2003.7.7()

国際学部国際社会学科 阿部 真理子

卒論ゼミレジメvol.3“派遣社員の保険・給与”

 

1.社会保険と労働保険

 額面と手取りが違うことは周知の事実であるが、天引きされている保険について調べてみた。派遣社員の保険制度はどうなっているのか?という疑問があったが、それについては、社会保険や労働保険については加入することが法律で定められていることが分かった。社会保険とは、健康保険、厚生年金を総称した言葉で、加入の条件を満たしていれば、派遣、正社員など働き方に関わらず加入しなければならない。社会保険の加入は、会社、労働者の義務である。以下に保険内容と加入条件をまとめたものを示す。

 

@    健康保険…怪我、病気をした際の医療費を補助してくれる保険

  ・加入用件 → 2ヶ月以上働く見こみがある

        → 一般従業員の労働時間・日数の4分の3以上の労働がある

    保険料率 → 0,041 (個人負担分)

    事業所負担 → 派遣会社が半分を負担

 

A    厚生年金…年金は、老齢年金・傷害年金・遺族年金の主に三つの種類がある。高齢者、障害者、または死亡した場合などに年金を受け取ることができる。

・加入用件 → 2ヶ月以上働く見こみがある

        → 一般従業員の労働時間・日数の4分の3以上の労働がある

    保険料率 → 0,0679 (個人負担分)

    事業所負担 → 派遣会社が半分を負担

 

B    雇用保険…失業したときなどに受け取れる保険。その他に、スキルアップにかかる費用を援助してくれる教育訓練給付金などがある。

    加入用件 → 同じ派遣会社で1年以上継続して雇用される見込みのあること(反復継続型の就業も可)

1週間の所定労働時間が20時間以上であること

    保険料率 → 0,007 (個人負担分)

    事業所負担 → 派遣会社が一ヶ月の給料×0,0105を負担

≪教育訓練給付金≫

    給付内容…資格スクール等の受講料の最大40(上限20万円を援助)

    厚生労働大臣指定の講座に限る

    給付は受講修了後

    支給資格…雇用保険(一般被保険者)に3年以上加入している

    失業給付を受けた場合、それ以前の加入期間は加算されない

    65歳以上の者・日々雇用される者・短時間労働者・4ヶ月以内の期間を予定して行われる季節的事業に雇用される者・船員保険の被保険者は、一般被保険者として扱われない。

 

C    労災保険…仕事、通勤中に怪我をした場合に補償金が出る。

  ・加入用件 → 1日でも働く場合

    事業所負担 → 派遣会社が全額を負担

 

??結局どのくらい引かれるのか??(給与額面20万円のSAMPLE

項目

金額

計算式

給与(月額)

200,000

 

健康保険料

- 8,200

= 200,000 ×0.041

厚生年金

- 13,580

=200,000 × 0.0679

雇用保険

- 1,400

=200,000 × 0.007

労災保険

0

 

手取り

176,820

 

 

2.お給料について

 「派遣フォーラム」というページで職種別平均時給を計算したもの(20033月)が掲載されていた。残念ながら、全職種ではなく掲載されていた職種は、

    事務・オフィスワーク系(一般事務、営業事務、総務人事社会保険事務、金融事務、貿易事務・国際事務、経理・財務、秘書、受付、広報・経営企画、OAオペレータ・データ入力

    専門技術系(通訳・翻訳、CADオペレーター・設計・製図、OAインストラクター、研究開発・実験・検査

    IT技術系(プログラマー、ネットワークエンジニア、ユーザーサポート・ヘルプデスク

    クリエイティブ系(グラフィックデザイナー・DTPオペレーター

    営業・販売・サービス系(営業・企画営業、テレコミュニケーター・スパーバイザー、販売・調査

    医療福祉系(医療事務

22職種であった。荒々しい計算だが、これらの平均時給をさらに計算して「派遣社員の平均時給」を割り出してみたところ、1,345.5円であった。例えば一日8時間労働、週休二日で月給を計算してみると、

1,345.5(時給)×8(時間)× 5(日間)× 4(週間)= 215,280 円

である。さらに先ほどの保険計算式で手取りを出すと、

215,280(月額)−8,826(健康保険料)−14,618(厚生年金)−1,507(雇用保険)

0(労災保険)=190,329(手取り)

になる。これは、大学新卒初任給文系(職種によるが、たいてい額面が20万越すものは少ない)と比較すると、かなり良いお給料だと考えられる。しかし、年間で考えてみると正社員にはボーナスがあることを忘れてはならない。いくらこの不景気でボーナスを出す企業が減ってきている(もしくはボーナスが雀の涙程度であっても)といえど、大体で一度のボーナスが月給の2ヶ月分として計算すると、

≪正社員(給与・額面18万、夏冬の賞与有り)の年収≫

180,000(月額)−7,380(健康保険料)−12,222(厚生年金)−1,260(雇用保険)

0(労災保険)=159,138(手取り)

159,138 ×12(ヶ月)+ 159,138 ×4(ヶ月・夏冬賞与)=2,545,208 円

≪平均的派遣社員の年収≫

190,329(月額手取り)×12(ヶ月)2,283,948 円

 

正社員年収と派遣社員年収の差額 = 261,260

 

なんと年収にすると約26万円も正社員の年収のほうが高い計算になる。もちろん正社員は時給ではないため、残業や責任の重さなどといった負担も大きいと思われるが、単純に考えると正社員のほうがいいのでは…?と感じた。

 

3.これからの進め方

 今回はお金の面から派遣社員の状況を把握して、さらに正社員との比較を深めるといった内容になった。今までのレジメ作成にあたっても、自分の知りたかった「様々なワークスタイル」の外枠はつかめてきたように思う。加えて、先日板倉くんから頂いた新聞記事(朝日新聞2003610)の切り抜きが「派遣の立場」を論じた記事で、改正法が成立してもなお違法状態が続いてしまう実情や、正社員の派遣への置き換えが益々進む予測などが論ぜられており、実際に、派遣をしていて不当な扱いを受けた人たちの例が載っていた。(貴重な資料になりました、どうもありがとう。)夏休みを使って、実際にはどうなのか?というところを調べていこうと思う。

 

≪参考≫

派遣フォーラム http://forum.hakenjob.com/index.html

リクナビ2004新卒派遣特集 http://www4.recruitnavi.com/K2/HAKEN/index.html