2003/06/02 ()

卒論ゼミ発表用レジュメ 第2

国際学部国際社会学科4年 板倉世典

 

 前回の発表の反応から卒論のテーマを「コーヒーの森林農法(アグロフォレストリー・・・agro forestry)による生産の有用性の検討」と仮設定した。今回はアグロフォレストリーとは何か、フェアトレードとは何かを調べてみた。

 

A. アグロフォレストリーとは

★ここで参考までにアグロフォレストリーについても述べてみます。アグロフォレストリーは、農耕学(アグロノミー)と森林(フォレストリー)を合体させた言葉で農作物栽培と樹木栽培を同時に同じ場所で行うことです。例えば、熱帯地域でカカオやコーヒー等の栽培をするとき、カカオやコー ヒーは多少の日陰を好むため、シェードツリーという大木がそこに生えており、その下でカカオやコーヒーはよく育つわけです。そして、シェードツリーも木材として同時に利用しようという考え方です。このようなカカオの畑は一見うっそうとした森林とほとんど同じような姿をしています。従来までは森林を焼いて農地をつくる焼き畑に代表されるように、農地と森林は同時に成り立たなかったわけですが、アグロフォレストリーは農地と森林を同時に同じ場所で成り立 たせる考え方というわけです。http://www.fifthworld-inc.com/jukai004.html

 

過剰な焼畑栽培の代替となるような、林業と農業を有機的に組み合わせた農林複合的土地利用のこと。ソシアルフォレストリー(地域住民の立場に立った、住民参加による林業)とともに、持続可能な熱帯林管理システムとされており、各国において熱帯林減少の背景にある貧困や急激な人口増加といった根本原因そのものに対応するためにも、これら熱帯林管理システムの整備・強化が必要とされている。アグロフォレストリーの例には、タウンヤ方式、多層混農(牧)林−自然遷移模ほう方式、伝統的な焼畑移動耕作、永続的な樹間栽培等がある。

国立環境研究所HP 用語説明 http://www.eic.or.jp/term/syosai.php3?serial=5

 

アグロフォレストリーの可能性

 最近、伐採された熱帯雨林地帯の森林で、焼き畑農業に代わって進みつつあるのが、「アグロフォレストリー」。焼き畑農業では一度耕作してやせた土地を肥沃な状態に戻すには時間がかかる。しかし人口増加の結果、休閑期間が短縮されると、地力がたちまち衰えてしまう。そのため、穀物などの食用作物に代わって、ゴム、カカオ、コーヒー、シナモンなどの商品樹木が栽培されるようになってきた。
 商品樹木は、苗木の時には食用作物も同時に栽培ができる。コーヒーやカカオは、丈の低い樹木で日陰を好むため、一定の間隔をあけて大木と一緒に育てる。またゴムなどは、他の野生の雑木とともに栽培されることが多い。このように農業的要素を含みながら、商品樹木を栽培するしくみを「アグロフォレストリー」と呼んでいる。
 最近の研究では、アグロフォレストリーは、炭素吸収能力や生物の多様性に関して、原生林の1/3〜2/3程度の機能を持つという報告もある。つまりアグロフォレストリーは、原生林がはたしていた環境保全機能をある程度復活させていると言える。加えて商品樹木の栽培は、食用作物の栽培より雇用吸収力が高く、採算性も高い。
 したがってアグロフォレストリーを発展させれば、既に伐採されてしまった土地の利用効率を高め、貧困を軽減し、なおかつ森林環境の回復をはかることができるという期待は大きい。
 ただ普及させるためには、制度、技術、経済システムを整備していく必要がある。
 まず、苦労して木を植え、育て、収穫した農民にインセンティブが行き渡るような私的所有権を与えること。商品樹木の栽培に不利な価格体制を改めること。そして流通システムの自由化、道路などのインフラ整備etc・・・。そのためには、地域特性に応じた技術開発に向けての各国の研究体制の強化や大規模な国際的支援が必要であろう。
 森林保護というと、アマゾンやインドネシアなどに残された原生林の保護というのがまず頭に浮かぶ。だが森林地帯にも森林と共生しながら生活する人々がいる。この人々の生活と森林保護を両立させる「持続可能な選択」としてアグロフォレストリーへの注目は、今後ますます高まりそうだ。

参考:日本経済新聞10/26 「経済教室」東京都立大学教授 大塚啓二郎氏

 

 

B. フェアトレードとは

★途上国のコーヒー生産者が、苗を育て、肥料をやり、日々の農作業を通して収穫を迎えても、市場の知識や情報にうとかったり、業者との交渉の手だてを持っていない立場の弱い生産者は、悪質で搾取的な仲買人のいいなりに、生産コストを下回る価格で買いたたかれてしまう。これがコーヒーマーケットの現状です。ここを解決しない限り、南北の経済格差は広がるばかりか、いずれこうした小規模生産者はコーヒー生産を続けていけなくなるのではないでしょうか。
 FLO(Fairtrade Labelling Organizations International)は、この不公平な仕組みを根本から見直すべく、新たな貿易の形を促進しています。基準を満たした良い生産物を世界の市場より高い価格で、しかも生産者が債務の罠にはまらないように前払いでかつ長期の契約を結ぶという貿易のルールを作りました。

http://www.wakachiai.com/shop/fairtrade.html

 

