卒論ゼミ発表用レジメ
国際学部 国際文化学科 岩佐真樹
2003年4月14日(月)
第1回
「卒論の概要とCCCDに関する基礎知識」
■卒論テーマ:CCCDについて
■概要と論文の流れ
CCCD(コピーコントロールCD)に関する諸問題を整理し、ネットワーク社会という時代背景やオープンソース/フリーソフトウェアの概念を踏まえつつ、著作権/知的所有権(及びそれらにまつわるビジネス)の現代的課題を探る。
筆者としてはレコード会社各社によるCCCD導入に強い反発心を抱いている。「このままでは音楽がどんどんダメになってしまう」という絶望感もある。しかしCCCDについて調べていくうちに、様々な問題点と共に複雑な現状が見えて来た。一方的に「反CCCD」を唱えることは建設的ではない。
CCCDについて考える時、避けて通れないのがデジタルコピーに関する問題である。何度複製しても劣化しないデジタル製品は、消費者自身の手によってコピーされた複製品を既成の商品の代用品として用いられることがしばしばある。企業がこの問題に危機感を抱くのは当然の成り行きで、レコード会社によるオーディオCDのコピー防止対策を一方的に責めることは出来ない。
またCCCD導入の背景にはmp3に代表されるオーディオファイルのネットワーク流通が大きい。音楽が手軽に、しかも無料で利用出来るとなれば消費者的にはこの上ない魅力だ。ネットワークを通じての音楽ファイルのダウンロードは、ナップスターに端を発するP2Pシステム上のファイル交換によって爆発的に拡がった。
こうした音楽ファイルのネットワーク流通は、著作権を侵害する可能性が非常に高い。コピーやファイル交換によって商品が売れなくなることにより、著作者が自身の著作物から正当に利益を得られなくなる。このことが創作活動に弊害をもたらし、音楽を始めとする文化の衰退に繋がる恐れがある。
しかし著作権保護の運動は、創作活動側の倫理よりも企業側の倫理が優先されることが多い。特に、著作権/知的所有権ビジネスの先進国であるアメリカはこれが顕著だ。企業主導による過度の著作権保護は、著作物の利用者(多くの場合消費者。著作物の2次的利用を望む創作活動者もこれに該当する)に多大な制限を強いることを意味する。著作権保護が逆に文化の衰退に繋がりかねない。
文化の盛衰について「複製」の観点から考えた時、複製や模倣はむしろ文化を豊かにするという考え方が存在し、筆者はこれに同調する。音楽に限ればサンプリングの手法が音楽にもたらした功績はとても大きい。
著作権とデジタルコピー、ネットワーク流通の観点からは、フリーソフトウェアの概念が大変興味深い。一定の条件の下ではプログラムの書き換え・複製・配布が自由でパブリックドメインに置かれる(著作権を放棄する)という考え方に基づき、プログラム開発に対する対価が支払われないにも関わらずLinuxなどの価値の高いソフトウェアを生み出して来た。レコード会社がCCCDを導入するきっかけとなった懸念材料(複製、ネットワーク流通など)がここでは良い方向に働いている。
フリーソフトウェアの概念は単にプログラムに留まらず、一般の文化的創造物にまで波及つつある。この概念は来るべき社会の経済モデルをも示唆するかもしれない。
(以上、改訂の余地は充分にありますが大体この流れに沿って論旨展開を進めます)
■キーワード(思いつくままに列挙。論文で実際に使用するかは未定)
CCCD
アクセシビリティ/ユーザビリティ
mp3
リッピング/コーデック
ネットワーク流通
P2P
GNU/GPL
カリフォルニア・イデオロギー
GNUsic
サンプリング/ライセンス許諾
著作権/知的所有権(及びそれらにまつわるビジネス)
ウォルト・ディズニー社の著作権管理
『コモンズ』レッシグ
パブリック・ドメイン
平沢進
コーネリアス『POINT』リミックス
社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)
廃盤問題
プロジェクト・グーテンベルク/青空文庫
レンタルCD/貸し本
中古本/CDビジネス
NO! CCCD
レコード→CD→mp3→DVDオーディオ?
カセットテープ→MD→CD-R/HDD→?
山形浩生
■CCCDに関する基礎知識
参考/引用:http://www.jayfreak.com/cccd/faq/
「コピーコントロールCD」とはパーソナルコンピュータでのリッピング(読み取り)及びコピーを妨害する技術を施したオーディオディスクの総称であり、「CCCD」という規格があるわけではない。レコード会社が各々にコピー防止技術を施したディスクが便宜上「CCCD」と呼ばれており、日本レコード協会(RIAJ)が発行した文書[1]によれば「複製制御CD」となっている。
尚、本論文中ではコピー防止技術が採用されたオーディオディスクを「CCCD」と呼ぶことにする。
CCCDにはRIAJが定めた基準[2]に基づき、「消費者保護の観点から、消費者に店頭で複製制御CDであることを明確に示す」[3]ために以下のようなマークが付加される。
また、輸入盤を中心に国際レコード産業連盟(IFPI)が定めたコピー防止機能付きCDのマークが付加されている場合もある[4]。
日本で最も採用されているオーディオプロテクト技術の方式が、イスラエルのMidbar Tech社の開発した「CDS (Cactus Data Shield)」だ。CDSには古い順に「CDS100」「CDS200」「CDS300」というヴァージョンがあり、日本で採用されているのが「CDS200」中の「CDS200.0.4」と呼ばれているヴァージョンである。
CDには収録曲数、各収録曲の長さ、曲名などが記録されているTOC(何の略か不明)という部分があり、CD再生器機やPCはTOCを読み込んでCDの曲数などを判断している。CDSはこのTOCにノイズ信号を書き込むことにより、PCにおいて「音楽CD」だと認識されないよう仕組みになっている(うろ覚え。ソース未調査)。
CCCDは音楽CD (COMPACT DISC - DIGITAL AUDIO) の規格(レッドブック)を逸脱している場合がほとんどであるため音楽CDとして認められず、パッケージには以下のマークが付加されていない。
[1] 『複製制御CDの表示に関する運用基準(暫定版)』 http://www.riaj.or.jp/ris/pdf/copy.pdf
[2] 前掲書
[3] 前掲書p.2
[4] “IFPI announces new optional copy control symbol for CDs”
(英文) http://www.ifpi.org/site-content/press/20020917.html