卒論ゼミ発表用レジメ
国際学部 国際文化学科 岩佐真樹
2003年5月19日(月)
第2回
「音楽ビジネスのなぜなになるほど」
■卒論テーマ:CCCDについて
■概要と論文の流れ
CCCD(コピーコントロールCD)に関する諸問題を整理し、ネットワーク社会という時代背景やオープンソース/フリーソフトウェアの概念を踏まえつつ、著作権/知的所有権(及びそれらにまつわるビジネス)の現代的課題を探る。
■第2回発表の概要
CCCDについては情報がまとめられているサイトがあり[1]、一読するだけで大体の知識は得られる。卒論執筆の際にはその資料をいかに自分の言葉として編集・再構成するか、という話になってくると思われる。よって、今回は音楽産業についての見識を広めることとする。
尚、随所に思うがままに私見を書き記した。蛇足として文章構成を乱すものになっているのは承知の上で、そのままにしておく。いずれ執筆時の豊富なネタ帳になることを祈るばかりである[2]。
■著作権管理サービスについて
JASRAC(日本音楽著作権管理協会)[3]以外にも著作権管理を業務として行っている団体「著作権管理業者 e-License」[4]のサイトを発見した。彼らは、従来JASRACのみが行ってきた音楽著作権の管理団体を「2001年10月に新しい法律(著作権等管理事業法)が施行され、JASRAC以外でも著作権管理を行えるように」[5]なったのを受けて発足した団体である。「民間初の著作権管理業者」[6]だそうだ。
JASRACとの相違点は色々と探っていかなくてはいけないが、ともかくJASRACのみによる一元管理体制が崩れるというは歓迎出来る。どんな状況にせよ“alternative”があるのは良いことだ[7]。音楽産業の新しいあり方を考えていく上で、このような新興の団体を研究していく重要性は高いように思う。
しかし、(平沢進のように?)アーティストが自身の著作物を管理するのは難しいことなのだろうか。音楽の場合、文学と違って著作物の利用される範囲が広いから無理なんだろうなぁ。ラジオとかテレビ以外にも、ネット配信とかあるし。しかも楽譜として元の形態を変えた利用もあるし。
そう考えると、キャラクタービジネスってのは利用される範囲の広さにおいて音楽と比較すべき点は多々あるのかもしれない。
さて、彼らのサイトより顧客(つまり著作権保有者=作曲者)向けに著作権管理サービスの流れを説明するページがあったので[8]、そこからの引用で音楽著作権ビジネスの一端を探る。
著作権管理団体を通しての著作権管理は、まず権利者(作曲者など)が自らの楽曲を著作権管理団体に登録することから始まる。利用者がその楽曲を利用する場合は著作権管理団体に申請をし、許諾を得なければいけない。この際、許諾を受ける代わりに著作権使用料が著作権管理団体に支払われる。著作権管理団体はこの著作権使用料を各著作権者へ分配することで、管理手数料として利益を得る仕組みと成っている[9]。
以下、各用語についての説明[10]。
図 1 著作権管理サービスの流れ
著作権印税(著作権使用料)
著作物(楽曲)を使用することの対価となるのが著作権使用料(著作権を保有するものに与えられる著作権印税)。アーティスト印税(実演家に与えられる印税)とは異なるものであり、例えば、あるバンドの作詞をA氏が、作曲をB氏が担当した場合、著作権印税はバンドではなくA氏・B氏に対して50%ずつ支払われる。
┗著作権使用料の内訳
┣録音等(複製権)
楽曲をレコード会社が複製することで発生する。一般的にはレコード会社が製造し出庫された枚数に応じて支払っている。
┣演奏等(演奏権・上演権)
アーティストがコンサートを行った場合にコンサート主催者から支払われる。一般的には主催者(プロモーター)が会場ごとに定められた一定の使用料を公演ごとに支払っている。
┣演奏等(放送権)
放送局が楽曲をオンエアーする場合に支払われる。一般的にはブランケット方式という包括的な取り決めをして、民放局であれば年間総収入の1%弱を支払っている。オンエアーされた楽曲全てに対応するのが現時点で難しいためこのような方式が取られている。
