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高橋直裕「栃木SCのサポーターの役割」

 

 

1、        栃木のプロサッカーチーム「栃木SC

 私は小学校3年生から現在に至るまでサッカーという競技を続けており、高校3年間を除けば長い間栃木県でサッカーを行ってきた。私が小、中学生の頃は栃木SCというチームはプロリーグではなく、関東社会人リーグに所属していたため栃木県にはプロサッカーチームがないというのが現実だった。しかし20093月より栃木SCJリーグディビジョン2に参戦するそれを機に自分の住んでいる県からプロサッカーチームが出来たことに喜びを感じ、栃木SCのホームグラウンドであるグリーンスタジアムまで足を運ぶようになった。サッカーだけではなく、他のスポーツのプロチームも選手と監督やコーチだけで成り立っている訳ではない。プロスポーツの世界はそれぞれのチームごとに、チームスタッフをはじめとする運営をするための人材やホームタウンの地域の方々、スポンサーやサポーターなど様々な人々が関わっている。その中でも休日なのにも関わらずスタジアムまで足を運び、選手を応援しているサポーターの力はとても大きな力になっているに違いない。

 そこで本来サポーターにはどのような役割があるのかということに興味を持ったため、サポーターとファンにはどのような違いがあるのか、栃木SCのサポーターの現状や問題点はどうなのか、などのことについて記していきたいと思う。

 

 

2、        サポーターとファンの違いについて

 サッカーに携わることはなくても「サポーター」や「ファン」という言葉は日常生活を通して、聞いたり使ったりしたことがあるという人は多いと思う。同じような意味の言葉であるということはある程度想像つくが、「サポーター」と「ファン」ではどのような違いがあるのだろうか。調べてみた結果、一般的にサッカー好きな人を「ファン」、熱狂的なサッカーファンやある特定のクラブチームを支持している人を「サポーター」と呼んでいるらしい[i]。サポーター(supporter)は直訳すると「支持者」であるため、ある特定のクラブチームなどを応援(支援)する人という意味になる。ファン(fan)は直訳すると「愛好家」となり、サポーターとほぼ同義語であるがクラブチームは地域に密着していることが多いため、より強い意味のサポーターという言葉が好んで使われているというのが現状だ。この2つの言葉はサッカー以外、スポーツ以外でも使われているため意味の違いについては考えたことも無かったが、昔、栃木SCの試合を観戦しに行ったときにサポーターの方にいつから栃木SCのファンなのかと質問したことがあり、その時サポーターの方が私はファンではなくサポーターだと少し怒りながら言っていた。当時はなぜ怒っているのか理解できなかったが、今となってはそれだけ栃木SCというチームに愛情を注いでいるとともに、自分のサポーターという立場にプライドを持っているということを感じることが出来る。

 

 

3、        栃木SCのサポーターの現状

 栃木SCのサポーターは通称「黄猿」と呼ばれており、みんなで一枚岩になってサッカーのある生活を楽しむということを理念においている[ii]。栃木SCのホームスタジアムである栃木県グリーンスタジアムは宇都宮市清原町にあるため、JR宇都宮駅から簡単に行ける距離ではない[iii]。そのためスタジアム開門2時間45分前から無料シャトルバスを運行しており、帰りもJR宇都宮駅まで無料シャトルバスは運行している。そして車で来た方々には一般来場者用の駐車場が設けてあるためスタジアムまでのアクセスの心配は無くなってはきている。また、アウェイゲームの時には黄猿主催の応援バスツアーがあり、他県で開催される試合でも気兼ねなく参加することができるようになっている。

 実際に私が20111023日(日)に栃木SC対ジェフユナイテッド千葉の試合を観戦しに行ったときは、小さい子供達からお年寄りの人まで幅広い年齢層の方々が応援に駆けつけていて、中には上半身裸でドラムを叩きながら熱狂的に応援をしているサポーターもいて驚いた。そして何より驚いたことは栃木SCのサポーターが試合終了したあとに栃木県の県民の歌を大合唱していたことだ。私は栃木SCの試合に限らずJ1J2の試合問わず様々なチームの試合を観戦してきたが、県民の歌を歌っているチームは初めてで、栃木を背負って選手を応援しているのだと感じることができた。J1のサンフレッチェ広島というチームを例に挙げると、このチームはJ1の上位チームであり人気選手もたくさんいるため、もちろんサポーターの数もたくさんいるのだが、それ以上に観客を引きつける要素を持ったチームなのである。その要素とはゴールパフォーマンスだ。点を決めた後にチーム全員が集まって観客を楽しませるためにパフォーマンスを行っているのだ。これはせっかくスタジアムまで足を運んでくれたサポーターに少しでも楽しんでもらえたらという選手の意向だという。このようにこのチームでしか味わえないような楽しみを作るということも、ホームスタジアムの観客動員数を増やすということに繋がるだろう。その点では栃木SCの県民の歌をサポーターが大合唱するということは、他のチームでは味わえないものであり、栃木SCがこれから強調していくべき点なのだと思う。だがやはり、栃木県のサッカー人気が栃木SCのサポーターの人気に繋がっていると思う。実際に私が観戦しに行った試合もスタジアム全体を見渡してみると、相手のジェフユナイテッド千葉のサポーターの数の方が栃木SCのサポーターの数よりはるかに多かった。まずは栃木県のサッカー界を変えていかなければ、プロチームである栃木SCも活性化しないと思う。そのためにはまず原点としてサッカーに興味を持ってもらうためにどうすれば良いのかを考え、1人でも多くスタジアムまで足を運んでもらわなければいけないと考える。

