maeday031027
国際学部国際社会学科 前田佑介
[第5回卒論レジュメ]
T PFIについて総まとめ
卒論の執筆開始に備え、前期から書籍やインターネットを中心に調べてきた情報の総まとめをします。メモ的に疑問に感じたこと等も。
@ 英国のPFI(保守党政権時代)
・1979年、政権に就いたサッチャー首相は「市場原理の尊重、小さな政府」を政策理念に。
→施策として国営企業の民営化、政府機関のエージェンシー化等が打ち出される一方、公共事業に対する民間資金の活用も検討。
・ PFIは公共部門が民間事業者から公共サービスを購入する点で、従来型の社会資本整備と異なる。
・ PFI導入は、公共部門がもはや公共サービスの直接提供者ではなく、これを提供する民間企業から料金を支払って調達する立場にある。民間事業者も従来のような請負業者ではなく、設計、建設、運営、維持管理を一貫して受注する立場→経営改善努力により収益性が高められるインセンティブの付与を意味する。
・ 民間に公共事業を任せることの不安、公共側の権限喪失に対する懸念。
・ 民間に事業参入意欲を持たせるだけの採算が確保できるか。リスクを取れる水準にまでリスクに対する不確実性が払拭できるか。
・ 大蔵省よりPFIの適用が検討されていない案件は公共事業をして認可しない(ユニバーサルテスティング)→PFIへの理解の浸透、定着化に大きな役割を果たしたが、労働党政権で廃止
・ メリット→@財政支出の効率化を通じた「小さな政府の実現」
A社会資本の効率的な整備と公共サービスの水準の向上
B民間事業者への新たな事業機会の創出と経済活性化
・ 問題点→@候補案件に優先度が示されないことによる民間企業側での事業戦略の難しさ。
A事前のプロジェクトの内容の精査リスク分担の明確化に係わる入札者の時間的金銭的負担の大きさ。
B公共側の適切な専門知識の不足
・ 対象事業→民営化、外部委託が可能な分野、および公共部門にしか行えない防衛、警察等の本業にあたる領域を除いた事業で、官民でリスク分担が適切に行われ、かつ十分な事業性を確保できるもの。
A英国のPFI(労働党政権時代)
・ユニバーサルテスティングを廃止し、各省庁は優先プロジェクトを絞るよう。
・ 過去の失敗の教訓を生かすため、コスト面からの失敗例を指摘した会計検査院の報告書を点検。政府内に契約を結ぶ担当官の専門知識を向上させるための民間ファイナンス関連部署をもうける。
・ タスクフォース(特別チーム)→実務家からなる事業チームと大蔵省の官僚などからなる政策チーム。事業チームは各省庁の事業が円滑に進捗するように監視、支援をする。
政策チームは、PFI実施プロセスのかかる時間や費用の削減を目指す。
タスクフォースに代わる組織として2000年6月にPartnerships UK(PUK)に。
・ PFIからPPP(Public-Private partnership)
→保守党政権が事業をできる限り民間に移転するという考え方に立っていたのに対して、労働党政権は公共側にも依然として優れている部分があるとし、これを残しつつ公共、民間の長所がそれぞれ発揮できるようにプロジェクトを進めようとしている。
・入札に関して保守党政権時代からの課題であった、民間事業者にとり時間的・金銭的負担が大きいなどの批判に対応→優先的に進行させるプロジェクトを公表するなど。
・今後の長期的な展望として「運営を伴う施設建設」(既存の設備を活用しながら)より、「運営・管理手法」重視に移行していくことが予測されている。
・刑務所や道路から政府庁舎・病院・学校へと事業分野が広がる中で、民間事業者に対する役割期待が、公共サービスの本体(医療給付、教育等)から切り離され、施設設備の維持管理事業を構成する一部に限定される例がでてきている。公・民の役割分担を明確にすることで、PFI適用対象となる事業分野の広がりが期待できる。
B英国PFIの特徴
・サービス購入型→公共側は顧客として民間の受託会社に対して、所定の基準に合ったサービス提供への対価として利用料金を払う。民間にとっての事業収入が公共からもたらされるという点において、また、サービスの水準の設定に直接関わるという意味で、公共の関与度合いが比較的強い。道路も。