フェアトレードの基準の例

  現在フェアトレードの明確は基準がない。認証する団体も複数あり、その認定マークも複数ある。

フェアトレードとは、第三世界と呼ばれる国々との「支援を目的とした貿易」あるいは「貿易を方法とした支援」すべてを指すのでは無いと考えます。フェアトレードとはそのような貿易の一部の姿であり、一つの目標的活動形態と考えます。
私たちの考えるフェアトレードとは

1.継続的な取引を前提とする
2.環境に配慮し、持続可能な生産を前提とする
3.伝統的な技法、農法による生産を行っている
4.生産者の自立の為のプロジェクトとして行われている事業である
5.支援事業であると同時に、貿易事業としても収支が合う物である
6.商品として一般市場に流通可能な品質のものを提供できる
7.生産者の要請、ニーズに基づいた対等な事業である

などを満たす事業と考えます。フェアトレードに関しては未だ明確な基準があるわけではないのですが、細かな点を除き、上記の内容は必要最低限の条件と言えるでしょう。日本では「フェアトレード推進委員会」によりその基準が現在検討されていますが、各団体の考えや立場、生産国の状況の差などが問題となり、中々難しいのが状況です。

http://home9.highway.ne.jp/~fukuchan/OurFt.htm

 

生産者

最低価格

前払い

長期安定契約

基本条件

 不利な立場に置かれている生産者グループの定義は、直接の生産者が付加利益にあずかるための決定に参与できるように定めなければならない。

 最低価格の決定は、単に生産コストをまかなうだけでなく、「将来に対する投資」のためのマージンを含まなければならない。
 必要な場合は、持続可能な栽培法のために有機栽培奨励金が加えられる。

 生産者が債務の罠に陥らないように、販売に際して前払いまたは融資の機会が与えられなければならない。

 長期取り引きを奨励するために、または収入の安定をはかるために、将来の投資の基礎として長期の契約を結ぶことをめざす。

コーヒーの基準

http://www.transfair-jp.com/standard.html

 

FLOはなぜコーヒーを取り扱うのか?

 コーヒー産業が空前の利益をあげている一方で、アフリカ、アジア、ラテンアメリカのコーヒー農家は全く絶望状態にある。石油についで、コーヒーは南半球の最も重要な輸出製品であって、2,000−2,500万の農民と農園従事者が関わっており、実際1億人以上の生計を担っている。さらに過去3年間、世界市場のコーヒー価格は1ポンドあたり0.45−0.50米ドルに半減し、この40年間で最低の水準を示した。これは大部分の農民が作物の収穫に要した費用をはるかに下回る額である。その結果は重大である。ブルンジ、グアテマラ、タンザニア、その他、コーヒーの輸出によって経済の健全さを保っていた国々が経済危機におちいり、数100万の人々が生計の糧を失い、さらに多くの人々がもはや学費や医療費を払うことができなくなり、食物を得ることさえできなくなった。同時に、世界中のコーヒーの70%を買っている5つの多国籍会社は、かつてこれ程稼いだことはないという位の利益をあげた。世界最大のコーヒーバイヤーであるNestle社は、2001年の利益を約450億ユーロと公表したが、これは前年より16%も多い額である。Kraft Foods社は2001年に16%、 約45億ユーロの増加を示している。 Sara Lee/DE社は2002年の第1・四半期の純益を6.6%増と報告した。

問題の根源

専門家の間では、現在のコーヒーの危機的状況の主な原因は、過剰生産であると言うのが一致した意見である。過去10年間、世界のコーヒー消費量の増加速度は落ちている一方で、コーヒーの生産高は増え続けている。新しい技術(実りが良く、病気や天候不順に強い性質を持ったコーヒーの樹)が生産性を向上させたのだが、さらに単一でもっとも重要な要素は、ベトナムにおいて多国籍コーヒー業者、ベトナム政府、国際銀行に奨励されて、コーヒーの生産が爆発的に進んだためである。その結果:世界中の倉庫は売れ残ったコーヒーで一杯になり、コーヒーの価格はこの美味な製品が本来持つ価値より、はるかに押し下げられている。しかし、あまり話題にはされないが他にも原因がある。1つは、これまでの世界コーヒー条約が1989年に破棄されたことによって、コーヒー貿易が自由化されて、多国間規制が強められ、特に中小コーヒー生産者の交渉力が弱まった。そして、規模の大きな世界的コーヒーバイヤーが事実上、条件と価格を取り仕切ることが許される結果になってしまった。もう1つの原因は、多くのコーヒー生産者はコーヒー栽培以外に他の手段をもたないことである。そこで、コーヒーの価格が下落すると、多くの栽培者はさらに多くコーヒーを生産して収入を保つ手段にしようとする――そのようにして自動的に生産過剰問題は悪化してゆく。