┣出版等
楽譜(TAB譜や着メロの入力方法も含む)を発行もしくは雑誌などに掲載する場合に、楽譜を発行する(または掲載する)出版社から支払われる。
┣貸与
レンタル店がCDなどの商品を貸し出す場合に支払われる。レンタル店の貸し出し枚数に応じて使用料が決定される。
┗インタラクティブ配信
ダウンロード配信(MP3ダウンロード等)、ストリーム配信、着メロダウンロード、MIDIファイルダウンロードを行う場合に支払われる。
原盤権と原盤印税
原盤権は原盤(マスターテープ)に発生する権利で、原盤制作費を負担した者がその権利をもつ。原盤を複製するときの対価となるのが原盤印税。アーティストが個人で全額制作費を負担すれば、原盤権はアーティスト個人が100%保有できるし、音楽出版社とレコード会社が折半出資で制作する場合は両者が原盤権を50%ずつ保有することになる。原盤譲渡契約を結んで、制作費を全額負担した音楽出版社が原盤権をレコード会社に譲り渡すといったこともある。
音楽出版社
アーティスト(コンポーザー)と著作権譲渡契約を結ぶことによって楽曲の著作権管理を行っている。レコード会社などへプロモーションを行うとともに、音楽著作権管理団体から分配される著作権使用料の受け皿となる。
著作権管理団体
使用者といわれる放送局・レコード会社・CDレンタルショップ・カラオケ店・音楽配信会社などから著作権使用料を徴収し、音楽出版社やコンポーザーに著作権使用料を分配する。
例)JASRAC、e-License
レコード会社
CDなどの制作・製造・小売店への営業・メディアプロモーションを行う。
原盤製作会社
制作費を負担して原盤(マスターテープ)を制作する。レコード会社が原盤を制作する場合も多い。
プロダクション(マネジメント)
アーティストのマネジメントを主に行う。著作権に関しては基本的に扱わない。
*著作権の支分
著作権等管理事業法は音楽著作権を「演奏権等」「録音権等」「貸与権」「出版権等」の大きく4つに区分した。これを支分権という。権利者はそれぞれの権利について、著作権管理団体を選択出来る。
但し、放送・有線放送/インタラクティブ配信/業務用通信カラオケに関しては複数の支分権が働く利用形態であるため、支分権の考え方から独立したひとつの利用形態として管理団体を選択することが出来る。また録音権等における利用形態のうちゲームソフトやビデオ、映画などへの録音は例外的な扱いが可能になるそうだ[11]。
それにしても、これだけ複雑になっては権利者がいちいち各権利について管理団体を使い分けるとは考え難い。もちろん管理団体によってカヴァーできる諸権利は変わってくるだろうし、特定の権利のみを扱う専門的管理団体もあり得るだろう。よって、メインの管理団体をひとつとそれを補う形での他団体の利用、という利用形態が考えられるが、「メインの」団体に選ばれるのは必然的に全ての権利をくまなくカヴァーできる団体になるのではないだろうか。つまり、管理団体の最大手でありアーティストからの著作権管理委託が慣習化しているJASRACの牙城はなかなか切り崩せないだろう。
[2] と、いうかいちいちこのような文章を書き加えること自体が蛇足なんだよなー、と自ら突っ込む。
[4] http://www.elicense.co.jp/。因みに「現在、人材の採用予定はありません」(http://www.elicense.co.jp/wh/04.php)だってさー。ちぇっ。
[6] 前掲同所
[7] 以前は、著作権管理をJASRAC一社で行っていた為、権利者(作家・音楽出版者)は楽曲が出来上がると必然的にJASRACへ登録していましたが、これからは権利者自身が著作権管理事業者を選択することが出来るようになったのです。(前掲同所)
[9] e-Licenseの定める手数料についてはhttp://www.elicense.co.jp/doc/03.phpを参照のこと。
[11] 前掲同所