2003.6.9(月)
国際学部国際社会学科 阿部 真理子
卒論ゼミレジメvol.2“多様化する雇用形態”
調べていく中で、フリーターが増える社会背景、分類、現状などを論じた「フリーター論」が、多く出回っていることに気づいた。前回の話し合いでは、正社員と非正社員との比較(メリット・デメリット)についての議論が中心になった。これからは切り口を“ワークスタイル”にしてフリーターについては“非正社員の中の「フリーター」という肩書きの人たち”という形で扱うようにする、というのが現段階での考えである。
1.
FSAの進行
企業において,Flexible
Staffing Arrangements(FSA)の活用が進行している。FSAとは,労働力に関する数量的柔軟性の獲得とコスト削減を実現するために,パートタイマー,派遣労働者,臨時労働者,請負労働者などの非正社員・外部人材を活用することである。以下,本稿では,パートタイマー,契約社員,臨時労働者など,企業と直接雇用契約を結んでいる正社員以外の社員を「非正社員」,派遣労働者や請負労働者など,企業と雇用契約を結んでいないが企業内で就労している労働者を「外部人材」と呼ぶことにする。
近年の傾向では,様々な形態の非正社員・外部人材が登場して就業形態が多様化し,非正社員・外部人材は量的な拡大を続けている。厚生労働省が1987年から1999年の間に三度にわたって実施した『就業形態の多様化に関する総合実態調査』(以下,厚生労働省調査)によれば,パートタイマー,臨時労働者,日雇労働者,契約社員,派遣労働者などのいわゆる非正社員および外部労働者(出向社員を除く)が全労働者に占める比率は,1987年の14.8%から,1999年には26.2%へと大きく上昇している。
―木村琢磨「非正社員・外部人材の活用と職場の諸問題」
日本労働研究雑誌2002年8月発行505号より一部抜粋
@FSAのメリット・デメリット〜企業編〜
・メリット→労働力受容の変動に合わせ,労働力の数量的な調整力を高めて人件費を削減し,企業の財務パフォーマンスを改善できる。
・デメリット→労働力の就業継続性の欠如,就業形態の多様化による職場管理の複雑化等により,企業の業務遂行に負の効果を与え,中長期的には組織のパフォーマンスを低下させる可能性がある。
⇒FSAが持つ、業務遂行への負の影響に関しての指摘
・ 雇用の不安定化や組織への忠誠心の低い短期勤続者の増加によってもたらされるモラールの低下やチームワークの阻害
(Osterman 1987,Beard and Edwards 1994,Pearce 1998,Mangan 2000,Morishima 2001)
・ 外部労働市場への依存が強まることによる企業の人的投資意欲の喪失,人材の短期勤続化・外部流出の増加による技能・ノウハウの喪失
(Cappelli 1999,Mangan 2000)
2.
雇用形態〜それぞれの定義〜
(1)正社員…一般的には、期間の定めのない労働契約を締結し、長期雇用を前提として能力開発、異動・配置を行い、キャリアを形成させていく労働者を意味する。
―全国求人情報協会ページより
(なんと辞書には載っていない!法的に定義されていない言葉だと発見。)
(2)非正社員
@ パートタイマー / part-timer…通例、1日の所定労働時間が同一企業の正規の労働者より短い者、あるいは1日の所定労働時間が同じであっても、1週の所定労働日数が正規の労働者より少ない者をいう。しかし、日本のパートタイマーのなかには正規労働者と同程度の労働時間働く者や、残業をする者も含まれているため、総務省の「労働力調査」や「就業構造基本調査」ではパートタイマーを、職場でパートタイマーとよばれている者と定義している。
―「大日本百科全書」(ニッポニカ)より
A アルバイト…本業や学業のかたわら、収入を得るための仕事をすること。また、その仕事をする人。内職。バイト。 ―「大辞泉」より