自由市場についての誤った認識

もちろん、自由経済論理は価格が低すぎる場合、生産の供給は自然に減少し価格が上昇する原因になると主張する。供給と需要の融通性についての有名な原理である。しかし、コーヒーを飲む人は、ただコーヒーの価格が下がったからといって、より多くコーヒーを飲むわけではない。そしてさらに重要なことは、世界におけるコーヒーの生産量は減少してもいない。自分の収穫に対するして支払われる額が、もはやその生産費用をカバーしないという事実に直面して、多くの農民は別の方策を考える:ココアをつくる、土地を売って小作農になる、さらに悪い場合移住労働者になるか、最後には全く収入のないまま、良くなることを期待してより多くのコーヒーを作り続けるかである。

最近、「社会的企業責任」というたいそうな言葉が、多くの企業の中で言い出されてきたが、主なコーヒー企業はこの責任を充分重く受け止めていないようである。彼らが支援している1,2の社会的プロジェクトによって、主要な問題から注意をそらされはしない:これらの企業が支払っている非常に低い価格では、農民や労働者が生活費を確保する余地が残されないという重要な問題から、注意をそらしてはならない。

現実的代替案としてのフェアトレードラベルコーヒー

いずれの調査も、フェアトレードに対する消費者の共感度と市場の潜在性は、非常に高いことを示している。1989年にフェアトレードラベルコーヒーが始まって以来、その売上高は増加し続け、コーヒー消費が沈滞している市場においても上昇傾向を続けている。フェアトレードは数10万に及ぶコーヒー生産者とその家族の発展に役立ち、市場に適合した、ビジネスに向いた手段としての実績を立証済みである。それでもなお、コーヒー危機は100万以上もの人々の生活そのものを危うくしている。いくつかの大企業や主要小売チェーン店が始めているように、フェアトレードを採用し本気で投資することによって、コーヒー産業は、もっとも貧しい生産者が危機の最大のコストを、最終的に負担するという事態を必ず避けることができる。コーヒー愛飲者は、そのような業者の態度に応えるに違いない

http://www.transfair-jp.com/why.htm

 

★日本は世界第三位のコーヒー輸入大国です。しかし、その市場のほとんどは大手商社、数社の大手コーヒー会社によって流通は支配されています。

 

http://www.altertrade.co.jp/media/coffee/icon_etc/coffee_keiro.gif

 

フェアトレードコーヒーは高い?

 今回調べた限りでは200グラムで800円くらいが相場だった。飲んでみないと値段相応かは分からないが、少なくとも普通価格より少しだけ高い程度である。スターバックスよりも安い。

 

フェアトレードのマークのひとつ

より詳しく調べるなら

Fairtrade Labelling Organizations International(FLO)
http://fairtrade.net/
フェア・トレードの国際的な認証を行うNGO。各国のフェアトレード推進組織との連携により、これまでに40カ国800,000件を超える生産農家が認定を受け、フェアトレード・ラベルの使用を認められている。日本ではフェアトレード・ジャパンが提携先となっている。

 

前回から

逆にフェアトレードなどと組んで小規模に徹底管理すれば高品質のものができ、住民の生活向上に寄与するはずである。ただし、こうするとシンクとしてのコーヒーはあまり期待できない。・・・シンクとしてのコーヒーはあまり考えないほうがよさそう。

ただし、焼畑などの森林減少は防げるだろう。これらの点を行政の役割という視点から見てもよいと思う。(ガバナンスとしての品質認定制度、流通への介入)  他にどんなものがあるでしょうか?

 

前回の修正点

スターバックスはたしか中南米産の豆しか使っていないはずである。

  エチオピアモカ、など中南米産以外も使っていました。

 

前回触れたスウィーティオについて

 高品質バナナであるスウィーティオは他のバナナの約二倍の値段である。その差はホームページによれば、日本人の好みに合わせた味の品種改良、じっくり成長させる耕地栽培によって味が向上したという。また、ドール社はISO9002で品質の国際規格を、ISO14001取得で環境マネジメント国際規格をこの業界では画期的に取得したという。また、現地の労働者もしっかりした条件で雇われているという。大規模農園型の栽培ではあるが、商品作物の生産なので参考になる。(http://www.sweetio.com/delicious/index.html より)私も食べてみたが、皮が厚く、やや大ぶりのバナナで、しっとりとした上品な甘みのあるバナナだった。ぴーかんてれびHP(http://www.tokai-tv.com/p-can/today/020808/special_1/) によれば5年で売上げ5倍。朝日新聞によれば(http://be.asahi.com/20021019/W13/0037.html)、

高級バナナは相当売れていて、もうかり、安いバナナは中国にいっているという。農地も不足気味らしい。