再確認するものである。

しかしながら、フランスの核実験の1年後にテ・アオ・アオヒ会議で開催されたこの会議では、先住民族と植民地支配下にある人々こそが、核兵器の製造と実験によってもっとも被害を受けてきたということが強調された。植民地支配下にある人々が怒り悲しんだのは、核時代の初頭から、何の相談もなく、何の同意もなく、何ら決定のプロセスにかかわることもなく、自分たちの土地と空気と水が、核の増強のために取り上げられたという事実のためである。

植民地支配下にある人々と先住民は、ウラニウムの採掘や先住民の土地における核兵器の実験、プルトニウムや核廃棄物の投棄や貯蔵や輸送、そして核施設のための土地の収奪というかたちで、重い犠牲を強いられてきた。

アボリション2000設立声明は、「核兵器廃絶の過程を計画し監視するにあたり、市民やNGOが参加できるような仕組みをつくること」が必要不可欠であることを述べている。この点を、精神的にも行動の面においても再確認すると同時に、先住民と植民地支配下にある人々が、このプロセスの中心におかれなければならない、と声明するものである。そのために、先住民と植民地支配下にある人々が、核兵器をめぐる一連の問題、とりわけ核兵器の廃絶の問題に関する決定に参画することができなければならない。自決権、主権、独立権といった譲り渡すことのできない権利は、この地球上から核兵器を永久に追放するべく世界の人々が手を携えて闘うために、必要不可欠である。

 

したがって、本会議は、このムルロア宣言を、アボリション2000設立声明への追加文書とすることに同意する。

 

 

出所)Abolition 2000署名運動 <http://www.age.ne.jp/x/yokohama/abolition/>