B 契約社員…一定の期間を定めた雇用契約を結んだ社員。日本の企業は従来、終身雇用を大原則にしてきたが、新規事業にのりだすときなどにはその分野の即戦力の人材が必要になる。こうした場合、契約社員の形で必要な人材を確保する企業がふえてきた。これまでにも契約制度はあったが、パートタイマーや臨時雇いなど補助的な色彩が濃かった。これに対し、最近の契約社員はプロとして採用されることが多く、報酬も一般社員を上回るのがふつう。←法的な定義がない
―「データパル1991〜2001」より
C 臨時雇い…臨時にある期間だけ雇い入れること。また、その人。―「大辞泉」より
(3)外部人材
@ 派遣店員…メーカーや問屋が人件費自社もちで小売店に派遣する店員のことをいう。繊維製品、化粧品、服飾雑貨などのファッション関連と家電に多い。日米構造協議で不公正取り引きとして問題になった。派遣する側は自社製品を売り込めることと、小売店頭の生の消費情報を収集できる利点がある。一方、小売店側は特殊販売技術がいる販売員を育てる必要がなく、人件費が削減できる。半面、メーカーや問屋に対する依存体質をうみ、経営が安易に流れ、人が育たないうらみがある。昭和30年代の人手不足時代に樫山が百貨店の紳士服売り場を対象に本格的に導入し、いっきに広まった。小売店側が派遣店員を要求する場合は、取り引き上の優位性の乱用だとして独禁法違反問題が問われているが、最近は人件費の急騰で、メーカー・問屋側が派遣する店や人数を絞り込む“逆選別”の動きが広がっている。
※人材派遣業…求めに応じて企業や家庭に要員を派遣する事業。1986年に施行された労働者派遣法によって、従来事業として認められていたのは、プログラマーやオペレーター、調査、財務処理などの合計26。医師や家政婦など29事業からなる有料職業紹介事業とともに、労働市場の交通整理の役割を果たしてきた。だが、産業構造の変化にともなっておきる労働需要と供給のミスマッチをなくすためには、認可される事業の枠の拡大が必要だ。そこで労働省は派遣労働について、製造業務を除き業務規制を原則撤廃する労働者派遣法改正法案を国会に提出、可決され、99年から施行された。労働省の調査では98年度の派遣労働者数は前年度比4.7%増の89万5000人と5年連続で過去最多を更新した。改正労働者派遣法の施行で営業職などへの派遣がふえており、労働省では2000年度には100万人台に達するとみている。
A 請負社員…派遣業者が登録スタッフを「派遣社員」として企業に派遣するのではなく、仕事自体を請け負い、それを自社の派遣した社員に行わせること。表面上は「派遣社員」とかわりないのだが、書類上は「請負社員」となっている。これは、まず派遣会社が派遣社員を自社の契約社員として雇う。つぎに派遣先企業との間で業務の請け負いを取り決め、その仕事のために「契約社員」を相手先に出向させるというもの。1999年12月に改正労働者派遣法が施行されて、派遣社員が仕事を続けられる期間を原則1年としているために、請け負いとすれば法の適用をうけなくてすみ、スタッフの継続雇用につながるからである。
―「データパル1991〜2001」より
◎パートとアルバイトの違い
パート・アルバイトは短期間あるいは短時間、臨時的、補助・補完的仕事のために雇う場合の言い方で、両者に大きな違いはない。「パート労働法」という法律では、通常の労働者(いわゆる正社員)に比べて、労働時間が短い労働者と定義している。しかし、一般的には、次のような区別をしているようである。
(1) パート…おもに主婦などが一週間のうち数日を短時間働くこと
(2) アルバイト…学生が、学業の合間に短時間働くこと
しかし現実には、これら2つは混同して用いられている。最近では、学業についていなくても、本業として働く「フリーター(フリーアルバイター)」という働き方も一般的になった。いずれにしても、パート・アルバイトの場合も労働法が適用される。
―全国求人情報協会ページより
以上より「アルバイト」は雇用形態のひとつと呼ぶべきではないのかな?と思った。
3.
