20011112日(月)

介護保険制度

宇都宮大学国際学部国際社会学科4

野村 綾

1.     措置主義から申請主義へ

社会福祉基礎構造改革にともなう1997年の保育所利用制度改革により、従来の「措置主義」は「申請主義」に変化を遂げた。申請主義では、利用者による施設選択権・利用申し込み権・支援費支給申請権・要介護認定申請権・再審査請求権などが認められ、利用者の自己決定権や福祉サービス申請権を尊重する手続き方法が導入された。しかし、サービス利用者が物理的・能力的に選択と申請の手続きが可能とは限らないため、社会福祉基礎構造改革のなかで「福祉サービス利用援助事業」が導入された。また申請主義は「待ちの姿勢」を生み出しやすいので、福祉サービス提供者がより積極的に福祉ニーズを掘り起こし,サービス利用を促進するような活動である「リーチアウト運動1」もあわせて行われることとなった。

 

2.     施設収容主義と居宅主義

最近まで施設収容主義は、障害者などに専門的な援助を提供し、安定した生活を提供するためのとされてきた。これは、老人福祉における施設にもいえることだが、施設への収容は収容者を社会一般からかけ離れた存在としてしまう危険性が極めて高い。事実、障害者施設は障害者自身から批判され、縮小させられてきている。施設収容主義に代わるものとしては居宅主義があげられる。居宅主義2とは、「慣れ親しんだ住居にとどまることを前提にコミュニティ(地域社会)の中でまたコミュニティを通じて利用者を支援し、その自立生活を確保すること」であり、「福祉サービス利用者に生活の日常性を保証しその人格や自己選択・自己決定の権利を尊重する施策のあり方」である。実際に介護保険制度を利用する高齢者のなかにも自宅での介護を希望するものは多く、居宅主義の強まりを感じるものである(図1・2)。女性に比べ、男性の方が自宅での介護を希望するケースが多い。しかも、高齢になればなるほど自宅での介護を希望する人が多くなる傾向がある(図1)。やはり、男性は家族、特に妻に一生生活の世話をしてもらえる、又はしてもらいたいと願う傾向があるのに対し、女性は日常の生活の苦労や介護を自分が高齢になる前に体験している場合が多いので将来に不安を感じ、病院や医療施設での介護を選ぶ割合が高くなっているようである。また、一度施設に入所した人よりも在宅で介護を受けている人の方が在宅での介護を希望しているのも顕著にあらわれている。

居宅主義は施設収容主義に対して批判的な要素をもってはいる。しかし、現在の居住型施設は地域社会を基盤とする社会福祉体系のなかで多様な居宅型福祉サービスを提供する拠点的施設として捉え直されている。

 介護が必要な体になったとしても自宅で生活を送りたいという気持ちは多かれ少なかれほとんどのひとが抱く感情である。しかし、自宅で介護を受ける場合、家族が介護をする立場に置かれる可能性が高くなる。近年介護の苦労を綴った介護暴露本が多数出回っているが、それらに代表されるように、家族が介護を引き受ける際にはさまざまな問題が浮上することとなる。まずあげられるのは介護者がプロではなく知識が不十分であるということ。そして、そのアマチュアである家族が24時間体制で365日休み間もなく介護し続けなければならないということである。介護者は主に嫁や子供、もしくは老老介護となることも多い。(図3)そしてその介護の疲れから成る介護者のストレスは虐待がおこることや不適切な態度をとることになり、それによって高齢者の症状を悪化させる恐れもでる。いつ終わるとも知れないそのような生活は介護者、高齢者双方のストレスを増加させているとも言える。
 また、自治体の介護サービスでは回数や質に限界もある。高齢者が介護者に面倒を見てもらっているとの考えから要望を述べることができにくい環境に合うことや、要介護者一人一人の要求に応える、時間的・人員的余裕がないことからくるサービスの低下も懸念される。また、家族の負担を軽くするためのデイサービス等は他人が家庭に踏み込んでくるため家族の社会的立場やプライバシーの問題が発生する可能性もあるのだ。よって、必ずしも居宅型の介護が最善とはいえないのではないだろうか。


 



1 有斐閣コンパクト「社会福祉の運営」古川孝順著 20014月(p26

2有斐閣コンパクト「社会福祉の運営」古川孝順著 20014月(p29

 

参考文献

有斐閣コンパクト「社会福祉の運営」古川孝順著 20014