・自立採算型→施設の実際の利用者から直接料金を徴収することによって事業を遂行していくタイプ。民間は事業に関わる全てのリスクを負いつつ、自力で事業を軌道に乗せていくことが必要。公共側の関与度合いは、事業計画の策定や許認可供与などに限られ、比較的低い。保守党政権時代にできるだけ民間に移転しようという考え方を表したタイプ。実績はあまり多くない。そもそも独立採算が可能なら民営化という選択肢が取られるのが一般的だから。
・ジョイントベンチャー型→当該事業収入のみでは賄いきれない社会的便益部分(交通混雑解消等)について、その対価として公共部門から出資金、補助金などの支援を受けながら事業を遂行していくタイプ。
U プロジェクトファイナンス
PFIは従来型公共事業と異なり、銀行やコンサルタント会社が重要な役割を担っている。
英国での歴史をみてもPFIの誕生にはプロジェクトファイナンスの発展が必要不可欠であった。プロジェクトファイナンスはPFIにおいても事業の具体的推進手段となっている。
@プロジェクトファイナンスとは
・資金調達をする場合、従来のように事業者自身が借り入れを行うのではなく、プロジェクトを遂行する特別目的会社SPC(第二回レジュメ参照)が独立して借り入れを行う資金調達。
・プロジェクトを計画した企業の財務内容、信用力を拠り所とする従来型の融資とは異なり、融資の対象が特定プロジェクトに限定され、返済は全面的にプロジェクトの事業性に依存している。
・プロジェクトが破綻した場合、借り入れ人は別会社であるため銀行は親会社に返済を求めることは出来ない→「ノン・リコース(不遡及)ファイナンス」
・基本的にプロジェクトの全資産・全ての権利を担保とする。
・プロジェクトファイナンスでは、着工後運営開始までに数年かかり、運営期間も10年から30年程度と長期にわたる。契約期間が長く、契約当事者も多数。→契約、権利関係を正確に把握することが重要(PFIの考え方と共通―官・民・事業参加企業間のリスク分担の明確化、権利義務関係の契約による規定が不可欠なので)。
A苫前風力発電事業
次ページ図を使用しつつ説明します。
・「本プロジェクトはトーメンが北海道留萌支庁・苫前町の町営牧場敷地内に1,000kWの風力発電機を20基建設し、1999年12月より17年間にわたって、発電した電力を北海道電力に販売するもので、日本初の商業用大型風力発電事業です。」
http://www.dbj.go.jp/japanese/pf/case/tomamae.html 日本政策投資銀行
・登場人物
@プロジェクトカンパニー―(株)トーメンパワー苫前 (トーメンがSPCとして設立)
プロジェクトカンパニー(図の中央)はプロジェクト遂行のため新規に設立。当該事業全般を経営・統括する。
Aスポンサー―トーメン
プロジェクトの計画立案を行い、実際にプロジェクトを遂行する意思をもつ企業。事業主、事業主体とよばれることもある。プロカンの設立、支援、各参加者との交渉等。
プロジェクト運営資金不足時の追加資金の拠出など金銭的な支援を行うことも。
B建設会社(建設企業体)―四電エンジニアリング株式会社(主に発電設備・変電設備等の建設および保守・点検等を行っていた会社)
さまざまな工程の建設を行う。入札に参加するスポンサーは、建設事業に精通した企業であることが多く、落札後は建設会社を兼務するのが通例。
C政府・地方自治体―独立行政法人新エネルギー・産業総合開発機構(NEDO)
プロカンに事業権を与えたり、プロジェクトの立ち上げ、継続を支援したりする。
PFIプロジェクトの場合政府機関等が、製品購入者として登場しプロジェクトの安定的な収入源となることもある。この場合製品購入者は北電。
D銀行団―プロジェクト遂行に必要な資金の大部分を提供。プロジェクトの経済性、収益性、契約の内容などを検証し、妥当なら融資する。進行中の事業について、財務的な側面からプロジェクトを管理し、問題解決に向けた意見具申を行い、プロジェクトの健全性を維持する役割も。
http://www.dbj.go.jp/japanese/pf/case/tomamae.html 日本政策投資銀行より
参考文献:PFIとプロジェクトファイナンス(東洋経済新報社)
検証・日本版PFI(建設政策研究所)