派遣社員と正社員の違い
(ワーク派遣ネットサイト内派遣マニュアルページより抜粋 ※一部変更)
左図のような派遣元・派遣先・派遣労働者の三角関係が人材派遣のシステムです。つまり派遣労働者にとっては、労働者と派遣先との間に派遣元が入る「間接雇用」となります。注意して欲しいのは、「雇用関係と給与支払い関係の違い」です。派遣労働者は派遣元と雇用関係を結びますが、業務の指揮命令は派遣先から受け、派遣先で業務を遂行し、給与は派遣元から支払われます。逆に、正社員は雇い主である企業と直接雇用関係を結び、直接指揮命令を受けて業務を遂行し、給与も直接手渡されるので、複雑な三角関係は存在せず、「雇い主」と「労働者」という1対1対応の関係です。
(1)雇用関係のおさらい
(2)派遣社員は契約以外の仕事をする必要がない
派遣社員は雇用関係を締結する際に「就業条件明示書」が手渡されますが、ここに書かれた業務以外はする必要がありません(派遣先は契約以外の業務を命じてはいけない)。サラリーマンやOLは、何かと煩雑な仕事に追われ、曖昧さと妥協しなければならないことが多いのですが、派遣社員はこれを拒否する権利があり、これを強要された場合、契約を解除することもできます。
労働基準法第15条(労働条件の明示) |
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1 |
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金に関する事項については、命令で定める方法により明示しなければならない。 |
2 |
前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は即時に労働契約を解除することができる。 |
3 |
前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。 |
ただし実状として、契約以外の業務を命ぜられたり、現場ではそれを拒否できる雰囲気ではなかったりと、思い通りにいかないこともしばしばあるようです。
(3) 派遣社員はボーナスが出ない
派遣社員と正社員の違いとしてまず挙げられるのが、ほとんどの人材派遣会社ではボーナスが出ない、ということです。もともとボーナス(賞与)とは、定期的に支払われる毎月の賃金とは別に会社の業績などによって臨時に支払われる賃金の事を指し、また、労働基準法や最低賃金法においても賞与の支払いを義務づける規定はなく、たとえ正社員であっても、必ずボーナスがもらえるわけではないのです。しかし、「派遣社員だからボーナスは出ない」と一概には言えません。派遣労働者の労働条件は、以下の3つによって決まっていますが、これらの内、労働契約・就業規則などに規定があれば、派遣社員でも賞与を受けることができます。賃金に関する情報は、必ず文書で書いて労働者に渡すことが義務づけられています。最近では、派遣会社によってはボーナス制度が導入されたところもあるようです。
労働契約(協約) |
派遣元と派遣労働者の間に交わされた契約 |
就業条件明示書 |
派遣元と派遣先の労働者派遣契約の内容を反映した明示書 |
就業規則 |
派遣元の社内規定 |
(4)派遣社員は正社員に対して福利厚生が希薄
「福利厚生」…聞いたことはあるけれど、意味がよく分からない単語ですね。言葉の意味から説明しますと、「福利」つまり、幸福をもたらす利益と、「厚生」つまり、生活を豊かにすることを意味します。例えば、社会保険への加入や有給休暇制度、労働環境の適正な維持なども「福利厚生」に含まれることになります。
派遣社員は正社員に比べて「福利厚生が薄い」と言われますが、具体的に何がどう「薄い」のかはっきりしませんね。端的に言うと、派遣労働者は雇用期間が短期であることが多く、社会保険への加入や有給休暇制度など、雇用期間に基づいて左右されるような福利厚生に対して立場が弱くなる、ということです。
また、登録型派遣労働者の場合、派遣就労をしている間は、健康保険・厚生年金保険(社会保険)への被保険者資格があり、派遣就労を就労した時点で被保険者資格を失うので、次の就労まで国民健康保険・国民年金などを自分で負担しなければならないというのも、「福利厚生が薄い」と言われる所以でしょう。
またもうひとつ、正社員には「忌引休暇」がありますが、派遣社員にはこれを約する制度がないのも、福利厚生が薄いと言われる所以です。
≪参考≫
全国求人情報協会…http://www.zenkyukyo.or.jp/index.html
日本労働研究機構…http://www.jil.go.jp/
Lycosディクショナリ…http://dic.lycos.co.jp/
ワーク派遣ネット…http://www.whn.co.jp/index.html