 

 

4、        栃木SCサポーターの問題点

 上記の栃木SCのサポーターの現状の最後に述べたように、栃木SCを今よりももっと活性化させ、ホームスタジアムであるグリーンスタジアムの観客動員数を増やすためには、まずは栃木県のサッカー界を変えていくことが必要だと考える。では、具体的にどうしていけば良いのか。

1つ目は、1人でもスタジアムに足を運んでもらうために栃木SCとはどういうチームなのかをまずは県内でもっと呼びかけていく。栃木県内に住んでいるのにも関わらず栃木SCの存在を知らない人も少なくはないだろう。まずは存在を知ってもらうために栃木SCとしての運動や呼びかけを今以上にしていくのだ。

2つ目は、栃木県のサッカーの育成組織自体を見直すということだ。栃木SCには栃木出身者が少ない。栃木SCとは言っても他県出身者が多数を占めている状況なのだ。ではなぜ、栃木SCには栃木県出身者が少ないのか。色々な要素が関わっていると思うが、栃木県出身Jリーガー自体が少ないということが挙げられると思う。私がコーチをしていたサッカースクールの近藤健氏にインタビューをしてみたところ、問題点として挙げられたのは練習場所の確保の問題だった[iv]。日本では静岡県や埼玉県がサッカー王国と呼ばれていて、人工芝や天然芝のグラウンドがたくさんあり、よりよい環境の中でサッカーが行われている。そのことと関係があるかは分からないが、静岡県や埼玉県からは多くのプロサッカー選手が輩出されているのは事実である。近藤健氏は子供達にとって良いグラウンドでサッカーをすることが技術の向上をはじめ、サッカー自体を好きになってくれる要素だと言っていた。たしかに栃木県には人工芝や天然芝のグラウンドが少なく、土の上でしかサッカーをしたことのない子供達はたくさん存在する。将来プロサッカー選手を目指す栃木県の子供達にとって、芝のグラウンドでいかにサッカーを体験するかはとても重要なのである。

 3つ目はサッカースクールという制度である。サッカースクールとは誰でもお金を払えば技術や年齢、性別に関わらず参加できるサッカー教室のことである。栃木県内の幼稚園生や小学生でサッカースクールに通っている人数は少なくない。もっと身近に少年サッカー(学校の部活)があるという現状でどうしてお金をかけてまでサッカースクールに通うのか。それは指導者不足と大きく関わってくる。大抵少年サッカーでは昔サッカーを経験したことのある選手の保護者が指導していることが多い。だが、本当にそれで良い選手は育つのか。やはり小学生から中学生までのゴールデンエイジの期間にしっかりとした指導を受けるということはとても大切なことだと思う。この問題は子供だけの問題ではなく、我々育てる側の問題でもあるのである。

 栃木県出身のプロサッカー選手が栃木SCに何人も在籍していたら、今よりももっと栃木県民の方々は応援しようという気持ちになってくれるだろう。栃木SCJリーグディビジョン1に参戦したときに他の県のチームにサッカー、応援が負けないように栃木県民がこの問題に精力的に取り組んでいかなければいけないだろう。

 



[i] 公益財団法人 日本サッカー協会HP「サッカーファンとサポーターの違いは?」

(20127月現在) http://www.jfa.or.jp/info/inquiry/2011/11/post-10.html

 

[ii] 栃木SCサポーターズクラブHP黄猿「ABOUT US

(20127月現在) http://kidzallu.com/index.php?module=about

 

[iii] 栃木SC公式HP「観戦ガイド」

(2012年7月現在) http://www.tochigisc.jp/guide/

 

[iv] 20126月におけるウイングス鹿沼SC(東京ヴェルディ鹿沼支部)代表、

近藤健氏とのインタビューより