2003/07/07 ()

卒論ゼミ発表レジュメ 第3

国際学部国際社会学科4年 板倉世典

 

 前回の発表の後、具体的な情報収集、テーマの再確認を考え直した。

1.    テーマの設定

最初の問題意識はアグロフォレストリーのコーヒー応用は二酸化炭素の固定に期待するということだったが、コーヒーの生育条件を調べたところ、まともなコーヒーが育つためには21℃〜27℃の間にしか気温変化しない、熱帯の高地(9001500メートルくらい)でなければならないことが分かり、どちらかといえば緑地を保全して土壌を守るというほうに重点が置かれているようだ。

ところで、コーヒーは土地の栄養分をたっぷりと吸収するので、多くの肥料をまかなければ地力がすぐ低下してしまう。しかし、化学肥料漬けの農作物の危険と土壌に与える悪影響は緑の革命によって既に経験済みであるし、我々が口にするものとして関心も高まっているときである。無農薬、有機栽培の商品は人気が高い。さて、流通している農作物としては世界一であるコーヒーは果たしてどうなのか。価格を追究すると地力が低下したところを元に戻すために肥料をまくよりも実は新たな森林を切り開いたほうが安い。肥料をまいたとしても薬漬けになってしまう。そこでアグロフォレストリーというのがコーヒーの場合の目的のようだ。

 前回の説明のようにコーヒーが日陰になるような木を植え、そこに木を植えるのがコーヒーのアグロフォレストリーである。アグロフォレストリーの型はいろいろあり、そのうちのひとつの手法がシェードツリーである。こうするとコーヒーは快適に成長し、日光が制限されるので実がじっくり成熟する。すると地力をあまり消耗しない。ただし、シェードツリーと競合するためうまく管理しないといけないし、シェードツリーは何十年も成長するので、不適切に将来はなってしまうというもの難しいところである。

こういった点を踏まえるとコーヒーのアグロフォレストリー応用は「有機農業、持続可能性、経済の発展をコーヒーのアグロフォレストリーは可能にするのか?」というテーマ設定にしたほうがふさわしいのではないかと考えるようになった。

 

2.    今後の調査法、着眼点 〜夏休みに向けて〜

・コーヒー需要との適合

マーク・ベンダーグラスト著「コーヒーの歴史」からひっぱると、「コーヒーは石油についで最も金銭的価値が高い」「全世界に及ぶコーヒー文化は、もはや文化の域を超えて、崇拝とでも呼ぶべきものになっている」「現在、2000万人以上の人々が、何らかの形でコーヒーによって生計を立てている」「コーヒー産業は、世界の国々の経済、政治、社会の構造を左右し、形作ってきた」といった言葉が並ぶ。コーヒーはもはや僕を含めて中毒に近いもので、需要を満たすことが至上命題であると思われる。ちなみに特別な有機栽培をしているわけでもない普通の労働者の賃金は他の労働者の倍である(グアテマラ)。コーヒーはまだまだ儲かる産業に変わりはない。

しかし、焦点を当てるアグロフォレストリーや有機栽培コーヒーは確実に生産が減少する。この生産減はどこまで許容されるのか調べたい。

     アグロフォレストリーコーヒーの問題点

 生産が減る以外は万能に見えるこの生産方式はあまり広がっていない。当然メリット以外にもデメリットが存在するはずである。そのメリットとデメリットを明らかにしたい。また、産地特性もあるのか、生産者はどちらのほうが利益が出るのか、生産収支はどうかも調べたい。国内でアグロフォレストリーコーヒーを販売している会社が福岡にあるので、夏休みを利用して調査に行きたい。

     流通について

 現在のコーヒーの流通過程について詳しく見てみたい。コーヒーはどこで値段が加わっていくのか、価格と品質は比例関係にあるのか(正の相関にあることは間違いないだろうが)、流通においてフェアトレードのマイナス面はどういったところにあるのか(去年の友松研の卒論では普及率が低いことが大きなフェアトレードコーヒーの問題点だと指摘していたので)などである。

・ 値段

消費者はコーヒーの値段はいくらくらいが妥当と考えていて、安心で環境に配慮したコーヒーはどの程度までなら購入するのか。世界各国のフェアトレードコーヒーの値段を調べ、為替相場や購買力平価を加味して考えれば、面白い結果が出そう。缶コーヒーのどのくらいが「コーヒー」の値段なのか。

 

3.    ソムリエになってみよう

今回用意するコーヒーは、片方が「インタグコーヒー」と呼ばれているエクアドル産インタグ地方のアグロフォレストリーで生産された無農薬かつ有機栽培(化学肥料を使用しない)のコーヒーである。もうひとつが同じエクアドル産の「エクアドルアンデスマウンテン」という名前のスーパープレミアムコーヒーである。これは品質にかなりばらつきがあるコーヒーの中でもまともなコーヒーということができ、比較が可能であろう。ローストは公平にするため同程度のローストにしてある。名前を伏せて飲んでみて、おいしいほうを選んでもらう。

 

結果 試飲者5人 インタグコーヒーのほうがうまい 3票  エクアドルアンデスマウンテンのほうがうまい 1票  どちらも同じ 1票  よってアグロフォレストリーのコーヒーは十分おいしいことが分かった。

 

     入手可能な文献

 アグロフォレストリーに関する文献は和書では極めて少ない。できるだけ入手して読んでみたい。また、洋書は豊富にあるのでチャレンジしてみたい。コーヒーの文献は比較的数多くあるが、必要に応じて読む。

増井和夫著『アグロフォレストリーの発想』農林統計協会 , 1995  宇大

渡辺弘之著 『アグロフォレストリー : 東南アジアの事例を中心に』国際農林業協力事業団, 1990.12  学外

P.K.R. Nair ; 熊崎実[ほか]訳アグロフォレストリー入門(抄訳) ; 国際緑化推進センター編 国際緑化推進センター, 1996.3  学外    など

農学部森林科学科で熱帯森林を研究する大久保先生や農業環境工学科の冨田先生、国際学部の友松先生や高橋先生にもあたってみたいと思う。夏休み中にいくつかの大手のコーヒー会社も回ってみたい。