地域における自治会の新たな可能性について

国際社会学科4年 川端さやか

 

1、問題意識

 

     市長と市職員、峰地区内の自治会関係者による懇談会への参加。

     ほとんどが高齢者であること、女性参加者の少なさが印象的。

     女性や他世代の意見が自治会の活動に反映されているのかという疑問。

     地縁組織が弱体化する一方で特定の目的を持ち活動するNPO団体などの増加。

→現代における自治会や町内会などの地縁組織の必要性、存在意義とは

 

2、「自治会」とは

 

T 定義

@     一定の区画範囲をもつ

A     全世帯を組織することを目指す

B     地域包括性と代表性を持つ

C     任意団体

最も重要な役割は「地域住民の合意形成を行う合議組織」であるということ。

 

U 活動内容

回覧板など住民相互の連絡、環境美化・清掃活動、集会施設の維持管理、

スポーツ・レクリエーション活動、交通安全・防犯、お祭り・敬老会など、多種多様。

 

V 団体数

自治会 114,222団体

町内会 65,685団体

その他部落会や区会を含めると296,770の地縁団体が全国に存在。(200211月時点)

(総務省「地縁による団体の認可事務の状況等に関する調査」より(2003年))。

※呼称は様々。町内会の上部組織として自治会が存在する地域もある。

 

3、「自治会」が抱える問題

 

T 男性、高齢者の多い偏った構成

・高齢化社会となっていない自治会・町内会・・・7%のみ

(()あしたの日本を創る協会「自治会・町内会の高齢者支援に関する報告書」2000)

→多くの自治会・町内会で若年層のリーダー不足が問題となっている。

     世帯加入が原則であることから、常会への参加は男性が多数

 

U 加入率の低下

     地域内の加入率は90%を超える自治会がほとんどだが、近年は減少傾向

考えられる原因としては、個別化した現代社会において地縁関係が薄くなったこと、若年層の無関心、マンション・アパート居住者の未加入などが考えられる。

 

V その他の問題

     新規加入者や一時的な居住者に対して排他的(伝統的地域社会の名残)

     不透明性

     行政の下請け的機能

     会員、役員の固定化

     加入のメリットが不明確

 

多様化、個別化した現代社会において弱体化した地縁組織は、伝統的な体質ゆえに多くの問題を抱えている。では、地域における活動を担うのは、自治会などの地縁組織からNPO、ボランティア団体などに移行するべきなのだろうか?

 

4、自治会の可能性

 

T 高齢者福祉活動の担い手として

     自治会の約8割が高齢化問題に対するなんらかの対策を行っている。

ex)孤独死の防止

     へき地地域など、業者が進出しにくい地域において重要な役割を果たすのでは?

 

U 防災・防犯活動の担い手として

     近年高まる防災・防犯意識

ex)登下校時のパトロール、地震発生時の活動主体

     事例)神戸市長田区 自治会などで構成される「真野知己まちづくり推進会」

阪神大震災において6割の家屋が全半壊したにもかかわらず被害は他地域と比較すると小さく済んだ。行政がほとんど機能しなかったにもかかわらず、住民主体で対応を行った。それを可能にしたのはお年寄りなど弱者を対象に活動してきた「30年に及ぶ住民主体のまちづくりの歴史」だと代表者は語る。震災後の神戸市においては、自治会が主体となる自主防災組織の加入世帯は9割以上に達した

(四国新聞社HP 「民主主義の風景」より)

V 行政やNPOとの連携

     行政から自治会への委託事務(広報誌の配布や募金活動)が自治会のという批判。

また、自治会も委託事務により得られる補助金に依存しがち。

→私的時間と自主財源の確保により、自立的な活動を行えるように

     NPO・・・特定の目的の下に集まった専門性のある団体

自治会との性質の違いから、その関係が良好とするのは4割ほど

  →枠を超えた協力が新しい発展につながるのでは

 

W 学校との連携

     子供が卒業すると同時に自治会とのつながりがなくなるケースもある

→教職員が自治会に参加したり、学校と共同で行事を行っては?

 集会施設などとして学校施設を利用できるようにしては?

 

X 多様な住民の参加

     高齢者が多く、固定化してしまっているのが現状。

→一時的な居住者や新規加入者の加入促進。

 女性の参加促進。

大学生も取り込んではどうか?

 

5、調査方針について

 自治会の活動形態は様々で、活動が形骸化している団体も多いと思われる。できれば栃木県内の自治会について調査し、先進的な活動を行う団体があればその団体に焦点を絞り、新たな可能性を探ってみたい。

 

〈参考HP〉

平成16年度版国民生活白書

http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h16/01_honpen/index.html

・ふるさとづくりネットワークHP 

http://www.ashita.or.jp/shiryou/jichikai/index.htm

・四国新聞HP 民主主義の風景

http://www.shikoku-np.co.jp/feature/fuukei/index.htm

 

〈参考文献〉

・「地域コミュニティ論−地域住民自治組織とNPO、行政の協働−」 山崎丈夫著 

自治体研究社出版

・「町内会と地域集団」 倉沢進、秋元律郎編著 ミネルヴァ書房出版